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一筆啓上過去が見えた

2008.11.05 (Wed)

今回はいつも陽気で捨三と、毎回いいコンビの印玄の過去話です。

女郎屋に、「この客、商売に差し支えあり、断るべし」と人相書きが回ってしまい、どこの女郎にも逃げられてしまう印玄。
梅屋伝兵衛(遠藤太津朗)の営む「梅乃屋」という女郎屋では、病を隠していたことがバレて、ひどい折檻を受けていた女郎が死んでしまった。
「せめてお通夜を」と言う女郎たちに伝兵衛は、「お通夜なんてのは、人並みの人間のすることだ」と取り合わない。
遠藤太津朗さんが、守銭奴を憎々しげに演じてます。

死んだ女郎は鶏か何かをくくりつけて運ぶのと同じ扱いですよ、ひどいもんです。
見送りながら、「人間じゃないよ」「どんなことがあっても、ここじゃ死ねないよ」と泣く仲間の女郎たち。
運ばれていく女郎に、印玄がお経を読んでやる。
伝兵衛は嫌な顔するが、印玄は「せめてお経ぐらいあげてやるよ」と言う。
その様子を見ていた店の女郎の一人、およねの顔色が変わった。
印玄を店に引き込んだおよねは、「あんた、上州の仲宿の出じゃないか?」と生まれを聞くのだった。

おこうが梅乃屋に髪を結いに行った時、およねから頼まれた依頼を主水に持ってくる。
5年前、目の前で父親と父親と一緒にいた女性を殺した印玄という坊主を殺してほしいと言うのだ。
仰天する主水。
主水は捨三に印玄を見張るように命じ、市松にはおよねの方を調べるように言う。

その夜、市松は逃げた女を捜す男たちに出くわす。
男たちが去った後、隠れていた女が「新地の、梅乃屋のおふくという女に伝えてくれ」と、市松に伝言を頼む。
どうも伝兵衛と清吉という男は、女たちの年季が明けると別の場所に売り飛ばして儲けているらしいんですね。
市松は梅乃屋に伝言を伝えに行った。

おふくは、おこうが梅乃屋に行った時に髪を結った女で、おこうに話した通り、あと半年で年季が明ける。
だが、おふくはひどい生活の為に既に胸を病んでいた。
仲間の女郎たちは、市松におふくの病を黙っていてくれるよう懇願する。
中でもおよねは、自分が一生懸命務めるから代わりをさせてくれと市松に申し出る。
市松はおよねにお金を握らせ、今夜はおふくを買い取ったから一晩ゆっくり寝かせてやれと言って出て行く。
仕置屋の仲間にはきつくても、言葉は少なく無表情でも、市松も優しい男なんですね。

だけど市松が帰ってしまったので、おふくはまた店に出させられるんです。
市松もいてやればいいんですが、用のないところには長居しないのが市松のような男ですから、しょうがないんでしょう。

印玄は捨三に尾行されているのに気づき、主水たちを問い詰める。
主水は印玄が仕置にかけられた事を話し、真相を問いただすと、印玄は「この話は俺のガキの自分からの話がひっかかってくる」と語り始めた…。

印玄の母親は5歳の印玄と、身体の不自由で働けない父親を捨て、旅の行商人と一緒に逃げてしまった。
絶望した父親は印玄を抱いて、崖から身を投げたが印玄は生き残った。
それでも自分を捨てた母親に会いたくて旅に出た印玄は、14年目にやっと母親に会えたんです。
印玄という名前も拾った名前で、坊主の格好をしたのは行き倒れた坊主の衣を着てからなんですね。
つまり、この格好なら何とか食べることができたと。

5歳の時から1人で14年も過酷な旅に耐えた…、怪力だったこともかなりの要因かもしれませんが、変な道にも入らず母親のいるところまで行けたということは、印玄がいかに母親に会いたくて頑張ったかということだと思います。
しかし、印玄はこの後、もっとひどい現実を突きつけられるんですね。

上州の仲宿にいた母親は艶っぽく紅をつけて、三味線を弾いていた。
母親に会えて喜びでいっぱいの印玄だったが、母親は父親が崖から身投げしたことも印玄が生き残ったことも知っていた。
知っていて放置していたことに絶句する印玄。
さらに向かってあろうことか、母親は印玄ににじりより、女を教えてやろうかと迫った。
そう、もうこの母親は印玄を息子だなんて気持ち、微塵もないんですね。

印玄に拒否されると(当たり前だ)、母親はやってきた男といちゃいちゃ印玄の前で甘えだすんです。
男と楽しそうにふざけあう母親の声を、背中で聞いている印玄。
…冗談じゃないですよ、たまりませんね。
悪夢ですよ、こんなの。
感情が抑えきれなかった印玄は一度出て行った部屋に取って返し、母親と男をつかむとそのまま窓から外へ放り投げてしまった。
その時、殺した男の娘がおよねだった。

主水も市松も捨三も、言葉がなかった。
市松の生い立ちも過酷だし、捨三もスリをやっていたぐらいだから恵まれた子供時代というわけじゃなかったにしても印玄の過去は悲惨。

印玄は梅乃屋のおよねに、全てを話しに行った。
印玄の母親に夢中になり自分を省みなかった父親を恨んだが、それでも自分にはたった一人の父親だったのだ…、と号泣するおよね。

およねだって父親の死後、女郎に売られているぐらいだからロクな父親じゃなかったはずです。
印玄もおよねも、親のことでうんと傷ついた同士だったんです。
その時、おふくが病を知られ、折檻されていると仲間の女郎が知らせに来る。

おふくの分まで自分たちが稼ぐ、だけどおふくを別の場所に売り飛ばすなら自分たちは働かないと言っておよねたちは頑張った。
すると、伝兵衛は笑っておふくを残すことを承知した。
納得したおよねたちは店に出るが、伝兵衛は清吉にこっそりおふくを連れ出すように言う。
必死で客を呼び込むおよねたち、だがおふくが清吉に連れ出されたことを知ると、およねは追いかけてくる。
清吉と争ったおよねは、刺されてしまう。

運び込まれたおよねを、医者に見せてくれと頼む女郎たちに伝兵衛は、
「医者に見せたからってすぐ治るわけじゃないだろう!」と拒否する。
本当に、解説にあったとおり、「女郎残酷物語」ですよ、これは。
仲間を心配したおよねは、みんなに店に出るように言い、1人残って最後の力を振り絞って、おこうに印玄の仕置の依頼の取り下げと、その代わりに自分たちを食い物にしている伝兵衛と清吉の仕置を頼む手紙を書いた。

おこうが梅乃屋へ行くと、女郎たちがおよねが死んだと泣いていた。
おこうの目の前でおよねの着物を剥ぎ取り、むしろに包んで運び出させる伝兵衛と清吉。
ほんとに、こんなことしてて、良くぐっすり眠れるもんです。
それを見た印玄は「およね!」と言って伝兵衛の前に飛び出し、「その女郎、俺が買った!」と持っていた金を全部放り出した。

印玄は、およねの遺体を有り金はたいて引き取り、丁寧に、丁寧に葬ってやるんです。
生きている間はつらいことばっかりだったであろう、およねを目いっぱい、一生懸命。
生きてる間も死んだ後でもあんな扱いを受けて、投げ込み寺に放られたらどうやったって成仏できないだろうと思いますが…、きっと、およねは成仏できたと思いますよ。
だって本当に印玄は心を込めて、葬りましたから。 


仕置屋全員がホッとして、そして花火大会の夜に伝兵衛と清吉の仕置が始まる。
花火を見る大勢の人ごみの中、清吉に市松が近づく。
光と影が交差し、花火の色が点滅して清吉と市松を照らす。
大きな花火が上がり、人々が歓声を上げた瞬間、鮮やかに清吉の首筋に竹串を埋め、去っていく市松。
このスタイリッシュさ、まさに暗殺者という感じです。
主水と捨三のサポートで、伝兵衛を仕置するのはもちろん、印玄です。

この回を境に印玄は、市松にも友情を感じ始めるんですね。
その印玄の友情は最後に市松を救い、主水に勇気ある決断をさせることになります。 
00:39  |  仕置屋稼業  |  Trackback(0)  |  Comment(4)

Comment

この話も良く覚えてます。

この話も印象深いですね。
印玄の生い立ち、女郎達の扱い、そして華やかな花火の下での仕置き。

おこうは主水以外のメンバーを知らなかったんですよね。つなぎはいつも主水にばかり。その設定がもっとも生かされたエピソードでもありましたね。

捨三・・・名前が捨三ですもんね。
捨てる事を前提にしたとか思えない名前・・・もしくは捨てられていて、拾った人がそう名付けたのか?どちらにしても彼に対して愛情はかけらも感じられない名前ですよね。
仕置人や仕留人にはどこかメンバーに甘さが感じられる部分もあった様な気がしましたが、仕置屋家業は・・・実に壮絶なメンバーでしたねぇ。
オギャン |  2008.11.05(水) 13:21 | URL |  【編集】

オギャンさん

捨三、そうなんです、人に「捨」なんて何でつけたんだろうと思いました。
仕置屋たちは容赦なく始末しようとしたり、捨三を殴ったりと、ハードでシビアな面がありました。
殺しを生業とする怖さがありました。
主水もかなりハードボイルドですよね。
この回は華やかな岡場所とその裏を見せた、かなりハードなお話でした。
ちゃーすけ |  2008.11.05(水) 18:53 | URL |  【編集】

遠藤太津朗

待ってました…UP感謝です。

印玄の「俺が買った!」の後、梅乃屋の「いいお客さん、ありがたい」。

…そりゃないだろう。憎さ倍増。

ラストの印玄の仕置。よけいに強く突き落としておりました。「とめて助けて…」

多くの俳優さんが屋根の上から「とめて…」と突き落とされましたが…遠藤太津朗氏が一番と思っております。

余談ですが、遠藤氏の守銭奴ぶりは、後年の『新仕事人』でも発揮されております。しかも悪役ではなく、被害者役で…。
(敵役は内田勝正氏。この方も市松に仕置されております)





おばらあつひろ |  2008.11.05(水) 22:00 | URL |  【編集】

おばらあつひろさん

いえいえ、楽しんでいただけてよかった。
この回、名作ですよねえ。
印玄はつらい過去に反して優しくて。
実は市松もかなり優しくて。

そうそう、印玄が有り金はたいておよねを引き取って縄を解いてる間、お金拾い集めてる伝兵衛。
ひどいもんです。

遠藤太津朗氏、守銭奴の被害者役もやってたんですか!
内田勝正氏の回は、市松とのやり取りが殺しを職業にしている者同士の緊迫感にあふれていて良かったです。
ちゃーすけ |  2008.11.06(木) 01:02 | URL |  【編集】

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