第1話、「集まりて候」。


ペリーの黒船が浦賀に来た。
糸井貢と妻のあやは、それを見ている。
「あれがアメリカの船なんですね」と、あやは言う。
新しい時代が来ている。

何もかも、夫の言ったようになる。
これからだってきっと、夫の言うように世の中は変わっていく。
だが、誇らしげに言ったあやは倒れそうになる。
幕府はあやの夫の貢を、高野長英を匿った罪で3年もの間、追った。

その夜、夜鷹と遊んでいた男・大吉だが、その途端、夜鷹狩りが行われた。
追われる夜鷹たちは、同心・中村主水に小銭を渡すと主水は次々と、夜鷹たちを通らせて逃がしてやる。
嘉永6年6月15日、本所にて夜鷹狩りが行われたが、その中に女髪結いのおそのという女が混ざっていた。

大吉はおそのが同心に駕籠に乗せられ、連れて行かれるのを見て、後をつけた。
気づいた同心が襲い掛かってくる。
「見られちゃよっぽど、まずいものだったらしいな」。

大吉は側の木の幹を握るとそれを潰し、木を倒した。
主水の同心仲間は、木の下敷きになって大吉にトドメを刺された。
「坊主!」と声をかけた主水に対して、大吉はくるみを握って殺気立つが、意外なことに主水は愉快そうだった。
「こいつは上役の尻にへばりついて、阿漕なことをやり過ぎた男だ。気にしなくていいんだぜ」と言った。

その時、霧雨の中、1人の男が近づいてくる。
大吉はそれを見て、立ち去る。
笠を目深にかぶった男は、主水に「捕り物ですか?」と聞いた。
昼間、黒船を見ていた貢だった。

「少し話を聞いてもらいたい」と貢は言う。
「実は少々、金の無心を願いたいんだ」。
「金?」と主水はビックリする。

「家内が長く患っていて、医者に診せているんだが、なかなかその費用が追いつかなくてね」。
「そりゃ気の毒だな。俺んとこはその反対で、かかあが丈夫過ぎて困ってるんだ。オマケに俺は養子だから小遣いなんて一銭ももらえねえし、人様にくれてやるような金は、びた一文、持ち合わせていねえ」。

すると、笠を深くかぶった貢は言った。
「いやあ、私はそうは思わんな。与力や同心というのは、賊を追って、とっさの旅に出ることがあると聞き及ぶ。だから5両や10両の金は、常に持っているはずだ」。
「そりゃあ要領の良い同心のことよ。不器用なこの俺には」。

主水は笑うが、貢は言った。
「私の目にはそうは。貸して…いただけるのか、いただけないのか」。
「何をぉ?」
主水の口調が変わる。

「それを伺いたい」。
貢の口調は丁寧だったが、主水は「てめえ、物盗りか!」と鋭く聞く。
「いや、そうはなりたくないんだが…。断られれば致し方ない」。
貢が構える姿勢を取る。

「おめえも物好きだなあ。俺は十手持ちだぜ」。
「その十手持ちに恨みがあるんだ!」
貢は鋭く叫ぶと、貢は三味線のバチを構え、主水に狙いをつける。

主水が刀を構える。
貢のバチと、主水の刀が交差する。
すれ違った瞬間、貢の顔を隠していた笠が切り裂かれいた。
中から見えた貢の顔が、驚愕に変わる。

刀を上段に構えた主水も、刀を構えた袖がスッパリと切られているのに気づき、驚く。
どちらも構えたまま、踏み込めない。
「中村さん!」
仲間の同心が駆けつけて来たのを見て、貢は逃げた。

「賊ですか!」
主水は驚愕の表情のまま、「バチだ」と言う。
「え?」
「バチが当たりやがった」。

翌朝、主水は中村家で足軽だった先祖の鎧兜を目の前に出され、せんとりつに嫌味を言われ、不愉快な思いをした。
そして昨夜、主水を襲った貢は場末の芝居小屋で三味線を弾いていた。
黒船騒ぎで客の入りが悪いとぼやく小屋の人間に貢は「こんな薄汚い小屋、客が入るだけ不思議じゃないか」と言って、小さないさかいを起こす。

寺の境内では「この西洋写真機はイスパーニア、ロンドンの言葉で、きゃはーめーらと言う」と、半次がカメラで撮った写真を披露していた。
助手は、おきんだった。
ある侍の顔を白塗りにし、撮影に支障があると言って刀と財布を取り上げる。

きょとんとした主水が、影から見物している。
その時、けたたましい声がして、襦袢姿の女が乱入してくる。
一騒動あった後、半次もおきんも消えていた。
刀も財布も持ち逃げされたと気づいた侍は、刀に手をかけるが、それも撮影用の竹光だった。

半次とおきんが持ち逃げして逃げる中、後ろから主水が「おうい、俺だ!」と追ってくる。
「八丁堀!」
半次が「お前は誰だ!俺は知らねえ!」と言いながら走る。
「俺だよ!」

一通り逃げおおせた半次とおきんに追いついた主水が、「久しぶりだったな」と言う。
だが半次は「俺たちは人相書きがまわったお手配組みだ。もう2度と会わねえようにしようって言ったじゃねえか!」と言う。
「そりゃそうだ。でもよ、水臭えこというなよ。このご時世だ。俺はまた、始めたっていいんだぜ」。

見れば、半次もおきんもあんまり景気の良さそうな仕事はしていなさそうだ。
「八丁堀。そんな優しいこと言ってくれるの、あんただけだよ」と、おきんは涙ぐむ。
2人は仕置人解散の後、あちこちを逃げ回ったが、やっぱり江戸が恋しい。

どうせ捕まるんなら、お江戸にしようと言って、帰ってきたばかりなのだった。
「鉄も錠も、どこかに潜んでるんだろうな」と半次が言う。
「八丁堀、あんたまた始める気かい?」と、おきんが言う。

「でもなあ」と口ごもる主水に、半次が答える。
「わかってんだ。俺とおきんじゃ、腕が足らない。鉄や錠みたいな奴がいなけりゃあの仕事はできねえ。無理なんだ。八丁堀。会わねえ方が良かったんだ!」
肩を落とす半次の前に、先ほど騒動を起こした女がやってきて、手を出す。
半次は女の手に、小銭を置く。

主水が「何だありゃあ」と尋ねる。
「知らねえ。その辺に巣食ってる女で手先に使った。俺は知らねえ」。
半次の答えに、主水がおもしろそうに笑う。

その頃、夜鷹狩りで一緒に捕えれた髪結いの娘・おそのは、髪結いを装って売春していたという疑いをかけられていた。
父親の必死の頼みで主水が牢内を見るが、捕えられた夜鷹たちの中に、おそのはいなかった。
すると、おそのはどこにいるのか。
おそのが引っ張られた理由は、別にあるのではないか。

外を歩く主水に近江屋が声をかけて、上司の高畑に菓子箱を渡すように頼む。
「昨夜は大変お手数をおかけしました」と近江屋は言うが、昨夜あったことといえば、夜鷹狩りだ。
近江屋は主水にも、袖の下を渡す。

主水が高畑に菓子箱を渡し、近江屋の伝言を伝えるが、高畑は「そうか」とだけ答えた。
繰り返し、夕べの髪結いと夜鷹狩りのことをもう一度、主水が持ち出して言う。
要するに主水も袖の下の分け前を狙って繰り返したのだが、高畑は態度を崩さず、「わかったと言ったではないか」と、うるさそうに答える。

主水は夜鷹狩りに乗じて高畑がおそのをさらい、近江屋に差し出したと察しをつけた。
「昔ならなあ、これで5両がとこになるんだが…」。
ボヤく主水は、半次とおきんに会った。

そして、仕事仲間になりそうなのが「2人いる」と伝えた。
主水は半次とおきんに、あの夜に出会った2人の行方と、おそのの行方を探し始めるように言う。
「八丁堀、おめえ本当にやる気だな!」と半次が言う。
「ここんとこ、金には不自由してるしなあ。それに奉行所の奴らがああ汚く絡んでるんじゃ、ほっとくわけにもいかねえ」。

主水は半次とおきんに手付けと言って、小判を渡す。
「ようし!」と、半次が元気になる。
おきんも「半公、やる?あたいもやるよ!」と言う。

その頃、芝居小屋では、おそのの父親の弥助が包丁を持ち出して、自分でおそのを助けに行こうとしていた。
奉行所はグルだ、ならば自分が助けるしかない。
だがそんなことはできるわけがないと、貢が包丁を取り上げて止める。

すると弥助は貢に「何とかしてくだせえよ。お願いしますよ。あんた、お武家さまじゃありませんか。近江屋に掛け合って、おそのを返してもらってくださいよ」と懇願した。
だが父親にすがられても、貢にも何もできない。
「どいつもこいつも、奉行所がそんなに怖いのか」。
弥助の悲痛な叫びに唇を噛み締め、立ち尽くす貢のところに、外から見ていた大吉がやってくる。

大吉は夜鷹狩りの夜、おそのが連れられて行くのを見ていたと言って、弥助に近づく。
誰だって、十手持ちと関わるのは嫌だ。
金を出さなきゃ、誰も引き受けてくれない。

大吉は、おそのが連れ去られるのを見た。
「5両ばかり出してくれたら…」と大吉が弥助に持ちかけた時、主水がやってきた。
主水は、「村雨の大吉!」と怒鳴って、十手を振りかざし、芝居小屋に入ってくる。
そして貢と、大吉を外に連れ出した。

人気のない橋の下で、主水は裏の仕事の話を持ちかけた。
大吉はおもしろそうに乗ったが、貢の反応は違った。
「私は気が進まんな。いや、あんたの言ってることもわかる。どこもかしこも奉行所の中も、腐りきっている」と貢は言った。

「その奉行所に、どれだけ苦しめられてきたか。あんたにその苦しみはわかるまい。あんた、奉行所の禄を食んでいる。その十手持ちと手を組むことは…!」
そう言って、貢は去る。
大吉が呼び止めようとするが、主水はやめさせる。

「あのままにしておいていいのかい。あんた、今、大変なことを言ったんだぜ」。
もし、貢が奉行所に駆け込んだら…。
だが主水は「そんな奴に見えるか?」と、言って笑う。
「所詮は同じ穴の狢さ」。

貢は家に戻ると明るく振舞い、病弱な妻・あやを労わる。
「本当に今日は顔色がいいぞ!」
そして、大吉は寺の近くで石屋を営んでいた。
大吉の家にいる主水だったが、夜の寺の鐘が鳴ると、大吉はちょっと用があると言って、いそいそと出かけていく。

主水は大吉の後をつける。
大吉は妙心尼という、比丘尼のもとへ通っていたのだった。
その時、おきんが主水に声をかけた。
おそのはどこにもいないが、水口藩の屋敷に高畑が出入りしていることを突き止めてきた。

こっそりと主水は、大吉と妙心尼の密会を目撃する。
半次は水口藩の屋敷に忍び込み、そこでおそのが高畑に折檻されているのを見る。
おそのは髪結いを装って春をひさいでいたことにされると脅され、近江屋の妾になるよう強要されていた。

これは高畑と、水口藩の家老の湯川に頼んで近江屋が仕組んだことだった。
逃げようとしたおそのが思わず、隣の間の戸を開ける。
半次が巧みに、ひらりと身を引き、暗闇に潜む。
おそのは、3人に部屋の隅に追い詰められた。

翌日、おそのは川で死体となってあがった。
弥助は、おそのの死体に取りすがって泣き叫ぶ。
貢がその姿を見つめる。
その足で弥助は、芝居小屋の入り口で木戸銭をいきなり手の中に握り締めて、盗んだ。

追われながら弥助は、貢が三味線を弾いている裏方に逃げてきた。
三味線を弾いている貢の袖に、その金を押し込むと、弥助は連行されていった。
貢が神社の御輿をしまっている祠で、小判を5両、並べていた。

そこには主水と大吉、半次とおきんがいた。
弥助は娘の髪結い道具を売り払い、嫁入りの為に貯めていた金を集めた。
だが、それでも大吉の言った5両に満たなかったので、盗みをして5両を作ったのだ。
「ちくしょう…。俺はやるぜ!」と大吉が言う。

主水が「あんたもやるんだな」と言うが、貢は「断る!」と言う。
怒った大吉が貢につかみかかる。
「じいさんが、これほどまでにしてでも!」
だが貢は「俺は前にも言ったはずだ。俺は奉行所の奴は信用できん!」と言う。

大吉を止める主水に貢は「しかし、あんたが本当にやるんなら話は別だ。それを見るまでは信用できん!」と言った。
怒る大吉に、主水は「まあ、いいや」と言う。
表に半次が来て、格子窓越しに主水から金を受け取る。

その夜、貢は、仕事に向かう主水と大吉の後ろを歩く。
大吉がブツブツ、文句を言う。
主水は「あいつは確かめてえんだ。俺たちが仲間だという証拠がな」と言う。

高畑と近江屋、湯川の3人が料理屋の離れに案内される。
案内したのは、おきんだった。
そこで料理屋の半纏を着た半次が、近江屋に「店から使いが来た」と言って呼び出した。

半次は近江屋を誰もいない部屋に案内すると、突き飛ばす。
突き飛ばされた近江屋が顔をあげると、異様な音がする。
部屋の向こうには、胡桃を手に大吉が立っていた。
それは大吉が胡桃を握り、こすり合わせる音だったのだ。

大吉が胡桃を粉々にした。
助けを呼ぼうとする近江屋を押さえつけ、大吉が腕を振り上げる。
腕は近江屋のあばらにめり込み、近江屋は「心臓つかみ」の技で殺される。

高畑と湯川は、座敷で酒を飲んでいた。
だが、背後のふすまに異様な音を聞きつけて、開ける。
するとそこには、正座した近江屋がいる。

近江屋は、座ったまま死んでいた。
「どうしたんだ、近江屋!」
外の障子に、影が映る。

障子を開けた高畑を、主水がグッサリ刺す。
「中村っ!」
高畑を刺したたまま、主水は「死んでください」と言い、高畑を上から下に斬る。

湯川が外に逃げる。
「八丁堀!見たぞ、証拠は」と言う声と共に、貢のバチがうなる。
普通のバチを取り去ると、その下には刃が仕込んであった。
逃げる湯川を押さえつけ、貢は喉を切り裂く。

湯川は倒れる。
鮮やかな手腕だった。
だが貢は呆然としている。
主水と大吉、半次とおきんが見ているのに気づいて貢は我に帰り、うろたえるように部屋を出た。

帰り道、主水は大吉と貢と歩きながら、「明日野暮用があるので、これで失礼するぜ」と言う。
「へえ、俺もなんだ」と、大吉が言う。
3人は強い風の吹く中、別れて行く。

翌日は、中村家の先代当主、主水の義理の父の13回忌の法要があった。
りつには2人には妹がいて、1人は仏門に入った。
しかし、末の妹は父親に反対された相手と駆け落ちした。
その末娘のあやの夫には、「主水が目をつぶってくれないといけないことがたくさんある」とりつが言う。

その時「母上!」という声がする。
あやだった。
しかし、うれしそうなあやは同心の主水を見て、一瞬足を止め、顔色を変えた。
だが主水は、あやではなく、あやの後ろから笠をかぶってやってくる男を見ていた。

「心配は要りません、りつから話はしてあります」とせんが言う。
そして、「貢どの、良く来てくれました」とあやの後ろの男に声をかける。
男が笠を取り、主水がまじまじと貢の顔を見る。
貢も主水を見ていた。

「母上!」と声が響き、せんとりつが「妙!」と喜ぶ。
それは、妙心尼だった。
後ろから、男が1人来ている。
その男のことは、後で話をすると妙心尼は言う。

「こちの人」。
呼ばれた男、それは大吉だった。
へらへらと笑って、大吉が頭を下げる。

「貢どの。りつの婿殿です。あなたの兄上」。
せんが貢に主水を紹介する。
「兄上?」と貢が驚く。

法要が始まった。
僧侶が経を読み、その背後の親戚の列の先頭に主水がいる。
その後ろの列で大吉と貢が並んで、手を合わせている。

後ろを主水が気にする。
すると、そっと、背後から大吉が近づいて囁いた。
「にーさん」。

主水の目が丸く見開かれ、口がポカンと開く。
その途端、主水が経を唱え始める。
お経に一層身が入った主水をちらりとせんが見て、満足そうに手を合わせる。



近江屋は浜田寅吉さん。
高畑は、今井健二さん。
被害者は今出川西紀さん。
どうです、「必殺」、悪役、被害者、鉄壁の布陣です。

「仕置人」の音楽は流れるし、半次とおきんと再会する会話から、仕置人のその後から話が始まっているのがわかります。
あの最終回で人相書きが流れ、江戸を脱出したはずの半次とおきんが、どうせ捕まるなら江戸がいいと戻ってきていた。
鉄も錠も、どこかに潜んでいると言う。

黒船騒動で大騒ぎの江戸は、もはやお尋ね者どころではないのか。
この幕末の世に、あの鉄と錠が存在している…。
それって、どんなんだろう?と思ってしまう。

主水はもう、相変わらずのせんとりつの侮辱、不愉快な家と奉行所の日常にウンザリしている。
昨晩の捕り物は夜鷹狩りと夜鷹の存在を説明する時、「ちょいと、おにいさ~んと呼び止める、あれですな」と言うのが、とっても女性っぽい言い方でうまい。
しかし、主水は家に帰るなり、嫌味をビシバシと言われる。
その苛立ちを「何だ、こんな汚いものを置いて!」と座敷に置いてある古い箱にぶつけて、蹴っ飛ばす。

だがそれは、ご先祖の鎧だった。
ご先祖の鎧を見て、せんに足軽だったと説明されると主水、笑って♪鉄砲持たせりゃ重たがる~、弁当持たせりゃ食いたがる~♪の足軽ですか!と歌う。
見ているこちらも笑ってしまう歌だが、当然、せんに怒られる。
この第1話に出てきた鎧が、最終回に出てくるんですね。

しかし主水、夜鷹狩りでも、しっかり小銭を稼いでいる。
そこに大吉を目撃。
御用どころか、かつての自分と同類を見てとっても楽しそうになってしまう。

そこに霧雨の中、口笛のBGMに乗って、笠をかぶった貢の黒い姿が現れる。
ものすごく、雰囲気がある。
主水も大吉も、思わず注目してしまう。

何というか、殺気みたいなものもあるかもしれない。
「実は少々、金の無心を願いたいんだ」。
「貸していただけるのか、いただけないのか」と口調は丁寧だけど、やろうとしていることは強盗。

このシーンは後の「仕業人」の第1回、中村敦夫さん演じる剣之介が主水に「あのう…、金貸せ」というシーンで繰り返されていますね。
主水が金はないと言うと、いや、役人は持っているはずだと言うところも同じ。
貢と剣之介。
どっちも追われる身で、背負っているものも重い。

だけど、貢の思いつめ方の方が深刻な感じがするのは、連れ合いの違いでしょうか。
剣之介の妻といえるお歌は、患っていない。
どちらかというと、剣之介より大道芸の世界では、たくましい感じがする。

しかし、剣之介は顔を白塗りにし、相当の身分の武士を捨てているから、貢よりかなり、プライドが保てない、堕ちた感じがする。
反対に貢は、プライドは捨てていない。
自分が働いている小屋なのに、「こんな小屋」と言い放ち、小競り合いを起こすほど。
剣之介もつらかっただろうけど、プライドを捨てられない秀才の貢もまたつらそう。

それもあってか、「その十手持ちに恨みがあるんだ!」で爆発。
三味線のバチを構える貢。
最初に悪人にバチを刺したのは「仕置人」の鉄でしょうが、貢は後に山田五十鈴さんが得意とするバチを武器にしてる最初の殺し屋?

すれ違った瞬間、貢の顔を隠していた笠が切り裂かれて、予想以上の腕に貢の顔が驚愕している。
主水も、袖がザックリと切られているのに気づいてビックリ。
「バチだ」「バチが当たりやがった」。
三味線のバチのことを言ったんですが、小銭を稼いでいたバチが当たった…と言う意味にも受け取れてしまう。

半次とおきんに会ってうれしそうに、仕事の再開を持ち出す主水。
ふと、「助け人」にも「俺にもやらせろよ!」とかなり積極的に売り込んでいたなあと思い出してしまう。
もう、つくづく、つまらない毎日にウンザリしていたんですね。

大吉は貢の小屋で、弥助に話をもちかけたところを見ると、フリーで裏の仕事をしている男ではないか。
裏稼業への誘いを断る貢に、怒る大吉。
だけど、主水は「同じ穴の狢さ」と言う。
かつての仕置人やっていた余裕。

そして大吉が言った5両という言葉が、弥助を盗みに走らせる。
弥助が盗みまでして作った金なのに、断る貢に憤慨する大吉。
貢の役人への不信感は、当たり前だけどすごいものがある。
主水が人を殺すのを見るまで自分は仲間に入らない!と言うが、しっかり後はついてくる。

ここでも主水は貢を責めず、ちゃんと目の前で仕事をしてみせる。
大吉が仕留め仕事を終えた後、オープニングの音楽が流れる。
近江屋が座敷で倒れる。

主水が仕留め仕事を終えると、音楽が止まる。
「死んでください!」と言うのは、「仕置人」の第1話と同じかな。
「八丁堀!見たぞ、証拠は!」で、貢がバチを構えると「旅愁」が流れる。

この貢のバチですが、表面のカバーを取り去ると、刃が仕込んであるんですね。
そんなもの、作ってたんですね。
高野長英を匿った罪で3年間、追われていたというから、その間に役人に見つからない武器を携帯していたし、元々御家人で武術の心得はあるだろうし、逃亡生活でさらに腕が磨かれたのかも。

そのバチの刃の部分に、貢の顔が映る。
すごく凝っている映像。
主水と互角に渡り合った貢の腕は確かで、湯川をアッサリ仕留める。

でもその後、貢は我に帰ると、うろたえたように部屋を出る。
このうろたえ方がすごい。
金で人を殺せる自分の暗い部分に気づかされて、うろたえたように見える。
この最初の殺しって、実に貢を良く表していたんですね。

中村家の先代当主の13回忌で会った、りつの末の妹・あや。
あやが連れてきた貢が笠を取ると、主水がしげしげと貢を見る。
せんにりつの婿殿、あなたの兄上を言われた時の「兄上?!」という貢の顔がおかしい。

ラスト、こっそりと、でも威圧感ある明るい声で「にーさん」と主水につぶやく大吉。
もう、その途端、主水がゾオーッとするのがわかっておかしい!
唇まで、ワナワナしている。

最後の大吉の「義兄さん」にゾーッとした理由。
主水は大吉みたいなタイプは、鉄で慣れてるんだと思うんです。
だけど、貢みたいなタイプと組むのは初めて。

貢の不信感もわかるし、鉄や錠といった治外法権と組んでいたんだから、貢のような要求に対する寛容なんて深い、大きい。
だけど、大吉とこれから義理の兄弟と言う関係で、どんな迷惑、難儀が降りかかることか。
考えたらゾッとする。

そりゃ、鉄から「義兄さん」なんて呼ばれたらゾッとするわ~と思うと、おかしい。
この大吉の言い方がまた、うまいんだ。
主水がガクガクブルブルになり、思わずお経に身が入るのが笑えるラストでした。


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2012.12.27 / Top↑
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