第16話、「間違えて候」。


仕留人、お久しぶりです。

駕籠屋の長作は、罪人を逃亡させた罪でさらし首となり、店も取り潰しにあった。
それは駕篭かきの自供によるものだった。
だが、行く場所もなくなった妻のたねは、夫の首を前にして泣き崩れ、せめて夫の無実だけは晴らしたいと言った。
事件に疑問を持つ岡っ引きの源七は牢内に潜入し、牢にいる駕篭かきの三州と房州を探りたいと頼んだ。

牢内で岡っ引きとわかれば、生きて外には戻れない。
主水の同僚の田口は、この問題を主水にも話す。
同僚の田口に話を聞かされた主水は、今さら危ない橋を渡ることはないと言う。
田口が主水に源七が「納得がいかない」と言っていることを伝えたが、主水は「世の中には納得いかんことはたくさんあるじゃないですか」と言った。

主水は「なるほど」と、源七のまじめそうな顔を確認した。
反対を押し切った源七は牢内に潜入したが、牢に岡っ引きの捨松が近づき、今日入った新入りは岡っ引きだと密告した。
源七はたちまち、牢内で殺されてしまう。

主水はそのことを、貢とおきんに祠で報告していた。
同心の主水が納得行かないことが、奉行所でそんなに簡単に通るのかとおきんは疑問に思うが、貢は「ああ、奉行所って所はな、どんな形であれ、証拠が揃えば黒だって決め付けられてしまうんだよ」と言う。
話がハッキリすれば、仕事にしても良いと主水は言うが、貢は「その程度の話じゃ、とても危ない橋は渡れないな」と出て行こうとする。

おきんも、それなら大吉か半次に頼めと言った。
もっとも、大吉と半次は松枝の方へ墓石を運んでいて、まだ江戸には戻ってきていない。
だが、主水にはもうひとつ引っかかることがある。

今時、駕籠屋はそれほど必死になって落とすような商売でもない。
だが競売にかけられた長作の駕籠屋を、勘定方の競売でビックリするような値段で落とした男がいる。
落としたのは安積屋茂三という男で、以前は岡っ引きだったが、あんまりあくどいことをするので十手を召し上げられた男だった。
その時、祠の奥で物音がした。

「そいつです!その茂三が、私の夫を殺したんです!」と、奥から、たねが現れた。
貢、主水、おきんが驚いて、たねのいる方向を見つめる。
「どうすんだよ。話し、聞かれちゃったよ」とおきんが言うと、主水は「女!ここで何をしていた」と聞く。

たねは、取り潰された駕籠屋の女房だと名乗った。
行く場所を失ったので、この祠をねぐらに使わせてもらっていたと言う。
「お願いです!夫の恨みを晴らしてください!」

主水が「どうする?」と聞くと貢は「大変気の毒だが、私たちのことを知った以上、生きてはいられない」と言った。
おきんがその言葉に「ちょっとぉ…」と口を挟む。
主水は「事情が事情だからな、良く確かめた上で」と言う。
「奥さん、その茂三って男に間違いはないんでしょうね」。

貢の問いに、たねは「今までにも店を譲れと迫られたことがありますし、悪い噂も数限りなく聞いております」と言う。
そして、もうこの世には未練がない。
「夫の恨みさえ晴らしてもらえれば、死んでもいいんです」と言って、5両差し出した。
主水は一応、その金を預かった。

たねの店だった「八坂屋」は「安積屋」となり、茂三が主人に納まった。
そこには、源七のことを牢内の者にばらした捨松もいた。
茂三は既に駕籠屋の客で、養子でキツイ女房を持つ美濃屋の主人に目をつけていた。
美濃屋は妾を持っていることが妻にバレかけ、店を追い出されそうになっていた。

そしてもう1人は、大野藩の姫だ。
姫は近頃、芝居小屋への出入りが激しい。
茂三は、姫が役者の田之助に入れあげていることに目をつける。
捨松は茂三に、武家に手を出すのはまずいと言うが、茂三はまずい仕事ほど儲けが大きいと言う。

その通り、妻に叱られた美濃屋が手切れ金を持って妾宅に行くと、奥の座敷に茂三が座っていた。
きっと美濃屋は手切れ金を持って別れ話に来ると、茂三はわかっていた。
そこで茂三が妾に話をつけてやろうとしたが、妾はどうしても承知しないので、美濃屋の望むとおりに殺してやったと言う。
「何てことしやがる!この人殺しめ!」と言う美濃屋だったが、茂三は「静かにするんだい!」と凄んだ。

「下手に騒ぎ立てすると、おめえさん、獄門だ!俺が今、こっから姿を消してみろ。誰が見たっておめえさんがやったことにならあな!」
美濃屋が黙ると茂三は今度は声を潜めて「心配するこたぁねえんだよ、手はずは整ってる」と言う。
「俺が仲間に頼んでよ世、病気で死んだように取り計らってもらうんだ。出しな」と茂三は美濃屋に向かって、手を出す。
茂三は財布に手を突っ込み、美濃屋が妾に持って来た手切れ金を手にすると、「この一件、うまく行ったら、また又挨拶させてもらうぜ」。

さらにその夜、茂三は大野藩の門の前にいた。
駕籠がやってきて、姫が降りてきた。
役者に入れ込んでいる姫が、茶屋から帰ってきたのだ。
留守居役は姫を見て、姿を現しした。

姫が役者に狂っていると縁談先に知られたら、縁談は壊れる。
留守居役が叱ると、姫はわかっていると言って屋敷に入る。
そのすぐ後、茂三が現れる。

留守居役に姫が落としたと言って、役者絵を見せた。
そしてさりげなく、姫の嫁入り先に役者狂いしている姫だということがバレたら縁談が壊れるという話をして、そういう奴を自分が黙らせても良い…と話を持ちかけた。
留守居役が茂三を屋敷に招きいれたのを、影でおきんが見ていた。

貢と主水が待っている祠で、おきんは茂三は自分の商売を悪事に利用しているひどい男だと報告した。
「しょうがないな。私がやろうか」と言う貢に主水は「バチはいけねえぜ。相手は元岡っ引きだ。傷はつけられねえ」と言う。
その夜、貢は出かけていく茂三の後をつけた。
町外れの河原まで行くと、茂三は後ろを歩いてくる貢に気づき、立ち止まる。

茂三は止まり、貢が追い越して行く。
貢が追い越したのを見て茂三はホッと一息つくが、たちまち貢が振り返る。
突然、貢が近づき、当身を食らわせて茂三を川に突き落とした。
茂三は流れて行った。

その夜遅く、墓石の配達を終えた大吉が大八車を引きながら、河原を通った時だった。
2人の乞食が河原に上がった死人から、身ぐるみをはいでいた。
大吉は怒って追い払い、近くに寄ると、それは茂三だった。
茂三の顔色は青く、死んでいるように見えた。

「無駄かも知れねえが…、いっちょう、やってみるか!」
事情を知らない大吉は、心臓つかみの要領で、茂三に心臓マッサージを行う。
すると、茂三は閉じていた目を開け、蘇生する。
「やったー!」と大吉は叫ぶ。

大吉は茂三に自分の着物を着せてやり、大八車で店まで運んでやった。
店では帰りが遅い茂三を、捨松が心配して待っていた。
「あんまり遅いんで、心配しておりやしたよ。どちら行ったんですか」と言う捨松に茂三は「あの世よ」と答えた。

茂三は大吉に礼をしなければならないと言って、家の中へ入れる。
そして礼金として、捨松が1両を突き出す。
大吉はあまりの少なさに「あんたの命は、たったの1両か」と言うが、茂三は「不服そうだねえ。助かったから、1両になったんですよぉ。死んでれば1両にもならないねえ。ありがたいと思わなきゃ」と笑う。

茂三は笑顔で大吉を見送った後、茂三は顔色を変え「俺を…。殺しに来た奴がいる。誰かが、殺し屋を雇ったと見たな」と言った。
捨松は、心当たりと言えば、もとの店の八坂屋か、美濃屋か、大野藩かと考えた。
だが茂三は侍の仕業ではないと言って、明日、自分の葬式を出すと言う。
誰かが網にかかってくるかもしれない。

帰って妙心尼に会った大吉は、人助けをして上機嫌だった。
「今晩、この指で人を生き返らせたんだよ」。
大吉はもしかしたら、この腕で別の仕事ができるかもしれないとまで考えていた。

翌日、茂三の葬儀が行われた。
おきんが安積屋の表でそれを見ていると、たねがやってきて、誰が亡くなったのか聞いた。
安積屋の手代が「手前どもの主人でございます」と言うと、たねは店を覗き込んで、かすかに笑った。
「死んだらいいんだ。あんな悪党」とつぶやいて帰る途中、たねは捨松に拉致された。

それをおきんが見て、仕留人たちが集まる祠に急ぐ。
祠でおきんは大吉に「よお!お前が余計なことしなきゃ、この仕事はちゃんと片付いてたんだよ!」と文句を言った。
主水も大吉に、「おめえがやったことはな、あぶらむしに餌やって太らせたようなもんだ」と責める。
「生き返っちゃうような下手な仕事するからだ!」と言われ、貢は「まあまあ、下手な仕事と言われれば、石屋の言う通りだ」と言う。

だが自分たち仕留人は、依頼人の身の安全を守ってやらなければ行けない。
それに、おたねが自分たちのことを喋ったら、どうなるか。
貢がこの始末は自分がつけると言うが、茂三のところに堂々と入っていけるのは自分だと大吉が名乗り出る。
主水は「なるべく頭数は少ない方がいい」と言って2人に任せた。

捨松の紹介で、茂三は2人の用心棒を雇った。
1人は矢野といって、10年余りも目付けのところで隠密をしていた凄腕だ。
もう1人は麻布という、琉球空手の使い手だ。

茂三は高い金を払うのだから、誰からも自分の体に指一本触れさせないこと。
それから客商売なので、目に付かないようにいてくれということ。
2つを言い渡すと、「これが忘れもしない、私を襲った奴の人相書きだ。ようく見ておいてもらいましょう」と、貢の人相書きを見せた。

その頃、大吉は茂三の家の庭に入り、ウロウロしていた。
土蔵に向かって網戸越しに「たねさん、」たねさんいるか。返事してくれ」と呼びかけた。
返事はなかった。

大吉は、自分はたねの亭主と親しくしていた者だが、たねを助けに来たと言うと、たねは「はい」と返事をした。
暗い土蔵に向かって大吉は「いいか。あんたが殺しを頼んだ相手のことを絶対、しゃべっちゃいけねえぜ。しゃべったら最後、あんたも殺されるんだ」と言った時、茂三と捨松が出てきた。
大吉に気づいた茂三は、「うん?お前さん、そこで何をしているんだね」と聞くと。

大吉は女の泣き声が聞こえたと言って、「女ってやつは優しくかわいがってやらなきゃいけねえよ、かわいそうに」と言う。
茂三は鋭い声で、大吉との貸し借りはもう済んでいるはずなのに、勝手に庭に入っては困ると言う。
だが大吉は人の命を助けて1両はないと言うが、捨松は十手をふりかざし、大吉を追い払った。

大吉が去ると、捨松はたねを土蔵から引きずりだした。
「どうだね、そろそろ吐いては。私を殺したのは誰なんだい?」
「言え。言わねえと死ぬことになるぜ」と言う捨松に、たねは「私は死にたい。自分で死ぬ勇気がないので、誰でもいい。私を殺してくれる人がいれば良いと思っていた。さあ、早く殺しなさい!」と言った。

茂三が「ふふん」と笑い、「これ以上責めても無駄だろうな」と言うと、矢野が刀を抜く。
しかし、捨松はたねを解放し、誰と会うか見届けた方が良いと主張した。
たねは解放され、フラフラと歩いて行った。

貢と大吉は安積屋を見張っていた為、たねが出てきたのに気づいた。
だが、すぐ後に捨松がつけているのに気づく。
貢が「泳がせたな」と言う。
たねは、この後、祠に行くだろう。

貢は主水とおきんに祠に近づかないように言ってくれないかと大吉に言い、自分は見張りを続ける。
この後、茂三は店を出て美濃屋に行った。
そして主人を呼ぶと、美濃屋の妾は病死として片付けておいたから心配は要らないが、いろいろと人手を借りた。
茂三は美濃屋が差し出した巾着を持ち、「この程度の金では済まされないよ。5日に一回は、これから寄らせてもらうからね」と言う。

次に茂三は、大野藩に出向いた。
だが留守居役は茂三に、姫の縁談は壊れたと告げた。
かえってホッとしたと言われて、茂三は無言で去って行った。

しかしその後、何事もなかったように姫が出てくる。
すると留守居役は縁談まで大人しく、稽古事に励んでくれるように言った。
貢が茂三を見張っている。

大野藩から、茂三を追って、5人の侍がやってくる。
貢が見ている前で、茂三に襲い掛かった5人は次々、あっという間に矢野と麻布によって殺されてしまった。
それを見た茂三が、満足そうに笑って去っていく。
貢は眉をひそめて、をれを見送った。

その夜、たねは祠に戻ったが、誰もいない。
同じ夜、庭で見張っていた大吉はやってきた貢に「何をビクビクしているんだ。怖気づいたのか」と言う。
貢は「あんた、奴らの手口を見てないから、そんなことが言えるんだよ」と言った。
「そりゃね、世の中には強い奴はごまんといるさ。だけどなみんな、人間だ。どこかに隙があるもんだ。特に家の中にいる時はな」。

茂三は用心棒たちの凄腕を確認し、満足そうだったが、念には念を入れると言って、蔵の中で寝た。
しかたなく大吉と貢は引き上げてきたが、主水とおきんは大吉の家で待っていた。
おきんは案の定、貢と大吉が失敗して帰ってきたと言う。
貢は、「とにかくあの2人の用心棒を引き離されなければ」と言い、「私が囮になろう。危険は承知のうえだ。これより他に方法はあるまい」と言う。

何もそんな危ないtこをしなくても、他に方法はあると言うおきんに貢は「おきん、頼みがある。明日、祠にいるおたねさんを、私の長屋に連れてきてくれないか」と頼む。
驚くおきんは、「そんなことしたらあの岡っ引きひっぱってくる…」と言うが、「あ、そうか、それが囮っていうのか」と言う。
貢に「そうだ」と言われ、おきんは「うん」とうなづく。
「そうだ。どうせあの2人の用心棒は、私を殺しに来るに違いない。な、石屋」。
貢がそう言うと、大吉が「じゃ、その隙に俺が、安積屋茂三の心の臓をひねり潰してやる」と言う。

だが主水は「茂三やるのは後回しだ。2人の用心棒を確実に片付けるのが先だぜ」と言う。
貢は主水に、「八丁堀。あや、一時、預かってくれないか」と頼む。
主水は「よし!じゃあ明日は女どもを全部、紅葉狩りに出しちまおう!どうだ、良い考えだろう」と笑った。

翌日、あやと、続いて妙心尼が中村家に来た。
あやは貢が作ってくれた弁当を持っており、せんとりつは感心する。
その頃、おきんはたねを迎えに行き、捨松が尾行して来ているのに気づきながら、たねを貢の家に連れて行った。

たねを連れて家に入ると、捨松が忍び寄って来て、戸口で立ち聞きをした。
貢の声がする。
「ここへ来ちゃいけないって言ったじゃないか」。
「来ちゃいけないって…、勝手なこと言うんじゃないよ!安積屋茂三はいまだにピンピンしてんだよ!」

「声が大きい!静かにしろ」。
それだけ聞くと捨松は、飛んで帰った。
すぐに大吉がやって来て、捨松がすっ飛んで帰ったことを告げる。

貢はおきんに、たねを江戸から連れ出すように言う。
たねは江戸に残ると言うが、おきんは今度は大丈夫だからと連れ出す。
おきんは戸口に立っている大吉に、「行ってくるよ。頼んだよ」とたねを連れて行く。

大吉は貢の家に上がった。
貢と酒を酌み交わしながら、「へっへ」と言いながら家の中を見回す。
「ボロ長屋でも、女房がいるとこんなに綺麗に片付くもんかな」と感心する。
貢は大吉に酒を注いだ。

その頃、せんとりつ、妙心尼とあやは紅葉狩りに出かけていた。
これで、茂三の用心棒2人は必ず、貢を殺しに来るだろう。
「怖ろしくないのかい」と、貢が大吉に聞く。

「本当のこと言やあ、いつの時だってそりゃあ…、怖ろしいやな。今までこうして生きてこられたのが、不思議なぐれえだ」と大吉が言う。
貢は黙って酒を飲む。
「それにしても、奴らの手の内がわからねえってのは、薄気味悪いもんだな」。

貢がうなづく。
「それに、奴ら簡単に姿現しっこないしな」。
戸口で、カタンと物音がする。

貢と大吉が振り返る。
緊張が走る。
「わー」と言う子供の歓声と、走っていく足音が聞こえる。

「何だい、ガキか」と笑って、大吉が徳利を開ける。
火箸で炭を突付いていた貢が、ふと顔をあげ、「そうだ。こっちから出かけて行って、にぎやかなところで奴らに後をつけさせよう」と言った。
「同じところを2度周れば、つけてる奴が確かめられる!」
「なるほど」。

「人気のない所に来れば、奴ら必ず襲ってくるぞ」。
「場所はどこだ」。
「あいおいの森だ」。

貢は火箸を、グッサリと灰に刺した。
「これは賭けだ」。
そう言って貢は大吉を見る。
大吉も貢を見て、うなづく。

貢はすぐに出かけ、辺りを見回しながら歩いていく。
古道具屋の前で立ち止まり、ふとやってくる侍に気づき、懐に手をやる。
だが、侍は通り過ぎていく。

後ろから編み笠で顔が見えない侍がやってくるのを見て、貢はそこを離れた。
角を曲がるとまだ、後ろから侍がついてくる。
貢は立ち止まり、また懐に手を入れる。
しかし、その男も貢を追い越して行く。

貢の後ろに、駕籠屋が駕籠をかついでいるのが、見える。
角を曲がった貢が立ち止まると、まっすぐ行くかに見えた駕籠が止まり、角を曲がってくる。
再び、古道具屋の前に来た貢が歩いていくと、駕籠も同じ方向にやってくる。

貢は森に向かい、人気のない町外れを歩く。
ふと、後ろを振り返ると、駕籠がいない。
立ち止まった貢は、辺りを見回し、探る。
引き返して小走りになった時、気配を感じて屋敷の長い壁に張り付く。

上から鎖を投げて、男が降りてきた。
貢の手に鎖が巻きつく。
そのまま貢が引きずられていく。

大吉が懐に下駄を入れながら、走ってくる。
すると今度は、大吉に向かって縄が投げられた。
縄は大吉の足を捕え、木の上から男が下りてくる。
大吉は、逆さまに宙吊りとなる。

その背後で貢に向かって、矢野が襲い掛かってきていた。
かぶっていた貢の笠が落ち、矢野の刃が貢に迫る。
貢はバチを手にして、必死に刃を押さえる。

刃を押そうとする矢野と、阻止する貢。
一瞬、貢のバチが閃き、矢野の首筋を切り裂く。
貢が立ち上がると、背後で麻布が大吉を押さえ、胸に向かって手槍を突き刺していた。
麻布の両手が開く。

大吉が右手を構え、麻布の胸にめり込ませる。
麻布が倒れる。
近づいた貢が縄を切り、大吉が転がる。
渋い顔をしながら、懐から下駄をだし、刺さった手槍を抜く。

影で見ていた捨松はあわてて、走っていく。
戻った捨松と茂三は、店中の金を集め、出て行く。
表にいた駕篭かきが「親方!」と声をかけるが、茂三は答えない。
ぽかんとした駕篭かきの駕籠に、主水が乗り、茂三を指差す。

茂三と捨松は、山道を急いだ。
後ろを振り返りながら、急ぎ、茶店にたどり着くとほうほうの体で「お茶を」と転がり込むように座る。
「ここまで来りゃあ、もう奴らにはわからねえ」。
「思ったより儲けは少なかったが、せっかく助かった命だ。大事に使わなきゃな」。

その時、山の茶店には不似合いな同心姿の主水が現れる。
捨松が「中村さん」と言って立ち上がる。
主水はこそ泥を取り逃がしてここまで来たと言うが、捨松は自分は紅葉が綺麗なのでと言う。

「紅葉狩りかい?風流だ」。
そう言って、茂三と背中合わせに座った主水の耳に、女性たちの笑い声が聞こえてくる。
下の河原にいたのは、せんとりつ、妙心尼とあやだった。

りつが主水に気づいて、「あなた!」と手を振る。
せんは主水が迎えに来てくれたのかと喜び、「こちらに来て召し上がれ」と誘う。
「仕事で来ているんですよ」と言った主水が振り返ると、茂三と捨松がいない。
茶店の主人に「今の男は?」と聞くと、「さあ?あの男が何か?」と答える。

「あの野郎はどろぼうだ!」
仰天した主人は「へい!」と答える。
せんが「男は仕事が大事です!私たちに構わず、しっかりおやりなさい!」と叫ぶ。

捨松と茂三が山道を走っていく。
主水が後を追う。
緩やかな角を曲がった時、主水が捨松に「おう!待て!」と声をかける。

捨松が匕首を手に襲ってくる。
主水は一刀のもとに、叩き斬った。
続いて茂三を追う。
河原に出た茂三は、辺りを見回し、川の水で顔を洗う。

少し離れたところに、大吉がいて見ている。
茂三は上を見上げながら、川に沿って逃げていく。
水の中から大吉の手が出て、胡桃をすり合わせる。
茂三は川のほとりに来る。

胡桃が砕け、大吉が川の中から現れた。
茂三が驚愕の表情を浮かべて、止まる。
大吉が茂三の心臓をつかむ。
茂三は川の中に倒れ、流れていく。

大吉がそれを見送る。
主水が来て、うなづく。
茶店ではせんとりつ、妙心尼とあやが楽しそうにお茶を飲んでいた。



話が始まってすぐ、せんとりつが「りつ、山の紅葉はもう色づいているそうですね」。
「そうですってよ、母上。お隣の田口様の奥様が、昨日、紅葉狩りに行ってこられたんですよ」
「ほんに、よその殿御はお優しいこと」と、紅葉狩りに行きたいとせんとりつが主水にアピール。

この話、最後のクライマックスへ繋がるんです。
ちょくちょく話題に出る、お隣の田口さん。
その田口さんが、主水に源七の潜入操作を話す。

罪もない駕籠屋の主人と、お店の悲劇。
まじめそうな岡っ引き・源七が牢内で大勢に襲われるシーンは、仕掛人の音楽が流れるだけで効果音、セリフ一切なし。
そこがかえって、陰惨。
「世の中には納得いかんことはたくさんあるじゃないですか」と言う主水の言葉が、今の奉行所に対する主水の達観した見方だとわかります。

おきんの口から語られた大吉の不在。
一度目の仕留め仕事が何と、その大吉によって台無しになる。
大吉のいつもの技が、心臓マッサージに変わるという展開で!
そうですよねー、そういうこともできるんだ。

しかしここで半次の名前も出ているところからすると、半次はまだ消えたということにはなってなかったんでしょうか。
だけど、戻ってきたのは大吉だけ。
半次がいない理由も語られない。

助かった途端、笑顔で、しかし、思いっきり礼金を渋る茂三って思い切り嫌な奴。
目が笑ってない。
怖い目で、たちまち本性を表すととっても怖い。

茂三は、南原宏治さん。
「助け人」の為吉を責め殺した死神与力です。
ここでも目の周りを赤く塗ったメイクで、迫力。
冒頭でさらし首になった八坂屋の首には、目の周りを青く塗った死神メイクが施されてます。

茂三が生き返ってしまったので、もう一度やらなくてはいけなくなった大吉が「どうだい、あんたもと一緒にやるかい」と貢に声をかける。
それを見ておきんが「えらそうにまあ…。失敗したもん同士が。あたいに用はないってのかい」と言う。
主水にたしなめられたおきんは、「2度あることは3度ってね、頑張れよ」と貢と大吉に言う。

でも失敗したわけだから、2人とも言い返せないんです。
そして、茂三が土蔵に寝たのを見て戻ってきた貢と大吉を見たおきんは「あ、帰ってきた、帰ってきた。あーあ、あの様子じゃやっぱり2度あることは3度ある、だよ」と言う。
家に入る2人を「おかえりなさい♪」と迎える。

茂三が出した貢の人相書きが、本当にそっくり。
前髪ハラリの特長がよくつかめてる。
貢そっくりの絵の下には、「背丈5尺6寸ほど、年、32,3」とあります。
なるほど。

顔と正体がばれて、追われる立場になった貢が策を出す。
自分が危険な囮となること。
そこで、あやを案じた貢が、主水にあずかってくれと言うと、それなら紅葉狩りに行かせようと提案。
せんの嫌味な「紅葉が綺麗」「紅葉狩りに行きたい」という言葉が、最後の仕留め仕事に生きるとは。

中村家へやってきたあやと、妙心尼はそれぞれお弁当を持っている。
せんとりつがたくさん作ったと言うと、妙心さんは「じゃあ、母上のをいただこうかしら」と言う。
しかし、あやさんははにかんで、「このお弁当は夫が作ってくれたものですから」と言う。

「まあ、貢殿が」。
「感心なこと」。
「おあついこと」と女4人は笑うけど、この後、大吉と悲壮な覚悟で語り合う貢を見るとこれをどんな気持ちで作ったのかと思う。

大吉が貢の家に上がる。
綺麗で、嫁がいるってこんなかなと言う。
用心棒を見ている貢に、緊張と覚悟の色が見える。

大吉も実はいつだって怖いと、しみじみ語る。
用心棒がいつ来るか。
どういう形で来るか。

気が抜けない。
緊張に張り詰めた貢と大吉を映し、紅葉狩りに楽しそうな中村家の女性たちを交互に映す。
日常と、非日常の対比。

しかし、貢が思いつく。
同じところを2度周れば、誰が狙っているかわかるとのこと。
貢が大吉と顔を見合わせ、賭けに出ると言って外に出る。

ここから流れる、仕留人のオープニング曲。
貢がの町を歩くシーンが、このオープニングの曲に乗って緊張感一杯。
度々、懐に手を伸ばして、攻撃に備える貢。

こいつか?
こいつか?
次々、これではないかと思わせる相手が歩いてくる。

そして駕籠が現れる。
貢が立ち止まると、立ち止まっている。
角を曲がるかと思うと、貢がまっすぐ行くのを見て、おもむろに方向を変えて同じ方向に来る。

後をつけてくる?と思われるこの駕籠が不気味にクローズアップされてくる。
この人気のない、森のある場所に貢が歩いていく。
この長い壁の場所も、結構ひんぱんに出てくる場所ですね。

そこに行った貢が振り返ると、駕籠がない。
音楽が止まる。
静けさ。

怖い。
すると、仕置人のショッキングなオープニングの曲と共に、上から襲い掛かってくる。
2人が用心棒を仕留め、捨松が逃げ帰ると音楽が終わる。

そして逃げた茂三と捨松を主水が追って現れると、下にはせんとりつと妙心尼とあや。
この人たちがいたのでは、主水が裏稼業で本領を発揮できないー!と思ったら、茂三と捨松は逃げてくれた。
2人を追う主水には、仕置人の仕置きのテーマがかかる。

捨松が危険を感じて、主水に襲い掛かると主水はあっさり、バッサリ。
すると、仕留人の殺しのテーマに変わる。
まるで潜水艦のように、川に潜行する大吉。

河原で大吉が助けた茂三を、河原で大吉が仕留めて、ケジメをつける。
今度こそ、絶命して流れていく茂三。
音楽がさわやかなものに変わる。

恨み深い茂三も殺されて、大野藩はともかく、たねも美濃屋も、あれから何とか立ち行くようになったことでしょう。
最後も楽しそうな中村家の女性たち。
次回を知ってから見ると、この4人が揃ったシーンは切ないんですが、ここでは一応、和やかなエンディングです。


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2015.07.02 / Top↑
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