こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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禁断の「悪魔が来たりて笛を吹く」

今、横溝正史の不気味なカバー絵の角川文庫ってないんですねー。
あれは実にうまく、横溝正史の世界を表現していた。
本のカバー全体が黒で、それが表紙をまるでお葬式の写真のように黒く縁取る。

そして、その中に小説をモチーフにした絵が描いてある。
絵が良い具合に、不気味アレンジ。
小学校の同級生は、子供の頃、このおかげで本屋が怖くなったそうで…。

そういえば、「悪魔が来たりて笛を吹く」の小説には「実在の事件とは関係ないフィクションです」という断り書きがあって、ここからしてもう、怖かった。
これも70年代に映画と連続テレビドラマ、両方が作られました。
映画では西田敏行さんが、ドラマではもちろん、古谷一行さんが金田一耕助を演じてます。

横溝作品には元・華族が良く登場するんですが、この作品にも玉虫伯爵をはじめとして華族が登場します。
玉虫伯爵はドラマ版・加藤嘉さん、映画版・小沢栄太郎さんともに良かったです。
どちらも姪のアキ子を溺愛しているが、冷酷で傲慢な元・華族に見えます。
さすが名優、下卑た役も、品がある役も自在。


さて、この映画と連続ドラマからは離れてしまいますが、片岡鶴太郎さんも金田一耕助を演じたことがあります。
「悪魔が来たりて笛を吹く」も、鶴太郎さん版があります。
ここでアキ子の兄で没落華族の新宮利彦は、本田博太郎さんが演じてるんです。
正直、鶴太郎さんは金田一耕助を頑張って演じているんですが、脚本は「うーん…、残念」といいたくなるようなものでした。

だから、私としては鶴太郎版「悪魔が来たりて」は、新宮利彦役・本田博太郎さんだけが見ものでした。
「あなたが悪いの、あなたが」と言いながら見られる。
知らず知らず、同じ道を歩んでいた「悪魔」はかつて、絶望したというのに、あなたは全然平気なのね!と、言いながら。
…映画と連続ドラマに話を戻します。


これを映像化する場合ですが、あのフルートの曲にも意味があるので、ここは「設定」は変えないで欲しい。
このフルートの曲が不気味で、誰もいないはずの2階や温室から、この曲が聞こえてくるのは、本当に怖かった。
私ならこの時点でもう、怖くてこの家から出てると思う。
出られないなら、誰かにピッタリくっついて、迷惑がられると思う。

アキ子お嬢様に仕える乳母・信乃は、ドラマ版の原泉さんがいかにも、おひいさまに仕える乳母。
昔のおひいさまに仕える乳母は、あんな風に厳格で、おひいさまの為なら人も殺すと思わせる怖さがあったんでしょう。
警部さんが「わしゃ、あのばあさん、苦手なんじゃ」と言うのも納得。
同じおばあちゃんでも、菅井きんさんみたいな愛嬌がない。

玉虫伯爵の愛人・菊江。
自由奔放に振る舞っているように見えながら、自分の立場を知っている。
玉虫伯爵がいなくなった後、自分の居場所がないことを自覚している。
実はかなり聡明。

明るさを持っている、流されるだけの愛人ではないところが、同じ女性のアキ子とは対照的。
菊江役はドラマでは中山麻里さんでしたが、インパクトありますよ~。
映画の池波志乃さんも妖艶で、この2人はどちらがやっても良いと思いました。

原作では「美しいが、造花のよう」な椿アキ子夫人は、映画の鰐淵晴子さんがピッタリだと思います。
自分の強い意思を持たない、流されるだけの美しい女。
その罪深い女性には、鰐淵さんが似合ってました。

草笛光子さんも悪くないんですが、草笛さんはもうちょっと強い女性の印象。
その点、「仮面舞踏会」の奔放な女優・千代子役は似合ってました。
茶室のシーンでは、本当に美しいです。
こちらは逆に、鰐淵さんより、草笛さんの方が良いんじゃないかな。

しかし、流されるだけの自分が起こしてしまった悲劇を知ったアキ子の行動は、原作と違っても、これは良かった。
これが彼女の、いろんな人への「ごめんなさい」だったんでしょう。
全てのことは、愛情の裏返しだってわかったでしょうし。

生まれた時から、否定されるべき存在だった「悪魔」に、愛情は縁がなかった。
こうしてしか、彼は関われなかった。
そして知らず知らず、自分が同じことを繰り返していた、そのおぞましさと怒りと哀しみは、こうやって収めるしかなかった。
アキ子が自分の罪深さを精算し、全てのことに詫びるラストになったのは、物語の結末として良かったと思います。

そして連続ドラマ版は沖雅也さんを見るのに、良いんじゃないでしょうか。
映画の三島役は、宮内洋さん。
ごめんなさい、宮内さんは、どーしても違う番組の役が自分には強すぎて…。
こういう人がいるからアタリ役って俳優さんにとっては微妙なんですよね、わかってます、はい。

そういう事情を差し引いても、連続ドラマ版の沖さんはすばらしいと思います。
あの哀しさが、今見ると、沖さん自身に重なってしまう。
この役を沖さんにした意味が、十分にある。
当時の、キャスティングをしたスタッフの目はすごいですね~。


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Comment

何を読み直そうか……
編集
先日から横溝作品を再読しようと書店へ出向いたのですが、ホント!洗練されたカバー・デザインになってしまいましたね。
(文庫本の文字が大きくなったのはありがたいですが……笑。これ、大事)

ウチの書棚にある横溝正史の本は70年代になってから書かれた「悪霊島」と「病院坂の首縊りの家」の単行本2冊しかないのですが、当時は文庫本も単行本も同じ黒枠に、杉本一文氏のイラストを嵌め込んだデザインでしたね。
「悪霊島」は、巴を真ん中に両端に真帆と片帆の双子の姉妹を配し、「病院坂の首縊りの家」は法眼一族のイメージで片目の風鈴、と、昔のアメリカのパルプマガジンみたいなB級感がおどろおどろしいです。
さて何か買おうかと出向いたのですが、名古屋で1、2の大きな書店なのにあんまり揃っていなかったです。

2012年06月17日(Sun) 00:13
micmacさん
編集
>micmacさん

お返事遅くなり、すみません!

>先日から横溝作品を再読しようと書店へ出向いたのですが、ホント!洗練されたカバー・デザインになってしまいましたね。
>(文庫本の文字が大きくなったのはありがたいですが……笑。これ、大事)

今度の文庫本は、その内容に見合った漢字が載っているデザインなんですよね。
あのカバー、「ペルシャ猫を抱く女」と「支那扇の女」の表紙が似ていたんですね。
そうしたら「ペルシャ猫…」を原型とした話が「支那扇の女」とわかって、その凝り具合にも感動したんですが。

>ウチの書棚にある横溝正史の本は70年代になってから書かれた「悪霊島」と「病院坂の首縊りの家」の単行本2冊しかないのですが、当時は文庫本も単行本も同じ黒枠に、杉本一文氏のイラストを嵌め込んだデザインでしたね。

あのおどろおどろしさが、いかにも横溝正史!だったんですよね。

>「悪霊島」は、巴を真ん中に両端に真帆と片帆の双子の姉妹を配し、「病院坂の首縊りの家」は法眼一族のイメージで片目の風鈴、と、昔のアメリカのパルプマガジンみたいなB級感がおどろおどろしいです。

「病院坂の首縊りの家」は上巻が目つきの怪しい花嫁と、横に立つ新郎の顔が風鈴で見えないんですよね!
しかもその風鈴と、写真には血が点々と落ちている~。
そして、下巻では写真がセピア色にあせている。
風鈴は糸が切れているし、血が黒いしみになって、やっぱり点々と…。
いやもう、感心しました。

>さて何か買おうかと出向いたのですが、名古屋で1、2の大きな書店なのにあんまり揃っていなかったです。

横溝正史、今はあんまり置いてないんでしょうか…。
新刊は出ない作家さんですもんね。
寂しい…。
2012年06月18日(Mon) 00:16












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