BSフジで昨夜は、「横溝正史シリーズII 八つ墓村」の最終回でした。
祟りに振り回される、八つ墓村の人々、多くの犠牲者。
以下、この記事は全部のネタバレになります。
まだの方、小説かドラマか映画か、いずれにしても読んでいない方、見ていない方は注意してください。



辰弥の母・鶴子に横恋慕した多治見家の当主・要蔵は26年前、鶴子を手篭めにし、屋敷に拉致監禁した。
その鶴子が監禁されていた座敷牢から逃げたことにより、元々酒乱で乱暴だった要蔵の狂気は爆発した。
八人の落ち武者を惨殺した村には、その祟りがあると信じられてきた。

26年前の、要蔵による32人殺し。
生贄は8人、または祟りがなかった後に起きたら、それは倍をかけた数になった。
そして今回の連続殺人。
井川丑松、田治見要蔵の兄で辰弥を呼び寄せた久弥、洪禅和尚、梅幸尼、事情を知る濃茶の尼、医師の久野恒実、里村慎太郎、多治見要蔵と久弥の祖母・小梅が次々殺される。

全ては落ち武者の祟りであると、それは辰弥が多治見家に呼ばれたことによって起きたと信じた村人たちはパニックに陥った。
身の危険を感じた辰弥は、多治見家分家の嫁の美也子の手引きで「龍のアギト」という洞窟の奥に潜む。
美也子は村人たちから逃れた辰弥と、この龍のアギトで会った。

龍のアギト、そこは母と愛しい男・陽一との逢引の場所だった。
多治見家に拉致され、監禁された母が後に引き裂かれた陽一と逢引した場所。
辰弥の命は、ここで始まった。

実は辰弥には、多治見家の血は流れていなかった。
彼の本当の父は、陽一だった。
あの怖ろしい多治見要蔵の血を、辰弥はひいてはいなかったのだ。

母と陽一、そして今は辰弥と美也子が、龍のアギトで会っている。
辰弥は確かに、美也子と愛し合ったと思った。
そして辰弥は美也子と共に、こぼれ落ちる黄金を見つけた。

母は逢引の際に、黄金を見つけていたのだ。
この黄金をいずれ辰弥が見つけるようにと、母はその地図を辰弥の守り袋に入れていた。
美也子は、この黄金があれば、多治見家の後など継がなくても良いではないかと言う。

だが美也子が去った後、多治見家の娘・春代が洞窟で襲われ、瀕死の状態で辰弥に見つけられる。
春代は辰弥と兄弟ではなかった。
辰弥を愛しても良いと知った春代は、辰弥の腕の中で息を引き取る。
そして瀕死の春代のつけた傷により、辰弥は美也子が一連の連続殺人事件の犯人だと知った。

分家の嫁の美也子の、多治見家に対する積み重なった怨念が、八つ墓明神の祟りを装って連続殺人を決行させた。
事業に失敗した夫が本家に頭を下げて借金を申し込んだ時、本家は冷ややかに無視した。
夫の会社は倒産し、土地も家も人手に渡った。
だが、それを見た本家は、人手に渡った分家の土地も家も買い戻してしまった。

美也子の夫は、自殺した。
そんな財力があるなら、なぜ助けてくれなかった。
多治見家は、いつもそうだ。
名主である多治見家の財力と権力と横暴さに、村人たちは苦しんできた。

多治見家に対する恨みが村に募る中、要蔵は26年目、村人32人を惨殺する、大事件を起こしたのだ。
これにより、家族を殺された村人も多い。
久野医師もその1人だった。

彼は恨みから、八つ墓明神の祟りに見せかけた犯行を計画したメモを書いていた。
しかし、彼はそれを村の浮浪者のような祈祷師・濃茶の尼にカバンごと盗まれた。
濃茶の尼がカバンをあさっていたのを、美也子が発見し、そのメモを見て買い取った。

弁護士の諏訪は近年、議員に立候補したが、落選していた。
それは多治見家を初めとする村人が投票してくれなかったせいだとして、諏訪は多治見家にも村にも恨みを抱いていた。
美也子は諏訪を共犯者に引きずりこみ、犯行を開始したのだ。

犠牲者は祟りに見せかける為、8人。
井川丑松、田治見久弥、洪禅和尚、梅幸尼、犯行の事情を知る濃茶の尼、久野医師、里村慎太郎、多治見要蔵と久弥の祖母・小梅。
だが、本当に殺したいのは、口封じと恨みのある一部の人間だけ。

あとは祟りを装い、辰弥を孤立させ、村人の多治見家への長年の恨みを辰弥に向かわせるための殺人。
諏訪は多治見家への恨みと、美也子が多治見家の財産を奪った暁にはその分け前をもらうつもりだったのだろうと金田一に見抜かれる。
しかし、この村の出身者の諏訪はそれだけではないと、つぶやく。

怨念溢れる多治見家の跡継ぎの辰弥は、美也子の最終目標のはずだった。
しかし憎むべき辰弥を、美也子は愛してしまった。
全てを知った辰弥に、美也子が言うことはひとつだった。

辰弥を殺して、自分も死ぬ。
襲われる辰弥。
その辰弥を、1人の仮面の男・富造が救った。

富造は復員してきた際、ひどい傷をおったのだろうと言われていた。
仮面を決して取らない富造。
その富造が、なぜか辰弥を守って美也子ともみ合った。

美也子は首を絞められ、富造もまた美也子に刺されて亡くなった。
仮面の下の富造の顔。
金田一に言われ、辰弥は富造の仮面をとる。
富造は、辰弥の実の父、母の愛しい思い人・陽一であった。

恋人・鶴子を奪われ、村を追い出された陽一だが辰弥を守ろうと、密かに身分と顔を、を隠し八つ墓村へ戻っていたのだ。
東京で、そして八つ墓村で、辰弥が感じた自分をつけている気配は父・陽一のものだったのだ。
徹底して日陰の身を貫き、命をかけて守ってくれた父に、辰弥は泣いた。

だが辰弥が多治見家の血を引いていないことを知れば、美也子は多治見家の財産を奪う為に殺人を犯す必要はなかった。
また、多治見家への恨みと愛する辰弥の間に入って、苦悩することもなかったのだ。
そして美也子が死んだ今、黄金のことを知っているのは辰弥のみだった。

数ヵ月後。
混雑する戦後の東京の雑踏。
アメリカ兵の手にぶら下がるようにしている、派手な頭の花飾りと服装の女性。
不自由そうな足を引きずりながら歩く、復員兵。

ラジオから女性の歌声が流れている。
何かを焼いている煙が充満し、人々がごった返している中、日和警部が歩いていく。
暖簾が下がっている飯屋を一軒一軒見ていた日和警部は、その中の一軒で飯を食べている金田一耕助を見つける。
すすけた壁には、「バクダン二十円」「小盛十円」「大盛二十円」などと書いた紙が貼られている。

日和警部は金田一耕助に、「あんたなあ、今朝の新聞見た?」と聞くと、金田一耕助は「いや、まだ」と答える。
「ん」と警部が差し出した新聞を金田一が「何ですか」と見る。
「違う、こっちじゃ」と言われ、裏側になった方の紙面をひっくり返して見る。
「デラ台風の二次災害?岡山県明知郡の刑部川が氾濫!八つ墓村、濁流に押し流され…!ふぅん」。

「田治見家も、あの村も。そして三千両の黄金が隠されてるっちゅう洞窟も。跡形もなく、な。もったいない話じゃあ」。
さらに金田一は「身元不明の水死者が1名?」と、そこにある記事を読む。
「神戸在住の多治見辰弥氏、26歳と判明!!」と記事には書いてある。

「しかし、辰弥くんは、何じゃっちゅうて、洞窟の穴ん中へ」。
日和警部は「なぜか、さっぱりわからん」と首をかしげる。
金田一耕助は言う。
「恋人が死に、実の父が亡くなったあの洞窟へ…、きっと何か見えない糸にたぐられて入っていった」。

「すると、やっぱり…」。
「やはりこれは祟りってことかなあ。日和さん、そう言いたいんでしょ」。
頼んだどんぶりの中に、目が映っているのを見て、警部は一瞬ギョッとする。

「なんだこりゃ、わしの目が映っとるんだ、こりゃ」と気を取り直し、警部は食べ始める。
そして2人は笑う。
だがその後、すぐに金田一は横で、頭をかきむしる。

重々しく、古めかしい、音楽が流れる。
雪に埋もれた山が見える。
「八つ墓村。その奇怪な名の村は、現在、日本中の地図を探してみても、どこにも見当たらない」。
その言葉の通り、山間には、もう何もなかった…。



鰐淵晴子さんはもちろん、後には2時間ドラマなどで凄みのある妖艶な悪女をたくさん演じて、私を楽しませてくれた松尾嘉代さんのいじらしく美しいこと。
金田一耕助は古谷一行さんで、この陰惨な事件の中、暖かい人間味を感じさせてくれます。
日和警部は長門勇さんで、軽快で楽しく、この話の救いになってます。
でも石坂浩二さんの金田一で、この「八つ墓村」も見てみたかったと思わずにいられません。

そして少し前、「怪奇大作戦」の「霧の童話」を見ていたせいか、このドラマはこの話を思い出させました。
落ち武者。
金田一が生きている時代、要するに現代に蘇る、古くからの祟り。

映画「八つ墓村」の山崎努さんのシーンは子供を怯えさせるには十分すぎるほどですが、「霧の童話」の落ち武者の亡霊登場だって、子供にはかなり怖い。
土の中で笑っている声がするので振り向くと、枯葉の中から顔が見えて笑ってるとか、子供の頃見たら相当怖かったでしょう。
そしてこのラスト。

「霧の童話」では、村を真っ二つにしてもめた騒動の後、村は濁流に飲み込まれてなくなってしまったと知る。
どかしては、いけない。
落ち武者の祟りは、やっぱりあったのか…。

そして村は消滅し、後には巨大資本の工場が立ち並ぶ近代都市が生まれた。
ヤギを連れた少年、子供たちの演奏する音楽が流れる小さな小学校、お地蔵様。
柿の木、農家の人々。

のどかな田舎の村はもう、ない。
もうもうと立ち上る煙突からの煙、鳴り響く金属音。
高速道路が通った傍らに、壊れたお地蔵様が放置されている。
その側に座る労働者風の疲れた様子の男が、遠くを見つめている。

子供たちの演奏する音楽に、その風景が重なる。
少年は、ヤギはどうなったのか。
胸が締め付けられるようなラストシーン。

ドラマの「八つ墓村」のラストは、このラストシーンを思い出させました。
年代的には、小説は「八つ墓村」の方が先で。
ドラマとしては「霧の童話」が先かな。

このドラマ「八つ墓村」のラストは、辰弥が二次災害に巻き込まれてなくなっていたという衝撃がありました。
春代と父親が、命をかけて守った辰弥が。
あれだけの事件を越えたというのに。

身元不明の水死体だった。
辰弥の最期を、2行の新聞記事で知らせているのが空しい。
でもそれを知った金田一耕助の反応が、「ふぅん」というのもすごい。

「ええっ!」じゃないんです。
あれだけの事件を知っている金田一耕助が「ふぅん」。
それもまた、空しい。

辰弥がなぜ、洞窟に入ったのか。
おそらく、黄金のことだろうと思うけど、黄金のことを知らない金田一たちにはわからない。
辰弥はどんな思いを背負って、あの洞窟に行ったのか…と思う。
それでも黄金があるにしても、単にそれを手に入れるためだけに辰弥が洞窟に入った気がしない。

美也子と龍のアギトへ入っていく時、辰弥は言ったから。
「何だか、母の胎内へ入っていくみたいだ」と。
だから「恋人が死に、実の父が亡くなったあの洞窟へ…、きっと何か見えない糸にたぐられて入っていった」ような気がしてしまう。
すると、これはやっぱり、形を変えた祟りなのか。

映画では、美也子と辰弥の血筋を辿っていくと、落ち武者に行き着くことがわかる。
結局、この2人がそれと知らないうちに協力して、八つ墓村と多治見家に復讐をしたことになった。
ここでもう、金田一は調べるのをやめてしまった。

現代に生きる人間が重大な事件を、「何か見えない糸にたぐられて」起こしていた。
そんなこと、知ってはいけない。
あったなら、怖ろしくてしょうがない。
知らないほうが、きっといい。

ちょっと間の抜けた八つ墓村駐在・工藤巡査。
これが「必殺」などでたくさん悪役を演じている江幡高志さんっていうのが、すごく良いんですよ、はげ頭ぺしぺし叩かれて。
金田一耕助が泊まっていた家の、かずちゃん。
駐在さんの幼馴染で兄弟ケンカのようなやり取りをしていた、かずちゃんのお兄さん。

みんな、みんな、どうなってしまったのか。
雪山に囲まれたそこには、何もなかった…。
これはこれでゾッとするような、空しく、救われないような感じを味わい、これまた胸が締め付けられて終わりです。


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2012.08.09 / Top↑
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