こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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そりゃあんたの覚悟だろう 「暗闇仕留人」第9話

第9話、「懸想して候」。


いつものように、おきんが神社の境内で怪しげな西洋のものを売っていた時だった。
黒船が来るようなご時世に、毛唐のものを売るのはけしからんと浪人者数名が絡んできた。
おきんは一歩も引かず、浪人たちに「てめえら、一度でも毛唐にケンカ売ったことあんのかよ!」と啖呵を切った。

すると、浪人者がおきんの帯を切り裂いた。
着物が脱げそうになったおきんは、人気のない場所まで逃げ去った。
その時、おきんに「安物だが、良かったら間に合わせてやっておくんねえ。とんだ災難で」と帯を渡した男がいた。
担ぎ呉服屋のようだった。

おきんが帯を結んでいる間、男は階段に腰掛けてタバコを吸っていたが、主水と岡っ引きが来るのを見て、顔色を変えて逃げた。
帯を結び終えたおきんが来た時、タバコのキセルを残して、男はいなくなっていた。
やってきた主水におきんが声をかけると、主水は香具師の女が浪人者に乱暴されていると聞いて、飛んで来たと言う。
「何でもな、帯を真っ二つにたたききられて、ガタガタ震えてた姿がめっぽう色っぽかったって話だぜ」。

主水の言葉を聞くと、おきんは「スケベ!」と言って去っていく。
岡っ引きがやってきて、「旦那!あの女ですよ!さっき弁天様をちろーっと拝ませてくれたのは」と言う。
「あの女?!」
主水が驚くと、おきんが振り返り、舌を出す。

その夜、雷雨が激しい中、主水を同僚の田口が訪ねて来た。
妻が腹痛を起こしたので、今夜の夜回りを変わってほしいと頭を下げられ、主水は承知した。
「すぐ行ってくださいね」と言われた主水の背後で、2人でゆっくり過ごそうと思っていたりつがものすごい形相で「あなた!」と怒った。

雨が上がったその夜、主水が出勤すると呼子が鳴り響いていた。
するとまだ雷鳴轟く主水の前の暗闇で、岡っ引きが追っていた男に刺された。
主水は走ってきた捕り方たちに「追え!」と指示し、刺された岡っ引きを助け起こした。

岡っ引きは逃げた男を呉服屋の文七と言って、1年がかりで追っている殺し屋だと言った。
今夜も殺しの現場を押さえようとして、こうなったらしい。
首の急所を一突きしていることから、かなり手馴れている。

雨上がりに歩いていたおきんは、目の前に現れた文七に「あんた!」と目を輝かせた。
文七は御用の提灯を見ると、いきなりおきんを抱きすくめた。
近くまで来た捕り方は抱き合う2人を見て、「ちぇっ、いい気になりやがって」と言うと、文七を探しに散った。

捕り方が行くと文七はおきんに謝り、賭場に出入りがあって、追われたのだと説明した。
文七がぬれているので、おきんは風邪を引くと言って、自分の家に連れて行った。
辺りを見回す文七を部屋に入れると、おきんは半次の着物を着せた。
「旦那さんのものをお借りしてしまって」と恐縮する文七におきんは、今旅に出ている弟のものだと言った。

「それじゃあ、姐さん、お1人で」。
「ええ」。
文七が名乗ると、おきんはこの前の礼を言って、帯と文七が忘れて行ったキセルを出した。
おきんが急にいなくなったわけを聞くと、文七は言葉を濁し、帯は今夜のこともあるし、差し上げますと言った。

「こんな時はお互い様」と言ったおきんの淹れた茶を、文七は「あーぁ、うめえ」と言って飲み干した。
おきんは文七に「お上さん」と聞いたが、文七はそんな身分じゃないと言った。
「身分って…、お上さん持つのに、身分が関わりあるんですか?」
文七はおきんをじっと見つめ、取り繕うように「そろそろ、おいとましなくちゃ」と立ち上がった。

おきんは離れがたく、「あと半時だけでも」と引き止めたが、文七は「また参ります。今夜のところは」と言った。
「おきんさん。本当のこと言うと、あっしだって怖ろしいんです」。
「怖ろしい?」

「あんた、他人のような気がしねえ…。いや、こんなあったけえ心持ちになったのは生まれて初めてなんだ」。
そう言うと文七は出て行った。
おきんはその後、「あ~」とうっとりした顔をした。

翌日、文七は馬喰町の辰五郎を訪ねた。
辰五郎に文七は、自分にもやっと、人並みに惚れた女ができたと言って、足を洗いたいと言った。
所帯を持ち、心に欠片ほどでも暖かいものが灯ってしまったら、裏の仕事は続けていけるものじゃない。
だが辰五郎は夕べ、文七が八丁堀に現場を見られて人相書きが出回ったのと言って、手配書きを見せる。

この30年、自分が使った仕事師で、こんな無様なドジを踏んだ男は1人もいないと言った。
おまけに目明しまで殺した。
掟どおりにいけば…、文七は覚悟はできていると言ったが、辰五郎はどうしても足を洗いたいなら、もう一仕事してもらうと言った。

本所の材木問屋、檜屋の後添えで、おしのという評判の美人だ。
おしのにはこの春、子供が生まれた。
文七に殺してもらいたいのは、先妻の子で、6歳になる音松だ。

「子守唄でも歌って、楽にあの世に送ってやんな」。
文七の顔色が変わるが、辰五郎はこの仕事は3日のうちに片付けろと言った。
「これが最後の仕事だ。それを思やあ…」。

文七は飴屋に扮し、檜屋の外で遊んでいる音松の前に現れた。
音松をじっと見つめていると、おしのがやってきて、音松の手を邪険に引いて行った。
その日、おきんは料理を作り、いそいそと文七が来るのを待っていた。
文七が来たと思って出迎えた時、荷物が降ろされた。

入ってきたのは半次だった。
半次は用意された手料理をつまみ、「うまい」と言い、長崎で買ってきたみやげを出した。
「鰐革のな、ハンドラバッグって言うんだ」。
長崎で食べたアイスクリームがうまかった話をし、うなだれているおきんにみやげのショールをかけてやる。

「おきん、どうしたんだ」。
「ごめん、半次、あたいもう、ダメなんだ」。
「ダメ?何がダメなんだ?」
「あんたともう、一緒に暮らせないんだ。ごめんね。何も言わないで、このままわかれてちょうだい」。

「ああ…、そうか。なんだ、お前、俺が留守の間に男でもできたんかい」。
おきんは泣きだし、「ごめんなさい」と言った。
「泣くこたあないじゃねえかよ!」

半次は明るく、おきんとは夫婦でも何でもなく、たまたま一緒に住んでいただけだからと言った。
いつかこんなことになるんじゃないかと思っていた。
その男と所帯でも持つつもりなのかと聞かれると、おきんは泣いていた。
半次は用意された手料理も、その男のためだと気づいた。

「出て行くっていっても、ロクな荷物ねえしなあ」。
「半次、あたいたち、これで縁切りかい?」
「何言ってんだ。何を言ってんだ、今さら」。
「そうだね。男と女なんて、こんなもんかもしれないね」。

おきんの言葉に半次が「バカこけ、こら!聞いた風なこと抜かすな!」と怒鳴る。
半次が外に出ると、後ろを向いた文七がいた。
「そうかい。おめえさんかい。おきんの良い人ってのは。そうか。まあ、せいぜいおきんをよ、幸せにしてやってくれよ。な!頼んだぞ!」
半次はそう言うと、一目散に走って去って行った。

その頃、大吉は妙心尼のところにいた。
妙心尼を押し倒した時、外に誰かいるのに気づく。
窓を開けてみると、半次が立っていた。
妙に思いながらも大吉は、「どうも今夜は気が散っていけねえなあ」と言って、「今夜のところは御仏の教えに従っておこう」と言って、出て行った。

大吉は半次を家に連れてくると、半次は荷物を降ろし、「俺が1人で勝手に旅になんて出て、おきんに寂しい思いをさせたのが悪かったんだ」と泣いた。
半次をなだめながらも、大吉は半次のような優しい気持ちにはなれねえなと言った。
おきんは自分たちの稼業にどっぷり、首まで使った女だ。
それが今さら、足洗ってカタギになろうと言ってもも「そうは問屋が卸さない」。

そう言う大吉に今度は半次は、「何言ってんだよ!それじゃ、おきんがかわいそうじゃねえかよ!」と怒鳴る。
「は、半次、おめえ、一体どっち…」。
大吉がそう言いかけた時、半次が「1両やるから殺してくれよ~」と泣き喚いた。
「半次、おめえ…」。

その頃、おきんは文七に自分の身の上を語っていた。
父親の顔も知らないし、母親も自分が小さい時に死んでしまったが、根がのんきなのか、特別苦労してきた気はしない。
いつも誰かが側にいて、励ましてもらった気もする。

嫌なことはすぐ忘れるし、明日の米の心配もしない。
「お天道様と、米の飯はついて周る、かい?」
文七の言葉におきんは「そう!」と答えた。

だが、この頃、つくづく、そんな暮らしが嫌になってきた。
暖かい家庭がほしいと思う。
「俺たちは似たもの同士だ。きっとうまく行くよ」と、文七は言った。

次の日、おきんと大吉、半次と主水がアジトにいた。
大吉は、おきんの足抜けはどうしても許せないと言う。
主水黙っていた。
「どうして黙っているんだ」と半次に聞かれると、大吉の言うこともわかるし、おきんの気持ちもわかると言う。

「ほらほら、いつでもあんたはそれだよ。物分りの良い横丁のご隠居のような顔をして、肝心なことには頬かむりするじゃねえか」。
半次の言い分に主水が、「俺もつくづく、腐った役人根性が身についてきたかな」と笑う。
「八丁堀!」と、大吉がたしなめる。

その時、貢が入って来た。
貢は来るなり、おきんに花束を渡した。
おきんの名前を言ったわけではないが、友達の祝言に行くと言ったら、あやが渡してほしいと持たせてくれたのだ。
「…、ありがとう」と、感極まったおきんが言うと、大吉は「けっ!ままごとみたいな真似は寄せよ」と言う。

「糸さんよう、あんた、おきんが足を洗って、知らねえ野郎と所帯を持つのをすんなり、認める気か」。
「あんた、どうして認めないんだ?」
貢のアッサリとした言い方に、大吉が「ど、どうしてって、おめえ…。俺たちは仮にも、殺しを商売にしているんじゃねえか」と口ごもる。

「だから?」
「だからって…、そんな奴が人並みの幸せつかもうなんて、ふざけちゃいけねえよ!」
しかし、貢はもっとアッサリと言った。
「そりゃあんたの覚悟だろう?!自分の覚悟を他人に押し付けるのは、どうかと思うね」。

「他人」という言葉に、大吉はひっかかる。
「他人?はーん、俺たちは仲間じゃなかったのか」。
「そりゃ仲間さ」。
「しかしね大吉さん、どだい殺しなんてものは自慢できる稼業じゃないんだ。私は今に天罰が下ると思ってる」。

主水も、背を向けながら聞いていた。
「だからこそ、私たちの仲間からまともな幸せをつかめる人が出てきたら、私は素晴らしいことだと思いたいんだ」。
おきんが、すすり泣く。

しかし、貢の目が鋭くなり、おきんに向かって聞く。
「おきんさん。1つだけ聞いておきたいことがある。その相手の男というのは、もちろんカタギなんだろうな」。
「ええ」とおきんが答える。
「そうか」と、貢の目が和らぐ。

「所帯持ったら、一日も早く俺たちのことは忘れるんだ」。
話は決まった。
「じゃあ、私はお先に」と半次が出て行く。
主水も大吉も、背を向けていた。

しかし翌日、檜屋の音松の前に、飴屋に扮した文七が現れた。
河原に音松の遺体が上がった。
検視をした主水は、溺れて死んだのではない、首の傷が先ほど殺された相模屋と同じだと言った。
「ひでえこと、しやがる」と主水が目を細める。

大吉の家で、半次はしょげていた。
そこに主水が現れ、「世の中には勘弁できねえ、ケダモノがいやがるぜ。罪のねえ、子供を殺しやがった。通り名をコウモリの文七とかいう野郎だが、心当たりねえか」。
主水が出した手配書を、半次が奪い取る。
「あの野郎だ」。

おきんの家に転がり込むように戻った文七は、ひどくよろけ、歩けなかった。
「今、布団を」と言ったおきんを引き止め、「おきん、俺は…」と言ったがすぐに「そうだ。お前に良いものを見せてやる。50両!これだけあれば当分の間…」と言った。
だが、おきんの顔色が変わる。
「何だおめえ、うれしくはねえのか。何だ、その目は?何でそんな目で俺を…」。

言いかけて文七の耳に、子供の泣き声が聞こえてくる。
川の流れが目の前に現れる。
文七の目が、恐怖に怯える。

「おまえさん。ひどい汗。どこか具合が悪いんじゃ」。
「水をくれ。水を…」。
水を汲みに行ったおきんに、そっと外から半次が「話があるんだ。例のところでみんなが待ってるぞ」と言う。

「何だよ、あたいはもう、足洗ったじゃないか」。
「お前に関わりのあることなんだよ」。
おきんが行くと、全員が暗い顔をして待っていた。

話を聞いたおきんは、呆然とした。
「嘘よ。あの人が子供殺すなんて、そんな!」
「嘘じゃねえ。俺はこの目で確かめてきたんだ」と主水が言う。
おきんが文七が床に撒いた50両を思い出す。

「みんな…、どうしようって言うのよ」とおきんが言う。
「殺す」。
貢が、暗い顔でつぶやいた。
主水が「おきん、諦めろ。罪もねえ年寄りやガキ殺めるなんて…、許されることじゃねえんだ。悪い夢だったなぁ…」と言った。

おきんはうつむいていた。
貢が外に行こうとした時、「待って!」とおきんが悲鳴のような声で止めた。
「あたいがやるよ」。

貢がおきんを見つめる。
「おきん!」
半次がやってくる。

おきんは戸を背にして立つと、「おきんが命がけで惚れた男なんだ。あたいが、やるよ」と声を出した。
主水が「文七逃がすようなことがあれば、おめえも殺すぜ」と言った。
おきんの目が涙で一杯になる。

家に戻ったおきんに、文七が「どこに行ってたんだ。さっき、誰か来たようだったが」と言った。
「夢…、見てたんじゃない」。
「隠すな、おきん。来たのは町方だろう」。
「やっぱり…。ちっちゃい子を、手にかけたんだね」。

文七が跳ね起きる。
「なぜ。なぜそんな非道なことを」。
「そうか、そこまで知られたんじゃ、隠したって始まらねえ。俺はな、人殺しを稼業にしていた男だ。そんな俺でもガキをやったのは初めてだったぜ。あんまり気持ちのいいもんじゃ、ねえ。なぜやったかって?やらにゃあ、俺が殺される。人間とことん、てめえの命は惜しいもんだ」。

「あたいは命なんか、惜しくない!あんたを殺して、あたいも死ぬ」。
「おきん!」
「もうおしまいよ!この家は町方に取り囲まれてる!」

おきんは包丁を持ち出すと「死んで!」と文七に向ける。
「死んで!死んで!死んで!」
文七に飛び掛るが、文七はおきんの手を押さえつけた。

おきんが畳みに投げ出され、文七が包丁を振り上げる。
「文七!」
その声に文七が振り向くと、貢がバチを振り上げた。
貢のバチが、文七を刺す。

バチを抜くと、文七が倒れる。
おきんが見つめる。
貢が振り返ると、主水も大吉も、半次もいた。

文七の傍らに座った主水が「文七。檜屋の音松殺したのは、誰の差し金だ。吐いちまいな。楽になるぜ」と言った。
「あんた、言っとくれ!」
「檜屋の後添えが、馬喰町の辰五郎親分に…」。
そう言うと、文七は息絶えた。

おきんは文七が持って来た巾着を逆さにした。
小判が飛び散る。
「これで、音松坊やと、この人の仇を討っとくれ」。

貢が沈黙している。
主水がうなづく。
大吉も、半次も黙っていた。

やがて、大吉、半次、主水、貢と続いて出て行った。
1人残ったおきんは「あたい、あんたに会ったこと、後悔しないよ」と文七の横で言った。
そして泣き崩れた。

翌日、檜屋をおしのが出て行く。
大吉と半次が後をつけていく。
馬喰町の辰五郎も出かける。
その後を、主水がついていく。

おしのと辰五郎が密会していた。
これで、檜屋の跡取りは、おしのが生んだ子供1人になった。
おまけに、誰かおせっかいがいて、文七の後始末までしてくれたと辰五郎は笑った。

「悪いお人」。
「さあて、どちらが悪いかは、閻魔様に会うて、伺ってみませんことにはな」。
おしのが寝所に引っ込んだ時、半次が「親分さん、お楽しみのところを、野暮でござんすが、ちょいと、お顔を貸してはいただけませんか」と声をかけた。

辰五郎は廊下に出てきた。
廊下から外をのぞくと、主水が辰五郎の手を取り、庭に引き摺り下ろす。
はっと息を呑んだ辰五郎のわき腹を刺す。
その時、客と女が笑いながら、廊下を通る。

主水の手が止まる。
辰五郎の肩に手をかける。
やがて、客と女は行ってしまう。

主水は一気に辰五郎を刺し、小刀を抜くと辰五郎の袖でぬぐう。
そして辰五郎の襟首をつかむと、井戸に向かって突き飛ばす。
目を見開いて辰五郎は、井戸の釣瓶に捕まる。

辰五郎が井戸に落ちていく。
半次が釣瓶をつかみ、水音がしないよう、ゆっくりと降ろしていく。
主水が冷たい目で見ている。

おしのは、寝所で横たわっていた。
大吉が近づくと、おしのは大吉の手を取り、胸元に導く。
胡桃がすりあわされる音がする。

ギョッとしたおしのが振り向く。
胡桃が割れる。
おしのが起き上がって逃げようとする。

大吉が押し留め、手を上げる。
おしのの心臓をつかむと、おしのは宙を見つめて固まった。
大吉が出て行く。

翌朝、ぽつんとおきんが境内で商売道具を前に座っている。
半次が近づいてくる。
おきんのとなりに座ると、口上を述べ始める。
前に座って、商売道具をいじっている子供をからかう姿に、おきんがやっと微笑む。



恋するおきんは、啖呵を切るおきんとは別人のよう。
いつもの威勢のおきんとは違うところに居合わせるなんて、まさに運命の出会い…だったのに。
「旦那!あの女ですよ!さっき弁天様をちろーっと拝ませてくれたのは」と言われて驚いた主水に、振り向いて舌を出すおきん。
こういうとこ、すごくキュート。

文七は伊藤孝雄さん。
「ああ~、うまい」とおきんの淹れたお茶を飲む時の表情が、本当にうまそう。
奥さんがいるのか、旦那がいるのか、手探りでお互いの状況や好意を確かめ合う会話が微笑ましい。
おきんが文七に惹かれて行く態度と表情が、見事。

文七が帰ろうとした時、「待って」という声がとってもかわいらしい。
そしてこの後、おきんの表情で、恋に落ちて世界がばら色になったのがわかる!
今回、おきんの生い立ちも、文七に語られる。

大吉の家で、大吉と話している半次が、すごくいじらしい。
おきんが抜けると決まって、「それじゃ、私はお先に」と出て行く時のやるせない表情も上手い。
大吉の発言は、この稼業をしているなら、当然みんな自覚していると思っていたこと。

でも主水は長い付き合いのおきんも幸せになってほしいし、答えが出せない。
これ以降の主水には、こういう葛藤が見られませんね。
そこで、そんな風にみんなが葛藤しているのに、貢が花束持って「おめでとう!」だもん。
ビックリですよ。

しかも貢は「あんた、どうして認めないんだ?」と、当然のように言う。
あんまりにもアッサリ言うから、大吉が戸惑って「ど、どうしてって、おめえ…」と一瞬、絶句。
「俺たちは仮にも、殺しを商売にしているんじゃねえか」に対しては、まるで普通のことみたいに「だから?」って。

大吉としては「だから、って…(おいおい)。そんな奴が人並みの幸せつかもうなんて(皆まで言わせるな)」って感じ。
すると、「そりゃあんたの覚悟だろう?!自分の覚悟を他人に押し付けるのは、どうかと思うね」。
ええーっ?!
そんなこと言われると思ってなかった大吉は、言葉に詰まって絶句。

さらに「他人」と言われて大吉、「俺たちは仲間じゃなかったのか」。
大吉のほうが、足抜けに厳しい分、仲間意識があるんですね。
後でわかるけど、大吉は最初の親分のところを抜けてきた時から、覚悟持ってやってた。

貢には、仲間は一蓮托生、地獄の道連れという意識がまだないように見える。
どうりで、どこか冷たかったわけです。
前回からやっと仕留人意識が少し芽生えたと思ったけど、貢は裏の仕事を「覚悟」を持ってやっているんじゃなかったように思える。
貢の論理はさらに続く。

「どだい、殺しなんてものは自慢できる稼業じゃない。私は今に、天罰が下ると思ってる」。
インテリの導き出した正論に、大吉じゃ論理立てて言い返せない。
どっちの言い分もわかる主水は、黙ってる。
「だからこそ私たちの仲間からまともな幸せをつかめる人が出てきたら、私は素晴らしいことだと思いたいんだ」。

本当なんだろうけど、このアッサリさ、本当にこれがどういうことかが、貢にわかっているようには思えない。
それはみんな、そう思ってるけど、そんなこと自分たちがしてきたことを思えば許されないというのが、この商売をしている人の感覚だと思う。
裏の仕事をしている人間には当然あると思っていた考えが、貢にはない!

でも貢の思いもかけない言葉に、おきんは泣ける。
だけど、1つだけ、貢が鋭い目で聞いてくる。
「相手の男というのは、もちろんカタギなんだろうな」。

何にも知らないおきんは、涙声で「ええ」。
すると、貢の目が優しくなる。
石坂さんの細かい演技!

本当なら、元々、おきんを思っていた半次だって、こんな風に言いたかったんだと思う。
でも、言えないからこうして集まっていた。
だというのに、貢がさっさと結論を出してしまった。

それで、半次が「じゃ」と、振り切るように一番最初に出て行く。
主水も大吉も、苦々しい顔で黙っている。
貢が正論で結論出しちゃったんじゃあ、しょうがない。

しかし、おきんの相手が子供を殺すような男だとわかると、一番最初に、アッサリと「殺す」と言ったのは貢だった。
裏稼業に一度入った者は、死ぬまで抜けられないという掟の厳しさ。
そういう掟からおきんをアッサリ外してやろうとする貢が、相手がカタギじゃないとわかると「殺す」と言う。
まるで、自分が裏切られたかのように「殺す」と言う。

全員がおきんに、「諦めろ」と言う。
そこでおきんは心中するつもりだったけど、文七はおきんをとっさに殺そうとしてしまってた。
ここら辺が、あの稼業の人の悲しいサガじゃないか。

しかし、文七を殺した時の貢は、一瞬、すごく気が引けている。
主水たちを振り返っちゃう。
辰五郎に対して、主水は軽蔑のまなざしを送ってる。
半次は音を立てないよう、主水をサポート。

辰五郎は、遠藤太津朗さん。
悪女・おしのは、「助け人」の4話で島送りになった女囚を熱演した川崎あかねさん。
「仕置人」の鬼寅と今回と、おきんの恋は哀しい結末を迎えました。
おきんは、やっぱり、普通に幸せにはなれないのでしょうか。

今回の仕留め料は、文七が持って来た50両。
1人10両の大仕事なのに、あまりの展開に誰もそのことに関しては一言も言わない。
この一方、夜勤を代わっちゃった主水に対して、2人きりで過ごそうと思っていたりつが怒る。
雷鳴と稲光で、りつの顔が白く浮かび上がるのが怖い。

最後に放心してしまっているおきんに近づき、何もなかったように口上を述べる半次が優しい。
半次の優しさに、おきんが笑みを戻す。
おきんのかわいらしさと、半次のいじらしさ、優しさが見えました。

あ、あと貢ですね。
貢さんの感覚がよくわかりました。
おきんの悲恋と、貢の仲間、裏稼業への考えがわかった。
みなさんの演技も、堪能致しました回です。


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Comment

先月のBS朝日にて…
編集
「仕留人」の再放送は何度か観てますが見逃していた、この話を観れました。
「新仕事人」でも加代が将来を誓った侍崩れを自分で刺そうとする話があり、
悲劇の描き方は解り易くなっていました。

おきんは自分で最後まで文七に傷一つつける事は出来ていませんが
アジトのシーンでアングルを回転させながらメンバーが
おきんに対して考えを述べていくシーンで一番、遠くに半次がいて
彼の複雑な心情を代弁している事を示唆したり
殺し屋でも超えてはいけない一線を越えてしまい
動揺しまくりの文七とおきんのアップを交互に映す等
演出はやはりこの時期、凝ってますね。
2016年03月22日(Tue) 17:53
巨炎さん
編集
>巨炎さん

こんにちは。
お久しぶりです。
また訪問してくださって、ありがとうございます。

>「仕留人」の再放送は何度か観てますが見逃していた、この話を観れました。
>「新仕事人」でも加代が将来を誓った侍崩れを自分で刺そうとする話があり、
>悲劇の描き方は解り易くなっていました。

ありましたね。
主水の優しさが印象的でした。

>おきんは自分で最後まで文七に傷一つつける事は出来ていませんが

自分でやると言いましたが、無理でしたね。

>アジトのシーンでアングルを回転させながらメンバーが
>おきんに対して考えを述べていくシーンで一番、遠くに半次がいて
>彼の複雑な心情を代弁している事を示唆したり

>殺し屋でも超えてはいけない一線を越えてしまい
>動揺しまくりの文七とおきんのアップを交互に映す等
>演出はやはりこの時期、凝ってますね。

これはねえ…、やってはいけない一線です。
鉄が「俺は外道にはなりたかねえよ」と言った、まさに外道がこれですね。

この辺りの作品の映像の懲り方って、本当にすごいです。
言葉にしないで心情を投影する映像で見せる。
今ならわかりますが、すごい技術と感覚が必要なんですね。
それと、見る方にも、想像力や共感力が必要です。
だからこういう映像の作品って、想像力を培うのに良かったんだなと思います。

コメントありがとうございました!
2016年03月27日(Sun) 11:00












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