電車に乗ってましたら、目の前の広告に石坂浩二さんが出てました。
今、「暗闇仕留人」の、繊細でいつもどこか哀しい糸井貢を見ているので、つい、注目してしまう。
友人が「昔のホームドラマで優しくて、知的な二枚目を演じてて、あの頃、石坂浩二って素敵なお兄さんって感じで、すごく好きだった」と言う。

ああ~、そうそう、そんな感じだった。
「女の子は、ああいうお兄さん、好きだよね」って、そうそう、そんな感じ!
だから「暗闇仕留人」を一番最初の放送で見た時、「へっ?!あの優しいお兄さんが?!」ってビックリしたんだっけ。

普段、殺し屋役とはまったく縁のないようなイメージの俳優さんを選ぶ。
視聴者を驚かせ、その俳優さんの新しい顔を見せる。
それが「必殺」の、殺し屋を演じる俳優さんの選び方だったとは…。
ホームドラマの優しいお兄さんとして石坂さんを認識していた子供は、まさにその「必殺」の戦略に乗せられたのでした。

こうして見直すまで、断片的にしか覚えていなかったんですが、それでも覚えていた印象深いシーンがいくつかあります。
まず、お雪さまご一行の悲劇、最後にそのお雪を食べるシーン。
そして、津川さんとの川の中のシーン。
津川さん、すごかったんですねー、貢を沈めて逆襲にあうシーン、覚えてました。

あやさんの衝撃のシーンも覚えてましたし、その後、何度か貢の武器が変わったのも。
それから、貢は絵が上手い!
実際、石坂さんは絵はプロ級だそうですが、貢は絵が上手いというのも覚えていた。

そしてもちろん、最終回。
いやー、子供には衝撃でした。
知ってる優しいお兄さんが死んじゃったような、そんな衝撃がありました。

途中の変貌や最終回の話からして今見ると、貢は死ぬべくして死んでることがわかるんですが、細かい話は忘れてました。
でも貢の死は、相当の月日が経っても覚えてました。
それほど衝撃だったんですよ。
「ど、どうしよう、あの優しいお兄さん ←まだ言ってる、が…」と、オロオロしました。


その後、石坂さんは、金田一耕助として日本中に認識されました。
あ、貢さん、生き返った…とは思わなかったですけど、何だかホッとしました。
それぐらい、貢の最期は子供には衝撃だった。

良く言われていることですが、古谷一行さんの金田一はすごく人間っぽい。
逆に石坂さんの金田一は、どこか、浮世離れしているところがある。
石坂さんは金田一耕助を、「相当の身分のある男の愛人の子」と設定して演じていたそうです。

なので人とは違った角度からものを見るし、子供の頃から我慢をしてきて、耐えること、自分を抑えることに長けている。
本心を人に明かさないし、喜怒哀楽もあまり表に出さない。
これを知って、「ああ、だから金田一は由緒ある家で、日の当たらない子供にスポットを当てた事件を掘り出すことができるんだ」と思えましたね。
やっぱり石坂さんって本当に知的な俳優さんなんだなー、と思いました。


そんな石坂さんが「仕留人」の糸井貢を演じたんですから、影響が「必殺」にも「主水」にもないわけなかったんです。
貢は「必殺」に対し、明確な答えが出ない問題を提起した。
糸井貢こそ、主水を屈折させた男。

主水は、いや、「必殺」の殺し屋たちは、貢の提起した問題に明確な答えを持たない。
殺した男の遺児の恨みの目を見た鉄が己代松に、「でっけえおつりが来たもんだ」と、割り切って言うぐらいしかない。
「必殺」は、いえ、全ての悪党を退治する時代劇に、貢は永遠の命題を突きつけたと言えます。

悪党を退治するのに、違和感を持つ。
こんな男を、裏の仕事に引き入れるべきではなかった。
そして、最期の仕事となったあの男を貢にやらせるのではなかった。
貢は、自分たちが殺してしまったのだ…。

さらに主水をもっと切なくさせたのは、そんな貢が死ぬ間際に言った一言だったと思います。
裏稼業に疑問を呈し、主水たちとはやはり異質な男に思われた貢が言った最期の一言。
息を吹き返して伝えた一言は、貢が最期だから言えた、彼らを仲間と思っていたからこその言葉だった。


「仕置屋」で最初、主水は裏稼業に戻るのに、かなり躊躇していました。
そしておこうが主水に被害者の手紙を読ませようとした時、暗い顔をして「金だけで良いんだ」と言う。
「仕留人」の時は大吉と嬉々として出会い、半次とおきんに話を持ちかけた主水が。
貢の死に様は、裏稼業に生きがいを感じていた主水を挫折させてしまった。

こんな役ができたのは、石坂さんが貢だったからでしょう。
もちろん、時代からすれば「仕留人」世界は、「仕置屋」世界には繋がってないんでしょう。
だけど、主水の中には貢がいる。
「仕留人」最終回を見て、これ以後、主水の中には貢が存在していたように思えてしかたがありません。


余談ですが、「仕業人」の「必殺」放送200回記念で、貢を演じた石坂さんがコミカルにお医者さんで登場したのは、うれしかったですね~。


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2012.05.08 / Top↑
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