現在、「子連れ狼」は午前中の10時に第1部の再放送、夜の8時に第2部の放送と、一日に2度見られます。
それで、たまたまですが、拝一刀の我が子「大五郎投げ」が続いた。
拝一刀は立ち合いの時、刀を投げる、しかも初太刀を投げる時があると前に書きました。
刺客が、これで何回も倒れてます。

一刀が投げるのは、何と、太刀だけじゃないんですよ。
大五郎も投げるんです!
まず第1部の「雲竜風虎」から。

4年前、公儀介錯人として一刀は、大名・有馬右京亮の介錯をした。
右京亮は切腹を川辺でしたいと申し出て、しかも拝一刀の水鴎流には「波切りの太刀」という奥義があるが、それを見たいと言う。
しかも真剣で立ち合い、寸止めにして見せてほしいと。
一刀は承知。

相手は藩でも随一の使い手、「タイ捨流」剣術の真壁将監であった。
家臣たちは真壁将監の支度を手伝いながら、葵のご紋にせめて一太刀浴びせたいという殿の思いを伝え、真壁将監を激励する。
だが真壁将監は低く構えた一刀に向かって、決して水鴎流に対して勝てない上段の構えを見せる。
勝負は一瞬で決まった。

一刀の刀は、真壁将監の胴の寸前で止まった。
そして右京亮の切腹と、一刀の介錯で、藩はお取り潰しとなった。
家臣たちはみな、勝つ気がなかった真壁将監を責め、不忠者と罵った。

あれから4年。
殿の切腹の地近くの粗末な小屋に住んだ真壁将監は、小さな畑を耕し、川魚を釣って1日の糧を得ていた。
真壁将監はそうしながら、殿の切腹した地を守っているのだった。

ある日、真壁将監が守る地に、3人の若侍が馬攻めを行った。
3人に向かって、真壁将監はこの地を汚さないでほしいと頭を下げた。
だが、3人は目障りだと言って、聞かなかった。
結果、真壁将監は3人を斬った。

その後、8人が真壁将監の小屋を襲ったが、8人も斬られた。
以来、真壁将監に何度も藩の若者が攻撃を加えたが、ことごとく斬られたのだと言う。
一刀に対し、お国替えで来た藩は真壁将監の刺客依頼をする。

これに対し、藩の指南役・巴外記は異を唱える。
外記は、「わが藩の武士を斬った浪人を斬るのに、金を目当ての刺客を雇うとは」と言い、「無頼のやからの出る幕ではない」と言う。
すると一刀はならば、立ち会えと言う。
しかも真剣で。

これには外記も、ギョッとした。
家老は刺客両の5百両を持たせようとするが、一刀は断った。
子連れ狼との異名を取るほどの刺客が、なぜ。
理由を聞かれると一刀は、「その場に立ち会ったから」と言う。

一刀は、驚く家老に「さよう。介錯つかまつった」と言った。
「金はいらん。宿縁とでも申そうか」。
外記は刺客を断るのでは、と言うが、家老は「いや、あの男の目にはただならぬ殺気が漂っている」と言った。

一刀がやってきたのを見た真壁将監は、あの日の勝負を今こそつける時だと思った。
だが一刀は、真壁将監が彫っている仏を仕上げるように勧める。
そして、真壁将監が仏を仕上げるのを待つ。

小屋の外では大五郎が、1人、遊んでいた。
その頃、途中の道で一刀親子と、浪人者3人と一緒に旅をしているお京という女がすれ違った。
3人の浪人は、真壁将監を討つことを考えた。
お京は3人と平等に付き合ってきたがそろそろ、甲斐性のある男と一緒になることを決めると言う。

3人のうちの2人はさっそく、真壁将監の小屋に向かい、影から短筒で狙いをつけた。
だが、気づいた一刀の投げた小柄で、2人はあっという間に倒れる。
残る1人はお京に大五郎を誘い出させて捕え、その間に一刀を誘い出して、将監を討つことを考えた。

あまり気が進まないと言いながらもお京は歌を歌い、それに興味を持ってやってきた大五郎は捕えられてしまう。
1人になったお京は、シャクの発作を起こした。
藩の武士たちを案内して来た浪人は、大五郎を捕えてあると豪語した。
しかし、その目の前を大五郎が走っていくのを見て仰天した。

縄を切って、逃げたのか。
浪人が大五郎を追うと、自分たちが大五郎を捕えていた寺までたどり着く。
大五郎はお京の為、薬を取りに行っていたのだった。

わけを知った浪人は笑って、また大五郎を捕えようとする。
「狼の子を囮に」と言う浪人にお京は「やめておくれよ、恩を仇で返すのは!」と叫ぶ。
「この子に手を触れたら、あたしゃ勘弁しないよ!」と、お京は浪人から小刀を奪う。

「早く逃げるんだよ、おとうのところへ早く!」
浪人とお京はもみ合い、浪人もお京に指されて倒れるが、お京にも刀が突き刺さって倒れる。
逃げなかった大五郎はお京に駆け寄り、持って来た薬を口の中に入れようとする。
水をお京の口に流すと、お京は目を開け、大五郎に「ありがとう」と言って息絶える。

真壁将監を討ちに、巴外記と教え子たちがやってくる。
一刀はやってきた武士たちを、全て斬る。
槍を構えた外記だが、一刀にアッサリと斬られる。

その時、大五郎が帰ってきた。
大五郎は、一刀に抱きついてきた。
一刀が大五郎を抱えた時、外記が息を吹き返して立ち上がった。
外記は2人に槍を向け、狙いをつける。

将監が小屋から出てくる。
一刀と外記の、にらみ合いを見る。
だが、一刀は突然、大五郎を投げた。
思わず、大五郎を受け止めた外記を、一刀は斬る。

これを見届けた将監は、仏の仕上げにかかる。
その夜半、仏は仕上がり、将監は殿が切腹の前に吹かせた曲を吹く。
夜明け、将監は小屋を出てくる。

大五郎が見守る中、立会いが始まる。
将監は、ひとつだけ言いたかったと、4年前のことを話す。
あの時、今さら葵の紋を傷つけたところで、殿の切腹と藩の取り潰しは決まったことだった。
もし、一刀を傷つけていたら、一瞬は満足を得ただろう。

だが事態は変わらないどころか、悪化させたであろう。
藩と殿はかえって、見苦しいと言われることになっただろう。
だから絶対に勝ち目のない、上段の構えを取ったのだと。

「殿には、従容として、死につく武人の道を選んでいただきたかった。例え自分は不忠者と罵られても、介錯人としての一刀の太刀の冴えを見せたかった。それがしの言葉、信じてくださったか」。
「信じあえばからこそ、我らは剣を交えねばならぬ」と一刀は言う。
「雲は竜を昇らせ、風は虎を走らせるという。手折られても色褪せぬほおずきになぞらえての、貴殿のせきせい。亡き有馬公は…、良き風雲を得られた」。

「拝どの」。
「今は拙者とて、紋服を羽織らぬ一介の刺客人。共に葵の紋どころに怨念を含む者。だが同じ武剣に生きるものの、宿命の対決でござる…」。
「いかにも。タイ捨流、真壁証言まいる!」
「水鴎流、拝一刀」。

2人は川の流れの中、向かい合う。
一刀の刀が、水中に沈む。
波切りの太刀。

勝負は、一瞬だった。
水から上がった一刀の切っ先が、将監を斬る。
一刀の刀が将監を斬り、もう一太刀、浴びせる。
将監は倒れる。

大五郎が真壁将監にもらったほおずきを、川に流す。
一刀はほおずきの枝を、真壁将監が守り続けた殿の切腹の地に立てた塚に捧げる。
そして、箱車に大五郎を乗せ、去っていった。



武士って哀しい。
つらいと思わせる一編。
川を渡る一刀と大五郎を、将監が見る。
一刀の姿を見た将監が、4年前を思い出す。

そして一刀の公儀介錯人時代に、話が遡っていって話が始まる。
真壁将監を演じるのは、睦五郎さん。
「仕掛人」のオープニングナレーションって、この方じゃなかったですか?
「タイ捨流」って、無形文化財兵法なんですって。

右京亮は、中山昭二さん。
キリヤマ隊長じゃないですか?
少ししか出てこないですけど。

一刀が知らない間に、大五郎にもドラマがありました。
大五郎はお姉ちゃんに弱い。
それが今回も出てしまいました。
でもお姉ちゃんも、大五郎に弱いんだな。

縛られた大五郎が、お京の三味線に小さな足を動かす。
すると、思わずお京が笑う。
そして、大五郎はけなげにもお京のために薬を取りに行き、戻って来るのでした。

蓮っ葉な女に見えたお京だが、「やめとくれよ、恩を仇で返すのは!」と4人の中で一番人間らしいことを言います。
結果、「坊や、早くお逃げ!おとっちゃんのところへ走るんだよ!」と逃してくれます。
そしてお京は、相打ちとなってしまう。
逃げなかった大五郎は、お京に持って来た薬を飲ませようとする。

そうすれば、お京は死なないで済むと思ったのか…。
うっすらと目を開けてお京は、かすかな声で礼を言うと動かなくなる。
人の死を見慣れてしまった大五郎は、じっとお京を見ている。
このお姉ちゃんも、動かなくなってしまった…と思っているように。

そんなことがあったとは知らない一刀の元に、大五郎が戻って来る。
すると今度は、刺客が襲って来る。
大五郎、何と父に刺客に向かって投げられる!
人間、反射的に受け止めてしまうんですね。

「男と女の名誉」という、私の大好きな女優さん、キャスリーン・ターナーが女の殺し屋を演じた映画がありました。
この中で彼女は護衛の男を無防備状態にする為、あやしていた子供を投げるんですね。
しかし、この護衛、赤ちゃんを受け止めない。

赤ちゃんは実は人形なんだけどが、男に当たって落ちる。
「何の真似だ?」
この護衛が言うが早いか、彼女は護衛を撃つ。
その後、ジャック・ニコルソン演じるマフィアの恋人に彼女は「ひどいわー!ほんとの赤ちゃんだったらどうするのよー、死んじゃうじゃない」と、ブンブン文句を言う。

たった今、護衛を殺した彼女が言うのが、妙におかしくて怖い。
彼女もひどいし、この護衛もひどい。
この男だったら、大五郎投げは通用しない。
しかしこの男だったら、一刀も大五郎は投げまい。

刺客が斬られた後、大五郎、ちゃんをじっと見つめる。
一刀も、大五郎を見つめる。
そして次の瞬間、大声で泣いて、ちゃんに抱きつく。

大五郎にしたら、何と言う、今日は災難に見舞われる日。
ちゃん、一刀はギュッと大五郎を抱きしめる。
目を閉じて、ギュッと、ギュッと。

私だって、見ていたら、きっとへたり込んでしまう。
ひええええ~と言ってしまう。
ついていけない。

怖い。
そう言うことでしょう。
これは一刀は非難されてしまっても、当たり前だと思う。

でも大五郎を使うと非難される一刀だって、いちかばちかでやっている。
死なばもろとも、という気持ちで一刀は大五郎を投げる。
自分が斬られたら、どっちにしても大五郎は殺されるか、死に向かう。

大五郎は一刀に、こんな「ちゃん」に不信感を持たない。
2人は共に生き、共に死ぬ親子なのだと、言葉ではなく理解している。
他人にはわからない、冥府魔道の親子には、人にはわからない絆がある。
この親子は、特別なのだと思う。

もうひとつ、大五郎投げが出てくる話では、やはりかつて子供を人質に取られた親が出て来る。
親として、一刀の行動は許せない。
しかし、かつて人質に取られた娘の方は、大五郎と一刀を見て、最後に微笑むのだった!

今回、一刀はお金を受け取らない、受け取れない。
無表情に見えて4年前のことを思い出す一刀は、ふと立ち止まり、その自分にハッともする。
自分も真壁将監も、共にやるべきことをやっただけ。

そして現在は同じく、公儀に恨みを抱く身。
一刀は今は、武士道とは逆を行く、冥府魔道を行く身。
冥府魔道は、誰よりも誇り高い武士であったからわかる、逆の道。
誰よりも武士らしい武士であったからこそ、歩める道。

将監を誰よりも理解しているからこそ、斬ってやらねばならない。
彼を、安らかに眠らせなければならない。
それが殿の介錯をした自分が、してやること。

去っていく一刀親子。
冥府魔道とは、まさにこのこと…。
武士道も、冥府魔道もつらい。


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2012.10.10 / Top↑
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