第12話、「同心大疑惑」。


以前、一度書いてますね。
放送された時が1月5日だったので、お正月特別企画といったところでしょう。
後の「仕事人」時代ではお正月は2時間スペシャルでしたが、十分見応えある内容になってます。
何と言っても、仕置人・中村主水、登場!です。

正月。
平内が露天でキセルにタバコを入れてもらっている物陰から、鋭い目つきで平内を見張る者がいる。
同心・中村主水。

視線に気づいた平内は町中を走り、主水をまいたつもりだった。
正月らしい太鼓の音が響く。
路地を出た先に、主水がいた。

「なにかあっしにご用で?あっしが何か、八丁堀の旦那に世話になること、しでかしましたんで?」
「まあ、そうだろうな」。
「わかりませんなあ。あっしはただの」。
主水が「助け人か」と言う。

「ようく、ご存知で」。
「でもそれだけじゃねえ」。
主水はピタリと平内に視線を合わせる。
「それだけじゃねえだろうな」。

「だんなぁ、正月早々、いい加減にしてくださいよ。あっしはねえ」。
主水の視線に、平内の笑顔が止まる。
「教えてやろうか」。

主水は薄笑いを浮かべて、平内に近寄った。
「おめえは人殺しよ」。
「人殺し?」
平内の表情は、完全に凍りついた。

主水は平内を足輪をかけ、首をつないで、奉行所に連行する。
その横で主水は餅を焼き始める。
餅は何と言っても、付け焼きに限る。
しょうゆをたっぷりかけて、カリカリになるまで暇をかけて焼くと言う。

「こいつをうちの女房どのは、下品だと抜かしやがる。あなた!それは下々の食べ物でございますよ!こう来るからなあ。俺もたまったもんじゃねえやな」。
最後はぼやきだった。
平内がいつまで放っておくのか、と怒る。
すると主水は取り調べは明日だと言う。

大概のものは一晩、そこに転がしておくと白状するが、平内はそんなタマじゃないと言う。
そこに清兵衛が主水を呼び出しに来た。
料亭にやってきた主水に清兵衛が酒を勧めると、主水は嫌そうに手を振って拒否した。

清兵衛は平内のことを、自分が束ねている助け人の中でも、愚直というか正直者というか、悪いことはこれっぽっちもできない気の良い男だと言った。
だが主水は前々から、平内には目をつけていたと言った。
助け人の手間賃だけで、あんな暮らしができるわけがない。
きっと裏に何か、ある。

「うめえ稼ぎがあるに、決まってるんだ」。
「それは八丁堀の旦那衆もご同様」。
「何い!」
主水は台を叩く。

「お取調べに手加減を、とは申し上げません。ただ罪もないものをしょっ引いたとあっては、後の始末が面倒になります」。
そう言って清兵衛は「どうぞ」と菓子折りを出す。
主水があけるとまんじゅうがあり、まんじゅうの一番下の列を取ると、5両が現れた。
「5両か」。

清兵衛は笑いを含んだ目で見ている。
「蹲(つくばい)同心には、この辺が相場か。いいだろう、連れて行け」。
平内は清兵衛に連れられて、外に出ることができた。
だが、清兵衛はあの同心は只者じゃないと注意を促す。

平内が帰ろうとしている時、長屋の住人のおようと長次夫婦に食事に誘われる。
長次はいなかったが、長次が平内が正月に1人は寂しいだろうと誘うように言っていたのだと言う。
その時、戸が開く音がして、おようが「帰ってきたわ」と声をはずませた。
だがそれは長次ではなく、目つきの鋭い男だった。

男を見たおようの顔色が変わり、目を伏せると平内にちょっと出てくると言い残して表へ行った。
平内をにらむようにして男はおようの後、外に出た。
「寒いなあ。昼間迎えをやったのに、どうして来てくれなかったんだ」と男は言う。

男はおようが近くに住んでいるのを知っていたが、一度も顔を見せなかったと言って、おようの肩を抱き寄せる。
「昔の女が今は見ず知らずの男と、幸せに暮らしてるんだ。その幸せをぶち壊しちゃならねえと思って、俺は会いてえの、ずっと我慢してたんだぜ」。
男は、音吉といって、おようの昔の恋人だった。

「放して!」
「冷てえんだな。昔はそんなんじゃなかったはずだ。もっと優しいおようだったはずだ」。
「私は昔のおようじゃありません。ちゃんとした亭主がいるんです。カタギでまじめに働いている亭主がいるんです。もう2度とこの近所には来ないでください」。
おようが逃げようとした時だった。

「待ちな。その亭主に頼みがあるんだよ」。
おようの手を捕まえて、音吉はおようを見る。
「嫌とは言わせねえぜ」。

おようの家には長次が帰ってきており、平内と一緒に飲んでいた。
長次とおようは評判の仲のよい夫婦なのだ。
特におようは、長次がいないとすぐに淋しがる。
平内は、長次を冷やかしていた。

その翌日、平内が飲みすぎたと表に出ると、またしても主水がいた。
「良い天気だな。お天道様がまぶしいんじゃねえのか?」
「さあ、それほど悪いことはしておりませんのでね」。
「へーえ。暮れに1人、旗本が殺されてな」。

主水は赤い柄のキセルを持っていた。
旗本の頭にそれが突き刺さっていたのだ。
「脳天にぶっすり、キセルが突き刺さってたそうだが」。
主水は平内が侍上がりであることも知っていた。

ならば、やってやれないことはないだろう。
平内がもう金は出ないと言うと、主水は持って生まれた性分でただ本当のことが知りたいだけだと言った。
「また来るぜ」。
平内は主水が去っていくと、けっと言った。

おようは長次に、昔、自分の近所に住んでいた紙問屋の和泉屋の番頭が、蔵の鍵をなくしてしまって、大騒ぎになっていると話した。
番頭は旦那にばれたら、店を追い出されると困り果てていると言う。
何とかしてやってとおようが頼む。
長次は、初仕事が人助けなんて縁起が良いと快く引き受けた。

平内は文十郎の家で飲み、主水のことを話した。
しのが帰ってきて、「兄さん」と駆け寄ってくる。
平内がいるのを見て、「しょうがない人たちですねえ」と言うが、「兄さん、ちょっと」と呼び出す。

「何、八丁堀?」
しのはうなづく。
「お店に来て、兄さんのことしつこく聞くのよ。あたし、しゃくに触ったから、つんつんしてやったけど…、どうしたの、何かあったの?」
文十郎は大方、しのの気を引くためだったと笑い、八丁堀なんか相手にするなよと言った。

「あの男は片付けましょう」。
清兵衛は言った。
だが、調べによると主水は相当、腕が立つらしい。

為吉が調べたことを読み上げる。
剣は一刀無心流免許皆伝の腕前で、八丁堀の同心の中でも5本の指に入ろうというもの。
そこを見込まれて、中村家の婿養子に入ったが、さしたる手柄もなく、今日に及んでいる。
家では奥方の尻に引かれている。

ごぼうの煮付け、いわしの干物が大好物。
「変なもんが好きですね」と為吉は笑う。
酒よりもむしろ、まんじゅう、ようかんの類が好き。

女好きなれど、浮気はまだ無し。
できないというのが大雑把なところ。
清兵衛は笑って、文十郎にお願いしますと言った。
「俺?あいよ」と文十郎は軽く引き受けた。

その夜、文十郎が出かける前にお吉が、どうして平内さんの尻拭いを文十郎がやらなければならないのかと愚痴を言う。
文十郎はふんどしを取り替え、勝負は時の運だから斬られた時の為にみっともなくないよう、武士のたしなみで取り替えたと言った。
「やだあ。そんな心細いこと言わないでよ」とお吉が甘い声を出す。
「おい、お吉。ずいぶん達者で暮らせよ」と芝居がかった言葉を遺して、文十郎は出て行く。

お吉はどうもおかしいと言うが、文十郎は平内と歓楽街に出かけていた。
ぱあっとやろうと言って座敷に上がりこもうとした時、為吉が主水がいたと呼びに来る。
雪がちらつく中、主水の後を文十郎がつける。
主水が立ち止まる。

誰もいない道の行き当たり、主水が提灯の明かりを消す。
「誰でえ。八丁堀の中村主水だ。そうと知っててつけてきやがったな」。
黒装束に黒頭巾の文十郎は「死んでもらうよ」と言った。

刀を抜く。
主水が向かい合って、十手を顔の前まで上げ、横に持つ。
その構えで、文十郎は相手が並々ならぬ腕を持つとわかった。

どちらも動かない。
動けない。
にらみ合ったまま、雪が舞う。
先に動いたのは文十郎だった。

文十郎の刃を、主水が十手で捕える。
主水の顔が歪む。
文十郎の顔も尋常ではない。

お互いがお互いをはじき、2人は宙に飛ぶ。
文十郎が宙返りし、主水も宙返りをして着地した。
主水が膝を突き、刀を抜いて構える。

文十郎が思わず、兜割りも手にする。
右手に刀、左手に兜割り。
主水が立ち上がる。

雪が舞う。
2人がにらみ合う。
遠くで、笑い声がする。

文十郎が笑い声がした方を見る。
芸者と数人の男が、近づいてくる。
「ちっ」と文十郎が舌打ちをする。
刀と兜割りを収めると、「また来るぜぃ」と言った。

「待ちやがれ!おい!」
主水も刀を収めると、呼子を取り出す。
呼子を吹いたが、呼子はピーではなく、ヒョロロという情けない音を立てた。
主水は文十郎が消えたほうに向かって、走り出す。

「ええ?仕損じた?」
お吉の家では平内と為吉が待っていた。
「ほら、この通りだよ」と文十郎は切れた着物の裾と、裾をめくって、切り傷を負った膝の下を見せた。
「あやうく足を一本、落とすところだったよ」と文十郎は言う。

「ふうん、本当に強いんだなあ」。
「ああ、思った以上だよ」と言って、文十郎は刀を置き「たかが八丁堀の同心となめてかかったのが、俺はまずかったんだな」と言うと、傷口に手ぬぐいを巻く。
「いやあ、江戸は広いねえ!」
「つまり、完全に失敗したわけですね?」と為吉は、失敗した場合は金を返してくれと言った。

必要経費も自分持ちだ。
その時、お吉がお座敷から帰って来る。
「さっきやった5両な、あの野郎にたたき返してくれ」といわれると、「ごりょう~?」と聞く。
そして文十郎の傷に気づくと「あら、お前さん!どうしたんだよ、この傷」と傷を見る。

「お吉い。俺な、やられたんだよ!危うく、命を」。
文十郎は悲しそうな声を出す。
「落とすとこだったんだよ」。

平内と為吉が顔を見合わせ、為吉が呆れる。
「まーあ」とお吉が言い、「かわいそうにかわいそうに」と文十郎にしがみつく。
「あたしの大事な人に、何てことするのかしら、ねえ~」と文十郎を押し倒す。

「イイコだから、我慢しなきゃダメよあなた、ねえ」。
「お吉い」。
「わかってるわかってる」。
2人はイチャイチャし始める。

為吉がこたつ越しの2人を見て、顔を手で覆う。
平内が「全然、金を返す気、ないな。2人ともな」と言う。
こたつの上の、寅の置物が2つ、揺れて顔を付き合わせる。
お吉の笑い声が響く。

町はまだ、正月だった。
長次が和泉屋に合い鍵を届けるが、和泉屋には音吉なんて番頭はいないと主人は言った。
番頭はみんな、「兵衛」がつく。
「吉」がつくのは、小僧だけだった。

しかも、蔵の鍵の種類が違う。
蔵の鍵は南蛮錠だ。
こんな鍵は味噌倉でも使っていない。

その頃、音吉が再び、おようを訪ねていた。
長次がいないと見ると、音吉はおように迫った。
その時、長次が帰ってきた。
「何しやがんだ!」

すると音吉は悪びれもせず、「おう、待ってたんだ。鍵はできたのか」と聞いた。
「2人で何をしてたんだ!」
「何にもしちゃいねえよ。ただからかっただけだ」。

長次は和泉屋に音吉なんて番頭はいないと言った。
しかも、これは和泉屋の鍵ではない。
音吉の顔つきが変わった。
「鍵を出せ。出すんだよ」。

音吉が放り出された鍵を拾うと、表に出て行く。
すると、表には長屋の連中が集まっていた。
平内が通りかかると、何だか変だと教える。

長次がおように、なぜ嘘をついたのかと問い詰めていた。
おようは本当に近所にいた人で、そんなに悪い人じゃなかったと言った。
もう2度と来ないだろうと言うおように、長次は番所に届けると言う。

ひょっとしたら、盗人かもしれない。
もし、あの鍵が盗みに使われたら、自分たちだってただではすまない。
おようは自分が取り返してくると言って、飛び出して行った。
しかし、おようはボンヤリと井戸端へ向かっていた。

井戸の向こうには平内がいた。
平内はおようから全てを聞いた。
泣くおように平内は、まず鍵を取り返す。
それからあの男が2度とおようの前に、顔を出さないようにすることが大事だと言った。

できないと泣くおように、平内はきっとできると言う。
そうでなければ夫婦がメチャクチャにされる。
だが、金がかかると平内は言う。
知り合いに頼んでやる、金はいつでもいいと言って、平内は清兵衛のところに行く。

金のない平内に、清兵衛は同じ長屋なら断りきれないだろうと、この件は預かりにしてくれる。
文十郎に頼もうかと言うが、平内は、文十郎は中村主水の方があったと気づく。
その時、為吉が隠し部屋に入ってくる。
中村主水が来ているのだ。

奥座敷で主水は清兵衛に茶を入れてもらいながら、まんじゅうを食べた。
主水は清兵衛たちが、看板の陰で何をしているか、ボンヤリとわかってきたと言った。
殺された旗本は、旗本でも指折りの悪党だった。
あの男が殺されたというので、赤飯を炊いて祝った家もあったほどだ。

となると、誰かが頼んで殺したという考えもできる。
助け人が、はめを外して殺しをする。
キセルでグッサリというのが、受けると笑う。

「それで?」と清兵衛の声に主水は「ん?」と戸惑う。
「何か、証拠でもございましたので?」
「証拠は中山文十郎とかいう浪人ものだ」。

清兵衛が視線を落とす。
「奴は強い!」
主水は自分の腕を上げ、ポンポンとたたく。
「俺とそこそこ行くんだから、並みじゃねえや。あん時バッサリやられてみろ、今頃まんじゅう食ってへらへら笑ってらんねえや」。

「清兵衛、あれもおめえの手下のようだな」。
「もしそうだったら、どうなさるおつもりで」。
廊下で平内がキセルを構え、為吉が匕首を取り出す。

主水は清兵衛に顔をよせ、肩を叩くと「一口乗せろ」と言った。
「ええ?」
「俺にも稼がせろよ~」。
「旦那が?」

「八丁堀が助け人やっちゃいけねえなんて、お触書はどこにもありゃしねえぜ?」
主水は指で金の形を作ると「金になる話なら、十手さておいてでもいつでも駆けつけるぜ」。
清兵衛ははじかれたように笑う。
「何だ、おかしいか?」

「旦那もご冗談がお好きで。そんな、夢みてえな話を。どうです、旦那。ちょいと耳寄りの話がございますのですが」。
「裏か表か」。
「八丁堀の、表の方なんでございますがね」。

主水が詰まらなさそうな顔をする。
お茶を飲み干すと「俺に手柄立てさせようってのかい」と言う。
清兵衛はうなづき、「ええ。ま。ここいらで旦那も人働きしねえと、また奥方様にケツを引っぱたかれますぜ」と大笑いした。
主水は苦々しい顔をして、黙り込んだ。

その夜、音吉は盗賊・夜走りの参蔵と共に、ある商人の蔵の鍵を開けた。
蔵の中には千両箱が重なっていた。
「ようし、これで仕事のメドはついた」。

鍵が使えることを確かめた参蔵一味は、明日の盗みの手はずを決めた。
1人でも顔を見られたら、皆殺しにする。
盗人の集まった家から1人、また1人と盗賊が出て行く。

それを影から見ていた清兵衛と主水が出てくる。
清兵衛はあれは間違いなく、夜走りの参蔵一味だと言った。
これを手柄にするのもしないのも、主水次第。
主水は何だか、清兵衛に上手いこと使われそうだと言い、清兵衛は「お役目、ご苦労様です」と笑った。

平内はおように、音吉は2度と現れないと伝えた。
何でも遠く、西の方に行くらしい。
上方か、ひょっとしたらもっと遠く。

そして昔のことは、長次には絶対話さないように言う。
きっと、長次は傷ついて、不幸になる。
おようは平内に頭を下げる。

だが長次は音吉を探し出して、問い詰めていた。
音吉は仲間と2人で長次を店から連れ出し、路地で殴りつけた。
「そんなに知りたきゃ言ってやらあ。あいつは俺の女よ。俺が散々かわいがって捨てた女よ」。

長次がガックリと膝を折る。
「これで気が済んだかい。バカな野郎だ」。
そう言って音吉は去っていく。

長次は笑い出した。
「嘘だ。嘘に決まってらあ」。
そして泣き出した。

夜、与走りの参蔵一味は動いた。
屋根を走り、目的の商家に向かう。
その頃、長次は飲んだくれており、おようが迎えに行っていた。

参蔵一味は次々と塀を飛び降り、蔵の前に来る。
蔵の中、紫煙が漂う。
音吉が蔵に向かい、鍵を開ける。
扉に油をまいて、静かに開けた。

ろうそくの明かりを持ち、音吉は蔵に入る。
蔵の中には平内がいた。
タバコを吸っている平内を見て、音吉は懐に手を入れた。

平内が近づき、音吉の正面に立ち、音吉の口から加えていたろうそくの入った竹筒を取る。
その瞬間、音吉は匕首を抜いた。
平内が匕首を頭を下げて避ける。

再び閃く匕首を、平内はキセルで受け止めた。
竹筒を置き、平内は音吉の匕首を持った手を捕まえる。
音吉の手の平に、キセルを押し付けると、音吉は悲鳴をあげて匕首を落とす。

手を抑えた音吉に向かって、平内はキセルを構える。
ゆっくりと針を見せる。
音吉の顔の前にかざすと、音吉は逃げようとした。
平内は戸を開けた音吉を叩き、跪かせる。

そして、音吉の脳天から針を刺す。
平内の顔が怒りで歪む。
音吉の額に、血が伝わって降りてくる。
平内が針を抜くと音吉が外へと転がる。

参蔵が音吉を見て驚くが、その時、周りに「御用」の灯りがたくさん見える。
「ちくしょう、手が回った」。
参蔵一味が逃げていく。
平内は蔵の鍵をしっかり閉めて、出て行く。

逃げる参蔵の前に、主水が現れる。
「夜走りの参蔵。神妙にしろい!」
参蔵一味はそれぞれ、匕首を抜いて襲い掛かる。

すれ違いざま、主水は3人を叩きのめす。
刀を改めて構えなおし、じりじりと参蔵一味5人に近づく。
参蔵一味は匕首を構え、後へ引いていく。

主水は立て続けに首領の参蔵以外、4人を倒す。
背後から参蔵の手下が2人、植え込みを越えて飛んで来る。
だが主水は2人の額を打ち、叩きのめす。
参蔵が逃げる。

主水が十手を狙いを定めて、投げる。
十手は三蔵の首に巻きついた。
主水は十手を引く。

参蔵が地面を引きずられていく。
立ち上がった参蔵を叩きのめすと、捕り方がやってきた。
それを全て、平内が見ていた。
平内がキセルで顔をこする。

翌朝、長次はおように出て行ってくれと言う。
いくらなんでも、あの男はひどい。
もういい、出て行ってくれと言われておようはフラフラと出て行く。
裸足のままだった。

うつむいて背を向けていた長次が、顔を上げる。
平内の前を、おようがフラフラと歩いていく。
おようは平内にも気づかない。
平内が声をかけようとしたときだった。

「およう!」という声がして、長次が追いかけてきた。
おようの前に長次が立つ。
「待ってくれ!行っちゃいけねえ!行かねえでくれ。俺はお前に行かれたら生きちゃいけねえ!頼む、帰ってきてくれ」。
長次がおようを抱きしめる。

「およう!」
おようの目から涙がこぼれる。
2人はしっかり抱き合った。
平内が笑う。

町はまだ正月だった。
文十郎と平内が、屋台の前で座っていた。
すると文十郎がポンと平内を叩く。

向こうから供を連れて、主水がやってくる。
「あの野郎」。
とぼける文十郎と平内の後ろを主水が通りかかる。

「おう」と主水が立ち止まる。
「助け人。あんまり派手な真似しやがると市中定見回り、中村主水の十手が黙っちゃいねえぞ」。
そう言って、主水が2人に十手をかざす。
平内が十手をキセルでどける。

すると主水が声をひそめる。
「ただしだ、儲け話なら、いつでも乗るぜ」。
そう言うと、主水は晴れやかに笑った。

平内と文十郎が主水を見て、笑う。
主水が遠ざかっていく。
文十郎と平内が屋台から立ち上がる。
主水と、文十郎と平内は反対方向に歩いていく。



これは、お正月企画。
なので、考えてはいけないんでしょうが、もし、主水が「悲痛大解散」の時にいたらどうだっただろう。
きっと、為吉を助けられないまでも、常に拷問の側に立ち合い、何とか見守っていたのでは。
清兵衛たちに連絡を取り、「ばかやろう!あいつは奉行所内でも厄介な奴で有名だ!こりゃ、大変なことになるぞ」と怒りつつも、何とかしようとしてくれたのでは。

中谷一郎さん、田村高廣さん、藤田まことさん。
3人とも、既に鬼籍に入られているということが、とても寂しい。
しかし、とても良い作品が残せているのだとも思えます。
3人とも素晴らしい俳優さんで、その3人が揃った「助け人」、いや「必殺」は素晴らしい作品だったのだと思います。

主水を他の裏稼業・助け人の目から客観的に見ると、こんな感じに見えるんですね。
為吉の報告書を見ると、第三者から見た主水がとてもおもしろい。
だけど、「仕置人」までは為吉も調べが及ばないらしい。

為吉の主水についての調べが報告されるのも楽しいですが、ここは利吉にやってほしかった気がする。
そういえば、利吉もお吉も主水と会うシーンがなかったのは、偶然?
3人が会うシーンがあったら、楽しかったんじゃないかな?
「仕置人」と重なって、物語に入り込めないから避けた?

表の同心たちから見ると、うだつの上がらない、女房の尻に引かれた婿養子。
でも裏の人間からすると、目の付け所が確かで、油断ならない切れ者。
ここに過去を持ち、今は幸せに暮らす、おようと長次夫婦、そして、盗賊一味も絡む。
お正月らしく、善人が誰も死なないのも、後味悪くなくて良いです。

主水って、素朴なものが好きなんですよね。
餅を好きなように焼いていて、楽しそう。
しかし、りつにはそれも嫌味の対象らしい。
最後は愚痴に変わっているところを見ると、家では気が抜けない日々らしい。

りつは出て来なくても、りつの軽蔑しきった顔と口調がまざまざと浮かぶ。
酒を勧められた主水、ここではまだ飲めない設定だから、嫌そうに手を横に振る。
文十郎の妹のしのの勤める茶店にまで来たらしく、お団子食べたんでしょ!

平内に目をつけて、助け料程度であんな暮らしができるわけがないと言えるのは、仕置人をやったことがある主水ならでは。
清兵衛が主水がただの小遣い稼ぎの同心ではないことを見抜くのも、さすが。
そして、正月気分の抜けない文十郎が主水を襲うことに。

なめてかかった文十郎だが、十手を構える主水にすぐに本気でかからなければならない相手であると認識。
お互い、身動きしない。
文十郎も主水も宙返りとは、若い。

へらへらしていた文十郎は着物の裾を切られて、足に切り傷を受ける。
着地した時は兜割りを構えているところからして、かなり真剣になっている。
この展開、文十郎を立てて主水の世界を壊さなかったのは、良いですね。

あのまま斬りあっていたら、両方にケガが出たはず。
ここで呼子を吹こうとした主水が、情けない音を出すところが爆笑。
本当に表稼業では、やる気がない!

それで仕損じて傷を負って、文十郎が焦っているかと思ったら何だか全然。
危機感がなくて、へらへらしていて余裕。
傷もお吉さんに甘える口実にしていて、ほんと、お正月気分なのか。

お金を返したくないのもあるだろうけど、お吉さんも余裕でイチャイチャ。
2人がイチャイチャしているこたつの上、あの年の干支でしょうか?
寅の置物がキッスの形になっているのが、かわいい。

一方、やってきた主水も文十郎のことを、奴は強い!と認める。
部屋の外では、平内と為吉が殺気を出す。
為吉までもが、匕首を出す。

その時、主水が出した意外な、ものすごく意外な一言。
肩を叩いて、「一口乗せろ」。
清兵衛、「ええぇ~?!」って感じ。

清兵衛が緊張感たっぷりなのに、主水が「俺にも稼がせろよ~」って言い出して。
藤田さん、笑いを作るのが上手い。
清兵衛がはじかれたように笑うけど、見ているこっちも笑っちゃう。
「八丁堀の、表の方なんでございますがね」って提案するところを見ると、清兵衛は最初から取り引きするつもりでしたね。

表の仕事と聞いて、主水が本当につまんなさそう。
ほんと、表の仕事だけの日々は、つまらなかったらしい。
奉行所と、家。
本当に本当に味気ないらしい。

「仕置人」は本当に楽しかったらしい。
裏の仕事、やりたくてしょうがない。
「表か~、つまんね~」って顔してるもの。

しかし清兵衛に、りつのことをしてされると黙り込む。
「それなんだよなぁ~、確かにそうなんだ」って感じの顔をします。
ほんとに、つらい婿養子なんだ。
そこは誰もが把握していて、間違いないんだ。

ここで主水をポンと叩く清兵衛が楽しそうで、いっぺんに主水を気に入った風。
そして何だか、清兵衛さんに良いように使われてる気がすると言う主水。
清兵衛さんと主水というのも、見てみたかった。
ええ、清兵衛さんは本当に上手い元締めだと思いました。

平内さんの音吉殺しが終わると、今度は主水の捕り物。
主水が登場した途端、かかるのは「仕置人」の殺しのテーマ曲!
やっぱり主水は強い!

あっという間に参蔵一味を叩き伏せる。
盗賊たちも宙を飛んで主水に迫り、盛り上げます。
そして逃走する参蔵に十手を投げて、主水ってこんなこともうまかったんですね。

こちらは無事収まったものの、おようと長次には大変な事態が起きていた。
おようの過去がバレ、思わず出て行ってくれと言う長次。
フラフラと出て行くおよう。
もう平内も目に入らず、せっかくの助け仕事も全てフイに…。

平内が、おように音吉は2度と来ない、遠い西国へ行くと言うのは、浄土へ送ってしまうという暗示なんですね。
「仕事人2010」で、いなくなった主水は西国へ行ったと言うシーンがありましたが、あれはやっぱりそういう暗示なんでしょうか。
全て無駄になってしまった…と思ったら、おようが去った後の家を振り返って我に帰ったと思われる長次。
すぐに追いかけてくる。

おようさん、死んじゃうかも知れなかったから、すぐで良かった。
平内さんが説得するまでもなく、2人は雨降って地固まる状態に。
全て解決と思ったら、屋台にいる2人の前にまたしても中村主水登場。
供を連れて、ああやってみると立派な同心。

うーん、またかと思った文さんと平さん。
主水ももっともらしく、十手をかざしてみる。
しかし、次に小声で「儲け話なら、いつでも乗るぜ」、にやっ。
文十郎と平内、全てわかってると察しても、知らん振り。

こうして江戸の裏稼業の3人が接触し、別れて行く。
特別企画だから、本当に主水が助け人世界に存在したと考えてはいけないのかもしれません。
でも流れる曲、これは「新・仕置人」で鉄を失い、己代松とおていが去っていき、主水が1人、江戸に残るラストで流れる曲と同じ。

だから思ってしまう。
あの時、主水は生きがいと言えるもの、戦友と言える仲間を失い、同心の小さな賄賂を受け取って喜ぶ日常に戻っていく。
そう、ここで主水がつまらなそうにしていた日常へ。

今度こそ、鉄という仲間を失って。
それでも、心の喪失など、まったくないような、昨夜の壮絶な出来事などなかったような顔をして。
この後、文十郎と平内の助け人にも奉行所の追求が入り、彼らもまた、過酷な毎日を生きていくことになる。

3人は裏稼業を続け、やがて同じような痛みを味わうことになる。
だけど2つの稼業はもう、決して交わらない。
3人は裏稼業に生き、凄みを増し、仲間をなくす。
これを知っていて見ると、文十郎と平内と、主水が反対方向に別れて行くラストシーンは、本放送で見た時とはまた、違った味わいがあるのではないかと思います。


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2012.03.07 / Top↑
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