こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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これは町人の意地 「助け人走る」第4話

第4話、「島抜大海原」。


これは哀しい話なんですよ。
とってもショッキングでもありました。
だから2度は見たくない…と感じるかと思ったんですが、名作なんですよ。


突然、ある夜に近江屋に捕り方がやってきて、夫婦とまだ幼い子供が寝ている座敷に踏み込んだ。
捕り方は妻のおりょうに向かって、「甲府勤番・佐山源三郎の娘、おりょう!」と言った。
おりょうは「違います!」と言ったが、「仮にも武士の娘たるもの、こともあろうに町人風情と情を通じ」と捕り方は軽蔑しきった様子で話す。

「何を申されます。わたくしたちはれっきとした夫婦でございます」。
「黙れ!役所に置いて調べる!引っ立て!」
子供が泣き叫ぶ中、おりょうは縄を打たれ、連れて行かれる。
いかなる理由があろうとも、武家と町人の通婚が禁じられている、武家諸法度を犯した罪だった。

近江屋には柵が立てられ、立ち入り禁止になった。
その柵の中、外で遊ぶ子供たちを見ている子供がいた。
「あの子かい?」と文十郎が清兵衛に尋ねる。
「かわいそうに、ててごの信吉さんは江戸お構い、近江屋はあの通り店を閉めさせられて」。

おりょうは八丈島の隣、御蔵島に遠島になった。
まさか、おりょうを助けに御蔵島に行くのだろうか。
文十郎は心配したが、平内はあっさり行くと言う。
「俺は行かなきゃいけねえことが、他にある。どうしてもな」。

さっそく家に戻る平内に、文十郎は船が無事に着くかもわからない流刑島には行きたくないと言った。
それはあの子はかわいそうだし、おりょうさんは気の毒だ。
だが…、と話す文十郎に平内は「あった!ここが俺たちの行く御蔵島だ」と地図を見せる。
「俺たち、じゃねえよ!」

7つの島のうち、御蔵島は船着場さえない。
岩場に囲まれて、船の着岸も容易ではないという。
だが、ここにも何十人と言う流人がいて、村人とともに暮らしているのだ。
なぜ、平内がそんなことを知っている、いや、なぜそんなものを持っているのだと文十郎は聞いた。

すると、平内は自分の本当の父親は流人だと言った。
それも人を殺した。
飢えた自分の母親と、平内を見かねて盗みに入って人を殺めてしまい、罪一等を減じられ、御蔵島に遠島となったのだ。

辻の家に養子に入ってから、平内は父親の行方を捜した。
だが、遠島になったものの行方は、奉行所でもよくわからないのだと言う。
その為、平内は一度、御蔵島には行きたかったのだ。
文十郎は平内のこともあり、行く気にはなったが、行く方法がわからない。

清兵衛は流人になってもらうと言う。
罪を犯せというのかと驚く文十郎に、清兵衛は流人には体の悪い者、年を取りすぎている者の代わりになって行くことがあると言う。
人別帳は作ってある。

平内は坊主の息子、文十郎は信濃の浪人の甥っ子として御蔵島に行く。
今回の仕事は、1人10両だ。
御蔵島まで行くのだからと、奮発してもらったのだ。

流人船が出る日、しのが近所の者が流人船に、文十郎が乗っていたと教えられ、パニックを起こしていた。
見に行こうとするしのを、流人と言ったら2度と帰って来られない重罪人だ、そんなはずがないと止める。
文十郎は助け仕事で四国の金毘羅様まで行っていると利吉は言うが、しのはそんなところまで行くはずがないと信じない。

利吉は平内は信心深いし、文十郎さんは武者修行で…と何とかごまかそうとする。
しかし、しのは「本当のことを言って!兄さんは清兵衛さんのところで何をしているの!清兵衛さんのところで何を!」と叫んだ。
そして、しのは戸口で泣き崩れた。

流人船の中、性質の悪そうな囚人が大人しい囚人をからかっている。
ムカムカした文十郎が立ち上がりかけるのを、平内が止める。
船は傾き、水が上から入ってくる。
海は荒れ、囚人たちは転がる。

おりょうの実家は、あまりに困窮していた。
こっそり、近江屋の次男坊に嫁に行ったが、武家社会ではそれはご法度だった。
おりょうは流罪。
信吉は江戸追放。

だからこそ近江屋は、お上が2人を罪だと言うなら、どうしても添い遂げさせてやりたいと言った。
これは町人の意地だ。
それを知った清兵衛は、自分が若かったら行ってやりたかったと利吉に言う。

しけの為、船着場のない御蔵島に船は寄せられないと役人たちは言う。
島に連絡は行っているので、海に飛び込めと役人は言った。
拒否した者は斬り殺された。
しかたなく、囚人たちは次々、しけの海に飛び込んだ。

やがて、文十郎は一軒の家で目が覚めた。
そこは治平とおとせという親子の家だった。
治平は文十郎が、病気の叔父の為に身代わりでやってきたことをちゃんと知っていた。
すると、巳之吉という島の若者がやってきて、文十郎を引っ立てて行った。

銃を構えた巳之吉は島の人間だって食べていくのが大変なのに、流人なんて送ってこられてと怒っている。
流人の集落に文十郎は送って行かれた。
迎えた流人は、送ってきた巳之吉に頭を下げろと文十郎にうながす。

江戸から来たと聞いて、文十郎の周りには囚人たちが群がり、自分の出身地と家族の名を言って、知っていることはないか問い詰めた。
だが、そこの長らしき初老の男は文十郎をみなから引き剥がし、流人の規則を話した。
まず、ねぐらは今夜は自分のところに寝るとして、食べるものは自分で採って来る。
誰も頼れず、自分ひとりで精一杯の生活だ。

文十郎は他の流人はどうしたか、気にしたが、夕べは島の人間総出で囚人を引き上げたが、土左衛門も多かった。
平内は別の割り当て場所に行ったんだろうと聞いた文十郎は行こうとするが、ここでは他の集落と行き来することは禁じられている。
一揆や暴動を怖れ、3人以上の者が集まることも禁じられている。
もし見つかったら、死罪か八丈島送りだ。

八丈島に送られたら、御赦免はない。
だから身を潜め、御赦免の知らせを待つ。
待って待って、待ち続ける。
文十郎は他の囚人に、平内の父の名を聞いてみる。

しかし、行方はわからない。
八丈に送られたのかもしれない。
とにかくここでは2年に一度ぐらい、騒動が起きる。

御赦免の知らせを持って来る船があるのだが、船がまったく途絶える時がある。
この島から逃げられないと知っていても、そんな年が続くと囚人は狂ったように島抜けを計るのだ。
それも赦免花の咲く時は、なおさらだ。
蘇鉄の花で、この花が咲くと御赦免の知らせが来るというのが島の言い伝えなのだが、この花が咲く時、本当に船がやってくるのだ。

許されて帰る者。
絶望する者。
この世の極楽と地獄を、一度に目の前で見るようだと男は言う。

山から水を汲んで運んでくるおとせに、文十郎は女の流人はいないかと聞く。
おとせは、そんなことは自分たちの仲間に聞いてみたらいいと答える。
文十郎はさらに流人の中におりょうという女性は居ないか、それは自分の知り合いなのだと聞く。

おとせは答えない。
すると文十郎は、平次郎という流人は知らないかと平内の父のことを聞いてみた。
おとせの顔色が変わった。

文十郎は、別の集落にいる平内を見つけることができた。
生きていたことと、再会を喜ぶ2人。
文十郎はその横を通りがかったおとせが、おりょうのこと、平次郎のことを知っているようだったと話す。

平内は名主にも聞いてみたが、知らないと答えられた。
だが、名主が知らないわけがない。
何か隠しているらしい。

そこに夫婦が通りかかった。
平内はあの男も流人なのだ、と教える。
流人にも小屋流人と、島の人間に信頼を得て島の女と夫婦になる家持り流人がいるのだという。

もちろん、島の人間から信頼されるのは並大抵のことではないが、島の男は大概、出稼ぎに外に行ってしまう。
しかし、女は決して島から出ることはできない。
男の数が足りなくなるので、こういうこともあるらしい。
おとせのことを冷やかす平内に文十郎が、そんなのではないと言いかけた時、下の海岸が騒がしくなった。

見ると数人の囚人が、手に食べ物を持って走っていく。
何なのか、叫んで聞いてみると「女だ、女だ。女の流人だ」と言って走っていく。
男たちが走っていく先には粗末な小屋が立っており、「何だ、来てたのか」「おめえこそ毎日よく、体が持つな」と言い合っていた。

先を争う男たちはやってきた文十郎に、「手ぶらじゃこの中には入れねえんだぞ!」という声が飛ぶ。
「何しろよ、おりょうさまは俺たちの弁天様だからよ!」
文十郎がむしろに隙間を空け、暗い小屋の中をのぞく。
「おりょう?!」

小屋の中に入る文十郎を止めようとする男たちを、平内が突き飛ばす。
「この野郎、ものには順序ってものがある!」
文十郎と平内が入った小屋の、ムシロを敷いた上におりょうは布団をかけて横たわっていた。

「おりょうさん?」と2人が呼びかけると、おりょうは起き上がった。
2人を見たおりょうは突然、悲鳴とも笑い声ともつかぬ声をあげて立ち上がる。
着物の前がはだけて、肌が見えている。
「何だ、てめえら、人が楽しんでるとこ、飛び込みやがって!」と男が怒る。

文十郎と平内はその男をぶっ飛ばし、外に並んでいる男たちと乱闘になる。
すると、文十郎に説明をした男がやってきて、「やめろ!」と文十郎を殴った。
「だからここには来るなと言っただろう!」

文十郎が男をにらむ。
「おりょうさんはな、島へ来た時から狂ってたんだ。たぶん亭主の名前だろう、信吉さんとしか言わねえ人になってたんだ!」
平内が「そのおりょうさんを、てめえたちは寄ってたかって慰み者にしてたな?!」とにらむ。

「慰み者?そりゃあ違うぜ!いいか新入り、良く考えてみろ!俺たち男だって、つれえ山仕事や畑仕事をやって、やっと命を繋いでるんだ!」
男が文十郎を見る。
「狂ったおりょうさんに、一体何ができるってんだよ!だからこうしてみんなが、食い物を運んでくる」。

「着るものだって、焚くものだって、みんな運んでくるんだ。だからこうして、おりょうさんは生きて来られたんじゃねえか」。
平内が沈黙する。
「それとも…、餓死させりゃよかったってのかよ!殺しちまえば良かったってのかい!」

2人が黙る。
「それに俺のような年寄りはもう女っ気なんてひえあがっちまって、そんなもんはどうでもいいが、他の者はそうはいかねえ。だからって島の女と、ちょっくらちょっとできあえるもんじゃねえ。うっかりそんなことやってみろ、命がいくらあったって足りねえぐれえの袋叩きだ」。

「そんな流人と、同じ流人のおりょうさんと、ねんごろになったってあたりめえじゃねえか!おりょうさんだけじゃねえ。今までの女流人はみんなそうだった。それが流人ってもんなんだよ!」。
おりょうが晴れやかな笑い声をたて、童女のような笑顔で外に出てくる。
考え込んでいた文十郎と平内に、治平が平次郎のことを聞いたのは平内かと話しかけてきた。

何でもないと去ろうとする治平に、平内が詰め寄った。
おとせが「やめて」と駆けて来る。
「平次郎と言う人は、昔、島抜けをしようとして殺されたんです!」

「殺された?誰にだ?!」
「島の人たちにです!島の人たちは、この人たちを殺してでも、島抜けを防がなければならないんです」
おとせが言うには、おとせの父の治平は、母のことを本当に好きだった。
だから一緒に逃げようとした平次郎を訴えたのだ。

では、治平も流人だったのか。
仲間を裏切ったのか。
平内は治平を殴りつける。
おとせが止めても、殴り続ける。

文十郎が止めに入った。
「この人を殴ったからって、どうなるもんでもねえ!死んだ人はな、帰ってこねえんだ。傷つけあうのは止めるんだ」。
その時、「御赦免船が来たぞー!」という声が響く。

文十郎に説明した男が、山寺に御赦免花が咲いているのを見つけたと、男ははしゃいでいた。
「やっぱり来た、やっぱり御赦免船は来ただろう!俺はな、15年、15年も待ち続けたんだ!」
寺に囚人たちが集まり、名主が御赦免になる者の名前を読み上げる。

「俺だ!」と喜ぶ者。
名前を呼ばれたが、返事がない者。
「ああ、岡谷平四郎はひと月前に…」と名主が言う。
「後で墓にでも知らせてやるんだな」。

最後に名主が名前を呼ぶのに、一瞬止まった。
その後、清一郎という名が、呼ばれた。
文十郎と平内がすれ違った、夫婦者の男が、おののいた声を上げ、逃げるように立ち去った。

「あんた!」と妻が叫ぶ。
15年待ったと言った男が、「それだけですか」とすがるように言う。
他にも名主が去った後、「そんな、俺はもう5年も」と地面に突っ伏して泣く者もいた。

今夜は御赦免になった囚人を乗せる為、船は一晩中、沖に止まっている。
「今夜、やろう」と文十郎と平内は相談した。
その時、「勘助!」という悲痛な叫び声がする。
見ると、首を吊って死んでしまった男がいる。

悲嘆に暮れる囚人たちは「島抜けだ」と言い始めた。
「15年待った、もう我慢がならない。抜けたい者は一緒に来い!名主のところに鉄砲がある」。
名主から鉄砲を奪い、島抜けをする相談と手はずを決める会合がまとまり始める。

何かあるのを察したおとせが文十郎を呼び止め、やめるようと懇願する。
島抜けを無事にできた者はいない。
それに島抜けの流人が出れば、島には今よりさらに重い年貢が課せられる。
だから島の人間も、囚人たちを殺しても島抜けさせまいと必死なのだ。

その頃、あの夫婦の夫が、船を持ち出しそうとしているところを捕まった。
妻が必死に止めるが、お前はやはり流人だと袋叩きにされる。
巳之吉が銃を構え、「逃げてみろ!」と笑う。
夫は必死に逃げるが、巳之吉は銃を構え、撃とうとした。

だが銃声が響き、倒れたのは巳之吉だった。
丘の上に文十郎たちと一緒に送られてきた囚人たちがいて、「お先に鉄砲はいただいたぜ」と言った。
島抜けを提案した男は、自分たちと一緒の者でないと気心が知れず、長旅の間、何をするかわからないと嘲笑われ、突き飛ばされた。
「だが女は別だ!」

囚人は、おりょうを抱き寄せた。
すがっていた男を撃ち殺し、文十郎様と駆け寄ろうとしたおとせを捕まえる。
名主は身代金を出すから、おとせを解放してくれと頼んだ。
囚人たちは本当に身代金を払うつもりなら、沖の御用船まで持って来いと言って船に渡った。

平内が針を研ぐ。
名主は小判を用意し、小船で御用船まで渡った。
文十郎と平内は、体に油を塗りたくっていた。

名主が御用船にたどり着き、梯子を上がっていく。
夜の海を、文十郎と平内が着物を頭の上に結わえ付け、泳いで行く。
金を出せと言った囚人に、名主は女は甲板に出せと行った。
もみ合った囚人は、名主から小判を奪い、その色を見て目の色を変える。

その時、船室に向かって、上から縄を持った手が下りてくる。
手は小判を持って狂喜している男に向かって、縄を投げた。
縄は男の首にかかる。
男は階上へ引きずられていく。

「兄貴!」
武器を手にした囚人たちが階段へ向かうと、階段の上の扉が閉められた。
「開けろお!」
天井に向かって、囚人たちは発砲する。

上ではそこから少し離れたところにいた文十郎が発砲を知り、床を探る。
弾が貫通した跡から狙いをつけて、銛を打ち込む。
天井から銛に刺されて、1人が悲鳴をあげる。

パニックを起こした1人がまた、天井に向かって撃つ。
するとその男の背中に、天井から銛が刺さる。
残った2人のいる船室に、文十郎と平内が降りてくる。

抵抗する1人を文十郎が刺す。
平内がキセルの筒を抜き、針を出す。
押さえつけた囚人の額を刺す。

おとせが「文十郎様!」と駆け寄ってくる。
名主がおとせの無事を確認すると、巳之吉たち、島の男たちがやってくる。
「島の掟を破って島抜けしようとした者を成敗したんだ。このことについて、お上からお咎めはあるまい」。
御赦免になった者以外を連れて、名主は島へ帰ろうとした。

おりょうを連れ、文十郎と平内も外へ行く。
御赦免になった男たちが、歓喜の声をあげている。
梯子を降ろし、おとせが降り、名主が降りた。
名主が下りると、平内が梯子を引き上げた。

「何をするんだ!」
「文十郎様!」
平内が「すまねえ、名主さん。俺たちはこの船の中で、死んだことにしてくれねえか」と言った。

「何!」
「俺たちは、この、おりょうさんを救い出すために来たんだ。だからおりょうさんは預かっていく。勘弁してくれ」。
おりょうは文十郎の隣に、ぼんやりと立っていた。

「それからおとせさん。親父さんに言ってくれねえか。俺はあんたの親父さんを恨んじゃいねえ、ってな」。
おとせが視線を落とす。
「平次郎が殺されたのは、しかたがなかったんだ。その代わり、治平さんが島へ残り、あんたみたいなかわいい人が生まれたんだ。…それでよかったのかもしれねえ」。
平内は引っ込むと「おうい、八丈島の衆!早いとこ、船を出してくれ」と声をかけた。

声をかけられた船頭は、名主に向かって「いいんだな?」と聞く。
名主は黙って船から離れていく。
「文十郎様!」とおとせが叫ぶ。
離れていく小船から、おとせは文十郎の名を呼び続けた。

川崎の宿場で、信吉が息子を背負って走る。
「おりょう!」
指定された場所では、おりょうがぼんやりと座っていた。

「おりょう!」と肩を抱かれても、おりょうはぼんやりと袖を折り、それを見ていた。
「おかあちゃーん」と、子供が呼ぶ。
反応のないおりょうに、信吉が「おりょう?おりょう!」と呼ぶ。
おりょうの傍らに信吉宛ての手紙が置いてあった。

「おりょう様のこと、さぞ驚きのことと存知あげそうらえども」と平内の声がした。
「長崎在の高名なる蘭方医にお診せすれば、快癒すると聞き及び」。
今度は文十郎の声がする。

おりょうの袖の先を折っていた手が、下がる。
膝の上に置いた手を、子供の手が握る。
「いかばかりか、その治療の足しにと存じ上げ、おりょう様に、金20両お預け申し上げ候」。

子供がおりょうの手を取り、明るく日が差す外に連れ出す。
おりょうの目が子供を凝視し、子供がおりょうの手を取って歩き出す。
一緒に、おりょうも歩き出す。

文十郎と平内が2人、山道を歩いていく。
「文さん、今度の仕事も金にならんかったな」。
「しかたあるまい。だいたい、元が安すぎるんだい!」
2人は顔を見合わせて笑った。



これは、誰もがかわいそうな哀しい話です。
凶悪な囚人は別にして。
貧しい島の人たちもかわいそうだし、特に島から出られない女性がかわいそう。
悪いことをしたとは言え、ひたすら赦免船を待ち続け、その日を生きている大人しそうな囚人もかわいそう。

細かいところを言えば、あの夫婦者もかわいそう。
夫婦になって島に馴染んだかと思ったら、やっぱり帰りたいんですね。
島抜けをして、捨てられそうになって、それでもかばう妻がかわいそう。

それから、何と言ってもおりょうさんがかわいそう。
仲を引き裂かれ、遠島にされ、狂ってしまって、島の囚人たちの慰み者になって餓死を免れている。
このおりょうさんの姿が、かなりショッキング。
おりょうさんをいかにも軽蔑しきっていた役人といい、狂う前に何もなかったら良いなと思いました…。

それで、あんまりおりょうさんの姿と境遇が悲惨だったので、二度は見られないかなと思ったんですが、これが名作なんですよ。
誰に対しても、気持ちがわかる。
何度も言いますが、最初の船の中から性質が悪かった囚人たちは別にして。

文十郎と平内は憤るが、ではここでおりょうさんが生き延びるには他に方法がなかったと言われると、これ以上怒れない。
みんな、苦しい。
必死なんだと。

そして、平内さんの生い立ちが語られる。
すると平内さんは、貧しさの余り、父親が罪を犯して罪人になった。
その後、どういうツテだったかわからないが、武家に養子に入って婿に行ったが、その家を出て武士を捨てたということになりますね。
弱者に対して、なぜ平内さんが情け深いか、判った気がします。

許せなかった平内さんが、島の現実を、御赦免を前にした地獄を目にして治平を理解する。
自然に赦す気持ちが出て、最後に船の上からおとせに言葉をかける。
良かった、おとせみたいな娘がいて、治平さんは良かったと。
おとせにしても、治平にしても、人生の一つの区切りができた。

そして、最初から思いを寄せられた文十郎。
お吉が見たら大変だ。
しかし、おとせを憎からず思っているようで、文十郎は最後まで彼女を抱きしめてやることはしない。
できないことは、期待させない。

最後に殺陣なる相手は、凶悪な囚人たち。
不穏な空気を漂わせていた囚人たち相手に、それまでの重苦しさを一掃する殺陣。
御赦免船が帰ってきて、文さんと平さんとおりょうさんは、清兵衛さんがちゃんと迎えたんでしょうね。
そのあたりは描かれていませんが、手筈はちゃんと整えていたんでしょう。

パニックを起こしたしのと、なだめる利吉も描かれませんが、あの後、だから人違いだって言ったじゃないですかで収まるんでしょうね。
金毘羅様のおみやげは、清兵衛さんがちゃんと用意してあるということで。
しかし、最初からしけの海に投げ出されるとか、危ない仕事だ。
帰ってこれなかったら、どうするんでしょ。

最後におりょうさんを届けて、添えた手紙の文面を平内さん、文十郎さんの声が代わる代わる読み上げるのは上手い演出。
言葉遣いに品の良さ、武家の矜持、教養と思いやりを感じます。
こういう文化も生きているから、時代劇はなくさないでほしいね…。

ひたひたと悲しみがしのび寄るように、始まる音楽。
おりょうの手を取る子供の手。
かすかにうごく、おりょうの表情、手。

子供がおりょうを連れて行く。
音楽が、癒しの声に変わっていく。
ああ、おりょうはきっと良くなる。

そんな希望を抱かせる音楽の力。
正しい音楽の使い方!
おりょうを演じた、川崎あかねさんの演技の素晴らしさ。

町人の意地を見せた、依頼人。
これだけの思いがあれば、おりょうはきっと良くなる。
幸せになる。

あんな危ない目に遭ったのに、おりょうの為に助け料を全て投げ出してしまった文さんと平さん。
カラッと笑って去っていく。
撤退して、最後まで助けようとする、本当の「助け人」だなあと思いました。

このラストがある為、悲惨な展開でも決して後味は悪くありません。
2話は武士の本懐から始まり、3話は盗人の心意気、と来て4話は町人の意地からの依頼という。
それぞれの階級にいる人たちが、精一杯に生きている。
彼らを徹底して助ける「助け人」、文十郎と平内の心意気もうれしい4話でした。



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Comment

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こんにちは。

「島抜大海原」。このお話もいいですね。

全編にあふれるやるせなさを、それだけで終わらせない「助け人」。

父が既に亡くなっていることを知った平内の愕然とした表情と、の殺陣の文十郎の銛を持つシーンが印象に残っています。

それにしても、流人の子である平内。
あの体裁を重んじる妻が、よくもそれを承知で結婚したものだと感じてしまうのは私だけでしょうか。
それとも隠し通すことが出来たのかな?

>それで、あんまりおりょうさんの姿と境遇が悲惨だったので、二度は見られないかなと思ったんですが、これが名作なんですよ。

そう言えばそうですね。
「凶鬼人間」とは異なり、それがテーマとなっているわけではないので問題にならなかったのでしょうか。
2012年02月25日(Sat) 18:31
愚夫愚父さん
編集
>愚夫愚父さん

>こんばんは。

>「島抜大海原」。このお話もいいですね。

もう、名作続きで、このクオリティの高い作品が続くのは「必殺」シリーズにあっても素晴らしいと思います。

>全編にあふれるやるせなさを、それだけで終わらせない「助け人」。

ちゃんと「助けて」いるんですよね。
救済している、希望を持たせている。

>父が既に亡くなっていることを知った平内の愕然とした表情と、の殺陣の文十郎の銛を持つシーンが印象に残っています。

平内さん、過酷な遠島で生きていることまでは期待していなかったでしょうが、まさか殺されたとは思わなかったんでしょうね。
おとせの父親に怒りをぶつけるしかなかった。
平内さんが一般の人を殴るって、珍しいですよね。

>それにしても、流人の子である平内。
>あの体裁を重んじる妻が、よくもそれを承知で結婚したものだと感じてしまうのは私だけでしょうか。
>それとも隠し通すことが出来たのかな?

いえ、私も思いました。
知ってたとしたら、だから引き止めなかったのかな?と。
もともとしかたのないこと、で収まったのか。
それで養子になったのに、武士を捨てたのなら、それはもう戻れないだろうなと思いました。

いや、あの、いかにも対面が第一の武家の奥方が、知っていて承知はしないかな。
でも、やっぱり隠し通したのではないかと。
実際、平内が奉行所に一度捕まった後は、ぷっつりと縁を切ったぐらいですから。

>そう言えばそうですね。
>「凶鬼人間」とは異なり、それがテーマとなっているわけではないので問題にならなかったのでしょうか。

おりょうさんの島での狂気の姿は、かなり衝撃でした。
「仕置屋」にも狂気を装う話はありますが、あんな境遇にはなってなかったですもんね。
「仕置人」では「女郎」と言う言葉さえカットされてましたし、「え?」と思うようなところにボカシが入ったりもする。
だから今だったら、狂った流人の女性をあんな風に扱うなんて、絶対作れない話だろうなと思いました。
でも名作なので、カットしてほしくないです。

「怪奇大作戦」は…、狂気を装って刑法に勝つという大問題作だから…、なぜダメなのかの説明もなく、ダメなんですね?
残念すぎます。
岸田さんの熱演だと思うのに。
2012年02月25日(Sat) 23:48












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