「日経マガジン」という、日経新聞に日曜日、入って来る小雑誌。
これにおもしろい記事がありました。
「妖怪が問う豊かさとは」。
以下、抜粋と要約です。

鬼、化け物、河童。
説明できない不思議な現象、不吉な出来事を、日本人は古くから「妖怪」、または「怪異現象」として語り継いできた。
国際日本文化研究センターの小松和彦氏いわく、妖怪や怪異談は、「人間の心を見る為の糸口や切り口」だと言う。

「心の豊かさとは何かということを、考える時の手がかりでもある」。
科学技術が発達し、物質的な豊かさに恵まれている現代だが、心が同じように豊かで満たされているわけではない。
むしろ、世の中は殺伐としている。

科学は、万能ではない。
自然は、コントロールできない。
これまで、数え切れないほどの妖怪談や、怪異物語が庶民の間で伝承され、各地に残されてきた。

それは広い意味での宗教や信仰、神々と関連を持ちながら、日本人が自然とどうコミュニケーションをとってきたかの歴史でもある。
恵みや救いなどの明るい物語だけではなく、祟りや呪いといった闇。
「怖い神様。退治・制圧される妖怪・悪霊。ネガティブな部分に目を向けると、庶民の『心』が見えてくる」。

妖怪や怪異談は、人間が自然とどう共存するか、考える素材のひとつになる。
例えば、大蛇が洪水や山崩れを起こすという伝説。
山奥で山姥に出会い、怖ろしい思いをする物語。

人間は、どこまで山に立ち入って良いのか。
ここに人と山と、人と自然との関係を考え、自然の声に耳を傾けた先人たちの豊かな知恵がある。
「山崩れ、遭難があそこで起きたという事実だけでは、すぐに忘れられてしまうが、あそこで妖怪が出たといえば語り継がれていく。
こうして、妖怪や怪異を媒介にして、自然現象の危険性も伝承されていく」。

日本人は自然だけではなく、道具や言葉にまで魂があると考えてきた。
長く使った物には、魂が宿る。
また、人は鬼にもなるし、祟りもなす。

「つまり、人間が一番偉いわけでもなく、自然も物も同一のもの。
そして人間もまた、そういった魂を持った存在のひとつに過ぎないという考え」。
さらに、妖怪や怪異は娯楽としても楽しまれてきた。
人は怖がりながらも怪談を話し、子供たちは鬼ごっこを楽しむ。

なぜ、鬼からは逃げるのか。
なぜ、それが怖いのか。
なぜ、それが大切なのか。
娯楽や遊びを通して、多くを学ぶ。

世の中が近代化する中、妖怪や怪異は迷信や非科学的なものとして排除され、古くからの言い伝えは高度成長と共にどんどん失われて行った。
だが、マンガ、アニメ、陰陽師といった小説など、新たな世界を得て、妖怪や怪異談は続く。
人はなぜ、妖怪や怪異に惹かれるのか。

「自分の気持ち、大切なもの、嫌なこと、いけないこと
これを人間以外を用いて表現でき、意味を付与できる。
人間社会の矛盾や、不条理を描き出せる」。
そして殺伐とした社会の不安を払拭し、希薄になる人間のコミュニケーションを埋める。

ここには安堵があり、だから、妖怪は作り出される。
日本人が培ってきた、妖怪は立派な文化。
妖怪学とは、日本人を、人間を考える学問でもある。
「語り継ぐ形は変わっても、『昔、こんなに豊かな文化があった』ということを、多くの人に知ってもらいたい」。


なるほどー!と思いました。
そうか、こういった妖怪・怪異をバカにする、信じている人の人格まで否定する人に共通する傲慢さはこれか、と思いました。
もちろん、全てに超常現象的なものを当てはめて、これはダメ、あれはダメ。

これをすれば何とかなる、そうやって信じて、揚句、人に迷惑をかける。
人や、自分の生活を破滅させる。
現実を見ない。
そんな行動は問題外ですが。

宇宙で世界初の快挙を成し遂げた「はやぶさ」の技術者、科学者がエンジンに家族の名をつけたことがありました。
助け合い、支え合い、バラバラにならずに戻って来ることを託して。
科学の最先端を行く人が、「非科学的」と言われそうなことを、祈りを込める、信じる。

いや、最先端を知る人だから、科学の限界を知るから、謙虚になる。
自然に祈りも込めるんだと思いました。
どこの世界でも業界でも、中途半端が一番えらそうで、人のことを否定ばっかりしていると感じてはいましたが、そうか、こういうことかと思いました。

このページには、江戸時代に描かれた笑っちゃう、「にんじんの化け物」「蕪の化け物」「河童」「なまず」など「大都会(おおつえ)無事」の絵も出ていて、庶民の娯楽も感じられました。
「怪物画本」の「猫又」、「化物婚礼行列」とか。
前にも書きましたが、自分も振り返って、余裕がある人、余裕がある時しか、こういうものは信じたり、楽しんだりできないです。
楽しんでいるうちは、平和なんですね。


さて、日経新聞の日曜日に入ってくる、日経新聞第2部の「日経マガジン」。
グラフィックも美しく、このように記事も興味深い。
毎回、取り上げる題材と、それを見る視点もおもしろい。

楽しみにしていたんですが、7年間、続いた「日経マガジン」は、今月号で終わり。
入ってると、うれしかったんだけど。
丁寧で、上質な雑誌を見ているようで大好きでした。
独自の視点と、綺麗な写真で今回は何を取り上げてるか、楽しみでした。

編集者の方たちが、この文を読む機会はないと思うんですが、この場を借りて。
長い間、ありがとうございました。
また、何かの機会にお目にかかれるとうれしいです。


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2012.03.19 / Top↑
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