「三途の川の乳母車」。


一刀と大五郎の行く手に、渡世人姿の旅の男が数人。
中の1人が胸を押さえて、苦しそうに座り込む。
一刀の「子貸し 腕貸し」の旗を見た1人が、大五郎を貸してくれるように頼む。
金を支払おうとする男に一刀は金は要らない、ちょうど大五郎も腹をすかしていると言った。

男のなりをしていても、胸を押さえて苦しがるとあれば、女性だとわかる。
しかも胸が張って苦しむとあれば、子供に乳を与えられずに苦しんでいるとわかる。
その通りに渡世人姿の1人は、春日一家のお甲という女性だった。

お甲は、大五郎に乳を与えた。
「姐さんの子は、あの子より小さかった」。
そう言って、子分たちは泣く。

大五郎に乳を与え、お甲の胸の痛みは治まった。
お甲も、他の子分たちも一刀に礼を言う。
本来なら仁義を尽くして礼をするところ、お甲たちは急ぎ旅。
さらにこの恩義も返せないと、お甲は謝り、仁義を切る。

代貸しの羊五郎という男が、間もなくこの辺りは出入りの修羅場になり、お子様連れには危のうございますとも言う。
出入りの片方はこの、春日一家だ。
礼を尽くした挨拶に一刀は、春日一家の名前を覚えておこうと言って去る。

御坂一家の音蔵の客・仁助は、お甲の夫と、幼い乳飲み子を斬った。
だが一宿一飯の恩義がある仁助を、音蔵はかばわないわけにはいかなかった。
従って、御坂一家と春日一家は全面的に紛争となったが、お甲は音蔵の実の娘であった。
親子が敵同士となって、争うことになったのだ。

河原に着いた一刀に突然、武士が襲い掛かってくる。
アッサリと斬り捨てた一刀に、1人の用人が近づいてくる。
用人に案内されて向かった先は、代官・岸母田伊兵衛の屋敷だった。

この用人は、伊兵衛の用人だった。
伊兵衛は今度着任する新代官を百両で斬るよう、一刀に依頼した。
一刀が理由を尋ねると、理由は言わない。

密かにこの話を、伊兵衛の妾のお圭が聞いていた。
一刀はそれに気づくが、黙っていた。
その夜、お圭は音蔵やお甲に出入りをやめるよう、知らせに走ろうとした。
だがお圭は、一刀に見つかってしまう。

お圭は父親の病の時、音蔵にはずいぶん世話になったし、お甲とは小さい頃からの友達だ。
見逃してくれと言うお圭に、一刀はならぬと言う。
刺客の仕事にならないから、一刀は止めるのだろうとお圭は思った。
知らせに行こうとするお圭だが、一刀が刀を一振り振るうと着物は落ち、お圭は行けなくなってしまった。

御坂一家と、春日一家の出入りは明日に迫った。
春日一家には、助っ人も続々と集まってきていた。
代貸しの羊五郎は、何も出入りにお甲が行くことはないと言う。

だが、お甲は早く夫と子供の待つ三途の川へ行きたいと思っていた。
三途の川で、子供がお乳をほしがっている。
明日の笛吹川が、お甲にとっての三途の川だった。

お甲が夫と子供の墓参りをしている時、竹とんぼが飛んで来る。
大五郎だった。
お甲は思わず、大五郎を抱きしめる。
大五郎が墓の前の犬張子を見ているので、お甲はニッコリ笑って、大五郎に渡す。

そこに一刀が通りかかる。
一刀は、出入りの噂を聞いたと話す。
そして大五郎の母も、刺客に斬られたと話す。

お甲の夫、そして子供と同じだ。
母親を刺客に斬られた子供が、刺客に子供を斬られた母親に乳をもらう。
これも因縁かもしれないと、一刀は言う。

そして一刀は、仁助のことを聞いた。
仁助は御坂一家にも、音蔵にもかかわりの深い男ではないが、それが一宿一飯の恩義と言うもの。
わらじを脱いだ者は、身内として扱う。

だから、仁助を音蔵はかばい、お甲たちは春日一家として喧嘩状と叩き付け、出入りとなる。
バカだと思うだろうが、これがヤクザの筋と言うもの。
ヤクザは、こうして生きている。

一刀は今日一日、大五郎を預かってほしいと言う。
出入りを翌日に控えたお甲は、喜ぶ。
一刀はその足でお甲の父がいる御坂一家に向かい、仁助を出せと言う。
御坂一家では、春日一家に一刀が雇われたものと思うが、喧嘩状を叩きつけたのだから、そんなことをするはずはない。

だが仁助は御坂一家にはおらず、別の場所に匿われていた。
もしや、仁助は別の件で追われているのでは?
とりあえず、御坂一家の代貸しは仁助をもっと別の場所に避難させるべく、匿っている小屋に急ぐ。
しかし、その後を一刀がつけていた。

仁助は一刀のことを聞かれると、「子連れ狼」と言った。
やはり、仁助は一刀のことを知っているのか。
白を切る仁助の前に、一刀が現れた。

一刀は仁助を捕え、問い詰める。
仁助がお甲の夫と子供を斬ったのは、伊兵衛の命令によるものだった。
伊兵衛は、公金を横領していた。
新代官が来れば、そのことはわかってしまう。

伊兵衛は二つの一家を争わせ、その争いの巻き添えという形で、新代官を始末しようと考えた。
そして代官殺害の罪で渡世人を全員死罪とし、財産を没収する。
没収した財産で横領の穴埋めをすれば、もう誰も横領には気がつかず、伊兵衛は新しい赴任先へ向かう。

仁助の告白を聞いた御坂一家の代貸しは、斬られてしまう。
斬ったのは、一刀の後に代官殺しを依頼した3人兄弟の刺客だった。
続いて3人の刺客は一刀にも向かって来たが、一刀の敵ではなかった。
一刀はその足で仁助を引っ立てて、伊兵衛の屋敷に向かう。

公金横領の罪がばれないよう、利用される「やくざたちこそ、良い面の皮だ」と一刀は伊兵衛に言った。
だが伊兵衛は、「どうせ御政道の裏を行く屑どもだ」と言う。
「屑を利用して何が悪い」と、開き直る。

「屑は屑ながらも、筋目を通して生きている。公金横領の役人よりは人間らしいな」。
一刀の言葉に伊兵衛は「刺客を生業とするお前が、依頼主を批判するのか」と言った。
すると一刀は、屑以下の依頼主からは倍とることにしていると言う。
さらに依頼に隠し事があった場合は、倍。

つまり、倍の倍で4倍。
百両が4百両となると、当初の百両に3百両追加で要求した。
「高い!」と言う伊兵衛だが、新たに刺客依頼をした3人兄弟は一刀に斬られてしまっている。
伊兵衛は、承知せざるを得なくなる。

お圭は一刀と伊兵衛と用人の会話を立ち聞きした。
それに気づいた伊兵衛は、大人しくしていればお圭は新しい赴任地にも連れて行ってやろうとしたのに、と言う。
用人がお圭を用人が斬る寸前、一刀が「惜しい女だ、自分のものにする」と言う。

「嫌です!あなたみたいな悪党!」とお圭は拒絶するが、一刀は伊兵衛に明日まで預かれと言って、お圭を伊兵衛に預けた。
仁助は代貸しの遺体を担いで御坂一家に向かい、春日一家に斬られたと言う。
喧嘩状を叩きつけておいて、喧嘩以外で代貸しを斬るとは、ヤクザの掟破り。
御坂一家も、音蔵も怒る。

その夜、一刀はお甲が添い寝しているところ、大五郎を迎えに来る。
どうせ、明日は笛吹川の露と消える命。
「今夜は大五郎と過ごさせてほしい」と、お甲は言う。

「それほどかわいいか、他人の子が」。
「はい。我が子も同様」。
「それならば、生きることを考えたらどうだ」。

お甲はハッとする。
「亭主や子供を追って、三途の川へ急ぐこともない。大五郎とて、黄泉路の母を追おうとしたことなぞ、一度もないぞ」。
お甲は、すやすやと眠っている大五郎の寝顔を見つめる。

だが、明日の出入りは父親との争い。
どの道、自分は生きてはいられないのだ。
「最初から死ぬと決めてかかるのは、愚かなことだ。人と人との争いはどこでどうなるか、予測のつくものではない」。
そう言うと一刀は大五郎を抱き上げ、「世話になった。命は大切にしろよ」と言って出て行く。

翌朝、ついに2つの一家は笛吹川で対決する。
父親と娘が先頭にたっての対決を、伊兵衛は陰から笑いながら見ていた。
その時、新代官が間もなくやってくるとの知らせが来た。

二つの一家が出入りをしているから、そこを召し捕って新代官の手柄にしろと言われた新しい代官は、笛吹川に駆けつけることになっているのだ。
新代官が来たところを一刀が斬り、一刀、そして2つの一家ともども捕え、皆殺しにするのが伊兵衛の考えだった。
2つの一家が争っている最中、供を連れて新代官がやってくる。

そして、「おばちゃーん!」という声がして、一刀が大五郎を箱車に乗せてやってくる。
大五郎は、お甲に渡された犬張子を持って、手を振っていた。
「坊や!」

「何だ、その方は!」と新代官が聞く。
「刺客、子連れ狼」。
名乗るが早いか、一刀は2人の供と新代官を斬った。

それを見た伊兵衛は鉄砲と、捕り方を15名連れてなだれ込んできた。
一刀は2つの一家に、「散れ!」と命ずる。
新代官殺害の罪で一刀、2つの一家を捕えると言う伊兵衛に、一刀は笑った。

「何がおかしい!」
すると、斬ったはずの新代官が起き上がった。
新代官は伊兵衛の悪事を知っていた。

一刀に刺客依頼をしたのも知っていたが、それだけでは証拠にならない。
それゆえ、芝居をうった。
一刀は新代官に雇われていたのだ。

伊兵衛はうろたえ、「撃て!」と叫ぶと、捕り方の銃が火を噴いた。
一刀は箱車を横倒しにして、弾丸を防ぐ。
大五郎が転がる。

一刀は箱車に仕込んだ槍を手にすると、次々と伊兵衛の捕り方を倒していく。
大五郎が、じっと見つめている。
お甲が大五郎に駆け寄り、「坊や」とかばうように抱きしめる。
やがて一刀は、逃げる伊兵衛と用人を斬り倒す。

そして一刀は2つの一家に向かい、仁助がお甲の夫を斬ったのは、代官の伊兵衛の差し金であると叫ぶ。
逃げようとする仁助を、音蔵が斬る。
「兄貴の仇!」と、次々に一家が仁助に斬りかかる。

全てが終わり、一刀が「大五郎、行くぞ」と声をかけた。
大五郎がお甲が自分に渡してくれた犬張子を、返しに来る。
「ごめんなすって」。
大五郎はそう言うと箱車に乗り、一刀が去っていく。

新代官が一刀に、深く頭を下げる。
「お甲」と、音蔵が声をかける。
「おとっつぁん」。

お甲は、犬張子を笛吹川に流す。
去っていく一刀と大五郎を見つめ、「三途の川の乳母車…」と、お甲がつぶやく。
ヤクザの地獄旅よりも、さらに厳しい親子の刺客街道は続く。



お甲は、野際陽子さん!
いや、すんごい美人。
当時のメイクらしく眉毛は極細ですが、すごい美貌ですね。

今もお綺麗だし、この方は昔はすごい美人だったなと今もわかるのですが、こうして見るとすごい。
こんな美人女優が、無理せず、年齢を重ねて今はまた良い味を出しているということもすごい。
才色兼備というけれど、頭もかなり良いんですね、この女優さんは。

音蔵は、花沢徳衛さん。
伊兵衛は、田口計さん。
素敵な悪役です。

一刀は伊兵衛の依頼を聞いて、知らせに走ろうとしたお圭さんを止める。
お圭もまた、代官に無理やり妾にされた娘だったので、言うことを聞かない。
すると一刀は思いとどまらせる為に、一太刀振り下ろす。

途端に、お圭の後姿からぱらりと着物が落ち、背中が露わに。
美しい後姿ですが、ちと、やりすぎな気が。
全裸にしなければ、止められなかったということですね?

さらに伊兵衛の企みを知って一家に知らせに走ろうとしたお圭が斬られそうになった時、一刀が「惜しい女だ。俺にくれ」と、肩を抱き寄せる。
伊兵衛の手先と思っているお圭は、そんな人でなしのところは嫌だと叫ぶ。
預かっておけと言って、預からせたということは、お圭さんを助けてくれたということ。

新代官が来たら、お圭さんは解放されたでしょう。
一刀への誤解は解けたね?
お圭さんはおそらく、家に帰されて一刀に感謝したでしょう。
新代官は、良さそうな人でよかったよかった。

確かに伊兵衛の言う通り、ヤクザは「御政道の裏を行く屑ども」。
しかしだから屑を利用して何が悪いと言うのは、開き直り。
一刀、「屑は屑ながらも、筋目を通して生きている。公金横領の役人よりは人間らしいな」と言う。

その通り、御坂一家も、春日一家もカタギの人に迷惑をかけるような人たちじゃなかった。
なのに、渡世の義理とはいえ、親子が争わなければならなくなったお甲と音蔵。
つまらないヤクザの意地だが、ヤクザはこうして生きている。
これを守らなければ、無法地帯となってしまうんですね。

一刀は結構、筋を通す武士には肩入れしてくれる。
筋を通すヤクザにも、どうやら同様らしい。
お甲さんに、お圭さんに、今回は何だか、いつもと一刀が違う。

刺客に母を殺された大五郎と、子供を殺されたお甲との出会いに優しくなったのか。
特に出入りの前の夜のお甲さんには、いつもの一刀らしくない優しい話し方をする。
やっぱり、お乳をもらった大五郎の懐き方かな。

「それほどかわいいか、他人の子が」。
はいと答えるお甲に、「それならば、生きることを考えたらどうだ」と言ってくれる。
「亭主や子供を追って、三途の川へ急ぐこともない。大五郎とて、黄泉路の母を追おうとしたことなぞ、一度もないぞ」。

大五郎の無邪気な寝顔を見てのこの言葉は、響く。
「最初から死ぬと決めてかかるのは、愚かなことだ。人と人との争いはどこでどうなるか、予測のつくものではない」。
巨大な敵・柳生相手に、一刀は諦めてない。
死ぬと決めてかかっていないから。

どうなるか、予測はつかないと思っているんですね。
この言葉は重い。
「世話になった。命は大切にしろよ」。
この言葉が、一刀とは思えないほど、優しく響く。

そして最後の最後に、何と一刀は新代官に雇われていたことがわかる。
おお、こちらに雇われていたとは。
刺客・子連れ狼は、何でもありだ。

新代官が一刀に頭をさげているのが、どこか妙な気はする。
本来なら、捕えなければならない相手なんでしょうが、今回は依頼主。
大五郎は、ちゃんと犬張子を返しに来る。
その犬張子を流す、お甲。

「三途の川の乳母車」と、つぶやくお甲。
自分のヤクザ道よりも、おそらくもっともっと厳しい道を行く親子。
生きていく覚悟を決めたお甲から、一刀親子が遠ざかっていく。

しかし、今回は一刀、新代官と伊兵衛の2人から刺客料をもらっているのではないか。
伊兵衛代官からせしめた4百両は、もちろん、そのままですよね?
子供を殺してほくそえんでいる奴からなんか、もらっちゃって構わない。
冥府魔道なんだからOK。


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2012.09.27 / Top↑
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