こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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必殺シリーズで屈指の後味の悪さ救いのなさ「暗闇仕留人」第18話

第18話、「世のためにて候」。


大吉のところで、おきんも大吉も瓦版「よろずひょうばん」を読んでいた。
この瓦版は「世の為、人の為」を掲げ、暴露記事を得意としている。
2人が読んでいたのは、獄門に処せられた極悪人・ましら小僧の父親が、向島の酒屋「灘屋」の息子と暴露した記事だった。

おきんが来る時見たが、みんな、「灘屋」の前で騒いでいた。
灘屋はピッタリ雨戸を閉めて閉じこもっていたと言う。
「よろずひょうばん」の版元の「聖古堂」に、1人の頬かむりをした男がひっそりと訪ねて来た。
男は灘屋の主人で、番頭の弥七を見ると、店を売った金だと百両を渡し、これ以上、記事にしないでくれと頼み込んだ。

だが弥七は冷たく、「こうなる前に、世間様に知られる前に腹をお決めになれば良かったんです」と言う。
「この通りです」と泣きつく主人に、弥七は言う。
「間違いないでくださいよね。当方は看板どおり、世の為、人の為にお尽くししているのです。あなたが詫びなければならないのは、世間様に対してです。私どもは世間の皆様に成り代わって、悪党を生み、育てた親としてお詫びをしろと申し上げただけだ」。

「弥七さん!」と灘屋が声をあげる。
金を差し出す主人に弥七は、「世間様に対する詫びが、それだけで済みますかな?」と言った。
「ではいくら?」と、悲壮な顔つきで主人は聞く。
「さああ」。

弥七は奥に引っ込むと、版元の聖古堂の主人の儀兵衛のところに行った。
灘屋が差し出した百両を出し、灘屋が泣きついてきたが、もう百両出せと言ったことを報告した。
「お前もやっと、この道のコツがつかめてきたようだな」と儀兵衛が言う。
その時、聖古堂の若旦那で、儀兵衛の息子の与之吉が、儀兵衛に金を無心に来た。

「また女か。いくら使えば気が済むんだ」。
「いいから、いいから。あんたの死に水を取るのは、どうせオイラだ。ケチることないだろう」。
「よう、親父。よう」と与之吉は財布を儀兵衛の前に吊り下げる。
口では何と言っても息子がかわいいらしい儀兵衛は、笑いを浮かべて財布に小判を入れた。

その頃、ましら小僧を捕まえた主水の同僚・田口のことが「よろずひょうばん」に載っているのを読んだせんとりつが、「悔しい」と涙を浮かべていた。
情報収集の為、奉行所に弥七は来ており、田口に取材をしていた。
それを見たほかの同心も「よろずひょうばん」に載せてほしい為、弥七を呼び、資料を見せたりしていた。

「ちょっと拝借を」。
「ああ、かまわん」。
それを見ていた主水も弥七を呼び、自分のことも書いてくれと言うが、弥七は気のない声で「承知しました。そのうち必ず」と返事をする。
このままでは家に帰れないと言う主水に、「それはそれはお困りで」「さようでございますねえ」とバカにしたように答える。

同心の山口が戻ってきたので、弥七が何かあったか尋ねる。
山口は「ただの首吊りだ」と答える。
灘屋の主人が、首を吊って死んでいたのだ。

その日、おきんが、のんびりと日向ぼっこをしていた時だった。
貢が現れ、目の前の小間物屋「蔦屋」に入っていくのが見えた。
気づいたおきんが後を追って蔦屋に入ると、貢はかんざしをいろいろと見ていた。

かんざしを手に取っていた貢の背中から、おきんが「よう」と声をかける。
「どこ行ったかと思ったら、こんなとこで何してんだよ」。
だが貢は答えなかった。
大声に主人の政吉が、「いらっしゃいませ」と声をかける。

おきんはあわてて、近くにあった櫛を持って、いくらかと聞くと、「5両でございます」と言われる。
「5両!」
おきんは櫛を髪に差して見ていると、貢はかんざしがほしいと言う。

政吉が相手の年齢を訊ね、おきんが耳を澄ます。
だが貢は「いや」と曖昧に口を濁し、1本手に取る。
かんざしを握ってみるが、たちまち貢はその1本を曲げてしまう。
「お客様!」と政吉が声をあげる。

しかし貢は「蔦屋には丈夫でいい品物が揃っていると聞いてきたんだが、大したことはないな」と動じない。
それを聞いた政吉が「丈夫な品物…。はい、ちょっとお待ちを」と言う。
政吉は奥から別のかんざしを出してきて、「お言葉ですが、これ以上の品物は、他所様ではごらんになれないはずでございます。さ、どうぞ」と言って並べた。
貢はそのずらりと並んだ品物を見つめ、折れたかんざしを放り投げた。

その中の1本に目を止め、「いくらだ?」と聞く。
「2分1朱、頂戴いたします」。
「曲げたのも入れて、か?」
貢の問いに政吉は「手前どもは、お客様のお気に召さない品はお売りいたしておりませんので」と言う。

きっぱりした態度に貢が笑みを浮かべ、かんざしを買い求めた。
その時、女房のおゆきが「お前さん!」と飛んで来る。
客がいるのを見たすぐにおゆきは口を結んだが、政吉は「ありがとうございました」と言って貢を送り出す。
貢が出て行こうとし、おきんが見靴に声をかけようとした時だった。

「よろずひょうばん?」と言うう政吉の声がした。
貢が一瞬、立ち止まったが、出て行く。
おきんも出て行くと、政吉とおゆきは「大丈夫か。おっかさん」と言った。
「まさか、兄さんのことじゃないと思うけど」。

店の奥では蔦屋の先代の女将・おせきが弥七に過去の話をされていた。
おせきは後添いとして、先代の息子・文治郎が3つの時、蔦屋に入った。
そして、今は女将となっているおゆきを生み、政吉を婿養子にして店を継がせた。

「うまくできている」と弥七は言った。
「しかたがなかったんですよ」と、おせきが搾り出すように言う。
本当は先妻の子・文治郎に店を継いでほしかった。

だが、文治郎は極道者になったので、おせきは追い出すしかなかったのだ。
その文治郎が人を殺して、島流しに遭った。
弥七はどうやら奉行所でそれを聞きつけて、やってきたのだ。

「世間様への詫び代、5百両!」と弥七は言う。
「わたくしどもの、どこにそんなお金が!」
「店を売りなさい。5百両にはなります。出しますね?でなければ私どもの『よろずひょうばん』が、黙ってはいませんよ」。

その時、政吉がやってきて「出て行ってください!」と言う。
「何が世間様ですか」。
「いいんですか、世間様に刃向かって」。
弥七は「また来ますからね」と笑って、引き上げて行った。

外では町を歩きながら、おきんが貢を責めていた。
立ち止まった貢は「おきん、お前のところへ泊めてくれぬか」と言う。
「はあ?」と、おきんが目を丸くする。

「すっかり銭がなくなってしまったんでな」。
おきんが「ダメ!絶対ダメ!」と言うと、貢はさっさと行ってしまった。
「ちょっと!三味線!貢って!」

振り向きもしない貢をおきんが大声で呼び止めていると、主水がおきんを路地に引っ張り込む。
おきんが思わず声をあげると、「ばか!人目があるところで、大声出しやがって」と主水が言う。
主水だとわかったおきんが「貢だよ。貢!あんのやろう、女作りやがって」と怒る。

家に戻った主水は、懸命にせんとりつに手柄をアピールしたが、せんとりつのあまりの視線の冷たさ、鋭さに押し黙った。
せんとりつに問いただされ、主水はこの前の「よろずひょうばん」に乗るはずだった手柄を話した。
子供をおろす医師を召し取ったのだが、その医師は20両の罰金を払った後、行方不明になったと言うと、りつは怒った。

そんな医師はいなかったと、せんとりつは言う。
「え?どういうことだ?」
本所にはそんな医者はもうないと言うのを聞いて主水は、「おかしいな。ないとなると言ったら、どこに行ったんだ?確かに20両ぐらいの金で潰れるような店じゃなかった」とつぶやく。

翌日、主水はその医師の小西屋を探し、荒んだ町の一角で、小西屋をついに見つける。
「あのう、何か」と小西屋は怯えたように主水を見る。
「何かじゃねえやな。どうしたんだ、一体」。

すると小西屋は主水に「どうか、これを」と言って、財布を逆さにし、主水の手の上に小銭を出した。
「こんだけしかないんです。ですからもう、ご勘弁を。これ以上、いじめないでくださいよ」。
「いじめるって、俺がいつ」。
「お帰りください」と言って、小西屋は逃げるようにあばら家へ駆け込んだ。

その頃、蔦屋のおゆきは、牢に入った兄の文治郎に、政吉と共に会いに行った。
牢内から文治郎は、蔦屋は父親が必死になって築いた店だと言う。
自分が継いでいれば、とっくの昔に潰していただろう。

「おゆき、おめえ、いい亭主持ったな」と文治郎は心からの言葉を口にした。
その言葉におゆきは泣き崩れる。
「義兄さん!」と、政吉も声をかける。

牢からの帰り、夜道で「犯した罪には、必ず報いがあるんだ」と言う声がして、弥七が出てくる。
「遠島とは、お気の毒なことだ」。
「うるさい!」と政吉が怒る。
「気の荒い婿養子さんだ。これじゃせっかくの店を潰しても、不思議じゃあない」と弥七が嘲笑う。

弥七は、親子水入らずで暮らしたいなら、世間様へのお詫びに5百両出せと言った。
「こんなところで、あつかましい!訴えてやる!」と言うおゆきだが、弥七は「江戸の人気者『よろずひょうばん』をよ、人殺しの身内が訴えて。ええ?世間様はどっちの言い分を信用するかな?」と言った。
声に笑いが混ざる。
「およしなさい、無駄なことだ。それよりも長いものには巻かれろ。素直にこっちの申し出を聞いた方が利口だ」。

その夜、聖古堂の主人の儀兵衛と弥七が歩いていると、数人のヤクザ者がやってくる。
恐縮し、丁寧な態度を取る儀兵衛の名前を確かめると、ヤクザたちが囲む。
人気のない川のほとりに連れて行くと、ヤクザは「蔦屋から手を引け」と脅した。

「なるほど。あの婿養子に頼まれましたな」。
儀兵衛の口調が変わった。
「手を引くのか、引かないのか」と聞かれ、儀兵衛は笑い出した。

「これは弱りましたな。手を引かぬと言えば、この場で痛い目に遇うだろうし、手を引けば世間様に申し訳がたたん。番頭さん、どうしたもんでしょうかねえ?」
「旦那様のお心どおりになさいませ」と弥七は言った。
「わかりました。命あっての物種。手を引きましょう」と儀兵衛が言った。

ヤクザ者が引き上げると、儀兵衛は平坦な声で「弥七」と言った。
「はい。わかっております」。
弥七はうなづいた。

政吉は飲み屋でヤクザたちに金を渡し、酒を振る舞った。
その後は、吉原に案内すると言う。
聖古堂を振り切ったと思った政吉がホッとした時、2階から突然、男が降りてくる。
男は聖古堂の用心棒の道玄で、道玄はヤクザたちを殴ると、1人の肩をはずしてしまった。

親分が立ち上がると道玄はにらみをきかせ、襲い掛かってきたヤクザたちを次々叩きのめす。
さらに匕首を持った親分の骨を外し、わめいている親分の元に政吉を連れて行く。
怯えた政吉を殴り飛ばすと、今度は弥七が出て来て「嘗めた真似しやがって。バカヤロウが」と政吉の顔を踏みつける。

その翌日、「よろずひょうばん」が出た。
おきんが買ってきて、大吉に「今度はちょっとおもしろいよ」と声をかける。
だが大吉はおらず、奥に貢がいた。

おきんは「よろずひょうばん」を読んだ。
そこには、蔦屋の跡取り息子が継母にいびり出され、身代を乗っ取られた話が載っていた。
跡取り息子は追い出された後、グレてついに人まで殺してしまった。
おきんは「跡取り息子がかわいそうでならない、跡取り息子の気持ちがよくわかる」と言う。

そこに主水がやってきて、貢を見ると「貢!久しぶりだな!何してんだ?」と言う。
主水におきんは、蔦屋の様子を聞く。
だが貢は関心を向けず、かんざしを研ぎ、先を確かめる。

主水がえらい騒ぎになっていると言うと、おきんはざまあみろと言って、貢に見に行かないか聞く。
貢が断ると、主水を誘うが、主水は貢と話があると言う。
「何だよ。ああいうのはさ、みんなで行かないとつまんないんだよ!」と言うが、貢の反応のなさに1人で出かけて行った。
主水は戸を閉めると、貢になぜ行かないのかと聞いた。

「別に」。
しかし怖ろしい。紙切れ一枚で、あっという間に店が潰れてしまうのだから。
すると、貢が聞く。

「蔦屋の話ってのは、本当なのかい?」
「あ?」
「継母が跡取り、いびり出したってのは?」

「ああ、『よろずひょうばん』が言ってることだ。間違いはねえだろう」。
「確かめたのか」。
「いや別に確かめたわけじゃねえけどな」と主水は言うと、「『よろずひょうばん』についちゃ、ちょいと引っかかるところがあるんだ。おかしな噂もねえことはねえしな」。

主水は貢が研いだかんざしを見て、「何だそりゃ」とのぞいた。
貢はかんざしをかざして見ながら、主水に「話があったんじゃないのかい?」と聞く。
かんざしを握り、その具合を確かめる貢を見て、主水は妙な面差しになる。

「うん、いや、もういいんだ。あやさんが、ああなっちまったからなあ。おめえも裏の稼業の方の、気が変わったんじゃねえかと思ってな」。
「変わらんさ。変わるわけないだろう」。
貢は、かんざしだけを見ていた。

蔦屋では、表に人が集まり、閉め切った雨戸にはよろずひょうばんを張られ、看板は持ち出されて割られ、石を投げられていた。
おきんに誘われて行った大吉は「自業自得ってやつだな」と言う。
「悪いこたあ、できないんだよ」と言うと、おきんは自分も石を探し始める。

蔦屋ではおせきが病の床に伏しながら、「文治郎がぐれたのは自分のせいだ、世間様にお詫びしなきゃ」と這い出していた。
「起き上がってはいけない」と、政吉が医者を呼びに外に出た。
政吉が外に出ると、群集が「こいつが婿養子だ」と叫んだ。

群集は政吉を取り囲んだ。
やっとのことで医者にたどり着いた政吉だが、医者は政吉を追い出した。
傷だらけで戻った政吉におゆきは「どうしたのよ。お前さん。黙ってたらわかんないじゃない。どうしてお医者様連れてこなかったの?だったら薬はあるんでしょ?薬出してちょうだい」と言った。

政吉はおせきに向かって頭を下げ「おっかさん、すいません。私が至らないばっかりに」と言った。
そしておせきの顔を見て、悲鳴をあげた。
おせきは目を見開き、死んでいた。

政吉もおせきも、号泣した。
蔦屋は閉店した。
少し経った頃、町外れに一軒の粗末な立ち食い飲み屋ができた。

大吉はそこの煮物が上手いと言って、食べていた。
そこに貢が来て、「おゆきさん、いつものやつね」と言って、小さな椅子に座る。
貢がなじみらしいと気づいた大吉は、「おめえも目、つけやがったなあ」と言うが、貢は黙って漬物をつまむ。

この店は今夜が初めてで出遅れたが、これからが勝負だと言う大吉に、貢は「ばか。あの人は亭主持ちだよ」と言った。
「どんな野郎だよ、そのにくったらしい亭主ってのは!」
酒を持って来たおゆきは貢に、「糸井さん。いつもごひいきにありがとうございます」と言う。
すると貢が「この人が、あんたの亭主、見たいんだってさ」と言う。

おゆきは「あらあ」と言うが、大吉はわけを訊ねられて、仲のよい夫婦を見たいとごまかした。
「どうせ店も終わりなんだから、政さん呼んでくれないか」と貢が言うと、おゆきは呼びに行く。
大吉は亭主の顔など別に見たくないと言うが、おゆきに連れられて政吉がやってくる。

「やあ、政さん。どうだ一杯」と貢が陽気に語りかけると、政吉はこちらに背中を向け、腰を折って「はい、どうも」と卑屈に返事をした。
消え入りそうな声で「いつも…、ごひいきに」と消え入りそうな声で言う。
「あのう、私は、お酒のほうはどうも…」。

縮こまる政吉におゆきが「お客様がああおっしゃってるんだから」と言うが、政吉は小さくなってブツブツ言っていた。
大吉が「いいじゃねえか!一杯ぐらい」と大声を出し、貢が眉をひそめたが、大吉は政吉を連れてくる。
だが、政吉は顔を上げない。
「おい。おめえ、何でそんな、びくついてんだ?ほら、やんなよ!」

大吉は酒を注いだが、政吉は大吉の顔を見るやいなや、酒をこぼしながら急いであおると、さっさと奥に引っ込んでしまった。
貢は渋い顔をしながら、酒を飲んだ。
「ありゃあ…、ほんとにおめえさんのご亭主か?」と大吉が驚く。

台所の隅に座り込んだ政吉におゆきが、「お前さん。どうしたのさ。いい加減、元気を出してくれなくっちゃ」と言う。
「蔦屋が潰れたのは、お前さんのせいじゃない。そうでしょう、お前さん!」
すると政吉は台に突っ伏しながら、「俺のせいだ。俺のせいだ。俺が潰した。俺がぁあ」と言って泣き始めた。

政吉の耳に、瓦版を売る鈴の音が聞こえてくる。
「あああ、俺が潰した。俺のせいだ、俺のせいだぁあ」。
政吉は台に叩きつけんばかりに頭を上下させ、喚き始めた。
おゆきは、たまらなくなり、泣きながら政吉を抑えた。

外に出た大吉が「何だあの、ふやけ亭主は」と文句を言う。
「女ってのは、わからねえもんだなあ」。
貢は腕を組みながら、「お前、気づかなかったのか。あの夫婦な、ほんの三月前まで、蔦屋って小間物屋やってたんだ」と言う。

「蔦屋?蔦屋ってのはおめえ、あれじゃねえか」。
「そうだよ」。
「そうか!あの2人か!」

大吉が戻ろうとするのを「おい!」と貢が止める。
「そっとしておいてやれよ!」
「だっておめえ、あいつら…」。

「どんな夫婦だったんだい?!」。
「どんな、って…。確かに女房は、ありゃあいい女だった。それは間違いねえや。おっかあだって、同じこと言うに決まってらぁ。だけどな、なんだい、あの亭主野郎は」。
「変わっちまったんだよ。『よろずひょうばん』に書き立てられてからな」。
「よろずひょうばん?ああ、瓦版か」。

「しっかりした、いい男だったんだがな、それまでは」。
「おめえ、何が言いたい?」
「そっとしておいてやれば、それでいいんだ!」
貢は怒ったように言うと、歩いていく。

おゆきの飯屋は、繁盛し始めた。
客が一杯になり、おゆきはかいがいしく動いていた。
その時、「蔦屋さんじゃねえか」と言う声がして、聖古堂の与之吉が立っていた。

おゆきが凍りついたように、与之吉を見る。
「やっぱりそうだ。ほら、『よろずひょうばん』で書きたてられた、蔦屋さんですよ」。
すると、客が立ち上がって、「へえ、蔦屋?!」と言い始める。

おゆきが奥で小さくなっている政吉に「お前さん、どうしよう。もう、ここに住めないよ」と言う。
政吉の耳に、瓦版を売る鈴の音が響く。
ぶつぶつと政吉が、「すまない。ほんとにすまない」と言い出す。

「お前さん、逃げましょう!」と、おゆきが言う。
「無理だよ。ダメだよ」。
政吉は一点を虚ろに見つめたまま、言う。

大吉の家で、主水はおきんに「おめえ、その『よろずひょうばん』の言ってることが、嘘だったとしたらどうする?」と言った。
おきんは笑いながら「まさか!」と言い、主水が自分の名前を出してもらえないもんだから、いちゃもんつけてるんだろうと言った。
「なぁんだい、男の癖にケツの穴ちっちぇねえ。第一ねえ、この『よろずひょうばん』は世の為、人の為って、ここ見ろ、ほらあ!」
主水は「ばか野郎、俺の名前が出なかったのにはわけがあったんだ」と言った。

「そこのところを調べていて、段々とわかってきたんじゃねえか」。
奥では貢が、茶漬けを食べている。
「おきんよ、ひょっとしたら俺たちはこの『よろずひょうばん』に、どえらい片棒を担がされていたかも知れねえんだ」と大吉が暗い顔をして言った。
貢は淡々と茶を注ぎ、茶漬けを食べている。

その頃、おゆきは出会い茶屋に呼び出されていた。
政吉が倒れたので保護したということで、飛んで来たのだ。
「お前さん、大丈夫かい!」と布団をすっぽりかぶっている男に向かって、おゆきは駆け寄った。

だがそれは政吉ではなく、与之吉だった。
おゆきは政吉が倒れたという知らせがあったので、やってきたのだ。
与之吉に抱きつかれ、おゆきは悲鳴をあげた。

やがて、与之吉が去って行き、ふすまの向こうに政吉がやってきて座った。
おゆきが起き上がる。
政吉はうつむいて、震えていた。

「おゆき」。
政吉が部屋に入って行こうとするが、おゆきは「お前さん!来ないで!」と必死にふすまを閉めようとする。
「大丈夫だ。大丈夫だよ、もう追ってこないよ。請け負ってくれたんだよ。もう係わり合いはないんだよ、おゆき。これからはね、そっとしておいてくれるよ。ちゃんと約束したんだよ」。

政吉がふすまに向かって喋ると、おゆきが絶叫した。
そして静かになった。
政吉は下を向き、手ぬぐいを握り締めて泣いていた。

ふと、ふすまを開けて、部屋の中を見ると、おゆきは目を見開き、舌を噛んで自害していた。
「おゆき!…許してくれえ」。
目を見開いて死んでいるおゆきに頬ずりして、政吉は泣いた。

案内され、政吉とおゆきがいた部屋に、主水が岡っ引きと入ってくる。
政吉はおゆきの後を追っていた。
鈴の音が響く。

大吉の家で、主水からこの話を聞いて、貢は無言だった。
おきんは目を伏せた。
大吉も黙っていた。
主水も、無言で火鉢の前に座っていた。

おきんが立ち上がり、髪に手をやって櫛を取る。
丁寧に磨き、「これ…。仕留め料だよ。あたい…、前に蔦屋さんからあずかったんだ」と言う。
それは、蔦屋で万引きした、5両と言われた櫛だった。

貢の声が響く。
「どこにでもいる、仲の良い夫婦だった」。
おきんが涙ぐみながら櫛を見つめ、「やるね?やらなきゃ」と言った。

その夜、聖古堂では儀兵衛が弥七から、新しい「天罰てきめん」と書かれた瓦版を見せられて、「よくここまで追い詰めたな」と言っていた。
与之吉が「これも世の為、人の為。おぜぜの為」と言う。
儀兵衛は弥七に瓦版を渡す。

弥七は作業場に行くと、職人に「200枚」と言って刷るのを急がせた。
刷られて干してある瓦版に、移動する大吉の影が映る。
瓦版がたたんで、床に並べられていく。
弥七は満足そうだった。

吊るされている瓦版の後ろで、胡桃を砕く音がする。
弥七が吊るされている瓦版の1枚を取り、眺めている。
すると、瓦版の間から、大吉の手が伸びて、弥七の口を塞ぐ。

背後から大吉は、弥七の心臓をつかむ。
弥七は立ったまま、絶命する。
やがて、がたっという音がして、弥七が倒れる。
職人たちが「うわっ」と声をあげ、墨がこぼれて瓦版を黒く染めていく。

儀兵衛の後ろで、与之吉が財布に金を詰めている。
「また、女か」。
儀兵衛はそう言うが、止めない。
与之吉はご機嫌で歌を歌いながら、道玄に自分を背負わせて庭から外に出ようとした。

2人が通り過ぎた庭に、主水が出てくる。
与之吉と与之吉を背負った道玄が、振り返る。
主水が鯉口をカチン、と鳴らして、刀を抜く。
与之吉と道玄が立ち止まり、与之吉が道玄の背中から下りる。

不思議そうに顔を見合わせた与之吉に向かって、主水が刀を横に払う。
「うっ」と与之吉がうめくと、小判が音を立てて庭に落ちた。
小判の音に、儀兵衛が気づくが、何ごともなかったように前を向く。
儀兵衛の部屋の、開いたふすまの間から貢が見える。

庭では主水が、道玄を相手にしていた。
主水の刀を押さえている道玄に向かって、主水は小刀を抜き、刺した。
与之吉は逃げようとして、走り出す。

だが表に控えていた大吉に捕まり、主水の方へ突き飛ばされる。
主水は抜いた小刀で、突き飛ばされた与之吉を斬る。
与之吉が倒れ、手を伸ばす。

貢に気づいた儀兵衛は「何の真似だ!」と言った。
かんざしを儀兵衛に向けると、首筋を刺す。
儀兵衛はわずかに声をあげ、倒れた。

倒れた儀兵衛から、貢はかんざしを抜く。
儀兵衛の首筋には2つ、小さな血のにじんだ穴が開いていた。
貢はそれを見つめると、出て行く。

その帰り、貢と主水と大吉は橋の上から暗い川を見下ろしていた。
大吉が去っていく。
反対方向に主水も去る。
貢はまだ、川を見つめていた。



これは、ものすごく後味も悪くて、救いもない話。
曖昧な情報で、世間からはじかれ、さらに暴徒と化した集団からヒステリーのような暴力にさらされる、罪のない人。
あるマンガのヒロインと弟を襲う悲劇に通じる、不愉快さがあります。
そして、情報操作の怖ろしさも感じます。

「前回から行方不明になっている貢が、突如、現れる小間物屋。
貢はおきんを見ても、心が平坦なまま。
しかし、貢はたった一つのことに夢中になっている。

それはかんざし。
前回、あやさんのかんざしで仇を討ったからか、かんざしに執着しているように見える。
小間物屋に来て、いきなり商売ものを曲げちゃうっていうのもどうかと思う。
今までの貢だったら、絶対やらないと思う。

おきんがかんざしを買った貢に勘違いして怒る。
「あんたってひどい男だね!自分のかみさんがなくなって間もないってのに、もう女できちゃって!デレデレ、デレデレ。なんだい、えらそうな顔していい男ぶって!あやさんが、かわいそうだと思わないのかよ!」
しかし、貢は聞いていない。

さらにおきんに「お金が尽きたから泊めて」って、秀才の優等生だった貢とは思えないことを口にする。
別におきんに関心があるわけではなく、本当にただそうだからという口調が、貢の抱えた空洞を感じさせる。
本当にカラッポ。
もう何も貢を喜ばせたり、関心を持たせたりできないように見える。

だけど貢の突然の「泊めてくれ」におきんは驚き、「ダメ!絶対ダメ!」と言い、見たこともないのに貢にもう、女がいる前提で「へちゃむくれの年増に頼みゃいいじゃない」と言う。
さらにおきんは、主水に貢に女がもうできたと言って怒る。
「女?」と主水が聞くと、見てもいないのに、おきんが言う。
「ああ、ひっどいブスだよ、それも!」

そこまで言うと突然、おきんは主水に向かって手を出し、「八丁堀、銭」と言う。
何でも自分の名前が「よろずひょうばん」に載っているから買え買えと言われて買ったのに、出ていないから瓦版代の5文返せと言うのだ。
さすがに主水じゃなくてもそう思うけど、主水は「お前の話はどうしてそう、コロコロ変わるんだ」と嘆く。

「何だって、貢に女ができたって?」と主水は、そっちの話を聞きたがる。
だけどおきんは「5文だよ5文、貢は貢、5文は5文じゃないか、返して早く!」と言う。
主水は5文返しながら、おきんの耳に向かって「うるせえ!」と怒鳴る。
おきんのがめつさ、ちゃっかりさ、でも愛らしさ。

その貢は、偏執的にかんざしを磨く。
しかも、大吉の家で。
大吉があやがいると、こんな長屋でもこんなに小奇麗なのかと言った家を出て、貢は大吉の家にいる。
むしろ、今は大吉のほうが、生活が安定しているようにさえ見える。

そこに、「よろずひょうばん」を持って、おきんがやってくる。
貢に気づくと、「なんだ、貢。何やってんの?どしたの、かんざしなんか研いで」と言う。
しかし貢は返事もせず、かんざしを研いでいる。
さすがにその様子におきんも「あのさ、あたいね、この前からおかしいなと思ってるの」と言って、貢に近寄る。

そしてついに、「ねえ、あんた、かみさんが死んじゃってからさ、だいじょぶ?」と、おきんは自分の頭を指差す。
「…おつむ」。
すると貢は笑いを含んだ声で、「ああ、大丈夫だよ」と答える。
それ以上、言いようがなくて、おきんは「あ、そう。お大事にね」と言う。

そしてあの、かんざしを売った養子は、虫も殺さぬ顔をして、ひどい婿養子だと言って「養子ってのは、ロクなのいないよな」と言う。
でも貢は何も答えず、かんざしを研ぎ続ける。
「あ、あんたも婿養子さんだったね」と、おきんが気づいて言う。
「あんたは、いい婿養子さんさ」って。

しかし、「蔦屋の話ってのは、本当なのかい?」と貢ぐだけが疑問を持つ。
ちょっと主水も「よろずひょうばん」に疑問は持っている。
まったく相手にされていなかった主水だからこそ、「よろずひょうばん」の正体が見抜けたのかもしれない。

昼行灯だから、ひとつ、はずれた視点からものを見られる。
ここでは貢と主水が思慮深く、大吉とおきん、特におきんが一緒になって騒ぐ。
でも貢はかんざしだけを見ながら、主水に「話があったんじゃないのかい?」と聞く。

主水はあやさんが死んで、貢の裏の稼業を続ける気がなくなったんじゃないかと言うと、貢「変わらんさ。変わるわけないだろう」。
そして、かんざしだけを見てる。
いや、おきんも主水も思っただろうけど、やっぱりおかしい。
おかしいよ。

何にも心を動かされないと思えた貢だけど、同じように心に傷を負った人には敏感だった。
政吉夫婦の飯屋に行った時、努めて明るく振舞い、政吉にも声をかける。
政吉はあの時のお客さんだと気づいているのか、いないのか。

貢が行った小間物屋の主人の政吉は、とってもきりっとしていて、しっかり者だった。
お代はいただけません、とか、奥から丈夫なかんざしを出してくるところで、この仕事にプライドと信念を持ってやっているのが感じられた。
その若旦那の、完全に精神をやられてしまった様子がショッキング。

全てに自信がなく、小さくなって暮らしている。
人と顔を合わせることもできない。
完全に、人も何もかも怖い。

群集に取り囲まれて乱暴され、医者にも追い出されたんだから、無理もない。
しかも義母が死んだ時の表情が、虚ろな目を見開いて、生きているかと思ったらそのまま死んでいる。
成仏できなさそうな表情が、これまたショッキング。
自分のせいだと思ったら…。

じゃあ、どうすればよかったのか。
ヤクザに頼んだのはまずかったけど、どうにもできなかったと思う。
しかし、おゆきは頑張って飯屋を営んでいる。
本当に町外れで、小さな。

だけど、それなりに繁盛し始める。
この夫婦の堅実さと、誠実さがうかがえる。
それが、もう放っておいてもらうことを条件に、おゆきを差し出すまでに追い詰められる。

おきんの騙されぶりが愚かに思えるけど、悪でもない、善意の人たちが扇動されてるのが、怖い。
石がないかなんて、やりすぎだとは思うけど。
真実を知ったおきんは、櫛を差し出す…。
って、あれ、くすねてたんですか!

真実を知った仕留人たちは、重く押し黙る。
とても救ってやれない。
心が痛む。
自分たちにできることは、恨みを晴らしてやるだけ。

だけど、聖古堂を殺しても、蔦屋や、破滅させられた人たちが帰って来るわけじゃない。
何ともやりきれない思いで、仕留人たちも仕留めた後、黙っている。
「もういじめないでくださいよう~」という、同じく逃げた小西屋の声。
そして、政吉の怯えきった姿。

人があんなになるのって、見たくないと思う。
あんな風に人を追い詰めるのって、やってはいけないことだと思ってしまう。
だけど、ああいう形だとそれに加担したという罪の意識が薄いのも、怖いと思う。
現代にも通じる怖さで、人間っていうのは、なかなか変わらないのかもしれないとまで思ってしまう。

仕留めは、貢の顔が、灯りに照らされて浮かび上がる。
かんざしを手にする。
顔の前まで持ってくる。

かんざしをかざす音が、シャキン!と言う。
貢のかんざしの輪が、儀兵衛を捕えている。
ずっと磨いていたかんざし。
蔦屋で買い求めた、恨みのかんざし。

恨みを晴らしたのとは別に、貢は自分の磨いたかんざしの威力をじっと見つめる。
やっぱり変わった。
何かが変わった。
貢の明らかな変化。

仕留めを終えた3人が、暗い川面を見つめている。
誰も何も話さない。
大吉と主水が、やがて別々の方向に散っていく。

貢は1人、川面を見つめている。
誰も何も、話したくない。
そんな気持ち、わかる…。
救いのない、トラウマになりそうな話。


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Comment

ちゃーすけさんへ
編集
お久しぶりです。
世の為にて候は必殺でも屈指の後味悪い回でしたね。半次がいたころは半次が瓦版屋のもあり、不正を暴く正義のブンヤとしてもマスコミという陽の部分を取り上げた話がありましたが、半次が去ってからは風評被害としてのマスコミの罪を取り上げていますね。
しかし、あの壊れちゃった政吉の姿。それでも気丈に小さな居酒屋をはじめるおゆきの姿を見ると、ささやかな幸せを誰も壊す資格などないのにと憤りたくなる一方、事件加害者を身内に持つ者の苦しみを冒頭のましら小僧の父親の姿に見ました。
見た後、すごく胃が痛くなりました。
2015年07月25日(Sat) 20:08
コサイミキさん
編集
>コサイミキさん

こんにちは!
コメントありがとうございます。

>世の為にて候は必殺でも屈指の後味悪い回でしたね。

恨みを晴らすのが仕事だから、生きてるうちはあまり動くことはないのがこの稼業とはいえ、これは…。
恨みを晴らした後も気が重い。
5話の「追われて候」も世間が敵に回る話でちょっと似ていますが、これは輪をかけて陰鬱です。

>半次がいたころは半次が瓦版屋のもあり、不正を暴く正義のブンヤとしてもマスコミという陽の部分を取り上げた話がありましたが、半次が去ってからは風評被害としてのマスコミの罪を取り上げていますね。

確かに!
半次がいたら、この話の展開は違ったものになったかもしれません。
仕置人の半次には、瓦版が悪に立ち向かう話がありましたしね。

>しかし、あの壊れちゃった政吉の姿。それでも気丈に小さな居酒屋をはじめるおゆきの姿を見ると、ささやかな幸せを誰も壊す資格などないのにと憤りたくなる一方、事件加害者を身内に持つ者の苦しみを冒頭のましら小僧の父親の姿に見ました。

ですよね…。
あのきりっとした若旦那の姿が、あんなになってしまってすごく後味悪い。
それでも、人通りの少ない場所で小さな店を切り盛りするおゆき。
この話を見ると、誰も、この人たちの普通の暮らしを踏みにじる資格なんて持っていない!って思いますよね。
悪党でもない人をここまで追い詰める仕留相手に対して、怒りを感じます。

>見た後、すごく胃が痛くなりました。

ほんとにつらい話です。
決して悪ではない、普通の人たちが追い詰める助けをしているところも怖く、悲しい話です。

コメントありがとうございました。
2015年07月26日(Sun) 20:16












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