第14話、「切なくて候」。


大吉が府中の宿で、どんちゃん騒ぎをしていた時、本陣には60万石の尾州藩の鷹匠・田村伝蔵とその家来が泊まっていた。
田村と稲葉は大吉たちがうるさいと文句を言いに来るが、酔っ払っている大吉はよく理解していなかった。
一足遅れて、半次がやってくる。

大吉は墓を作る仕事があるから来てくれと半次に言われて、こうして宿で待っていたらしい。
だが大吉を府中で待たせていたのは墓石の仕事ではなく、実は半次は他の連中にも内緒の仕事を頼みたいのだと言う。
半次に話を持って来た者の様子からすると、それは殺しの依頼らしい。

翌日、半次は自分の生まれた故郷の村へ行った。
幼い、年の離れた弟の利助が、家の前で遊んでいた。
「おう、トシか。俺だよ。忘れちまったのか。お前の兄貴だよ」と半次は声をかけた。

「1人か?どうした、かあちゃんは?」
利助は返事をせず、遊びをやめて立ち上がった。
それを見ながら半次は「けっ。相変わらず愛想のねえガキだ」と毒づいた。

家に入った半次は鍋を除き、芋があるのを見て、「芋ばっかり食ってやがる。何にも変わっちゃいねえ」と言った。
半次が江戸のみやげだと言って、飴だの、駒だのを出したが、利助は何も言わず行ってしまう。
「どうでえ。あれでも弟か」。
半次がそう言った時、頭に手ぬぐいを巻いた義母のたよが目を丸くして現れた。

「半次さん」。
「どうも。しばらくです」。
「いつ、こちらへ?」

「ええ、この辺はちょくちょく通るんですけどね、たまには顔出ししなくちゃいけねえと思って。あの、これみやげものってほどのものじゃないんですけど、利坊にでもやってください」。
「うちにはもったいないです」。
「ま、そう言わず。さ、親父に挨拶するかな」。

半次は仏壇に向かったが「なんだ、線香もねえや」と声を出した。
たよが「隣で借りてきます」と言った。
しかし半次は「いいよ、いいよ。親父だって貧乏暮らしは百も承知だよ。てめえも一生、水のみ百姓で終わっちまったんだからな」と言って拝む。

その時、落窪の伊太郎という男が半次を呼びに来た。
半次はたよには、伊太郎は博打はするが悪党ではないと説明する。
「ただ、村の奴らよりちょいと度胸がありすぎるだけだ」。

半次を呼びに来た伊太郎は、捨吉という男に会わせた。
「最初に断っておくが、俺は殺し屋じゃねえよ。こいつに頼まれたんで、ひょっとしたら、その道のお方に口をきいてやってもいいって話だよ。勘違いされちゃ困るよ」。
「ええ、そりゃもう」。
誰を殺すかと半次が聞くと、尾張藩の鷹匠・田村伝蔵だった。

去年の今頃、この村に田村が来たので、捨吉の女房は名主の家に手伝いに上がった。
最初の話では女房がお鷹に粗相があったということだったので、捨造は泣く泣く諦めた。
しかし伊太郎が名主の下男がうっかり口を滑らしたのを聞いてきて、本当のことがわかった。
田村が捨吉の女房に手を出そうとして抵抗され、カッとなった田村が女房を斬り捨てたのだと言う。

捨吉は1人で仇を討とうとしたが、田村は尾張様お気に入りの鷹匠だし、侍上がりで、とても百姓の捨吉に殺せる相手ではない。
半次に「殺し屋だって楽な仕事じゃない、高い金がかかる」と言われた捨吉は、畑も馬も売って3両2分の金を作ったと言う。
その時、田村が通りかかった。

田村の今夜の泊まりは、名主の屋敷だ。
飛び出して行こうとする捨吉だが、半次は捨吉まで死ぬことはない、「仕事は玄人に任せておきなさいよ」と言った。
半次は宿で、3人の女郎と花札をしていた大吉を呼び出す。
標的は夕べ、大吉に文句をつけてきた鷹匠だと言うと、大吉は鷹は目を突付きそうで苦手だと渋った。

半次は大吉が金に困っていると言うから、他の仲間に内緒で来たのだと文句を言った。
もめている2人の背後から、主水が近づいた。
「じゃあ、おめえその金、どうするんだ」。
「あっ、八丁堀!」

半次は突然の主水の声に驚いた。
主水は、せんとりつをここまで迎えに来ていたのだ。
大吉と半次は田村のことを、主水から聞きだした。

田村はちょくちょく問題を起こす男で、この前も神田の料亭でもお鷹に無礼があったと難癖をつけて、10両ふんだくった。
だが、三つ葉葵がバックにいるのだから、下手をすれば首が飛ぶ。
主水は他の仕留人仲間への口止め料を、ガッポリ頂くと言った。

大吉は半次の家に泊まることになり、たよが迎えた。
半次がたよにほっといてくれないかと言った時、誰かが表に来た。
たよを見送りながら大吉が、「ばかに若けえなあ。ほんとにおめえのおふくろか」と言って、たよの年を聞いた。
すると半次が「うるせえなあ!おめえには何のかかわりもねえだろ!」と声を荒げた。

たよが戻ってきて、半次に村の寄り合いに行ってくると言った。
「なかなかイイ女じゃねえか。まだ色気があるし、鄙には稀、ってやつだ」。
「バカヤロウ。お前には女の事しかねえのか!たまには仕事のこと、考えたらどうだ!」と半次が怒る。

寄り合いに行くはずのたよは、鏡に向かって、唇に念入りに紅を塗っていた。
半次が大吉に名主屋敷の見取り図を見せていた時、利助が聞いていた。
「おい、トシ、大人の話聞くんじゃねえ。早く寝ろ」。

半次の言葉に返事もしない利助を見た大吉が、「愛想のねえガキだなあ」と言った時だった。
「余計なお世話だ!俺のたった一人の血を分けた弟だぜ。みやげのひとつも持ってきてから、文句言えってんだよ!」と半次が怒鳴った。
いつもとはまったく違う半次の様子に、大吉が驚いて半次を見る。

名主屋敷に、大吉と半次が忍び込む。
半次が奥の田村のいる部屋の戸を開けて、中を見た時だった。
田村と一緒の女が見える。
それは何と、たよだった。

半次は廊下で待っている大吉を静止し、表に連れ出した。
黙って前を向き、ひたすら歩く半次に大吉は「他に誰かいたのか」と聞く。
「どうかしたのか」。

「女がいた。おふくろだ!」
「おふくろ?」
「おふくろが、伝蔵と!」

その頃、伝蔵は、たよに女も鷹も同じだと言っていた。
「もう俺から、逃れることはできん」。
「逃げようとも思いません。いつまでも、このままずっと」と、たよは言った。

宿で半次は、大吉に自分とたよのことを語り始めた。
半次の母親は、半次が15の時、なくなった。
父親はすぐに、たよを連れてきた。
日野の飯屋にいたとか聞いた。

初めは半次は、うれしかった。
たよは綺麗で若かったので、まるで姉ができたようだった。
そのうちに何だか、半次は家にいるのが息苦しくなった。
たよが夜に薄化粧などしていると、むしゃくしゃした。

半次が16の時、この家には2度と戻らないと啖呵を切って、江戸に飛び出して行った。
それから半次が家に戻ってきたのは、父親が死んだ時だった。
「もうこの家は俺のもんじゃねえ、トシと、あの女のもんだって。そう心の中で決めてな。それからなるべくこの家には近寄らねえようにしてたんだ。そりゃ人間誰だって、ふるさとは懐かしいやな。でもよ、何とか忘れよう忘れようと、そう勤めてきたんだ俺は」。

半次は泣いていた。
「それをあの女…、ちくしょう。なんてことしやがるんだ」。
大吉が起き上がる。
たよが帰ってきたのだ。

利助のところに帰ってきたたよに、半次は言った。
「出てってくれ。トシは俺が引き取ってやる。あんたは出てってくれ。名主屋敷であんたが何してきたか、俺は知ってるんだよ」。
たよは、ハッとする。
「俺だけじゃねえ。村の奴らはみんな知ってるはずだ。あんたももう、この村にはいられねえはずだ」。

夜が明ける前に出て行ってくれと言う半次を、大吉が止めた。
しかし半次は余計な口出しするなと言って、大吉とも揉め始めた。
「仮にも、おめえのおふくろだろう」。
「出てけよ!おめえも出てけ!」

そう言った半次の着物の裾を、利助が引っ張っていた。
利助は泣いていた。
それを見ると半次は、何も言えなくなった。

翌朝、主水はせんとりつに、部屋の値段が違うことから、朝食の内容が悪いことをチクチク言われていた。
半次はたよに、出て行けと行った夕べの返事を聞いていない」と言うと、たよは「行くところがないし、身よりもないと言って、ここにおいてほしい」と言った。
たよが「相談してみます」と言うと、半次は「田村伝蔵とはどういう男か知っているのか」と聞いた。
半次は伝蔵は捨吉の女房を殺した、鬼のような奴だと言うが、たよは「しかたないんです」と言った。

「お鷹様に無礼を働けば、殺されたってしかたがないんです。名主さんも村役人も、ハッキリそう言ってました。田村様もお役目ながら、しかたがなかったんだと、そう申しておりました」。
半次が「違うんだ」と言うが、たよは「あの方は、優しいお方です。そのことは私が一番良く知っています。でなければどうして女の私が好きになるでしょう」と言った。

そして、たよは半次が出て行ってからのことを語った。
夫が死んでから、たよは1人で寂しかった。
村の男たちが、どこにいても近寄ってきた。
だけどたよは、一度だって、夫や半次に顔向けができないようなことはしなかった。

でも本当は寂しかった、誰かに頼って生きていきたかった。
川の水で田んぼが流された時は、利助の顔を見て、いっそ死んでしまおうかと思ったこともある。
田村とはお鷹狩りの時、会えるだけだ。

だが、たよはそれでももう、田村なくては生きていけない。
どんな陰口たたかれようと、後ろ指さされようと、別れるつもりはない。
たよの言葉を、半次はうつむいて聞いていた。

半次は伊太郎に「この話は断る」と言った。
「おっかさんのことか」と言われて、半次は「やっぱり知ってたんだな」と言う。
たよを取られて悔しくないのかと言われても、半次は断ると言った。
3人の頭上を鷹が鳴きながら、飛んでいく。

田村はたよにいよいよ明日、殿が来るので今夜で会えなくなると言った。
裏木戸を開けておくので、今夜来るようにと言われて、たよは「はい。必ず」と答えた。
その日、捨吉と伊太郎は、田村に向かって斬りこんできた。
だが果たせるはずもなく、田村の前で斬り殺された。

半次は女郎と遊んでいる大吉に、頭を下げて謝っていた。
その時、鷹匠に百姓が2人、斬りかかっていって殺されたという話が入ってくる。
大吉の視線に、「だからどうだってんだよ。知ったことか!」と半次は怒鳴り、大騒ぎし始める。

それは主水の向かいの部屋で、主水は相変わらずせんとりつに文句を言われっぱなしだった。
足のまめが割れたたと言うせんとりつの為に薬を貰ってくると抜け出した主水は、大吉に仕事のことを聞く。
大吉は、「お流れだ」と言った。

夜、田村は上司の稲葉平十郎に、たよが来る話をしていた。
田村は稲葉の元に、たよを寄越すつもりだったのだ。
たよは途中で菊の香りを身につけ、田村に会いに来た。

しかし、たよは暗闇の中でもすぐに、相手が田村でないことに気づいた。
驚いて抵抗するたよに、稲葉は「伝蔵も承知のことだ」と言った。
「わしが伝蔵から譲り受けたのだ」。
たよが驚いて目を見開き、稲葉を見る。

「嘘です!」
たよは廊下に逃げた。
そこには田村が待っていて「大人しく言うことを聞け、でないとここで殺されたおこうの二の舞だぞ」と告げた。
たよが驚きのあまり、後ずさっていく。

その夜、半次が夜遅く、家に戻った。
家の中は暗く、半次は灯りをつけて、書き置きをしたため始めた。
利助の小遣いにでも、と、金を置いて行くつもりだった。

仏壇に書き置きと金を置いた半次は、線香が立っているのを見た。
いぶかしげに振り向いた半次は、たよと利助の枕元にも線香が炊かれているのを見る。
半次が見た、たよの顔に、血の気はなかった。

布団をまくって見ると、血のついた鎌があった。
かたわらの利助の首には、紐が巻きついていた。
2人とも体の前で手を組んでいた。
覚悟の心中だった。

主水が呼び出され、宿から出て来る。
大吉に仕事を手伝えと言われて主水は、せんとりつのご機嫌とりで精一杯だ、「旅先の拾い仕事には手を貸せない」と言う。
戻ろうとした主水の背中に半次が「頼むよ!」と言って、抱きつくように引き止めた。

「頼む。一生に一度の頼みだ。手を貸してくれ」。
主水が半次の顔を見る。
「半公、おめえ、いつもと目の色が違うじゃねえか」。

夜半、お鷹狩りの準備で忙しい田村たちのところに、八州廻りに化けた主水が現れた。
後ろには半次がいる。
「どうしても耳に入れておかねばならないことがある。殿様にもしものことがあったら」と言われて、役人は主水を通した。
だが半次は「ここで待て」と言われる。

主水は半次に向かって軽くうなづき、半次もうなづく。
稲葉に会った主水は、代官屋敷に妙な話が入ったと言った。
胡桃の音がする。

稲葉に会った主水は、稲葉がお鷹狩りの旅先で伝蔵を手先に女を次々手篭めにしていると言った。
伝蔵が破格の出世をしたのも、稲葉の推挙によるもの。
「昨夜もたよを弄び、死に至らしめた」と言われた稲葉はうろたえ、刀を抜こうとするが、主水が抑える。

主水が稲葉を背後に突き飛ばすと、大吉が心臓をつかむ。
死んだ稲葉を主水は座らせると、握り飯を手に握らせた。
稲葉は、そのままの姿勢で固まる。

田村は鷹の側にいた。
「気配に誰だ」と言って振り返った田村の耳に、半次の声がする。
「惚れてたんだ」。

半次が現れる。
「かわいそうに。おふくろの奴、てめえに惚れてたんだ」。
「何者だ、きさま」。
半次が匕首を抜く。

田村は刀を抜き、半次を抑えようとした。
半次が突き飛ばされ、田村が刀を振り上げて半次を斬ろうとした時、田村の額に胡桃が飛んだ。
「うっ」と田村が額を押さえた時、半次が田村を刺す。
半次が匕首を抜くと、主水が「帰る」と言いに来た。

その背後は稲葉が死んでいるのが見つかったらしく、騒ぎになっていた。
「半次、行こうぜ」と、大吉が声をかける。
行こうとした半次は、鷹に気づいた。
ハッとして鷹を見つめ、鷹を繋いでいた綱を切った。

鷹は飛んでいく。
夜明け、やっと明るくなってきた道を大吉と半次が歩いていく。
空を見つめた半次に目に、鷹が飛んでいくのが映った。

「あの鷹、どこへ帰るんだろう」。
「奴にもきっと、生まれ故郷があるんだろう」。
「生まれ、故郷か」。
そう言って振り切るように歩く半次の顔を、朝日が照らしていた。



14話なんだけど、やっぱり15話になるべきが入れ替わっちゃったと見た方がいいんでしょうね。
これを最後に半次が退場するのだったら、すごく納得なんです。
軽く別れた主水は、きっと「そうか…」と、後でいろいろ思うでしょうが。

いつものコミカルな半次がまったく違う顔を見せる、半次メインのお話。
大吉が「余計なお世話だ!」と言われて、驚いた顔を見せるのもわかる。
普段はうまく調整役にもなっている半次が、大吉に止められるほど、「出て行け」と無茶を言う。

主水さえ、半次がいつもと違うと言う。
いつもがコミカルだからこそ、半次の境遇の悲惨さが胸に迫る。
おきんがいたら、「半公…」って呆然とするでありましょう。
貢なら察して黙っているか、半次のたよへの気持ちを分析するでありましょう。

たよに対して半次は、最初から妙に他人行儀な丁寧な口ぶり。
しかし、仏壇に線香がないと途端に鋭い声で「線香もない」と言う。
一応、「いいよ、貧乏なのはわかってるから」って言うけど、何だか父親を忘れているみたいでカッとなったように見える。
最初にお線香がないというのが、後の悲劇を知らせるのに効いて来るんですね。

仕事を頼んできた旧友に「俺は殺し屋じゃねえよ」と言う時の半次が、迫力。
大吉と半次が話をしている時に、主水が偶然、現れる。
この時、後ろに主水がチラチラする辺りから、「仕置人」の時の音楽がかかるんです。
「脅かすなよ、お義兄さん」と言う大吉に主水はゾッとしながら、「やめろよ、お前!義兄さんと呼ばれるとぞっとするんだ」と言うのがおかしい。

たよが標的の伝蔵に惚れているというのがわかった時の、半次の悲しみと苛立ち。
義母に裏切られたというより、好きだった女性に裏切られたように見える。
そう、半次は、たよが家に来てしばらくしてから、たよを義母ではなく、女性として感じてたんですね。

それが義母だったから、半次はストレートに自分の思いを出すこともできず、屈折してしまった。
故郷から逃げるしかなかった。
それほどまでにして断ち切ったものを、アッサリ伝蔵みたいな悪党とくっつかれて、半次としては「なんてことしやがるんだ」と泣く。

半次が気になるぐらいだから、村の男たちだって、たよが気になっていたはず。
でもたよは誰かに頼りたいと思いながら、1人でやってきた。
半次に切々と自分を語るたよに、女として業の深さ、罪深さと、1人で生きていけない哀れさ、伝蔵を信じきっている愚かさを感じて迫力。

たよを見ていたから半次は、おきんみたいに1人でがんばってる女が好きで、そういう女の弱さを助けてやりたいと思ったのかもしれない。
自分もたよも情けないと思いつつ、たよが好きな男を殺すこともできず、半次は仕事を断る。
断っても切なくて、何をしても切なくて、荒れるしかない。

半次が生まれ故郷を避けていた理由が、わかる。
生まれ故郷に帰った途端、半次は仕置人の半次でもなければ、仕留人の半次でもなくなってしまう。
切なさをこらえて生きていた時の半次に、戻らざるを得ない。

たよは、吉田日出子さん。
意識していない色っぽさが、たよという女にピッタリ。
独特の口調が、無学で一途な百姓女にピッタリ。

伝蔵を信じきっていたたよだが、ついに残酷な形で伝蔵という男の真実を知った。
一見して、寝ているように見えたたよだが、なかった線香が仏壇に炊かれているのを見て、半次はおかしいと思う。
さらに枕元に焚かれているのを見て、気づく。
最初の「線香もねえ」が、ここで意味を持って来た。

たよはかつて、利助を道連れに死のうと思っていた時、伝蔵で救われた。
だから自分の愚かさを思い知った時、今度は利助と一緒に死ぬしかなかった。
伝蔵のせいだと、半次はたよが話さなくてもわかった。

村人を、たよを、利助を、自分の思いを踏みにじった伝蔵を、半次は自分の手で殺す。
たよが自分と同じだと言っていた鷹。
半次はそれを離してやる。

夜明け、大吉と半次が村を離れる。
たよが伝蔵とは離れられなかったのとは違って、鷹は飛んでいく。
美しい空、飛んでいく鷹。

朝焼けに照らされる大吉と半次。
仕留人の物悲しくも、美しい曲が流れる中、「あの鷹、どこへ行くのかなあ」とつぶやく半次の顔は、凛々しくも哀しい。
「奴にも生まれ故郷があるんだろう」と言う大吉に、「生まれ故郷か」と反芻する半次。
その顔には、もう自分に故郷はないと悟っているようだった。

このラストで半次の出番が終わりだと、すごく寂しい。
すごく哀しいし、タイトル通り切ない。
こんな切なさを抱えて半次が消えたなら哀しすぎるけど、何から何まで納得するしかない。
「仕置人」からいる半次主役の、切ないお話でした。


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2013.09.29 / Top↑
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