日曜の夜は、ご近所の窓から灯りが消えるのも早いです。
しかしこれからは学生さんには夏休みが来るので、夜更かしも増えるかも。
窓の灯りが、遅くまでついている家もあることでしょう。


「窓の灯り」で、阿刀田高さんの短編を思い出しました。
1ヶ月もの間、市場調査の仕事で家を空けた男は、その夜、戻ってきた。
まずは夕食をと考えた男は、駅前のビルのレストランに入る。
そのレストランの窓際の席からは、自分の住んでいるマンションの灯りが見える。

そこから見える建物の、3階の右から三番目の窓が、主人公の男の部屋だった。
席について自分の部屋の窓を見た男は、「しまった」と思った。
窓に灯りがついている。
1ヶ月もの間、電気をつけっぱなしにしていたのか、と。

しかし、ふと考えると、男が家を出たのは朝だった。
電気をつけているわけがない。
トイレも風呂場も、こちら側じゃない。
あれは部屋の窓だ。

灯りはオレンジ色のカーテンを通しているから、少しオレンジ色に見える。
管理人だろうか。
それとも空き巣にでも入られて、電気をつけられたままなのだろうか。
常識的な考えがいくつか浮かんだが、同時にわけのわからない恐怖が走る。

なぜ今、自分はこんなにも怖いのだろう?
何が怖いのだろう?
わからない。

わからないが、誰かいる。
部屋の主の自分がいない間に、何かが勝手に棲みついている…。
そんな思いが消えない。

そんな考えに囚われながら窓を見ていた主人公は、「あれ?」と思った。
実際、小さな声を出したかもしれない。
窓の灯りが動いた。

というより、一瞬暗くなってまた元通りになったのだ。
例えば、部屋の中に誰かがいてその誰かが窓の前を横切ったから暗くなって、また戻った。
そんな動きに見えた。

レストランは混んでいた為、合い席になっていた。
向かいに座った男が主人公の様子に気づいて、「どうかしましたか?」と聞く。
男は今見たことを話し、警察を呼ぼうかどうしようか考えていると言った。

すると、その合い席の男は「誰かいるんじゃないですか?」と言う。
だが合鍵を作って入っているような、心当たりはない…。
ふと、地方で知り合って、東京の住所も電話番号も教えなかったが、少しだけ付き合ったバーの女性を思い出す。

しかしその女性は、以前に遮断機の下りた踏み切りに入って、事故死してしまっていた。
女性が事故にあった時間を考えると、女性は自分を迎えに来る途中だったと思われた。
2人の関係は誰にも知られていないものだったし、女性に対して本気だったわけでもなかった主人公は遠くから合掌しただけだった。

そんなことを思い出していると、向かいの席の男は「死んだ女が待っているんじゃないですか」などと言い出した…。
死んだ女性がひっそりと、誰もいない部屋で男が帰るのを待っている…?
何と不気味なことを言うのだろう。
主人公は、合い席の男の顔を見る。

どこかで会ったような気がするが、思い出せない。
誰だっただろう。
近所で顔を合わせたことでも、あるのだろうか。

…と、話はこんな展開を見せます。


ビルのレストランから、自分の部屋の窓の灯りがついているのを見る。
灯りがちょっと暗くなって、また元に戻る。
つまり、人が横切った。
人の気配がする。

これを読んだ時、阿刀田さんも窓の灯りを見るのが好きなんじゃないかな?と思いました。
そうでなければ、こんな文章は書かないだろう、こんな発想はしないだろうと。
阿刀田さんの短編って、「赤と青の二人」のような、ちょっと奇妙な味がして、好きなんです。
これもまた、主人公が感じる、得体の知れない、でも身近な恐怖がジワジワ来る短編です。



危険な童話 (新潮文庫)危険な童話 (新潮文庫)
(1991/04)
阿刀田 高

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この結末に納得行くか、それはそれぞれ…かな。


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2012.07.09 / Top↑
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