こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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冷えてなきゃ、こんな稼業できやしねえ 「暗闇仕留人」第23話

第23話、「晴らして候」。


ある夜、大吉が深川で、女衒の和助を仕留める仕事を行った。
そっと相手の家を抜け出し、屋根の上を歩いて辺りを見回し、飛び降りる。
すると背後から1人の男が現れ、思わず大吉は右手を構えたところだった。

その男は大吉に気づくと軽く会釈して、屋台に寄った。
大吉が密かに後をつけると、屋台の親父は笑って男に「イイコが揃っているでしょ。そこの岡場所には」と言っていた。
夜が明け、その男は呉服屋の手代・佐吉で、与力の一家を殺した罪で、南町奉行所にお縄になった。
妹のおそのは、何かの間違いだと叫ぶ。

南町で佐吉は叩きの拷問を受けながら、同心・間宮は佐吉が与力・原の娘に懸想しており、手篭めにしようとしてついに原の一家を刺し殺すに至ったと責めた。
現場に佐吉の手ぬぐいが落ちており、返り血を浴びた着物を脱ぎ捨てた際に落としたのだと言われた。
だが、原一家を刺し殺した相手は今、間宮と共に佐吉を攻め立てている勘助であった。
佐吉は岡場所に行こうとしたが、途中で気が変わって引き返したのだと訴える。

その間宮は、湊屋郷右衛門と密談していた。
湊屋はいっそ、拷問で責め殺してはと言うが、与力殺しといえば人々の面前で処刑しなければ奉行所の面目が立たないと言う。
長引けばこちらが危うくなると言う湊屋に対して、間宮は望みを断てば良いと言った。
今、佐吉はいつかは無実とわかるという希望を持っている。

だから佐吉に絶望させ、嘘の自白をして楽になろうというように追い詰めれば良いのだ。
今、佐吉の無実を信じているのは妹のおそのだ。
佐吉の一縷の望みは、おそのだろう。
それを断てば良い。

なじみの飲み屋の主人が、通りかかった大吉に、深川の芸者が大吉を訪ねて来ていると言う。
深川の芸者と聞いて、デレデレとしてやってきた大吉だが、それはおそのだった。
大吉を見ておそのは、これで兄が救われると言った。

おそのの話を聞いた大吉は、飲み屋の外におそのを連れ出して、話を聞く。
先々月の晦日の夜、兄と出会ったことを白洲で言ってくれれば、兄の潔白が明らかになるとおそのは言う。
それで大吉はあの夜、出会った男が佐吉だと知る。
兄の佐吉は岡場所に行こうとして思い直して引き返し、その途中で大吉と会っているのだ。

佐吉は先ほど、大吉がいた飲み屋に仕事帰りに寄っていたが、そこでは大吉がいつもにぎやかに騒いでいた。
だから佐吉は大吉の顔を覚えていた。
その為、夜道でぶつかった時、大吉だとわかったのだ。
しかし、仕留め仕事の帰りだった大吉は名乗り出ることはできない。

大吉はおそのに、佐吉とぶつかった男は自分と似ているのかもしれないが、自分は深川に行ったことはない、それは人違いだと言う。
おそのの顔色が変わった。
先々月のことだから忘れているのでは?と言うおそのを振り切り、大吉は走って逃げた。

大吉が家に飛び帰ると、貢がいる。
思わず飲み干そうとして茶を噴いた大吉に、貢が何かあったのかと聞く。
大吉は女衒の和助を殺したことが、ばれると言った。

「女衒の和助?」
「弱ったなあ、こいつは」。
大吉は貢に先ほどの話をした。

「それで?おそのさんには何て言ったんだ?」
「もちろん、人違いだと突っぱねたよ」。
「そうか、それはよかった」。

これで佐吉は獄門か、磔だ。
「まあ、濡れ衣なんだから、いずれ晴れるんじゃないのか」。
「いや、晴れねえからこそ、一生懸命俺を探してたんじゃねえのか」。

飲み屋のオヤジにも口止めをしておこうと、貢に同意を求める。
絵に夢中になっている貢は返事をしなかったが、大吉が同意を求めているのに気づくと、「そうとわかったら、とっとと行けばいいじゃないか」と言う。
「けっ」と言って、大吉は出て行く。

しかし、大吉はすぐに気づいた。
大吉のほかに、佐吉を見た男がいる。
蕎麦屋の屋台のオヤジがいたではないか。

気づいた大吉が家に戻り、貢に明るく説明をすると、貢も「ああ、なるほどな」と言う。
大吉は蕎麦屋を探しに出て行く。
だが、蕎麦屋の伊三次は商売をやめて、引っ越していた。

夜が空けたら、伊三次の家はもぬけの殻になっていたらしい。
富くじが当たったということだったが、大吉に話した男は、そんなわけがないと言う。
そしてそういえば伊三次を訪ねて、若い女が来ていたとも言った。

翌日、町で大吉は、おそのの後をつける。
しかし、おそのの後をもう1人、目明しがつけているのに気づく。
伊三次を訪ねたおそのは、今は金貸しとなっている伊三次に体を強要された。
おそのは兄が牢から出たらと言うが、伊三次は先の話は当てにならないと言う。

兄の無実の証言の為、伊三次に迫られるおそのを、大吉は天井裏から見ていた。
頭に来た大吉は、その夜、家に戻ると徳利を蹴飛ばして怒った。
貢に「どこへ行くんだよ」と聞かれ、「決まってるじゃねえか!いちかばちか、俺ぁ奉行所に名乗って出る」と言う。

「あーあ」と呆れる貢に「俺は見ちまったんだぜ!兄貴を助けたい一念で、体を売った女を!」と言った。
しかし貢は「しかし、それで伊三次という男が商人になるって言うんなら、それでいいじゃないか。お前さんがそれ以上何、やることがあるんだい」と言う。
「それじゃ、おそのさんが、かわいそう過ぎるじゃねえか」。
おそのは伊三次が嫌で、必死に大吉を探したに違いない。

「もう済んだこったい!」
そう言うと、貢は矢立の刃を拭いていた手ぬぐいをたたきつける。
「かーっ、冷てえ男だな、おめえも!」

「ああ、冷てえさ。冷えてなきゃ、こんな稼業できやしねえんだよ!」と、貢が大吉に向かって矢立の針を突き出す。
大吉が黙る。
「お前だってわかっているはずだぜえ?俺たちにはなあ、人助けなんかできやしねえんだよ。そんなこと考えるのはな、それこそ身の程知らずってやつだい」。

「ぬ、抜かしやがって」。
「ああ、何とでも抜かしやがってやるぞ。おめえさんがわかるまではな!」
貢に口答えできなくなった大吉は、「ちくしょう、わかったよ!やめりゃあいいんだろ、やめりゃ!どうってことねえや!」と言った。

その夜、金貸しの伊三次の家から、勘助が出て行くのを見た大吉は伊三次の家に入る。
すると、伊三次は首を吊っていた。
おそでがやってきて大吉を見て「あなたさまは!」と言う。
「入っちゃいけねえよ」と大吉はおそでを連れて去っていく。

「そんな!」
「俺がこの目で見たんだ。間違いねえ」。
「どうして…、どうしてあたしたち、いつもこんな不幸なことばっかり…。せっかく明日、一緒に奉行所に行ってくれると言ったのに」。

今度のことはどうでも佐吉を下手人に仕立てないと、都合の悪い奴がいるのだろう。
伊三次が自殺などするわけない、殺されたのだ。
大吉はそれで誰か得をする奴がいないのか、佐吉はどんな罪で捕まったのかと、おそのに聞く。

おそでによると、兄の佐吉は与力の原のお嬢様には気に入られており、その為、佐吉は反物を持ってお屋敷にあがっていた。
でも佐吉は、小さい頃から虫も殺せず、からかわれていたぐらいなので人殺しなどできない。
だがどうしても大吉は、佐吉に会ったとは言えない。
他におそのに身よりはいないのかと、大吉は聞いた。

おそでが10歳の時、両親がいなくなって、16になったばかりの佐吉が、おそでの手を引いて江戸に来た。
それから2人は呉服問屋に奉公し、8年間懸命に働いた。
何一つ、悪いことなどしていない。
なのに店の者からも白い目で見られ、鬼の兄弟と言われて追い出されて、おそのは芸者となった。

佐吉の妹とわかると、どこも雇ってくれず、塩までまかれたこともある。
「誰もこの世の中で、味方になってくれる人などいません。誰も」。
おそでは涙をこぼして話すのを、大吉はただじっと黙って聞いていた。

翌日、大吉は主水に、南町の与力の間宮のことを聞いた。
主水によると、南町の切れ者だと言う。
貢から聞いていた主水は、大吉1人が殺されるならまだしも、自分たちまで巻き添えはごめんだと言った。
絶対に迷惑はかけないと言う大吉に、主水は「それならいいんだけどな」と言う。

「まかしておけって」と大吉は言うが、与力一家殺しは北町ではどう考えているのか。
主水は南町の知り合いに聞いたが、原はある抜け荷について調べていたらしい。
狙いはここ1、2年で急にのし上がった、海産物問屋の湊屋だ。
この主の郷右衛門が、なかなかしっぽを出さない。

どうも原が殺されたのは、この件ではないのか。
妻や娘まで殺したのは、目的がばれないようにだろう。
そして、間宮が郷右衛門の家に出入りしていたとなれば、どうなる?
郷右衛門と間宮がグルで、自分たちの罪を追う原を殺し、その罪を佐吉になすりつけようとしているのではないか。

「何だっていいんだよ」と大吉が立ち上がるが、主水が戸を閉める。
大吉が「何にもしやしねえよ」と笑うが、主水ににらまれて、おそのを付回していた目明しを捕まえれば、本当のことがわかると言った。
すると主水は十手を出して、大吉に押し付けると「ここ当分な、おめえを張らせてもらうぜ」と言った。

その頃、間宮は郷右衛門と、伊三次を殺したことと、大吉はどうも後ろ暗いところがあるらしく、逃げ回っていることなどを話していた。
おそのは絶望しているだろうが、間宮はあともう一押しが必要だと言う。
一方、大吉は妙心尼との逢引にも上の空だ。

どうもどっかから、義兄さんに見られているような気がする。
そんなわけはないと妙心尼が言った時、主水のクシャミが聞こえる。
背後の戸が開いて主水が見えると、妙心尼は気まずそうに大吉から離れる。

「こうなったら」と大吉は平然と妙心尼を抱き寄せるが、主水がいるのを知った妙心尼は「なりませぬ」と言う。
しかし大吉は妙心尼の耳元で、主水にナイショで行きたいところがあるから、このまま続けてくれと言う。
「なりませぬ!」と言う声に追いかけられながら、大吉は出て行く。

抜け出した大吉は、料亭の座敷に芸者のおそのを呼んだ。
おそのは大吉を見て驚いたが、頭を下げて座敷に入ってくる。
酌をしながら、大吉は、佐吉の無実を晴らすには、「本当の犯人を捜す以外に手はねえとと思うんだがな」と言った。
間宮が何かあるような気がすると言うと、おそのは「もういいんです」と言う。

「兄さんの身の証を立ててくれる人が見つかったんです」。
「本当か。どんな野郎だ」。
それは貸し本屋の直次郎で、明日の白洲で見たとおりのことを言ってくれると言った。

「その直次郎ってのは、信用おけるのかな」。
その時、その直次郎が入ってくる。
「直次郎さん!」

「おそのさん、この人ですね?」
「ええ」。
直次郎はしっかりした身なりを整えなおすと、大吉の前に座り「あなたは卑怯だ」と言った。

おそのの話を聞いたら、どう考えたって、佐吉にぶつかったのは大吉だ。
「人違いだ!」
大吉が直次郎に何を見たのか聞くと、同じ晩に岡場所から引き返す佐吉をはっきりと見たのだと言う。
直次郎は岡場所に何しに行ったと大吉が笑って聞くと、直次郎はキッパリと言う。

月の15日と晦日の日には、決まって必ず、お女郎さんたちに貸本を見せに行く。
だが先々月は翌日から上方へ新しい本の仕入れに行っていた為、事件を知らなかったのだと言う。
3日前に知って驚き、直次郎はおそのを探した。

佐吉も直次郎は知っている。
「今度こそ、きっと」と、おそのは言った。
「だけどよ、間宮って野郎は、相当の代物だぜ。気をつけねえと…、金貸しの伊三次の例もあることだしな」。
「このことを知っているのは、おそのさんとあなたと私だけです。あなたさえ、他所にもらさなければ」ち直次郎は言う。

「俺はしゃべりゃしねえよ!」
「それじゃ、大丈夫ですよ!」と言うと、直次郎はおそのに言った。
「おそのさん、佐吉さんは無実なんです。何もやっていない人が、もう三月も暗くてジメジメした牢の中で助けもなく、苦しんでいる。こんなバカなことがあって、たまりますか!」

おそのは目を伏せた。
「私は我慢できない」。
直次郎はおそのを見つめ「おそのさん、私は命なんか惜しくありませんよ。正しい者が負けるはずないじゃありませんか」。
おそのと直次郎は、大吉の前で見詰め合い、互いにうなづいた。

2人を見ていた大吉は居場所がなくなり、そっと立ち上がり、出て行く。
「おそのさん」。
「直次郎さん」。
大吉が出て行くと、2人はしっかり抱きしめあった。

翌朝、おそのと直次郎は白洲にいた。
おそのは、わずかに微笑んでいた。
佐吉が引き立てられてくる。
振り向いた佐吉を、おそのはしっかりとした視線で見つめた。

直次郎の名前が呼ばれた。
奉行から、先々月の晦日、深川の岡場所で佐吉を見たのかと聞かれ、「はい、確かにこの目で佐吉さんを見ました」と言う。
後ろで、おそのが見守っている。

「それはいつ頃か」と聞かれ、直次郎は「五つ半頃だったと思います」と答えた。
「思います?」と言われ、「五つ半でございます」と言い直す。
岡場所のどの辺りかと聞かれると、「はっ?」と言う。
「門の外で、ございます」。

「直次郎、お前、誰に頼まれた?」と間宮が言う。
「ええっ?」
白洲で偽りを申し立てれば、どうなるかと言われた直次郎は、直次郎が佐吉を見たという9月30日の翌日、つまり10月1日に直次郎を京で見たという者がいると言われる。

江戸から京までは、飛脚の足でも6日。
どうやって一晩で、直次郎は京までたどり着いたというのか。
後ろで聞いたおそのも驚く。
黙っていた直次郎だが、突然、「申し訳ございません!全部、でたらめでございます。本当はこの夏から佐吉さんには会っていませんのです」と言い出す。

「悪いのは私ではございません。ここにいるおそのです!」と直次郎はおそのを指差す。
「おそのさん、何か言ったらどうなんだ!何もかも、おそのがたくらんだことでございます!」
「何を言うの!」

「怖ろしい女だ。体で私を誘惑しておいて、根も葉もないことをお白洲で言うのは嫌だというと、やれ、家に火をつける、人殺しをした男を何人も知っていると夜叉のような顔で私を脅かすのでございます」。
これには佐吉が「嘘だ!妹はそんな女じゃない!」と叫んだ。
だが直次郎はなおも、「私だってまだ死にたくはない!殺されるぐらいならいっそ、佐吉に会ったと言った方が」と言う。

佐吉は直次郎に詰め寄ろうとして、おそのが悲鳴をあげる中、連行されて行った。
白洲で嘘を言った罪で、おそでも直次郎も縄をかけられた。
必死の訴えのおそのも、組み伏せられた。
連れて行かれる直次郎が鋭い目つきをしてうなづき、奉行の横に控えていた間宮がかすかにうなづいて合図をした。

その夜、牢の佐吉のところに間宮がやってきた。
間宮は、「おそのをかわいそうだとは思わないか」と言った。
本当ならそろそろ、好いた男と幸せになれる年頃だ。
だが今は女牢の中で、すすり泣いていることだろう。

しかし、おそのの罪は軽い。
佐吉さえ、素直になってくれれば、おそのの罪は見逃してやってもいい。
間宮はそう言うと、佐吉に「「どうだ、佐吉、白状するか?楽になれ。お前の苦しみはこのわしが一番良く知っている。さあ、楽になれ」と言った。
佐吉はむせび泣いた。

翌日、雨の中、ついに佐吉の処刑が行われた。
間宮が満足そうに見ていた。
主水が大吉に、佐吉が処刑されたことを告げに来た。
どうもおかしいと思ったら、昨日許可が下りて、今日すぐにこっそりと行われた。

直次郎はというと、おそのに脅されてやむを得ずということで、とっくに解き放しになっていた。
それを聞いて、貢も渋い顔をした。
「何もかもはめるつもりで企みやがったな」と大吉が言う。

間宮にとって、証人を作ることなどたやすい。
都合が悪ければ、握り潰す。
「おめえだってノコノコ出て行けば、今頃は…」と主水が言った時、物音がして、貢が制する。
目で「表だ」と合図する。

表の戸には目明しの勘助が張り付き、聞き耳を立てていた。
主水が刀に手をかけ、戸口に近づく。
雨戸に向かって、刀を刺し貫く。

勘助が張り付いている雨戸越しに倒れ、貢と大吉が勘助を運ぶ。
戸を閉める大吉の後ろから、おそのが現れる。
「おそのさん!」

おそのは中に入ると「あなたたちは、もしかしたら」と言う。
背中を向けたまま、主水が「もしかしたら、なんでえ」と聞く。
「お金を出せば、恨みを晴らしてくれると…?」

3人が顔を見合わせる。
おそのが金を出す。
「ここにお金があります。これで兄さんの仇を。頼みます。頼みます」。

おそのは大吉に向かって金を出し、貢に、主水に両手を合わせる。
「わかったぜ、おそのさん」。
大吉が4両を持ってそう言うと、おそのは泣きながら笑顔になった。

雨が上がり、直次郎が、湊屋も間宮も喜んでいるとひとりごちた。
その時、直次郎は外の物音に気づいて「どなたですか」と声をかける。
障子に影が映り、貢が「湊屋さんの紹介で参ったんですが」と答える。

「湊屋さん?」
「私、ちょっと趣向の変わった絵が描けるんですがね。こちらで雇ってもらえると聞いたもんで」。
「ほお?」
「何ならここで、ためしに描かせてもらえませんか?」と貢が言うので、直次郎は横柄に「そうかい。それならちょっと描いてもらおうか」と直次郎は貢を招きいれた。

貢が矢立を手に、筆を取り出し、おもむろに直次郎の前で描き始める。
直次郎が貢の持って来た絵を見て、「なかなか良く描けているね」と感心する。
貢の描いている絵が、女の顔になっていく。

ちらりと貢が、直次郎を見る。
描いている絵に髪を描き、唇に紅を入れる。
おそのの顔が浮かぶ。

直次郎が絵を取り上げ、「おそのに似ている…」と凝視する。
貢が筆を矢立に仕舞う。
直次郎が、絵を目の前に近づけて見ていく。

貢が矢立の針を、絵に押し付ける。
絵のおそのの額を貫いて、針が直次郎の額に刺さる。
おそのの額から、血のついた刃が下がる。

貢が睨む中、おそのの絵を額に押し付けたまま、直次郎が倒れる。
直次郎はおそのの絵の上で、死んでいるのを、貢が見下ろす。
刃を収め、矢立を懐に入れる。

湊屋では、間宮が郷右衛門と飲んでいた。
明日、また抜け荷の船が来るという。
そこに直次郎のところから絵を持って来た男が来たと言って、使用人が来る。
湊屋が、間宮が気に入るような絵を持って来させる約束だったらしい。

通されてきたのは、貢だった。
貢は湊屋に絵を見せ、ふと天井を見上げる。
天井の板が外れ、大吉が顔をのぞかせる。

2人は貢の持って来た絵を見ているが、最後に女の顔の絵が出てくる。
おそのの絵だった。
額に赤く、点がついている。
「おその」と間宮が言う。

「何?おその?」と湊屋が絵を見る。
「何かその絵が?」と貢が聞き、ちらりと間宮を見る。
間宮の顔が歪む。
貢を見て、「きさまぁ」と言って立ち上がる。

刀を抜いた間宮を見て、貢が「何をなさいます」と驚く。
「何奴!」
その時、胡桃をすり合わせる音がする。
間宮が気づいて、後ろを向く。

貢がすばやく間宮に近寄り、矢立を開く。
矢立から出た刃が、間宮の首筋に刺さる。
間宮が目を見開き、固まる。
貢が矢立を抜く。

突然、目の前で倒れた間宮を見て、不思議そうにしていた湊屋が仰天する。
這うように進み、置いてあった刀を抜く。
貢が矢立を構えている。

湊屋の背後で、大吉が胡桃を砕く。
その音に振り向き、大吉のほうを見た湊屋の正面の鎧の、首の部分から大吉の手が出てくる。
大吉は湊屋の心臓をつかむ。

湊屋が倒れ、大吉が睨む。
貢が矢立を仕舞い、絵を持つ。
大吉が湊屋から刀を取り、もとの場所に収める。

酔客を連れて、おそのが出会い茶屋の前にいる。
男が「部屋空いてるかい」と、茶屋に声をかけに中に入る。
おそのが先の暗闇を見ていると、貢が歩いてくるのが見える。

光に照らされて、貢がおそのを見るが、すぐに目を伏せる。
貢はただ、酔客の間を歩いて進む。
おそのが、目で追う。

もう一度、おそのが先の暗闇を見ると、今度は大吉が歩いてくる。
おそのと大吉が、見詰め合う。
大吉が止まり、おそのを見つめる。
わずかにうなづいたように、見える。

おそのもかすかに、唇に笑みを浮かべたように見える。
大吉は去っていく。
「おそのちゃん」と男が声をかける。

「はいはい」とおそのが笑いながら、男についていく。
その顔は、晴れ晴れとしている。
大吉はおそのの声を聞きながら、1人、暗い道を歩いていく。
貢が暗闇に消えて行き、大吉が後に続く。



冒頭、大吉が仕留めた相手が小判を撒き散らして絶命。
一瞬拾おうとした大吉。
ハッとして、「冥土まで持っていきやがれ!」と言って置いて行く。

いつも感心するんですが、どれほどお金があっても「必殺」の殺し屋さんたちはほとんどが頼み料以外には手をつけない。
「仕置人」で一度、鉄が金座の仕置きをした時、拾ってましたけど。
人の血がしみこんでる金ということもあるだろうし、ただの物取りじゃないということですね。

捕えられた佐吉が、拷問を受ける。
間宮が佐吉に自白を迫り、犯行の様子が語られる。
犯行が再現される。

赤い、血のような画面。
与力の娘、妻、そして与力が殺される。
しかし、「仕掛人」の音楽終了と共に振り向いた男が、佐吉じゃない。

それは目明しの勘助。
勘助が恐怖におののきながらも、手についた血をぬぐう。
ここで見ているほうには、佐吉の無実がわかり、犯人は勘助だとわかる。
うまい。

妹のおそのは、大谷直子さん。
おそのと一瞬、いい仲になりそうだった直次郎は石山律雄さん。
こちらも2度目の登場。

しかし今回は、人が良さそうで実直そうなのを逆手に取った。
これは誰でも騙されると思わせるキャスティング。
石山さんはそんな悪役を、たまにやってくれて、そういう時は本当にたちが悪くて怖い。

おそのを心配してきた大吉だけど、直次郎と言う誠実そうな証人を得たおそのは、冷たい目を大吉に向ける。
そして、おそのと直次郎の惚れあった感じに、大吉は当てられて出て行く。
この一晩のおそのは、本当に幸せだったんだろう。
翌日のお白洲で、おそのの顔が充実している。

しかし、奉行というか、奉行に入れ知恵した間宮の追及で、たちまち証言を翻し、おそのを罵倒する。
そこで、「妹はそんな女じゃない!」と怒る佐吉。
2人きりで頑張って来たという、兄妹の絆の深さがうかがえる。

今回も相変わらず貢が、大吉の家にいる。
それで、口調がさらに砕けている。
おそのに証言してくれと迫られ、あわてて振り切って家に戻った大吉が、やかんから直接茶を飲んで、すぐに噴いてしまう。
すると貢、「汚ねえ奴だなあ。 何だやばいことでもあったのかい」と言う。

さらに屋台の蕎麦屋のオヤジのことを思い出して、さっそくそのオヤジを探しに行く大吉に、「出たり入ったり忙しい奴だな、まったく」と言っている。
ところが出て行ってすぐに引き返してきた大吉、座敷にいる貢に、「おい、その飲み食いした分、ちゃんと銭置いてけよ!ここは俺んちだからな!」と言う。
ごもっとも。

しかし、貢、「ってやがんでえ、するめの足しかねえじゃねえか」と、するめを手にして言う。
かつての貢さんには、考えられない口調。
貢が大吉が訴え出ると言った時、貢は何をしているかと思ったら、矢立の手入れをしてるんですね。
分解掃除?

名乗り出ると言った大吉を諭している間、貢は矢立を磨いているんですね。
「かーっ、冷てえ男だな、おめえも!」と怒った大吉に「ああ、冷てえさ!冷えてなきゃ、こんな稼業できやしねえんだよ!」と言う。
そして、針を大吉に向ける。

最初の頃、仕留め稼業に、自分なりの理想と正義感を持って、かろうじて罪悪感を紛らわしていた貢。
それが「冷えている」と言う。
「俺たちには、人助けなんかできやしねえんだよ。そんなこと考えるのはな、それこそ身の程知らずってやつだ」という言葉は、貢が仕留めの経験で得たところから来た言葉か。

あやさんがいる時は、こういった口のききかたはしなかった。
こんな態度は、しなかったと思う。
そして、大吉に説教して、また針を磨き始める。
身も心も裏稼業に染まったように見える貢。

おそのが来た時、貢がくすんだ黄色っぽい、縞模様の着物を着ている。
珍しい。
貢のイメージって、青なんです。
でもこれも以前の貢なら考えられない服装。

この後、おそのの身の上を聞いた大吉が、今度は家で主水と火鉢に当たりながらするめを食べている。
今回は、するめばっかり?
大吉がおそのをかわいそうに思ってしまって、奉行所に行きそうなので主水も見張る。

そこで主水は、妙心尼のところにまで行っている。
お義兄さまがいるわけがないと言う妙心尼と大吉とがイチャつきはじめると、主水はクシャミで存在アピール。
しかも鼻をかむ紙を大吉に貰って、「遠慮なく、続けてくれ」と言って出て行かれても妙心尼だって困る。
情けなさそうな妙心さん。

主水の殺しは、勘助。
おそのが大吉の家に入ってくると、主水は背を向けている。
おそのに手を合わせられ、冷たいことを言っていた貢が気まずそう。
主水の殺しから、おそのが頼むまで「旅愁」が流れる。

直次郎を訪ねた貢が、絵を描き始める前に、おもむろに矢立を取り出す。
ピン、という音が響く。
緊張感。

ちらりと直次郎が見た貢の持って来た絵は、どうも責め絵らしい。
うーん、皆さん、責め絵、お好きですね!
貢の描いている絵が、女の顔になっていき、直次郎が絵を取り上げ、「おそのに似ている…」と凝視する。

筆が矢立に仕舞われ、ピン!という音がする。
針がおそのの額を貫いて、それを見ている直次郎の額に刺さるスピーディーさ。
はっきり、女の恨みだと言っているよう。
おそのの額から、血のついた刃が下がって、絵のおそのの額に血の点がつく演出もすごい。

主水が殺した目明しを貢と大吉がすっと運んだり、貢が天井を見上げると大吉がいたり、仕留め3兄弟の息がピッタリ。
湊屋で、おそのの絵の額に赤く点がついているのが怖い。
刀を抜いた間宮を見た貢が「何をなさいます」と言う口調が、とっても驚きに満ちていて、礼儀正しい。

間宮が胡桃の音で後ろを向くと、貢が矢立を首筋に押し付けてピンと開くと針が出てくる。
針が深々と、間宮の首筋に刺さる。
この動きが、とってもスピーディー。

湊屋の正面の鎧の、首の部分から大吉の手が出てくるのもすごい。
間宮が主水じゃなくて、貢なのも意外。
後の主水のシリーズなら、ここは絶対主水でしょう。

仕留めが終わった後、酔客の相手をしているおそのの前に貢が現れるのが良い。
暗闇から現れて、ちらりとおそのを見る。
仕事の完了をさりげなく、知らせている演出。
そして、助けてやれなくてすまないと思っているのかもしれない。

その後、大吉が歩いて来る。
おそのと大吉が、見詰め合う。
大吉のかすかな表情。
おそのの唇も、かすかに笑うような、笑わないような、微妙な動き。

貢にも大吉にもセリフはない。
でも、互いに言いたいことが通じ合う。
石坂浩二さん、近藤洋介さん、大谷直子さんの無言の演技がすばらしい。
寂しげな、でも暖かそうなハーモニカの音楽が流れる。

おそのがどういう境遇に落ちたのかは、言わなくてもわかる。
だけど、恨みは晴れた。
おそのはこれで、生きていけるんだ。
強い女だ。

そんな思いがするほど、おそのの最後の表情は晴れやか。
貢と大吉が、暗い道を歩いていく。
やがて闇の中に消えていくのが、闇の仕留人として象徴的。
しかし、この後、貢は大吉の家に泊まっちゃうっぽいですね。


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