ターニングポイントになる24話、「悲痛大解散」。


為吉は墨、すずり、帳面を買い、小判を出した。
それは、近頃珍しい元文小判だった。
同心の岩岡と鬼頭が、店を出た為吉を影から見つめている。

太吉という子供は、手習いをしている子供たちを外からうらやましそうにながめていた。
為吉は先ほど買った手習いの道具を、太吉に手渡した。
そして、今日から太吉も手習いをするんだと言ってやる。
「おじちゃん、ありがとう!」と太吉はうれしそうな声をあげた。

太吉の母の、おくにの足がそれを見て足を止める。
為吉も無言で、息を詰めて、おくにを見る。
やがておくには、為吉に礼を言った。

為吉が太吉を手習い所に連れて入ろうとした時、岩岡と鬼頭がやってきた。
「御用の筋だ」。
2人はそう言うと、為吉を連れて行く。

太吉を連れたおくにが不安そうに、清兵衛の店を訪れる。
清兵衛は利吉を呼び、この前の仕事が珍しい元文小判での支払いだったことを確認する。
利吉は為吉に、その小判を1両渡していたのだ。
清兵衛はそこから足がついたことを、理解する。

しかし、おくにと為吉の関係が誰にもわからない。
おくには、為吉には子供をいつもかわいがってもらっていたと言う。
その時、北町与力・黒田伝蔵が、岩岡、鬼頭、そして鳴海という同心と捕り方を大勢連れて入ってきた。
ついに清兵衛の化けの皮をはがす時が来たと、黒田は言った。

捕り方たちは、清兵衛の店と家を調べつくす。
助け人の打ち合わせに使っていた、隠し部屋も見つけられる。
隠し部屋はご法度だが、清兵衛は趣味の彫刻をで誰にも邪魔されずに行いたいから、と言った。
だが黒田は、清兵衛を連行しない。

隠し部屋程度では、そんなことではせいぜい、叩きにかかるだけだ。
黒田は、前々から助け人全員に目をつけていた。
証拠となる元文小判を探していたのだが、見つからない。
引き上げて行く時、黒田は「俺のあだ名を教えてやろう。死神っていうんだ」と言った。

その頃、釣りから戻った文十郎は、家の前を見張っている者がいるのに気づく。
文十郎は、尾行をまく。
平内も尾行されていたが、籠に乗る振りをして尾行をやりすごす。
龍もまた、境内を歩いていて尾行に気づき、ヤクザものを殴り飛ばして騒動を起こし、尾行をまいた。

文十郎たちは、清兵衛のところにやってきた。
今回は為吉が元文小判を使って捕まったが、文十郎や平内だった可能性は十分にある。
利吉は、為吉は自分たちの身代わりだと言う。

そして、自分たちに目をつけた与力の黒田が「死神」と呼ばれていることを話す。
筆頭与力の座を狙っている黒田は、無実の者でも拷問で痛めつけ手柄を上げるような男だった。
この黒田こそ、かつて龍を島送りにした男だった。

為吉が拷問にかけられ、助け人稼業のことを喋ったら全員、獄門だ。
なんとしても、為吉を助けなくては。
だが清兵衛の店も既に見張りがついている。
文十郎たちは、くれぐれも身辺に気をつけるようにと言われる。

奉行所では、清兵衛はかつて、幻の清兵衛と呼ばれた盗賊だと言って、屋根にまで侵入の警戒をしていた。
夜、利吉と奉行所に忍び込んだ清兵衛は、かつての勘で、おかしな気配を感じ取る。
清兵衛は、利吉が気づかなかったワナに気づいて、引き返していく。

翌朝、でかける清兵衛には数人の尾行がつく。
清兵衛は、奉行所に向かったのだった。
黒田に会った清兵衛は、為吉が使った小判は自分が渡したもので、為吉には何の罪もないと申し出た。
だが黒田は「為吉は渡さねえよ」と言う。

「為吉の口から、おめえたち全部の名前を聞き出して、おめえたち全部を獄門首にしてやるのよ」。
そう言うと黒田は、「せっかく来たんだ。為吉に会わせてやるよ」と清兵衛を連れて奥に入った。
清兵衛は1人、がらんとした座敷で待っている。

やがて岩岡と鬼頭が、為吉をかかえて入ってきた。
為吉は、清兵衛の前に放り投げられる。
床に投げられて伏せた為吉は、何もわからないようだった。
囚人の着る着物はあちこち破れ、傷だらけで、髪は髷を解かれたざんばら髪となっていた。

「為吉」という清兵衛の呼びかけに、為吉は辺りを見回した。
清兵衛に気づくと、為吉は「棟梁」とうれしそうに微笑んだ。
自分を指差すと、「あっしのことなど、心配要りません」と言う。
「俺に何かできることはねえか?」

言われて、為吉は清兵衛を見上げる。
そして、「根岸にいるおくにと、たあぼう…」と言った。
必死に手をあげ、手のひらを横にして、自分の前に出して背丈の小さい子供、という仕草をする。
「わかった。おくにちゃんと、たあぼうという子供だな?」

清兵衛の言葉に為吉はうなづくと、床に顔を伏せた。
「もういいだろう」。
岩岡と鬼頭が、為吉を連れて行く。

部屋から引きずり出される寸前、為吉が目をむいて抵抗し、清兵衛を見つめる。
為吉が受けている拷問の過酷さが、清兵衛にも伝わった。
清兵衛が息を詰め、黒田がほくそえむ。

為吉の頼み通り、清兵衛は根岸に、おくにを訪ねた。
出かける清兵衛の背後を、黒田の配下の鳴海が尾行していく。
おくには、洗い張りをしていた。

清兵衛に気づいて頭を下げた時、太吉が元気良く帰って来た。
太吉は「為のおじちゃんが戻ってきたら見せるんだ」と言って、手習いで書いた字を清兵衛に見せた。
清兵衛は太吉がいなくなると、おくにに「あんた、為吉のおかみさんでしょう?」と聞いた。

おくには否定したが、清兵衛は為吉のもらう給金だと言って、財布を差し出す。
しかし、おくには、為吉はすぐに帰って来るから、と受け取らない。
「すぐに帰って来るんですよね?」

だが先ほど為吉の様子を見ている清兵衛には、返事ができない。
為吉は、島帰りだった。
子供に肩身の狭い思いをさせてはならないと考えた為吉は、太吉に自分が父親と名乗ることも、「とうちゃん」と呼ばせることもしなかったのだとおくには言う。
だから太吉は、為吉を「為のおじちゃん」と呼んでいたのだ。

黒田の下で、為吉は過酷な拷問を受けていた。
「いいか、殺してはならんぞ。殺さねえように痛めつけるんだ」。
吊るされた為吉は叩かれ、気絶すると水をかけられた。

だが奉行所内では、黒田の評判も悪くなっていた。
黒田は「手柄も立てられない奴らのヒガミだ」と言う。
しかし黒田の吟味がひどすぎるという話は、奉行所内でも囁かれ始めていた。

お吉は、文十郎の長屋に駆け込んできた。
為吉は、おくにという妻、太吉という子供がいたにも関わらず、自分の身の上を覚悟して家族にならなかった。
頼りないと思っていた為吉が、日ごろからしていた覚悟。
「裏稼業の為に…」と、お吉は言う。

文十郎は刀の手入れをしながら、大きな声を出すなとお吉に言う。
だがお吉は為吉の心を思うと、太吉に「おじちゃん」ではなく「『おとっちゃん』と呼ばせてあげたい」と言った。
文十郎も、どうしても為吉助けなくてはいけないと思っていた。

その時、表からしのが「兄さん!兄さん!」と叫ぶ声が聞こえた。
茶店の仕事から戻ったしのが、鬼頭の連れた岡っ引き2人に押さえつけられようとしていたのだ。
刀を持って表に出た文十郎は、岡っ引きを弾き飛ばす。

「妹には関係ない」。
「お上に盾突く気か」。
鬼頭は文十郎を押さえつけようとしたが、逆に文十郎に押さえつけられてしまった。

「文さん、いけないよ!」
お吉が止めに入る。
「俺をしょっぴきたかったら、ちゃんとした証拠を持って来い」。
「後でほえ面かくな」と言って、鬼頭は引き上げて行く。

家に入ると、しのは、文十郎に「どうして毎日のように奉行所の人たちが家の前にいるの」と聞いた。
しのもまた、毎日、助け人のことを聞かれ、「兄と同じ人殺しの罪で獄門首になるぞ」と言われていたのだ。
「聞かせて兄さん。もし兄さんが人殺しでも、あたしの兄さんよ。兄さんに代わりはないわ」。

文十郎は答えることができない。
「聞かなくてもいい。兄さんと一緒に獄門首になったってかまわない」。
お吉がたまらず飛び込んできたが、文十郎はお吉を制した。
「だってこのままじゃ、おしのちゃんがかわいそうだよ!」

文十郎はしのの前に座ると、しのを見つめ、「しの。俺は人殺しなんだ」と言った。
しのが文十郎を見つめる。
「違う。兄さんはそんな人じゃない」。
「あたし、兄さんを信じる」。

その日、利吉が隠し部屋で、奉行所の図面を指して説明する。
3日分の飯と水を持って床下に入り、天井裏に抜けるのに、まる2日かかった。
そこまではすんなり来たのだが、そこから牢に行くまでにまた2日かかった。
なにしろ3日分しか食糧を持っていなかったので、4日目には腹が減って、ねずみが羨ましかった。

床板を外すのに、手こずった。
だが、牢の廊下の天井は抜けているので、身を隠す場所がないのでしかたなかった。
おまけに数を30数えると、牢番が戻って来た。
その為、廊下までがやっとで、牢内には入れなかった。

平内は「為吉を助けられない話をしていたのか」と利吉に怒る。
文十郎は「棟梁の覚悟が聞きたい」と言った。
為吉を助け出せない、と言うのか。

無言の清兵衛に、「為吉を見殺しにはできない」と文十郎は立ち上がり、平内も立ち上がる。
「棟梁、あんた冷たいお人だ」。
その時、龍が「それだけじゃねえだろ。本心は、為吉にしゃべられると、てめえがやばくなるからじゃねえのか!」と文十郎と平内に向かって言う。

「おい、若造、てめえ、俺たちがそんな男だと思ってるのか」。
文十郎と平内、龍が殺気立つ。
「やめとくれ、仲間割れしている時じゃないだろう?」とお吉が止める。

「あんたがた!棟梁の気持ちがわからないんですか!」
利吉が立ち上がる。
「やめねえか、利吉!」と清兵衛が制する。

為吉を助け出せるのなら、もうとっくに助け出している。
黒田の狙いは、助け人全員を捕え、獄門にかけることなのだ。
清兵衛は、自分と引き換えにして、為吉を助けようとした。
しかし、黒田はことごとく、はねつけていたのだ。

為吉は今や、石抱きの拷問を受けていた。
だが為吉は尋問する黒田に、唾を吐きかける。
怒った黒田は為吉の石の上に竹刀を突き立て、ぐいぐいと石を為吉に押し付ける。

為吉はどんなことがあっても、白状しない。
それでは、いつまでも為吉は苦しみ続ける。
あと7日で、月番が北町から南町へ代わる。
それまでに為吉の、いや、助け人の決着もつく…。

「為吉を楽にしてやるんだな」と、龍が口を開く。
「死なせてやるんだよ」。
「この野郎」。
文十郎が、龍に詰め寄る。

「龍さんの言う通りかもしれませんよ」。
清兵衛が言う。
「棟梁」。
「為吉を、楽にしてやりましょう」。

お吉が耐え切れず、顔をそらす。
「利吉!」
「えっ…」。
清兵衛に呼ばれて、利吉が顔を上げる。

「頼んだぞ」。
利吉が、呆然とする。
やがて、絞り出すような声で「お、俺だって…、やだよ」と言う。
「やだよ、やだよ、俺!」

だがその夜、黒装束に身を固めた利吉が奉行所に忍び込んだ。
床下で飯を食べ、夜を明かす。
何日もかけて、牢に忍び込む。
牢番たちが話しているのが聞こえてくる。

「いつまで続くのかな」。
「死ぬまでよ。あれが、死神・黒田さんのやり口だ。ろくな取調べもしないで誰でも、獄門台に送り込んでしまうんだから」。
「もう数え切れないほど罪のない人が、黒田さんの出世の犠牲になってるんだ」。
「怖ろしい人だよ」。

牢番たちが去っていくのを確認し、利吉が下りてくる。
為吉のいる牢に忍び寄り、「為吉!」とささやく。
「俺だ」。

利吉とわかった髪を乱した為吉が、口に竹を噛ませられた姿で近づいてくる。
「勘弁しろよ」。
利吉が牢の外から、匕首をかざした。

髪を振り乱し為吉が目を見開き、利吉を見た後、目を閉じる。
目を閉じて首を差し出す。
為吉の前に、利吉は匕首を振り上げる。

だがどうしても、匕首を振り下ろせない。
息を詰め、為吉を見つめていた利吉は匕首を為吉の前に置き、去っていく。
牢番が戻って来た。

為吉が座り込み、匕首を隠した。
そのまま這いずって行き、後ろ手に縛られた手で匕首を拾うと、厠に落とす。
為吉は、かすかに微笑んだ。

翌朝、月番交代が迫って焦った黒田は、お吉以外の助け人全員を理由をつけて捕える。
文十郎は、お上に無礼を働いた罪で。
平内は、後家と通じた罪で。
龍もまた微罪で、清兵衛と利吉も不明ながら捕えられた。

助け人たちが引き立てられていく時、牢の窓が開き、黒田が笑った。
窓から、四肢を縛られ、宙吊りになった血だらけの為吉が見える。
平内が、黒田に唾を吐きかける。
「今度は貴様たちの番だ」。

助け人たちは次々、牢に入れられ、拷問を受けた。
牢内で、5人は黙っていた。
清兵衛は目の下を傷つけられていた。

文十郎は、額から血を流し、うつむいていた。
平内は、鼻血を流していた。
龍は宙を見つめ、仰向けになっていた。
利吉は、目を腫らしていた。

翌日、黒田がやってきた。
「おい、出ろ!解き放しだ。上からのご沙汰だ。運の良いやつらだ」。
利吉が「為吉は?」と聞いた。

黒田が、大きな声で笑った。
奉行所の外に出た5人の前に、戸板に乗せられた為吉が運ばれてきた。
「為吉だ。一緒に連れてけえってやれ」。

為吉は死んでいた。
黒田は笑って、「これで済んだと思うな」と言った。
「次の北町の月番には、必ず助け人を仏にしてやるよ」。
清兵衛は、息絶えた為吉を抱きしめた。

5人が駆け寄る。
牢番が、つぶやいた。
「どえらい拷問だった。あれは…、人間のやることじゃねえよ…」。

為吉の墓を前に、助け人たちと、しのが立っていた。
風が吹いていた。
全員が押し黙ったまま、為吉の墓を見つめていた。

おくにと太吉が、とやってきた。
「おっかちゃん、為のおじちゃん、どこにいるの?」
太吉が聞き、おくにが清兵衛を睨みつける。
「あんたが…、あんたがうちの人を殺した」。

清兵衛の口元が歪み、うつむいた。
しのも涙を流している。
途端、おくにが涙を流し、「ごめんなさい」と言う。

「どうにもならないとわかっていながら、一言…」。
「一言、恨みを言わないと気がすまなかった…」。
おくにが、太吉を抱きしめる。

「為吉の死は、全て自分の責任だ。もっと気を配っていれば…。自分には棟梁の資格はない。今日限りで、助け人稼業の看板を下ろさせてもらいたい」。
清兵衛はそう言った。
「しばらくは、為吉の生まれ故郷に行って、菩提を弔ってやるつもりだ」。

その夜、黒装束の清兵衛が闇に紛れて町を行く。
奉行所の壁を前にした時、清兵衛が気配を感じ、木の影に身を隠そうとする。
そこに現れたのは、龍だった。

2人は顔を見合わせると、壁を乗り越えた。
壁の向こうに、文十郎と平内が待っていた。
清兵衛たちは、奉行所に忍び込む。

鳴海は、控え室で茶を淹れていたところを、龍が押さえつけた。
龍は鳴海を逆さにして、持ち上げた。
鳴海が怯えた。
その顔の横で、龍がものすごい形相をしていた。

渾身の力を込め、龍が鳴海を頭から床にたたきつける。
鳴海が当たった桶が割れ、水がこぼれた。
床に鳴海が首をまげて、落ちた。

鬼頭が、厠にやって来た。
小用を足している鬼頭の後ろで、文十郎が兜割りを構えた。
近づいた文十郎は鬼頭を振り向かせた瞬間、刺した。
鬼頭は悲鳴をあげる間もなく、倒れた。

「誰だ!?」
何かの気配を感じた平岡が、恐る恐る、為吉に石を乗せた拷問部屋までやってくる。
平岡が刀を構えた先に、紫煙が立ち上る。
ゆっくりと、平内が立ち上がり、姿を見せる。

「貴様!」
刀を振り上げて突進してくる平岡の手を受け止めると、平内は平岡を組み伏せた。
平岡の目の横を、平内は針で突き刺す。

黒田がそれを見て、「平岡!おのれぇ!」と走ってくる。
刀を抜いた黒田の頭上には、清兵衛がいた。
下りて来た縄が、黒田を捕える。

平内が縄を引く。
黒田が、為吉のように逆さづりになり、宙吊りになっていく。
「何をするんだ!」
清兵衛がノミを持ち、黒田の前に立つ。

黒田が悲鳴をあげる。
「やめろ!」
清兵衛はノミで、黒田の額を一撃した。
ノミが黒田の額に叩き込まれて行く。

翌日。
清兵衛は1人、川を船で下っていく。
胸には為吉の骨壷があった。



黒田は、南原宏治さん。
えと、「スターウォーズ」のダースベイダーの声がピッタリの渋さでしたね。
牢番さえ、声を潜める拷問は、後の諸岡さまを連想します。
迫力満点の素顔はインタビューを読んだことがありますが、とっても面倒見がよい親分肌の役者さん。

前にも書きましたが、あのお声は「外郎(ういろう)売り」という、声の出し方。
もう南原さん自分以外にできる人はいないとのことで、きっともう、現在はできる方はいないんでしょう。
自分の劇団を作って、劇団員を食べさせていたようです。
インタビュアーの方たちにも、「ご飯食べてく?」と言っちゃう。

本名言うと、昭和2年の卯年の生まれがわかっちゃう。
「だから本名言うの、嫌なの!」だそう。
東大中退!
だから最終学歴は中学とおっしゃるけど、逆に非常に頭の良さがわかってしまう。

こうやってみると南原さん、お亡くなりになるの早かったですよね…。
残念です。
渋い、良いお爺さま俳優になられたと思います…。

黒田たちがあんな状況で殺されたら、助け人たちがめちゃくちゃ追及されると思うんですが…。
奉行所内でも、もてあまし気味。
庶民からの声も上の方に届いており、ちょっとカバーしきれないところまで来ている。
確たる証拠はない…、ないかな?だから、とりあえず助け人の追及は置いておこうということになったのかな、と。

今見ると、この「悲痛大解散」。
後の「仕事屋稼業」や「仕置屋稼業」「仕業人」「新・仕置人」の最終回の原型のようにも思えます。
奉行所に、または敵に捕えられた仲間。
加えられる拷問。

元締めが、自分を代わりにと申し出るが、一味の壊滅を願う相手から断られる。
または救出、苦しみを和らげる為、侵入を試みても失敗する。
捕えられた仲間は死んでしまったり、廃人になってしまう。
容赦ない、非情な結末。

為吉役の住吉正博さんが、シリアスに熱演。
普段はお調子者のコミカルキャラだっただけに、その深刻さ、残酷な結末の衝撃が大きい。
お吉も心動かされた、為吉の暗い過去、そして家族への態度、裏稼業に付くものとしての覚悟。

牢番をして、「人間のやることじゃない」と言わせる拷問に死ぬまで耐え抜いた根性。
いつも弟分として使っていた為吉を始末しろと言われた利吉の、悲痛な叫び。
為吉は利吉の匕首を前にして、目を見張る。
そしてすぐに、目を閉じる。

利吉の真意を見抜いたように。
自分のことなら、何一つ心配しなくて良い。
利吉と清兵衛たちに対する、全面的な信頼。

何をしようと、構わない。
でも、自分は決して口を割らない。
それだけは安心していい…。
利吉が自分を楽にしてくれようとしている、その安らぎの表情。

利吉はどうしても、為吉に匕首を刺せない。
2人とも黙っている。
積み重ねてきた兄弟分の思いが、伝わってくる。
利吉の去った後、かすかに笑う為吉の笑顔の凄み。

為吉が死んで、おくにはどうしても一言、清兵衛に恨み言を言ってしまう。
その一言は、清兵衛を貫いた。
清兵衛だけではない、助け人全員を打ちのめした。
龍に言われた時同様、全員が自分の弱さと向き合わずにはいられない。

後の「必殺」シリーズ作品では、これが最終回になりますが、「助け人」はこの後、変貌して続いていく。
それは「必殺」の殺し屋たちの、業を背負った本来の姿かもしれない。
私はこれまでの文さん、平さんも好きですが、この後はこの後でおもしろい。

ひとつの山を乗り越えて、殺し屋として、業を背負って生きていく覚悟ができる。
笑顔は消えても、厳しさと使命感が芽生え、全員が成長していく。
「助け人」は長いシリーズ通して見ても、実に見ごたえがある作品だと言えます。


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2012.04.22 / Top↑
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