妖怪・ろくろ首というのが怖かった。
あの、首が伸びるデザインが嫌だった。
どういう状態かが、想像つくのも怖かった。

首が伸びるというのも怖い。
飛んで来るのなんか、本当に怖かった。
あのデザインには、人間が根源的に感じる恐怖があると思います。

「子連れ狼」の主人公、拝一刀は、元・公儀介錯人。
葵の御紋の入った羽織を着て、大名の首を斬る役目でした。
庶民の犯罪者の首を斬る役目が、首斬り役人。

「必殺仕業人」で牢屋見回り役人に身を落とした主水が、老役人がぼやいているのを聞く。
今回、首斬り役がいない、と。
罪人を斬る時に用いられる刀っていうのは、大名や旗本が刀の切れ味を実際に確かめるための「試し斬り」だったりするんですね。
そこで主水は今度、試し斬りをしたがっている相手がターゲットの家だと知って、首斬り役を申し出るわけです。

首斬り役人で有名なのが、山田浅右衛門。
「山田浅右衛門」というのは、山田家で首斬り役人となった者が名乗る名前らしいので、だからいつの時代にも出て来てもおかしくないらしい。
山田浅右衛門はいろんな時代に存在したので、首を斬った相手もいろいろ。
試し斬りをした刀も、たくさん。

土方歳三の刀「葵康継(あおい やすつぐ)」は、六代目浅右衛門が試し斬りをしたとか。
七代目浅右衛門は、吉田松陰、橋本左内を斬首している。
映画「獄に咲く花」は吉田松陰の話なので、見たらチェックしてみたいと思います。

ドラマ「子連れ狼」に登場するのは、三代目朝右衛門・吉継。
当たり前だけど、刀っていうのは本当に良く切れるもので、本当に人を斬るためのものなんですよね。
たまに日本刀に関する事件が起きると、これが実感できます。

怖い。
昔の武士は本当に怖いものを身につけていたな、と思ってしまう。
それで浅右衛門は身分としては首斬り役人を「武士」とするわけにはいかなくて、「浪人」だったらしいですが、報酬はかなり良かったらしい。

やっぱり、誰もが嫌がる仕事だし、将軍家を初めとして大名・旗本の刀の試し斬りだから、「こころざし」とは言え、かなりの謝礼が出たとか。
他にも裕福な理由で何か怖ろしい話は聞きましたが、浅右衛門の身分は「浪人」だけど、生活はかなり裕福な生活だったようです。

「仕業人」の主水は「かみさんに着物の一枚も買ってやりたい」と言って、2分受け取ってました。
「新・仕置人」でも、狂ってしまう首斬り役人・左母次郎が出てきました。
話の中で左母次郎の無体と、それに巻き込まれた女性の地獄、そして左母次郎の仕置きが描かれました。

左母次郎は夏の昼下がり、供の者に道端で笑い声が聞こえると言い出す。
しかし、辺りには誰もいない。
地蔵がぽつん、と立っているだけ。

やがて、供の者が左母次郎の目の色に恐怖を感じて逃げ出す。
クライマックスの仕置きでは、左母次郎は主水に向かって「聞こえぬか…、あいつらが笑っておる…。俺が来るのを待っておる」と言います。
左母次郎の耳には、泣き声、笑い声が聞こえている。

恨めしそうな、忍び泣き。
嘲笑うかのような、笑い声。
でも主水は「それはおめえの体から流れていく血の音だぜ!」と言う。

そして半ば笑顔の左母次郎を、まるで斬首の刑のように一気に斬る。
でも斬った後で、いや~な顔をする。
左母次郎は、大木実さん。
もう、迫真の演技で、恐怖させてくれます。

「必殺仕事人 激突!」では、浅右衛門を滝田栄さんが演じていて、これがすごく良かった。
表で仕置きできない悪党を、処刑人が裏で仕置きするという設定が効いていた。
相手の膝をバン!と打って跪かせ斬るところなんか、首斬り役人ならではの仕置きと言う感じがしました。

でも山田家はこの報酬でいくつものお寺に寄付をしたり、供養塔を建てたりしていたようです。
他にも困っている人に対して、ボランティア活動したり。
山田家ではそれからしょっちゅう宴会が行われていて、特に処刑のあった日の夜は必ず大宴会を催したそうです。
亡霊に取り付かれないようにやっている…などと、言われていたらしい。

こういうことを知ると、左母次郎じゃなくて、精神力の強い浅右衛門でも精神の安定を保つのは大変ではあったんでしょう。
さて明治14年、斬首は廃止となり、死刑は絞首刑になった為、山田一族はお役御免となりました。
最初に妖怪・ろくろ首というのが怖かったと言いましたが、胴体から首が離れるというのは、人間が根源的に感じる恐怖なのだと思います。

恐怖感があるので、犯罪抑止力にもなる、見せしめにもなる。
だから西洋でもギロチン、さらし首があったんでしょう。
首を斬るのには技がいるからギロチンが開発されたと言いますが、処刑人の精神がやられるという、開発にはやっぱりそんな理由もあったんじゃないかな。

…書いていても、ちょっと怖い話でした。
暗い雨の日にする話じゃなかったですね。
すみません。


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2012.11.17 / Top↑
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