こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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助け人が助けられなくて  「助け人走る」第6話

第6話、「上意大悲恋」。


夜の闇の中、手に手を取り合って逃げる若い男女。
そこに気持ちよく酒の徳利を持った文十郎が通りかかり、2人にぶつかって「痛い痛い痛い」と言う。
2人には追っ手がかかり、追いつかれた若侍は刀を抜いた。
女性を連れて行こうとした侍を蹴散らし、必死に逃げようとする。

徳利を持って見ていた文十郎の側に来た女性は、「お願いでございます、何とかご助成を」と言う。
その女性を再び連れて行こうとした侍を、文十郎は「待て!」と突き飛ばした。
「何だか知らんがな、こんなに嫌がってるもんを」と言った文十郎に、侍たちは「黙れ!邪魔だ素浪人!」「尾羽打ち枯らしたおのれなどが出る幕ではないわ!」と怒る。

「それはそうだけど」と言った文十郎に向かって、刀を振り上げるので、文十郎は応戦した。
刀を振り上げた男を抑え、頭をしたたかに打つ。
徳利を持ったまま、くるくると回転し、刀を構える。

若侍は1人斬り、「梓殿!」と女性の手を取り、2人して文十郎の陰に隠れた。
文十郎は斬りかかる1人をかわし、「あわてるなよ、みねうちだよ」とつぶやく。
向かっていく文十郎に、後ずさりしていく2人の侍。

すれ違いざまに文十郎は1人に太刀を浴びせ、もう1人も叩きのめす。
向かってくる1人、そして最後の1人を打ち、塀の上に置いた徳利を取る。
そして振り向くと、「あっ」と指を指し、梓と呼ばれた女性の側に駆け寄った。
梓は自害しようとしていた。

文十郎は懐剣を叩き落とすと、男が「梓殿!」と駆け寄る。
「いきなり人の前で命のやり取りを始めやがって…、ばぁか!」と文十郎は怒る。
泣き崩れる梓をなだめる男を「立て」と引っ張り上げ、梓と一緒に来るように言う。

若侍は津島小一郎と名乗った。
文十郎はひどい言葉を言ったことを詫び、一杯勧めた。
小一郎が腕を少し斬られているのを見て、酒で消毒し、しのに綺麗な布を持ってくるように言いつける。
2人の間柄を聞くと、小一郎は頭を下げて礼を言ったが、わけは言えないと言った。

「たってお許しをいただきたい」。
「そうかい。気をつけてな」と送り出そうとした時、平内と為吉が入ってきた。
「やめたほうがいいよ。表には侍たちがうようよしている」。
文十郎の忘れ物を届けに来たという2人だが、表はだいぶ殺気だって大勢いるらしい。

為吉が清兵衛のところに急ぐ。
南無妙法蓮華経と染め抜いた着物を着ている文十郎のことは、近所で聞けばすぐにわかってしまう。
居場所はすぐに突き止められるだろう。
清兵衛は為吉にどこの家中か聞くが、わからないと言うと、「子供の使いじゃあるめえし」と怒る。

そして、だいたい、わけも聴かずに助け仕事を引き受ける文十郎と平内に文句を言う。
さらに最近、ちょっと仕事がつらいと文句を言い、首を横に振ると文十郎と平内にも怒りの言葉を吐く。
そう文句を言いながらも清兵衛は、火の用心の夜回りに扮して、侍たちが集まっている長屋の前にやってきた。
それから利吉が蕎麦屋に話をつけて屋台を借りて来て、為吉には乞食の格好をするように調達してきた。

文十郎としのは、小一郎と梓を見ながら、あれは駆け落ちだと言った。
しかも、女のほうが身分が高い。
髪形、飾り物、衣装、それに…、「懐刀」と平内が言う。
梓の持っている懐剣の袋、そこには丸に三つ葉葵があった。

将軍家ゆかりの紋所だ。
とんでもない揉め事を背負い込んだ。
「私たちが生き延びるには、これしかないのだ」と小一郎が外に出ようとした時、「ばかなことをするもんじゃありませんぜ」と夜回りの格好をした清兵衛が入ってきた。
表には30人はいる。

清兵衛が夜回りに扮したので、怪しいものではないと言って、身分を明かした。
それによると、侍たちは浜田藩、松平直康の家中の者だった。
ここまで来たらわけを話してくれと言う清兵衛だが、小一郎は沈黙する。
清兵衛はそれなら、何の関わりもない自分たちが迷惑をするのだから、まったく話ができないなら出て行ってくれと言う。

文十郎は抗議しかけるが、清兵衛は余計な侍出入りに関われば、困るのはこちらだと言った。
しのが悪人には見えない2人だし、力になると言うが、小一郎は頭を下げて共に死出の旅に出るしかないと言い張る。
イライラした平内は、わけを聞けば何とかしてやると言っているんだと言う。
その時、表で気配がして、文十郎も平内も清兵衛も立ち上がる。

するとそれは利吉で、表の侍たちが業を煮やして一軒一軒当たり始めたという知らせだった。
清兵衛は利吉にもう少し見張れと言った。
しのが梓を説得するが、平内は「どうしても死にてえというのなら、肩入れなんかすることはない」と怒り始める。

2人で逃げてきたのは、2人で生きたいからではないのか。
どうでも死にたいと言うなら、帰る。
「そんな」と言う文十郎に平内は続ける。

「文さん、やめろよ、やめときな。だいたい侍ってのはな、みんなこの人みたいに頭がかてえんだ。自分たちが気が済みゃあ、それで良いと思ってる。それに、命を粗末にするのも侍の特長だ。なぁに、死にてえって言うんだから、死なせてやりゃあいいじゃねえか」。
しのが「平内さん、そんな言い方ってある」と言う。
しかし平内は、しのはまだ若いからこういう2人を見ると奇麗事に見えるかもしれないが、この2人はできあっている。

1人は若侍、もう1人は殿様の持ち物だ。
「はっきり言えば不義密通ってやつよ」。
それで追われている。

姦夫姦婦は町奉行でさえ、死罪だ。
ましてや侍なら、切腹など赦されない。
耳をそがれ、鼻をそがれてのた打ち回る。

「おお、その通りだ!しかし私たち…、私たちは!」
たまらず小一郎が口をきく。
「親が許し合った仲だった!」

小一郎は語り始める。
それは2年前だった。
小一郎と梓は、婚儀を前にしていた。
あの時、梓と会う約束をしなければよかった。

城内の仕事で、小一郎は約束の時間に遅れた。
遅れなければ…よかった。
梓は小一郎を待っていた。
その時、松平直康の駕籠が通りかかり、梓は道の脇に避け、頭を下げた。

梓を駕籠から見た直康は駕籠を止めた。
直康は三毛猫を膝に抱き、梓のことを尋ねた。
藩内でも相思相愛と噂の、小一郎の婚約者、梓だと説明がされる。
うつむく梓をじっと直康が見て、茶を一服たてるよう申し渡す。

茶室に入った直康は、梓に小一郎とは相愛なのかと聞いた。
それは体も寄せ合わぬうちから、慈しみあっているのかと。
予には信じれんと言った。

梓は身分の低い私どもに、言葉をかけるのが畏れ多いのだから、これ以上は勘弁してほしいと訴えた。
「身分が低い。身分か。身分が違うからこそ、聞きたいのだ。言いたくないと申せば、余計に尋ねてみたいのう、おたま」と猫に話しかける。
手を合わせ、頭を下げている梓の前に猫が落ちる。
ビクッとした梓に直康は「猫が嫌いか」と聞く。

「いいえ」。
「嘘を申せ!その方も、奥と同じだのう。それほどまでにこの直康がおぞましいか!」
「お殿様」
「ならばなぜ、体を引く!なぜこの直康を恐れる!それほどまでにこの直康が!」

お許しをと叫ぶ梓だが、小一郎が来た時には梓は既にその場から側室の住む奥御殿に移されてしまっていた。
小一郎は梓の名を叫びながら、直康に一言申し上げたいと駆け込んだが、家臣たちに止められた。
家老の矢崎には殴られ、梓が上がったのは家からも申し出があったのであり、小一郎の妻にするなど勝手に小一郎が言っていることだと言った。

小一郎は、蟄居を申し付けられた。
古川という侍が、梓の家が小一郎に顔が向けられないと言っていると伝えに来た。
だが直康からは、梓の家の者、小一郎と小一郎の家の者、そして梓自身、誰一人としてこの関係者が自害することは赦さないと言うきつい命令が下っていた。
面当てがましく1人でも自害した者がおれば、一族郎党、全て断罪すると矢崎からの通達があった。

小一郎がこらえたのは、今は亡き母親が生きていたからだった。
そして、小一郎には御加増があった。
さらに奥の間、梓と直康の寝所がある屋敷の不寝番にしたのだ。
「おのれ」と小一郎は怒りに震えたが、葵の紋の戸をきつく叩くのが精一杯だった。

矢崎はお役御免を願い出てやろうと言ったが、小一郎は「何の不服もございません。主君の命に従うは武士の道」と言って承知した。
「呆けたか!」と矢崎が言うが、小一郎は「呆けました」と答える。
だが小一郎を見た矢崎は、「何か策することがあるのだな」と察した。
お役御免を願い出ろと言う矢崎に、小一郎は沈黙した。

矢崎は「おのれが万一、短慮に走るならば、例えそれが殿の無体な取り扱いにあったとしても逆臣として斬る。良いな!そのことしかと、おぬしに伝えたぞ」と言って下がった。
だがその時、小一郎は直康を殺害するつもりでいた。
梓が殿の寝所に上がる為、廊下を歩いてくる。

廊下の先には、控えた小一郎がいた。
梓の足が止まる。
2人は見詰め合った。
梓の目が哀しみに溢れ、踵を返そうとした。

だが「梓殿」という声がして、梓は止まらざるを得なかった。
その時、小一郎は梓を何としても殺してはならないと思った。
梓には何も罪科はない。

直康を討ち、梓と共に死ぬ。
それが何の意味があるだろう。
梓と生きよう。
小一郎は、そう決心した。

やがて小一郎は、江戸詰めになった。
直康に梓も同行した。
小一郎は、機会を待った。
そして今夜、能役者が舞台を勤めたその時を狙って、小一郎は梓と手を取って逃げたのだ。

話を聞き終わったしのは、文十郎に何とかしてやってくれと懇願する。
「わかってるよ!」と言うが、このあたりはすっかり囲まれている。
しかし、清兵衛は話を聞いておいて、助けられないとは言えないと言い始める。
道は塞がれているが、屋根は塞がれていない。

力任せに囲みを破るか、いずれにしても命がけの仕事になる。
まずは梓の目立つ着物を、しのに替えさせてくれと頼む。
平内は小一郎に、不義密通と言ったことを詫びた。

しのは自分の着物を梓に着せて、髪を結いなおした。
これから先を心配するしのに、梓は例えつかの間でも小一郎と一緒になれたので、もういいのだと言う。
そして母の形見のかんざしをしのに差し出す。

もうすぐこのようなものも、要らなくなる。
母親は愛しい方に嫁ぐ時、これを差せと言ったのだ。
だから今夜、このかんざしをしてきた。
「今日の日がわたくしにとって、あの方の元に嫁ぐ、女としてのうれしい日だったのでございます」。

「でももう、それも終わろうとしています」と梓は目を伏せた。
「いいえ、そんなこと!」。
しのは2人はきっと、追っ手から逃れることができる。
そうでなければ、あんまりだ。

だから、そんなことは言ってくれるなと言う。
せっかく、ここまで2人で来たのに、そんな気の弱いことでどうしますと言うしのに、梓は強くなりたいと言う。
その時、清兵衛が入ってくる。

まず、清兵衛が天井に登り、後から2人を引き上げる。
しのが文十郎を呼びに行くと、梓が自分たちに万一のことがあったらと言って金子を渡した。
小一郎と生き延びたい、でも…。
受け取り願いたいと小一郎も言った。

その時、梓が突然、うつむいた。
気分が悪くなって、土間にうつむく。
平内が「大丈夫、大丈夫、女にはよくあることだ。こりゃおめでた…」と言って、ハッとする。

「まことか!」
小一郎の顔色が変わる。
「小一郎様、どうか、お許しを」。
梓が泣き崩れる。

誰もが見ていられず、背を向けていた。
小一郎が外に走り出ようとする。
清兵衛と文十郎、平内が押さえつける。
その時、梓が外に出る。

「梓!」
表に出た小一郎を、弥崎の拳銃が狙う。
梓を追ってしのも外に出ようとするが、利吉が必死に止めた。
矢崎は梓の方は連れて行くから、屋敷に来いと言った。

平内は「やめろ!向こうには飛び道具があるんだ」と言ったが、小一郎は屋敷に向かって走っていく。
梓の名を呼びながら走る。
文十郎と平内が押さえつけようとしたが、小一郎は振り切って走っていく。
「罠だよ!」と言うが、開いた門の中に小一郎が走って行く。

梓は座敷の前の階段の上で、直康に押さえつけられていた。
「不義を犯したものがどのような目に遭うか、覚悟の上であるな」。
家臣たちが庭に控える中、小一郎が走ってくる。

「梓ーっ!」という声を聞くと、直康は高らかに笑った。
「良いか、小一郎。生かすも殺すも、この直康の心次第!だがわしは殺しはせぬ。生かしておくほうが楽しいのじゃ!」
小一郎の腕に抱かれた梓を再び、この手で好きにする。
そう言って直康は笑った。

「俺の妻を迎えに来た!」
「欲しくば、取り戻して見よ!」
そう言って直康は笑いながら、梓の懐に手を入れる。

梓がもがき、悲鳴をあげる。
直康は高らかに笑い、梓の足を露わにする。
もがく梓の髪を引っ張り、笑い続ける。
物陰から文十郎が飛び出そうとするのを、平内が「止めるんだ、文さん」と必死に抑える。

「おのれー!」
飛び込んだ小一郎は居並ぶ家臣たちに、一太刀ずつ浴びた。
小一郎が進む度、並んでいる家臣が斬っていく。
総勢、20名以上、全員が小一郎に太刀を浴びせる。

小一郎は進みながら、すれ違いざま、全員に斬られる。
ずたずたにされながらも小一郎は、梓の足元までたどり着いた。
血まみれの小一郎を「おのれ、不義者め」と言って、直康は短筒で一撃の元に殺した。

「小一郎さま!」
呆然とする梓の前に、笑う直康の刀があった。
直康の刀の白い柄を手にすると、梓は一気に胸につきたてた。
梓の目が見開かれ、倒れる。

「いけねえ、文さん」。
文十郎が憤りの余り、飛び出そうとしていたのを、平内は必死に連れ帰る。
軽蔑しきった顔をして、直康は屋敷内に入る。
後には無残な2人のなきがらが残った。

文十郎としのは、2人の墓を作り、花を上げ、線香を炊いた。
しのはどうして助けてあげられなかったのかと泣いた。
「あんなに強く結び合おうとすることが、男にも女にもあるのね。あんなに…」。

墓参りを終えた文十郎を、竹林で利吉と為吉が待っていた。
「あのね、棟梁が『どうするんだ』って言ってますよ」。
「助け人が助けられなかった。このまま引っ込んでるつもりか、って」。
利吉が梓から預かった金を見せる。

このままでは2人は浮かばれない。
2人の気の済むようにしてやるのも、助け人の仕事じゃねえのか、と。
しかし「平内は助ける為に人を殺しても、殺すために人を殺したりしない。あの2人を浮かばれるようにするのは、坊主の仕事だ」と言ったらしい。
利吉はそっぽを向きながら、「俺ぁ、そうは思わねんだ」と言う。

闇に紛れて、黒装束の文十郎が歩く。
直康の屋敷の前で、平内がタバコを吸って待っていた。
「来たな。やっぱりあの2人を成仏させるのは、坊主の仕事だよ。でも良く考えたら」と平内は自分の坊主頭に手をやり「俺も坊主だったんだな」と言う。
「行こうか」。

平内は天井裏に忍び込み、直康の寝所に向かって縄を降ろす。
それをつたわって直康の枕元に行くと、キセルの針を振り下ろそうとする。
だがその時、平内の目に、直康が吸うタバコが目に入る。
平内の顔色が変わる。

試さずにはいられない。
平内はキセルを収めると、枕元に座り、タバコを吸い始めた。
プカプカと煙が立ち、直康が目を覚ます。
隣にいる平内を見ると、直康は突然起き上がり、刀を手にした。

直康が振り下ろした刀は、立てた畳を斬った。
畳に刀が刺さって、抜けない。
刀の下では、平内が目を丸くしていた。
斬った畳の口の間から、文十郎が見える。

文十郎が立ち上がり、直康をにらんで小判を構える。
刀が抜けず、直康は後ろに倒れる。
「出会え!狼藉者じゃ!」と直康が声をあげる。

文十郎が直康に小判を投げた。
小判は直康の額の真ん中に刺さる。
「直康どの、あんたは3人の命を奪った。津島小一郎、その妻、梓。そしてあんたの」。
文十郎が、直康を指差す。

「子供の命もだ」。
額を押さえて直康が「何?子供?」と言う。
「ああ。梓はおめえの子供を身ごもっていた。子供まで殺しやがって!」と平内がにらむ。

「地獄へ行きやがれ!」
そう言うと平内は直康を抱え込み、背後から胸を一突きにする。
直康の顔が歪む。
平内がさらに針を握り締め、直康をにらむ。

「殿!」
矢崎が飛び込んでくる。
飛び込んできた矢崎を、すれ違いざま、文十郎が斬る。
続いて飛び込んできた侍も斬る。

最後に来た侍は、刀を受けると兜割りを抜き、腹を刺した。
深く、深く、刺して横に払う。
外に出た文十郎と平内は、闇の中を走った。



文十郎らしく、陽気にお酒を飲んで酔っ払って、またお酒を持って帰る時に出くわしたトラブルに巻き込まれて始まるお話。
「どけ、素浪人!」「尾羽打ち枯らした」と言われた素浪人が、誰よりも強いの。
死のうとした梓に「ばぁか!」と言いつつ、家に連れてきてしまう。
酔いがちょっと覚めれば、暴言だったと詫びる。

平内さんも頑なに口を閉ざす2人にイライラして、「死なせてやりゃあいいじゃないか」と言い放つんだけど、その後、事情を知って謝る。
みなさん、さっぱりしてますね。
文さんの家に忘れ物を届けに来て、たぶん一杯飲むつもりだった平内と、為吉が入って来て、ここから密室劇になる。

為吉から知らせを受けて、裏家業の事があるので余計なトラブルは御免だと清兵衛がブツブツ言う。
最近の文さんと平さんの、仕事の選り好みにも文句を言う。
そうか、最近、文さんと平さん、選り好みするんだ。

為吉が文十郎のことを「文十郎さん、例によって背中に『南無妙法蓮華経』と染め抜いた着物着ているわけでしょう、あれじゃ近所でちょっと聞き込みされたら、じきバレちゃいますよ」と言うのがおかしい。
目立ちますからね、あれ。
ずっと後に「仕事人」で三味線屋の勇次が「南無阿弥陀仏」って背中にある衣装を着るようになりますが、あれを見た時、この文さんの衣装を思い出しました。

あの着物は、田村さんがインタビューでおっしゃってましたが、お父様の阪妻さんが着ていた着物だそう。
田村さんの方がちょっと大きかったので、衣装さんが縫い直してくれたとか。
最初は父親と同じことを要求されるのが、とても嫌だったのに、この頃は余裕ができて、「お父ちゃん、ちょっと来て」と阪妻さんの真似をして監督さんが「もっとやってよ」と喜んだりしていたとか。
冒頭の軽やかな立ち回りを見て、「助け人」は田村さんがいるからこそ、一味違う殺陣が連続して登場できるんだなあと思いました。

小一郎と梓の悲恋は、あまりにかわいそう。
梓は田島令子さん。
しのとのシーンでは思わず、涙が出そうになる。

母親が好きな人のところに嫁ぐ時していけと言ったかんざしを、挿して逃げた梓の気持ちがいじらしい。
「今夜がその、うれしい日だった」。
「それももうすぐ、終わりになります」と言う表情が美しく、とても哀しい。

梓からは恋する女性の幸せオーラが出ていて、それが直康のひねくれた目に留まったんではないかと。
奥と同じ、ということは、直康は奥方にも嫌われてたらしい。
最初から嫌われてたのか、何かあったのかわからないけど、好かれないことが相当、直康をひねさせていたらしい。

それにしても婚約者を取っただけじゃなく、小一郎を不寝番にするところがもう、何でここまでやらないと気がすまないのか?
ご丁寧に誰もあてつけがましく自害しないよう、したら一族郎党罰するとかお達しまでする。
小一郎は母親がまだ生きている時は、抑えた。

そして、ある決意を胸に、それだけを支えに屈辱のお勤めをし続けたんでしょう。
しかし、つわりが訪れた梓は1人、飛び出していく。
一瞬、絶望した小一郎だが、梓を追っていく。

この一瞬の絶望が、梓を外に走らせてしまったのね。
小一郎とは添えない絶望、小一郎だけは助けようと思ったのかもしれない。
だが、やっぱり小一郎はやってくる。

直康は、梓は殺さないと言う。
その方が楽しいと言って、小一郎の前で梓を陵辱し始める。
泣き叫ぶ梓と憤怒の小一郎見て、こんなことして楽しいのか?
だとしたら、かわいそうなぐらい、歪んでいる。

この小一郎の斬られ方が、凄まじい。
平内が不義密通はひどい殺され方をするとは言ったけど、あそこまで斬るってひどい!
1人ずつ、順番に一太刀ずつ浴びせていく。
小一郎が進むたびに、1人、また1人。

だいたい、25回ぐらい斬られていると思います。
梓も2人して斬り捨てられることは覚悟だったでしょうが、あんな無惨な最期を見せられるとは思っても見なかっただろうに…。
直康の刀で自害した梓と横たわる小一郎の手が、互いを触れそうで触れられない。
最期までかわいそう。

でもね、こんなことして、祟られると思いません?
これでお家に凶事が続くと、「祟りだ」って噂が立ちますよ。
見ていて、怪談話っていうのは、生きている間はどうにもできなかった者の、最後の復讐の手段だなあとつくづく思いましたね。
そして、人間の良心の表れだと。

こんなことしたら、普通、怖いですよ。
そして「必殺」は「怪談」のフォーマットだと言われていましたが、まさにそうだと思いました。
生きている間は、表向きはどうにもできなかった怨念を晴らす。

「あのね、棟梁が『どうするんだ』って言ってますよ」と言うのが、「助け人」らしい。
「仕置人」じゃないから、「助け人」だから、殺しの請負はしないから。
助け人が助けられなかった。
意地もあるし、棟梁はきっと武士の横暴にまたまた怒っているに違いない。

平内さんは反対。
助け人の仕事から外れることに対して、理屈が通らないから。
すると利吉がきっぱり、「俺ぁ、そうは思わねんだ」。

この時の利吉が、とっても凛々しい。
梓を追ったしのを押し留める時、利吉は必死。
しのまで斬られたら、たまらないから。

直康の寝所に忍び込んで、思わずタバコを吸ってしまう平内さん。
殿のタバコなんて、庶民には手に入らない上等のもの。
めったに見られないとはいえ、ダメですよーと言いたくなる。

直康は岡崎二朗さんが、熱演。
二枚目風の濃いお顔に、くっきりメイクで、不気味に演じてくださってます。
あれで性格が歪んでちゃ、奥方も梓さんも嫌かも。
そう思わせてくれる岡崎さんは、徹底していて素晴らしい。

文さんが投げて額に刺さった小判は、梓が渡したものでしょう。
直康のつやつやした額に小判が刺さっているのが、とっても痛そう。
子供の存在を知らされて、仰天して、グイグイと針を叩き込まれる。

平内に刺されて痛そうなのが、溜飲を下げる。
ここまで演じてくれて、岡崎さん、ありがとう。
文十郎も走り込んできた家臣を、まるで小一郎にしたようにすれ違いざまに斬り捨てる。
そして、深く、深く、刺し直す。

こういうところ、小一郎が殺される執拗さが、明朗快活時代劇に思えて、やっぱり「助け人」は「必殺」だと思います。
今回、お吉はいなったけど、いたらとっても梓と小一郎に肩入れしたでしょう。
仕事の後、文十郎と平内が屋敷から走り去るところで、終わっています。

こんな事件があって、探索は行われなかったのかと思いますが、きっと奥が病死の届出も出したと勝手に予測。
夫の直康が死んで、せいせいしたのかもしれません。
そしてこの後、直康も側近も殺された浜田藩には、祟りの噂があったりして…。


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一人、歩く文さん。
暗がりの怪談にタバコの煙と、それを吸う人物。
「俺も坊主だった」と照れたように笑う平さんと、やっぱりきやがったなって感じで微笑む文さん。

このシーンが大好きですね。
ツーと言えばカー。
文さんは、平さんが来るって分かっているから一人で迷いもなくスタスタ歩いていた。
そう思わせるシーンでした。
2012年02月29日(Wed) 17:17
オギャンさん
編集
>オギャンさん

お返事、遅くなってすみません!

>このシーンが大好きですね。
>ツーと言えばカー。

この2人、すごく仲良いですよね。
2人が出あったいきさつはわからないですが、表も裏もピッタリ。

>文さんは、平さんが来るって分かっているから一人で迷いもなくスタスタ歩いていた。
>そう思わせるシーンでした。

平さんも、絶対文さんは来ると思ってたんですよね。
文さんが来ないなら、やらないならやめようと。
お互い、「いたな」「来たな」の呼吸。
いいコンビなんですよねー。
2012年03月01日(Thu) 13:15












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