BSフジで放送している「金田一耕助シリーズ」。
3回なんですけどね、今週で「シリーズII」の「真珠郎」が終わりです。
原作には金田一耕助は出ないんですが、ドラマ化の為、作者の了解を得て金田一耕助ものにしています。

以下、全部ネタバレしてます。
見ていない方は注意。
原作を知らない方も注意。


「真珠郎はどこにいる」。
「あのすばらしい美貌の尊厳を身にまとい、如法暗夜よりも真っ黒な謎の翼にうちまたがり、突如として現れた美少年。世にも恐ろしい血の戦慄を描き出した殺人鬼。あいつはいったい、どこへ消えてしまったのだろう」。
そう表現される絶世の美青年であり、殺人鬼の真珠郎。

話は大学の若い講師・椎名耕助が夕空に浮かぶ雲が、サロメに首を切られたヨカナンに見えたと言って、不吉な予感に怯えるところから始まります。
同じ大学の若い講師・乙骨三四郎は、ロバにしか見えないと笑い、椎名は気鬱の病だと言って旅に誘い出す。
2人は信州の山奥で、広大な屋敷に住んでいる鵜藤とその姪を訪ねていく。

そこに向かうバスの中で椎名は「血が流れる」と不吉な予言をする老婆と、そして東京の食糧事情の悪さから寺の住職である叔父を訪ねていく友人の金田一耕助に出会う。
バスの運転手によるとこの老婆は、毎年冬になると湖畔にやってきて、住み着くのだと言う。
訪問する屋敷の持ち主・鵜藤は昔、東京で生物学を教えていた。

たった一人の身内の姪の由美が寂しがっているので、東京から客が来ると歓迎してくれると言う。
バスを降りた2人の目に、塔の上にいる由美が見える。
由美はすばらしく美しい娘だった。

鵜藤の屋敷は横浜にあった遊郭を移築したという、広大だが使わない部屋がたくさんあるという屋敷だった。
数年前に爺やが引退してから、由美は体が弱っている叔父をの面倒を1人で見ていた。
だが金田一耕助は寺の和尚である叔父から、屋敷には誰か、もう1人いるという噂を聞いた。

椎名は出かける際、水筒を忘れて取りに戻った時、由美がひとつの部屋に食事を運んでいるのを見た。
中からは鎖の音がして、人がいると思われた。
誰か、いる…?

椎名の疑問に由美は、花魁たちが病に倒れ、商売ができなくなった時に入れられた部屋や、折檻部屋を見せる。
花魁に入れあげた男が、花魁に斬りつけて無理心中を仕掛けた部屋も見せた。
壁にはべったりと血がついていた。

この説明で椎名は納得したが、乙骨は納得しない。
蔵の中に誰もいないと思わせるためのアピールで、逆に誰かがいるのだと乙骨は言う。
その夜、椎名は庭から水音がして目を覚ます。
乙骨を起こすと、2人はそっと部屋の窓を見る。

窓の外には、湖のほとりに佇む青年が見えた。
湖のほとりには無数のホタルが飛び交い、その青年はホタルをつかまえ、口に含んだ。
すると青年の姿は怪しく燐光を放った。
その凄まじい美しさと異様さに、2人は息を呑み、身動きできなくなる。

「すごい美男子だ」。
「美しすぎて気味が悪いな」。
「あれはひょっとして、蔵の中にいる人間…」。
乙骨は、人前に出せない病人でも養っているのではないかと推理した。

翌朝、2人は鵜藤にその事を話すと鵜藤は驚愕のあまり、口が利けなくなった。
その日、金田一と叔父に会った椎名は、その美青年のことを話した。
すると叔父はそれがもう1人の住人に違いないと言い、鵜藤家にはあまり関わらず、都会に帰った方が良いと勧める。
金田一も職業的な勘で、何か怖ろしいことが起きそうな気がすると言った。

まもなく、予感は的中する。
椎名と乙骨が湖に出ている時、浅間山が噴火し、地震が起きる。
あわてて鵜藤の屋敷に戻ると、廊下では由美が倒れていた。
「真珠郎…、ああっ、真珠郎!」

その言葉に椎名は、夕べの美青年を思い浮かべる。
真珠郎が逆上したと由美は言って、鵜藤を探しに急ぐ。
由美は椎名と乙骨とともに、湖の洞窟に鵜藤を探しに入る。
だが洞窟は、そこにある島より先には、誰も行ったことがない。

暗い洞窟の中、同じボートに乗った由美と椎名の前に、島が見えてくる。
島に何か、白いものがかかっている。
それは乙骨のマフラーで、先に洞窟に入った乙骨は、頭から血を流して倒れていた。

次の瞬間、由美が悲鳴をあげる。
湖に首から上を突っ込んだ体勢で、島の上で鵜藤が倒れている。
暗い中、椎名が由美から灯りを受け取り、鵜藤を助け起こすと、鵜藤の首から上はなかった。
椎名も、由美も絶叫する。

どこかで笑い声がする。
椎名はボートと、その上にバスの中にいた不吉な予言をした老婆を見て、助けを求める。
しかし振り向いた老婆の顔は、あの夜の美青年だった。
由美が気を失う。

金田一耕助もまた、日和警部を連れて、鵜藤の屋敷に向かう。
湖畔に住み着く老婆に金田一は会うが、老婆は何も知らないようだった。
洞窟で椎名と合流した金田一耕助だが、鵜藤の遺体が流れて行ってしまう。
日和警部は遺体を追うが、島より先には誰も行ったことがないので危険だと由美が叫び、断念せざるを得なかった。

全員が屋敷に戻り、気絶していた乙骨も目を覚ます。
警察を呼びに走った椎名に由美はすがりつき、椎名も由美を抱きしめる。
だが屋敷に戻った椎名は、乙骨が由美に迫っているのを目撃した。

気まずそうに離れた由美を見送ると、乙骨はたった今、由美と結婚の約束をしたと話す。
「大学の講師などは貧乏で、美しい妻と金には縁がないが、俺はいつかきっとこの強引な性格でそれを手に入れてみせる」。
乙骨は常々そう言っていたが、今、それが本当になろうとしていた。

金田一や日和警部、椎名と乙骨を連れて、由美が屋敷を案内する。
屋敷に葉誰も気づかない隠し部屋があり、由美はここが真珠郎が20年近く閉じ込められていた部屋で、真珠郎は鎖を切って逃げたと話した。
由美が仕掛けを引っ張ると、部屋は怪しい光を放って開く。

鵜藤はこの中で、真珠郎を育てた。
真珠郎は昆虫の首をナイフで切り落とすと、鵜藤に誉められた。
よこしまな心はよこしまな顔に宿るというが、真珠郎は反対。
人をとろかすような絶世の美貌に、殺人鬼の心…。

なぜ、そんな青年を、鵜藤は育てたのか。
それは20数年前の出来事にあった。
20数年前、鵜藤は恩師の妻・愛子夫人に言い寄った。

拒絶されると鵜藤は、愛子夫人は自分のあざのある醜い顔のせいで拒絶したのだと思った。
愛子夫人は鵜藤が絶世の美少年でも拒絶したと言うが、鵜藤はその時、「アポロンのような顔にバチルスのような心を持った男を差し向け、いつかあなたを殺す」と誓って去って行った。
このことがきっかけで鵜藤は社会的に抹殺されてしまったが、鵜藤は反省をしていなかった。

金田一と日和警部は、屋敷にいた爺やを探して連れてきて、話を聞いた。
鵜藤はある夜、どこかから目隠しをした美しい女性を連れてきて、蔵に閉じ込めた。
それからまた、同じように目隠しをした美しい男を連れてきて、同じ蔵に閉じ込めた。
やがて2人に子供が生まれると、鵜藤は真珠郎と名付け、男女を屋敷から連れてきたのと同じ方法で返した。

鵜藤は、真珠郎だけを蔵の中で育てた。
真珠郎がナイフで生き物の首を切断すると、鵜藤は誉めた。
邪悪な心を持つように教育し続けた。
そうして血と教育で「人間バチルス」となった真珠郎を、自分を拒絶した恩師の妻・愛子夫人に差し向けるのが鵜藤の計画だったのだ。

だが金田一耕助は、脱走した真珠郎が愛子夫人の所に行くことに疑問を持つ。
やがて、乙骨は由美と結婚し、吉祥寺に居を構える。
吉祥寺を訪ねてくるように誘われても、椎名は由美のことを考えるとなかなか足が向かなかった。
しかし、そんなある夜、椎名はタクシーの中から、車に乗った真珠郎を目撃する。

東京に真珠郎がいる!
不安を感じた椎名は、吉祥寺の乙骨家を訪ねた。
幸せかと思った由美は相変わらず美しいが、どこかやつれ、幸せには見えなかった。
乙骨もまた、由美ではなく、自分の関心は由美の引き継ぐ莫大な財産にあったと言う。

椎名はその夜、乙骨家に泊まったが、夜半、絶叫で目を覚ます。
悲鳴を聞いて駆けつけた椎名だが、由美と乙骨の部屋には鍵がかかっていた。
椎名は必死に窓から中に入ろうとしたが、窓には頑丈な鉄柵があり、どうしても入ることができない。

そして、椎名は部屋の中に真珠郎がいるのを見た。
乙骨は気絶させられていたが、由美は刺されてしまう。
椎名は、真珠郎が由美を運び去るのを見た。

庭に回った椎名は、真珠郎の後を追うが、姿はなかった。
代わりにあったのは、由美の着物を着た首なし死体だった。
椎名は泣き崩れる。

警察で椎名は自分の目撃した一部始終を話し、絶望の淵にいた。
しかし、日和警部は首なし死体をなぜ、由美と思っているのかと意外なことを聞いた。
ふと、椎名は真珠郎ともみ合う由美の腕にあざがあったのを思い出す。
信州でも椎名は由美の腕を見ていたが、そんなあざがあることには気づかなかったのだが…。

その話を聞いた日和警部は顔色を変え、椎名を発見した遺体の側に連れて行く。
真珠郎に殺された由美の首なし遺体には、あざがあった。
遺体は由美に間違いないと思われた。
だが、なぜ首なし死体などにするのだろう?

日和警部の経験からすると、首なし遺体にしたり、顔を判別不能にするのは、身元を隠すためにする場合が多かった。
しかし、今度はそんな必要があるだろうか?
その時、金田一耕助が現れ、今の言葉は大変なヒントだと言った。


以下、全てのネタバレになっています。


信州で金田一耕助は椎名が真珠郎を目撃した柳の木、あれは爺やが屋敷に勤めているときにはなかったものと知った。
金田一耕助が地元の警察の協力を得て柳の下を掘ると、骨が現れた。
つまり、あの柳の木は墓標だった。

骨の状態からすると、死んだのは3~4年前。
金田一耕助はその骨が、真珠郎のものだと言う。
真珠郎は既に死んでいたのだ。
ならば鵜藤が真珠郎の目撃談を聞いて、あれほど驚愕した理由もわかる。

その時、大学で講師をしている椎名に乙骨から、助けてくれと言う電話がかかる。
「真珠郎を見た。今度は自分が殺される…!」と乙骨は言った。
椎名は金田一耕助に連絡をし、2人は椎名の下宿先で話をする。

今まで真珠郎が誰かに目撃されるたび、誰かが殺されている。
その時、乙骨から下宿に電話が来た。
助けを求める乙骨の悲鳴とともに電話は途切れ、その後、機械的な声で「椎名さんですか。お尋ねの乙骨はたった今、死にました。私の足元で血をどくどく流して横たわっています。私の名は、真珠郎」と言う声がして、電話は切れた。

金田一耕助と椎名は、乙骨の家に向かったが、その通りに乙骨は既に殺されていた。
だが今度は、乙骨は首なし死体にはなっていなかった。
代わりに顔や首が、鋭い剃刀で切り裂かれていた。
金田一耕助はそれを見て、謎は解けたと言った。

間もなく金田一耕助は、「もう2度と行きたくない」と言った椎名を連れて信州に向かう。
列車の中で、椎名は、乙骨が由美の財産を現金化して逃走することを考えていたと聞かされる。
「乙骨は真珠郎を恐れていたから」と言う椎名に、金田一は現金が残っていないこと、真珠郎が持ち去ったであろうことを聞いた。
そこに「抜け駆けは許さない」と言って、日和警部がやってきた。

信州についた椎名は、もし白骨が真珠郎なら一体、由美は誰の世話をし続けていたのだろうと訝る。
真珠郎を見たのは、椎名、乙骨、由美だが、その中で生き残っているのは椎名だけだ。
本当に真珠郎は存在しているのか。
日和警部の疑いの目に金田一耕助は、「もう1人いる」と言った。

椎名は都合、4回、真珠郎を見ている。
つまり椎名はいつも目撃者なのだ。
逆に言えば、真珠郎を目撃させる必要があった、要するに彼に真珠郎が犯人だと思わせる必要があったのだ。

椎名が由美を助けることができなかったのは、窓に嵌っていた頑丈な鉄柵の為だった。
それは最初から屋敷にあった柵ではなく、乙骨が後から作ってはめさせたものだった。
「まさか!」
「そのまさかと思われる男が、真珠郎を操っていたのですよ」。

乙骨は鵜藤、つまり由美の遺産を我が物にする為、真珠郎と共謀したのだ。
しかし、その乙骨が殺されてしまった。
その時、金田一の叔父が、声をかけた。

真珠郎の父親の話をしてくれる男を、寺に呼んでいるというのだ。
古畑三郎という男が真珠郎の父親で、美青年だった。
豪農の息子で、娘が1人いた。
この娘・稲子は22、3歳で、両親が亡くなった後に家を出てから、行方が知れない。

金田一が見せた真珠郎の写真を見た男は、稲子に良く似ていると言った。
そして、稲子の左腕には妙なあざがあったとも言った。
つまり由美と思われた首なし死体は、由美ではなく稲子だった。
稲子の遺体を由美と思わせる為に、由美が仕組んだこと。

犯人は、由美。
そこまで聞くと、椎名は走り出した。
由美への思いで一杯の椎名は、由美を逃すつもりだろう。
だが、誠実な椎名をそこまで深入りはさせてはならないと金田一耕助は言う。

椎名は、あの老婆が住んでいるという小屋に走った。
そこでトランクに隠してあった金を見て、こんな紙切れで愛する女性も、友人も失ってしまうなんてと椎名は嘆いた。
小屋を遠巻きに、金田一耕助と日和警部、警察が見ている。

金田一耕助によると、最初にバスの中で会った老婆も、由美が化けたものだったのだろう。
椎名に警告をし、血を見ると先入観を与えるためだった。
洞窟で鵜藤の死体を見つけた時にいた老婆は、真珠郎が化けた老婆…。
つまり、真珠郎を装った稲子が化けていた老婆だったのだ。

では小屋に住み着いている老婆は、一体、誰なのだろう。
金田一耕助は自分の推理でしかないが、真珠郎の本当の母親ではないかと言った。
目隠しをされていた真珠郎の母親は、真珠郎の居場所は知らないはずなのだが、何かにひきつけられるようにこの土地にやってきていたのではないか。
そしてもう、老婆は死んでいるだろうと金田一耕助は言う。

老婆が死んでいるので、由美は安心してあの小屋に住み着き、老婆に成りすましているのだ。
だから、由美は絶対にあの小屋に現れるはずだ。
そう言った時、まさに老婆に化けた由美が現れた。
逮捕に向かおうとする日和警部たちを、金田一耕助は押しとどめる。

これが椎名と由美の、最後の逢瀬になるのだろうから。
金の入ったトランクを前に、ガックリと膝を折る椎名の前に、老婆を装った由美が現れる。
「何もかも知ってしまったんですね…、でも私、いつかはこうなると思っていました」。

そう言うと、由美は顔を覆っていた粘土を取り、白髪のカツラを取る。
現れたのは、あの日と同じ、美しい由美。
「私は悪い女なんです。人殺しなんです!来ないでください!」
近寄ろうとした椎名に、由美が叫ぶ。

「由美さん、たった一言、あなたに聞いておきたいことがあるんです。僕はあなたを愛していた。あなたも僕を愛してくれていると信じていました。あれは嘘だったんですか。僕をただの狂言回しにするための、お芝居だったんですか?」
「そんな、私の愛がお芝居だなんて!私の気持ちはとても口では言えません。これを読んでください。あなたに読んでもらおうと思って、ずっと身につけていたんです」。
由美は椎名に手紙を渡す。

手紙には、椎名と巡りあってしまった悲しみが綴られていた。
椎名は由美を小屋の外に突き飛ばし、逃げるように言う。
警察が近づいていた。
由美は走り、湖のほとりに着いてボートに乗る。

金田一耕助と日和警部、椎名もまた、ボートを漕ぎ出す。
由美は洞窟に吸い込まれていく方へ、ボートをこいでいく。
「椎名さん、追わないで!私、今、毒を飲みました!」
椎名は必死に追おうとするが、金田一耕助が止める。

由美はこのボートに乗って、人知れず死んでいきたいと椎名に別れを告げる。
ボートには花が積んであった。
やがて由美は胸を押さえ、倒れる。
椎名が由美の名を叫ぶ。

「由美さんは恋の為に、君に全てを告白したんですか…?」
金田一耕助はそう言うと、由美の手紙を読む。
そこには、鵜藤の異常な性格が書かれていた。
真珠郎と呼ばれた不幸な青年は、蔵の中で鎖につながれたまま、ある日、病で死んでしまった。

鵜藤は真珠郎を埋めていた。
一生をかけた人間バチルスの計画は、頓挫してしまった。
そこで鵜藤は、由美を第二の真珠郎にすることに決めた。

だから由美は、鵜藤を憎んだ。
そんな時、由美は家を飛び出して女工をしていた稲子を見つけた。
稲子を真珠郎に仕立て、思うように操って鵜藤を殺すことを由美は考えた。

由美はその頃、乙骨と知り合ったのだろう。
そして由美は鵜藤を殺す為、乙骨は由美の受け継ぐ財産の為、2人は稲子を操る計画を練ったのだろう。
稲子を真珠郎という、凶器に仕立てるため…。

でも稲子はなぜ、操られたりしたのだろう?
金田一は推理する。
乙骨はおそらく、見せ掛けの愛情を稲子に餌として与えたのだろう。
日和警部が「けだものじゃ、けだものの仕業じゃ!」と吐き捨てるように言う。

乙骨は綿密に計画を立てた。
一番考えたのは、稲子の殺し方だろう。
そしてそれは椎名の見た雲、ヨカナンの首にヒントを得て、首なし死体を考え付いたのだろう。
しかも真珠郎には、小さい頃から生き物の首を取って楽しむという癖があった。

これは現代のサロメだと、金田一耕助は言う。
「椎名さん、あなたとさえ、めぐり合わなければ…」と由美は書いていた。
どうしても自分たちには、警察がその証言を全面的に信用するような善良な目撃者が必要だった。
その点、椎名は実に理想的な男だった。

だが、あまりに理想的な男で、由美は誠実で善良な椎名を本当に愛してしまった。
するとそれに気づいた乙骨は、椎名を殺そうとした。
しかし、由美は椎名を殺す気など、少しも起きなかった。
その為、乙骨は由美がやらないのなら、自分がやると言った。

しかも、由美の目の前で。
乙骨が椎名を殺すために家に呼び寄せようと下宿に電話した時、由美は乙骨の首を剃刀で切り裂いた。
「椎名さん。ああ、何と言う切なく苦しいことでしょう。あなたへの愛の証が殺人だとは。椎名さん、私が今度生まれ変わる時はあなたにふさわしい、心の優しい女になってきます。椎名さん、さようなら。さようなら」。

由美を乗せたボートは、洞窟に吸い込まれていく。
「由美さーん!」
椎名の声が湖にこだまする。
夕暮れが迫っていた。

金田一耕助は、乙骨の死体だけが今までと違うことから、真相にたどり着いた。
前と犯行の性格が違う。
つまり、犯人が変わっている。
そこまで行けば、老婆の謎も解けた。

真珠郎が2人いたとは…、と日和警部がため息をつく。
考えてみれば、由美というのは哀れな女性だ。
日和警部がそう言った時、既に金田一耕助は眠りについていた。



これは、首なし死体がいくつも出てくるので、子供の頃見ていたらめちゃくちゃ怖かったでしょうね。
「夜歩く」もそうなんですけど。
原作では美しい犯罪者の男女を連れてきたら、美しい犯罪者の子供ができる?
鵜藤は生物学を学んでいたから、そう思って実行したとあるけど、そうかな?と思ってしまう。

そんなことを考える現代は、お話が作りにくい時代なんですね。
すみません。
首なし死体は確かにものすごく猟奇的なんだけど、猟奇的なだけじゃなくて、首なし死体に実は合理的な理由がある。
つまり、首がなければ遺体が誰かわからないからなんですけど、現代ではこれも成立しない。

ほんと、この時代って、怖いお話が作りやすい時代なんですね。
いろーんな意味で、現代では作りえないお話。
さて、背筋が凍るほどの美青年の真珠郎は、誰なら演じられるだろう?
そうですねえ、「新・必殺からくり人」で凶賊の若き頭で、女に化けて逃げる役をやった頃のピーターはピッタリだったかも。

原作では金田一耕助じゃなくて、登場するのは由利麟太郎探偵。
そのせいか、金田一耕助と椎名さんが信州に向かうバスで偶然に関わる経緯にもちょっと無理が感じられもします。
でも全体としては、うまく金田一耕助を登場させて関わらせたと思います。

鵜藤叔父は、岡田英次さん。
顔半分にあざというのが、これまた「からくり人」の「津軽じょんがらに涙をどうぞ」を思い出します。
やっぱり、姪っ子に手を出してたか。
そうじゃないのかと心配してたんですが。

自分のよこしまな心が嫌われたのに、絶対違う!
限りなくよこしまな心を持つ美青年を作って、差し向けてやる!
そして、自分を嫌ったのが外見のためだと証明してやる!
さらにそれを証明して、破滅させてやるー!

あざを消して美しくなって、誘惑して復讐するという方に考えは向かなかったんですね…。
そして神が存在を許さなかったのか。
哀れ、真珠郎。

乙骨は中山仁さん。
自分の野心だけで、椎名にこれっぽっちも友情を感じてなかったなんて、ひどいわ。
ヨカナンの首の雲で、今回の計画を思いついたという。

しかし椎名がヨカナンの首と言った雲に、乙骨は「ロバにしか見えない」って返している。
でも私には、あの横顔を形にした夕暮れの雲はロバには見えない。
どっちにも見えるようにしたなら、雲の形は難しくなっちゃうんだろうな~。

椎名は原田大二郎さん。
乙骨への友情、抑えきれない嫉妬にも人の良さが感じられました。
由美への思いが、切なかったです。

そして良かったのは、金田一耕助の叔父役の加藤嘉さん!
「悪魔が来たりて笛を吹く」では玉虫子爵で、アクの強いところ見せてくれてるんですけどね。
こちらは飄々として笑いを誘う、人の良い和尚さんも似合うところが、さすがです。

由美役は、大谷直子さん。
隠し部屋を金田一耕助たちに公開する時に、ちょっと唇をゆがめている表情に「あれ?」と思いました。
清楚な由美に、ちょっと似つかわしくないほどの表情だった。

あのわずかな時間の表情に、犯罪に気づかない人たちへの嘲笑と鵜藤への憎悪がこもっていたんですね。
清楚で美しく、「殺すことが愛の証明だった」怖ろしく哀しい由美にピッタリ。
鵜藤の真珠郎教育が効いたのか、乙骨と一緒に稲子にやったことは、実はかなりひどいことなんですけどね。

原作では由美は鵜藤の教育どおりにそういうことをする怖ろしい自分と、椎名を愛する本来の心優しい女性である自分と、2つの自分の間で苦しんでいたはず。
割りと犯人の自殺を許してしまう金田一耕助だけど、そんな由美と椎名の最後の逢瀬を邪魔しない優しさはやっぱり好きです。
真珠郎登場の幻想的な画面と、「真珠郎はどこにいる」のセリフが、不気味で綺麗で良い雰囲気でした。


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2012.08.30 / Top↑
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