考えてみると、一刀が崖から落ちたとかじゃなくて、対決して深手を負った相手って、烈堂のほかにはエスパー男しか記憶にないです。
この男、超能力みたいな忍びの技じゃなくて、本当に超能力・エスパーだった。
生命力というか、気力気迫が強い相手はダメみたいなんです。
だから一刀に勝てないと言っていたんですが、毒蛇に噛まれて死に直面した時「今なら勝てる!」と言い出した。

結果、この男は斬られるが、一刀もバッサリ斬られてふらつく。
あんなに見事に斬られて、フラフラ去っていく一刀って珍しかった。
この話は確か、裏柳生の子供を生むためだけに作られた里にいる女性たちの哀しい話の回。

哀しい話なんですが、この男にはビックリです。
しかし、裏柳生に関わる女性は哀しいこと多い。
烈堂の娘、鞘香でさえ。

前にも書きましたが、萬屋錦之介版の初代・大五郎には、愛嬌がない。
万人受けするような、華やかさと愛らしさもない。
だからこそ、この子が歯を食いしばったように笑うと、いじらしい。

笑顔が切ない。
この愛嬌のない子が慕ってくると、かわいらしくてしかたがない。
列堂の娘・鞘香なんか、勝負以前に、既にこの笑顔に負けていたようなもんです。
殺せないよー。

まして本当は優しい娘であり、父の愛情に飢えているがゆえに人の寂しさを思いやれる鞘香が、大五郎を傷つけられるはずはない。
鞘香の「お手玉の剣」は烈堂の言葉で言えば「落下して来るお手玉の剣をかわそうといたさば、鞘香の剣にその虚をつかれる。鞘香の剣をかわそうといたさば、お手玉の剣に!女児が無心に操るお手玉の呼吸なのじゃ」という技。
裏柳生たちを練習台にして、猛烈に犠牲にして完成する。
つまり、上から落ちて来る剣をかわしたら鞘香が振るう剣に斬られ、鞘香の剣をかわせば上から落下してくる剣に刺されるという技。

猛練習して完成させたということになってるけど、うまく避ける以前に上からそう確実に標的に落ちて来るかと思ってしまう。
そのための猛練習とはいえ、だったら手裏剣かなんかを上にバンバン投げて、その隙に突進してきたら良かったんじゃないかな。
でも散々そういう攻撃をして、一刀は殺せなかったんじゃないのか…、などと、言いたくなる技。

大体、一刀が二つ刀を使ったら、もう無理なんじゃないかな。
一刀ならそれぐらいやりそうだ。
それにひょいと避けたら、一刀が走っちゃったら、どうするのだ。
押さえつけられて、自分で自分の剣に当たったりしたら、もっと悲惨じゃないかな。

だいたい、拝親子は武士道の逆の冥府魔道を行ってる親子なんだから、とんでもない攻撃もするって、烈堂はもう知ってるはずじゃないか。
一刀は子供を、馬の前に飛び出させる人なんだぞ。
「子供を蹴殺したら、何とする」に、「そのようなことができる男ではない」って見抜く男だぞ。
刺客に向いてない鞘香の性格が、わからないはずがない。

それに刀は武士の魂っていうのに、一刀はその刀を勝負の最中に投げる人なんだぞ。
一刀は良く投げるから、水鴎流は太刀投げるのOKなのかもしれないけど、やっぱり普通は立会いで投げてくるとは思わない。
「寒到来」を見ると、一刀は忠義の武士たちを、最高の奥義で斬ってやっている。

それが一刀の武士に対する礼儀だとするなら、やっぱり刀を投げるのは武士じゃなくて、冥府魔道のやり方なんじゃないかな。
公儀介錯人なんて武士がそんなヤクザな戦法とるとは思いもしないから、何人もそれで敗れてる。
こんな風に、一刀が鞘香に向かっていきなり刀を投げたら、どうするの!

そんな危惧通りというか、何と一刀は大五郎をかついでしまったので、鞘香はあっさり自滅してしまった。
じゃ何か、ちゃんとしたもの頭に載せたら、この剣法への対策は解決なのか。
あんなに人を犠牲にして、一体なんだったのか。

だいたい数々の猛者が通用しなかった一刀に、烈堂は鞘香が通用すると本気で思ってたのかと突っ込みたくなる。
鞘香を心配して、他の裏柳生は一刀を襲ってる。
それについて鞘香が「私ではダメだというのか!」って、斬られる部下たちに怒ってますけど、部下たちの方がよっぽど父の烈堂よりわかっているし、心配しているような気がする。

鞘香という娘は、幼い頃から父・烈堂に愛情も注がれず、唯一、寄り添って生きてきた兄は一刀に斬られてしまう。
父の烈堂は鞘香に自分の子を生ませるとか信じられないことを言うし、一刀に斬られた兄は柳生の血を残すと言って瀕死の状態で鞘香を襲ってくる。
裏柳生にとって女性は血を残すためだけにいるようなものらしいが、娘の鞘香でさえ、いや、娘には気が狂いそうなことばっかり起きている。

そして北大路版の鞘香は、大五郎をかばって味方に斬られる。
ここは、残念だった。
鞘香は自滅するから、哀しいのに。

今のドラマではおそらく、萬屋版でやっていることで、絶対できないことがある。
それを考えたら、鞘香もしょうがない展開なのかもしれないけど。
大五郎を犠牲にする可能性があるというのに、担ぐ一刀。

鞘香に、大五郎に刃が刺さる光景が見える。
この親子の絆、そしてそうまでしてもこの親子がやらなければならないことを知る。
そうして、見ている人は一刀親子を応援していく。

大五郎の笑顔を見た時から、鞘香の死は決定していた。
萬屋版・鞘香は、哀しかった。
子供を生むためだけに作られた里にいる女性たち同様、裏柳生の哀しい女性の1人だった。

後に烈堂が鞘香を思い出して、「鞘香」と涙していました。
それならあんなこと言わずに、生きているうちにもっと優しくしてあげてほしかったですよ。
でも鞘香の為に烈堂が泣いているのは、ちょっと救いです。


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2012.09.22 / Top↑
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