冬のラブリーのイベントのラスト、バレンタインが終了しましたねー。
いやもう、最近は外国の昔珍しかったチョコレートも手に入るようになったし、ここしばらくは、本命さんにはこういうのをあげてることが多かったんじゃないかな?
ピエール・エルメだとか、ジャンポール・エヴァンだとか、ピエール・マルコリーニ、メゾン・ド・ショコラだとか。

手作りというのも、もちろんありでしたが。
私の周りでは本命さんへの場合、これにプレゼントが加わっていることが多かったかな。
チョコレートといえば、私はデメルの猫が描かれてるパッケージの、通称・猫チョコが好きで、この季節になると買っていました。
でね、貧乏性だから箱が捨てられなくて、ピンだの輪ゴムだのカードだのを入れて取っておいている…。

今年はデメルで福袋出したのを買えたんですが、中にちゃんとチョコレート入ってました。
猫チョコじゃなかったですけど、おいしい。
会社は女性3人で男性社員20人以上にチョコレートを配らなきゃいけない状態だったので、大変でした。
男性社員は、ホワイトデーにちゃんとお返ししてくれてましたけどね。

会社のバレンタインは女性3人で千円単位出し合っても、男性1人には500円程度のチョコ。
逆に男性は百円単位で出し合うけど、女性1人には千円単位のお返しが来る。
どっちがいいのかな~と、良く考えてました。
まあ、おあいこと言うことでしょう。

大震災の時は、今年はバレンタインもホワイトデーもなしで、やったつもりで集金して募金です。
女性社員は、自分の父親が会社でチョコレート貰って帰って来るか、そっちもちょっと心配してましたね。
バレンタインをテーマにした話もたくさんありますが、その中で、ちょっと変わったものでは宮脇明子さんのマンガで、「ジュビルチョコレート」というものがありました。


主人公の男性が子供の頃住んでいた地方都市に、デパートができた。
この辺りでは見たこともない洒落たウインドウ、都会の香りに土地の人間がみな、夢中になった。
そのデパートには1月の半ばからバレンタインまで、1ヶ月だけ、ジュビルチョコレートという、チョコレートの店が出店した。
チョコレート製のムーア人の少年の彫像が、特長だった。

バレンタイン・ディを知らなかった子供たちに、店員の女性が1年に1度、女性が男性にチョコレートを贈って愛の告白をする日だと教えてくれた。
ジュビルチョコレートは、バレンタインを知らなかった子供たちにそのイベントを教えただけではない。
チョコレートの概念も変えてしまった。

それまでチョコレートといえば、割って食べる板チョコレート。
砂糖でコーティングした丸い粒のチョコレートだった。
だが、ジュビルチョコレートはショーケースの中に一つ一つ、まるで宝石のように並べられていた。
そして、その値段はチョコレートとは思えないものだった。

主人公の少年の母親は「バカバカしい!」と言った。
しかし、その日の夕方、主人公の家にはそのチョコレートがあった。
「良く味わって食べろ」と母親に言われ、一口、口にした時、少年は「頬っぺたが落ちるとは、こういうことか」と思った。
仕事から返ってきた父親は、おいしさに驚きつつ、値段を聞くと不機嫌になり、子供がこんなものを食べると鼻血が出ると怒った。

クラスの1人の山口少年の家は金持ちで、彼は「毎日食べてるよ」「鼻血なんか出ないよ」と自慢し、クラス中の顰蹙を買った。
子供たちは15日からはチョコレートが安くなると期待したが、ジュビルチョコレートは15日には、ひなあられの店に変わっていた。
その時だった。
少年と同じ小学3年生の隣の学校の男の子が1人、行方不明になった。

男の子は見つからず、通学路にはしばらくその男の子の写真が貼られていた。
季節が移り変わり、写真が色褪せて変色した頃、またジュビルチョコレートがやってくる季節になった。
カウンターの上には、あのムーア人の少年の彫像があった。

だが、少年は何かが違うと思った。
彫像の顔が、いなくなった男の子の顔に似ている。
デパートのお客が、去年いなくなった男の子の噂をしていた。
おじいちゃんがかわいがって甘やかし、毎日こんな高いチョコレートを買ってやっていたのだと言う。

その時、少年のクラスの山口くんがまたチョコレートを買いに来ていた。
店員の女性は「また買いに来てくれたのね」と言った。
山口くんは、毎日チョコレートを食べていた。

そしてバレンタインディになった。
担任の先生は、山口くんが昨日から家に帰っていないことを告げた。
前年のこともあり、警察も徹底して捜索したが、山口くんは見つからなかった。

少年はジュビルチョコレートを食べて、行方不明になった少年のことを考えた。
山口くんの食べ方は、まるで自分がチョコレートになってしまうかのように食べていた。
ジュビルチョコレートがこの世のものとは思えないほどおいしいのは、きっと普通じゃない作り方をしているからだ。
「来年、あの像は山口くんの顔になっている」。

来年になればわかるはずだ。
しかし、翌年、ジュビルチョコレートはやってこなかった。
母親は、採算が取れなかったのだろうと言っていた。

そして、少年は小学6年生になり、初めて女の子からチョコレートを貰った。
なのに女の子は翌日から少年を無視し、嫌われているならなぜチョコレートを貰えたんだろうと少年は考えた。
こうして少年は成長するにつれ、ジュビルチョコレートのことは忘れて行った。

数十年の月日が経ち、社会人になった男性は、ある地方への出張先で、ジュビルチョコレートの店を見つけた。
店に入ると、あの時と同じ制服の、似た女性の店員が「いらっしゃいませ」と言う。
少年の彫像もあった。
その顔は…、だがもう記憶はあやふやだった。

男性はチョコレートの詰め合わせを2箱、買った。
もう閉店間際の時間だった。
店には、黄色いパーカーを着た少年が1人、いた。

男性が帰る時、少年はまだ、ウインドウの前で迷っていた。
目を輝かせて。
あの頃の自分のようだった。
何十年ぶりかに食べたジュビルチョコレートは、ありきたりの味に思えた。

出張から帰った男性の娘も、父親の出張みやげのジュビルチョコレートを口にして、まあまあってとこかなと言った。
妻が車で送ってくれと言って、男性がテレビを消そうとした時だった。
男性が出張に行っていた地方都市で、1人の少年が行方不明になっているニュースが流れてきた。
その少年は、黄色いパーカーを着ていたという。

いなくなったのは、4日前だった。
男性がその都市でジュビルチョコレートを買ったのは、4日前。
店にいた、あの黄色いパーカーの少年…。
顔はわからない、あのパーカーかもわからない…。

男性が考えた時、妻と娘が急かしたので、男性はテレビを切った。
後は日常の、妻と娘との何気ない会話が始まる。
娘には想像もつかないだろう、と男性は思う。

チョコレートというものが、まだどこか高級品だった時代があったこと。
そして、この世のものとは思えないほど、おいしいチョコレートがあったことなど。
ジュビルチョコレートの彫像が、記憶の底に沈む。


宮脇さんお得意の、「あれは一体なんだったんでしょう?」という、奇妙な余韻を残す作品。
少年、または少女の頃の不安定な、曖昧な世界を描く。
そこに残る、同じく不安定な曖昧な記憶。

ここにバレンタインに起きた、少年行方不明事件が重なる。
単なる偶然だろう。
しかし、それがそれが現在の行方不明事件に繋がるような、繋がらないような…。

ちょっと怖いような、郷愁を誘う作品。
バレンタインとチョコレートをテーマにすれば、恋愛ものというのが普通。
これはそんな中でとても異彩を放つ作品で、バレンタインの度にふと、思い出します。


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2012.02.16 / Top↑
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