こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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子供のためなら、余計なことだ 「まろほし豆庄」

大五郎投げ、もうひとつ。
第2部「まろほし豆庄」。


さらさらと川が流れる傍らの山道を、足の速い老人の父・豆庄と娘のちえが行く。
老人の足の速さに、ちえが文句を言った時、叫び声が聞こえてくる。
道から見える向こうの枯野で、数人の浪人が斬り合いを始めた。
一刀と大五郎を、数人の浪人が囲んでいた。

係わり合いにならないよう、豆庄が娘を促した時、ちえが悲鳴をあげる。
1人の浪人が、箱車に乗った大五郎に「刀を捨てい!」と言って、刀を押し付けていた。
ちえの脳裏に、怖ろしい光景が蘇る。
自分を抱きしめている母親、黒装束の男たちによって自分たちに刀が押し付けられ、父親の豆庄が十手を捨てるよう強要されている。

「どうした、我が子を見殺しにする気か!」
浪人の声が響く。
豆庄もちえも凍り付いて、ことの成り行きを見守っている。
だが一刀は、奥さず浪人に近づいてくる。

浪人が、刀を振り上げる。
大五郎が、傍らに仕込んである竹やりを外す。
一刀が、斬り込む。
大五郎が、頭を伏せる。

浪人が倒れる。
全てが一瞬だった。
一刀は大五郎の乗る箱車を引いて、去っていく。
それを見た豆庄とちえも、去っていく。

茶店で、休憩していた豆庄とちえの前に、一刀と大五郎がやってきた。
大五郎を見たちえが微笑むと、大五郎も微笑む。
だが豆庄は、一刀の横顔を凝視していた。

そして大五郎に話しかけようとしていたちえをさっさと立たせると、先を急がせた。
ちえは大五郎に手を振って、茶店を出た。
しかしその夜の宿で、豆庄とちえと、一刀と大五郎の宿は同じだった。

廊下を転がってきた毬を追いかけてきた大五郎に、ちえはうれしそうに話しかけた。
ちえが旅をしているのかと聞くと、大五郎はうなづく。
母親を聞くと、大五郎は首を横に振った。
いないのか…。

ちえは大五郎と毬で遊ぶ。
豆庄がたしなめるが、2人は廊下で遊び出す。
その時、一刀が声をかけ、大五郎は一刀と風呂に向かった。

風呂で豆庄は、一刀と大五郎と一緒になった。
豆庄が大五郎の年を聞くと、大五郎は3つと答えた。
娘が生まれた時、豆庄は既に50を前にしていたと一刀に言った。

豆庄は江戸で十手を預かっている者だと言い、若い者に後を譲り、旅に来たと話した。
江戸に戻ったら、十手をお上に返そうとしている。
さらに豆庄は「差し出がましいようだが、道中、一刀に何かあったらお子様はどうします」と問う。
一刀は黙っていた。

次の朝、豆庄はまだ布団の中だったが、ちえは起き出した。
今度は娘に促されて起き上がった豆庄は、一刀親子が旅立つのを見た。
ちえは2人を見て、「あの子がかわいくないのかしら…」と、つぶやいた。
母親がいないとちえから聞いた豆庄は、「世間にはいろんな奴がいるものさ」と言うが、ちえは大五郎を「かわいそう!」と言う。

豆庄とちえが歩いていく道の向こうで、子供たちが凧をあげている。
青い空に、凧が上がっている。
凧を木にひっかけて取れなくなった子供が泣いていると、豆庄がちえに荷物を預ける。

豆庄は構えると、懐から五月雨捕縛(さみだれほじょう)という十手を取り出す。
それは鋭い3つの刃先がついて、持ち手を含めると十字の形になっている。
十字の中心からはもうひとつ、鋭い刃先が出ている。

「おとっつぁん得意の」と、ちえが言うと、先は鉤爪のように引っ掛けることもできるようで、豆庄はあっさり凧を取ってやる。
子供が礼を言う。
腕はまだ、衰えていないと、ちえが感心する。

すると豆庄は、これには自分の血が通っている。
五月雨捕縛でずいぶん、命を拾ったと言う。
ちえを無事に育て上げられたのも、このおかげと言って良いと豆庄は行った。

その時、豆庄は、牛頭馬頭の地獄の鬼が描かれた凧があがっているのに気づく。
離れたところにもうひとつ、妙な図柄の凧があがった。
豆庄は理解した。
これは凧を使っての取り引きだ。

牛頭馬頭と、もうひとつの凧は道中陣。
地獄の鬼の牛頭馬頭は、殺し屋への合図。
それに対して道中陣は、殺し屋からが頼み手と会う合図だ。
「そんなに怖い目印なの」と、ちえは言う。

凧を揚げているのは、一刀親子だった。
大五郎は器用に、道中陣の凧をあげていた。
道中陣から、豆庄は待ち合わせ場所を読む。
不穏な空気を察したちえは、豆庄に先を急がせるが、豆庄は放置できない。

旅先だし、豆庄はもう引退を決意したはずだ。
ちえの言葉に豆庄は、神様のお引き合わせだと言った。
あの道中陣を使うのは、子連れの殺し屋だ。

それは、昨日の親子だろう。
子連れ狼。
世間では評判も高いが、我が子の前で殺しをするなんて、豆庄には許せない。
ちえに先に次の宿に向かうように言うと、豆庄は凧の示した方向へ向かった。

一刀がたどりついたのは、林を越えたひと気のない大きな寺だった。
豆庄が影からそれを見て、隠れる。
すると、ちえが後からついてきていた。

豆庄は怒るが、ちえは「あの子にもしものことがあったらと思って」と言う。
2人に、怖ろしい思い出が蘇る。
黒装束の盗賊たちが、ちえと母親に刀を押し付けている。

豆庄が十手を捨てるよう、強要される。
立ち尽くす豆庄。
視界が真っ赤に染まる…。

「ちえ…」。
豆庄が声をかける。
ちえが、うつむく。

一刀が、刀を手入れしている。
もう、夕刻になる。
豆庄が、五月雨捕縛を見ている。

ちえは、大五郎の母親も「きっとひどい死に方をしたんだわ」と言う。
「あんなひどいお武家だもの」。
だいぶ、冷えてきた。

「張り込みには、ずいぶんと辛抱がいるのね」と、ちえが言う。
「昔はどんな暑さも寒さも、体にこたえるなんてことはなかったんだが。体に気をつけるようになっちゃ、十手稼業もおしめえだ。せっかくの旅でこんなことをさせるなんて、俺は良い父親じゃないな」。
それを聞いたちえは、「おとっつぁんの十手で、あの子を幸せにしてやれるんじゃないかと思って」と言った。

その時、依頼人がやってきた。
顔を隠した、立派な風体の侍は小栗藩家老の河合頼母と名乗った。
左右に、兄弟の用人・左門と右門がしたがっている。

一刀の膝に頭を乗せて、大五郎は眠ってしまっていた。
頼母は、5百両を渡した。
殺してほしい相手は公儀の道中奉行、榊原主計頭だ。

本来は道中奉行は藩にはかかわらない筈だが、榊原の本当の使命は別にある。
榊原は、小栗藩に一泊の宿を頼んだ。
その際、城中を検分したいと言って見回り、城壁の補強工事に言いかがりをつけ始めた。

単なる手違いに過ぎないのに、幕府の許可を取っていないからには、謀反の準備であろうと言うのだ。
この話を幕府にされれば、藩は最悪の場合、お取りつぶしとなる。
だから斬ってほしい。

そこまで話した時、頼母の部下が床下の豆庄に気づいた。
豆庄の前に、床を通過して刀が突き出される。
逃げ出す豆庄の前に、一刀が現れる。

「旦那、殺しを引き受けなすったね。あんなかわいい子がいるってのに、銭もらって人を斬るとは。いくら地獄に落ちたからって、こればっかりはちっと許せねえな」。
一刀は頼母の用人たちが来るのを見て、「行け」と言った。
だが豆庄は「おめえさんだって、ちったあ親の心ってものがあるだろう。いや、ねえとは言わせねえ。この上、もし人を斬りやがったらこの豆庄が、きっとお縄にしてみせますぜ!」と言って走り去る。

左門と右門は一刀に、「なぜ追わぬ!」と言う。
寺から出てきた頼母は「聞かれたな」と言うが、一刀は「心配要らん。引き受けた仕事は必ず仕留める」と言った。
宿で豆庄は傷を負った太ももを、ちえに縛ってもらっていた。
ちえは「もし、豆庄が一刀を捕縛すれば、大五郎が独りぼっちになる」と言った。

それに豆庄だって、危ない目にあう。
だが豆庄は40年、危険な目にあってきたと言う。
それに自分にはこの、五月雨捕縛がついている。

「いくら強くったって、いつかは切れるわ!」
「鉄と銅とで寄り合わせた捕縄が切れてたまるか」。
ちえは、豆庄の心臓も心配していた。

翌日、豆庄とちえは道中奉行の行列の後ろをついていくた。
ひと気のない道の向こうから、箱車を押した一刀がやってくる。
道中奉行の護衛が「どけ!」と言う
一刀は榊原を確認すると、護衛を次々、箱車に仕込んだ槍で叩き、倒していく。

「刺客、子連れ狼!お命頂戴つかまつる!」
言うが早いか、一刀は刃が飛び出した槍で道中奉行を刺す。
その途端、豆庄が飛び出す。
「御用でえ!子連れ狼、神妙にしろ!」

一刀が、豆庄を見つめる。
背後から護衛が一刀に、斬りかかってくる。
一刀が護衛を斬る。

「てめえは、この豆庄がお縄にするんでえ!」
一刀の槍と、豆庄の十手がぶつかり合う。
豆庄の五月雨捕縄の刃が一刀の槍の刃を受け止めるが、一刀が押していく。

背後から護衛たちが、近づく。
五月雨捕縄にはさまれていた一刀の槍の刃が折れた瞬間、一刀は振り向き、次々護衛を斬っていく。
「御用だ!」
豆庄がなおも、五月雨捕縄を手に、突進してくる。

一刀が豆庄の手を、抑える。
ちえが固唾を呑んで見守り、大五郎も箱車を降りてくる。
2人は組み合ったままだったが、突然、豆庄が飛び上がった。

捕縄が、一刀の首に巻きつく。
一刀は捕縄を斬ろうとするが、切れない。
「この捕縄はただの捕縄とは違うんだ。切れるもんなら切ってみろ!観念しろ、子連れ狼。この五月雨捕縄にかかったら、抜けようったって抜けられねえんだ!」
豆庄は、縄を手繰り寄せ始める。

一刀がピンと張った捕縄を手にして、胴太貫を振り下ろす。
捕縄は、ぷっつりと切れた。
豆庄が、勢いで転ぶ。

「この五月雨捕縄が…」。
一刀は、首に巻きついていた捕縄を取る。
豆庄が、呆然としている。
「やろう…!」

再び走ってこようとした豆庄だが、心臓を押さえてうずくまる。
「心の臓を病んでおるな」。
「やかましい!」

「これ以上の無理は、命にかかわる」。
一刀は刀を収め、去っていこうとする。
「肩貸せ!」と、豆庄はちえに言う。

豆庄は再び、五月雨捕縄の切れた部分を結ぶと一刀に投げる。
だが、一刀は頭を低くして逃れる。
「ちゃーん!」
大五郎が叫んでいる。

なおも、豆庄は向かってこようとする。
「御用でえ…」。
「命を粗末にするな」。
「それほど、俺が憎いか」。

「てめえなんか、どうでもいい!子供が」。
「子供のためなら、余計なことだ」
「そればかりじゃねえ!こいつは俺の罪滅ぼしよ!俺はこの十手の為に女房死なせちまった、しかも娘の前でな!」

追想の中で、黒装束の盗賊たちが豆庄の妻と、ちえに刃を押し付けていた。
雷が鳴っていた。
豆庄は、十手を捨てなかった。

妻は斬られた。
幼いちえが、「おっかさん」と叫んでいた。
「その時まだ、娘は4つだった。てめえの息子と同じ年頃よ。ここでてめえを見逃したら、娘に申し訳がたたねえんだよ」。

ちえが叫ぶ。
「おとっつあん、もういい!あたし、もう、忘れるから」。
「子供ってのは真っ白だ。良いも悪いもありゃしねえ。親を頼みで生きていくしかねえのよ。それをてめえは…。許せねえ!」
そう言うと豆庄は「子連れ狼!命をもらうぜ!」と叫ぶ。

だが豆庄の五月雨捕縄は、一刀にはじかれた。
豆庄は倒れる。
「動いてはならん!」

一刀は箱車の薬を取りに行くよう、大五郎に言う。
「あたしが!」
だが、一刀はちえを制した。

「ばかなおとっつぁん。おとっつぁんはやっぱり、おっかさんを自分が殺したと思ってるんだ。あの時、自分が十手を捨てていれば、おっかさんを殺さずに済んだと思っている。そりゃ、あたしだって、おつっつあんのこと恨んだことがあるわ、でも…」。
しかし、ちえは狂ったように捕り物に打ち込む豆庄を見て、父親の気持ちがわかった。
だから、あの事件には触れないようにしてきた。

そして、やっと忘れたと思った時、旅先で、一刀が大五郎を人質に取られても刀を捨てないのを見た。
豆庄は、やりきれなくなったのだろう。
「だから、だから!」

その時、「一刀、刀を捨てい!」という声がした。
頼母の用人、左門と右門の2人だった。
「口封じか」。
「さよう。我が子がかわいくば、刀を捨てい!」

大五郎を1人が捕え、頬に刀を押し付けていた。
豆庄が、それを見て上体を起こす。
一刀が振り返って、豆庄を見る。

「斬るぞ!」
一刀が、道に胴太貫を投げる。
左門が近づいてくる。

その時、大五郎が自分を捕えている右門を噛む。
「あっ、あいたたた!」
一瞬、隙ができた。
すばやく、一刀は落ちていた五月雨捕縄をつかむ。

近づいてきていた左門に投げると、五月雨捕縄は左門の胸に突き刺さる。
「おのれえ~!」
刀を構えて、右門が突っ込んでくる。

一刀は胴太貫を拾うと、右門も斬った。
そして、急いで大五郎に駆け寄る。
「動くな!」
今度は頼母が、道の脇の草むらで短筒を構えていた。

一刀は大五郎を見ると、抱きしめながら立ち上がる。
「死んでもらうぞ」。
頼母が、近づいてくる。
「お待ちくだせえ。子供には罪はねえ」と、豆庄が言う。

だが一刀は次の瞬間、大五郎を頼母に投げる。
頼母が思わず、大五郎を抱き止める。
大五郎が頼母の肩にしがみつく。
一刀がすばやく、頼母を斬る。

倒れる頼母から、大五郎をはぎ取った一刀は力の限り、大五郎を抱きしめる。
「ちゃん!」
豆庄も、ちえも見ていた
ちえの顔に、ふと微笑が浮かぶ。

大五郎を一刀は、強く抱きしめていた。
そして一刀は、大五郎の顔を見る。
父と離れた大五郎がちえに、薬を渡しに走ってくる。
ちえに薬を渡すと、大五郎は父の元に戻る。

「おとっつぁん」と、ちえが声をかける。
「あんなかわいい子、盾に。許せねえ。ゆ、許せねえ」と豆庄がつぶやく。
一刀親子が、去っていく。

「子連れ狼。いずれこの俺が必ず」。
豆庄はまだ、言っていた。
一刀親子を見送りながら、ちえは微笑む。

「坊やー!」と、大五郎に向かってちえは声をかける。
大五郎は箱車に乗る。
一刀が箱車を引いて、去っていく。



この話、ナレーションの通り、2人の父と、母親を殺された2人の子供が登場します。
豆庄は、日下武史さん。
これを演じた時は、まだ40代だったらしい。

ちえが生まれた時は、50手前だったという。
だとすると、この時は60歳過ぎと言う設定かな。
大滝秀治さんといい、当時の俳優さんは成熟しているな~。

最初はちえは、一刀に憤る。
大五郎がかわいそうだと言う。
一刀が、大五郎を大切にしていないと思う。

しかし、虐待されているとしたら、大五郎の笑顔はかわいらしすぎる。
大五郎の笑顔は、人を魅了する。
あんな風に笑えるなんて、大五郎は父親が大好きなんだと思う。
だいたい、あのかわいらしい髪型ね、あれこそ、一刀の大五郎への愛情が出ていると思う。

あまりにぶっきらぼうな親子だけど、対照的に大五郎の髪型、赤い髪飾り、かわいいもの。
一刀があれを結んでやっているところを考えたら、ほのぼのするでしょ。
でもちえはひどい親だと言い、だから母親もひどい死に方をしたと考える。

風呂で大五郎は、足をバシャバシャさせているので、豆庄に飛沫がかかる。
気づいた一刀が「大五郎」と声をかけてやめさせ、豆庄に謝っている。
その後、大五郎に話しかける豆庄は優しい。
豆庄は頼母にも、大五郎の命乞いをしてくれる。

それでも何も言わない一刀に、言っても無駄だと豆庄はわかっている。
だからちえに、最初は関わるな、世の中にはいろんな奴がいると言った。
どちらかというと、豆庄が大五郎に関わりたがるちえをたしなめていた。

だが、牛頭馬頭を見て、一刀が刺客と知ると、今度は豆庄が追いかける。
子供の前で、請け負った殺しをするなど、許せない!
どうにもできないと思っていたが、刺客なら捕縛の対象になる。
とにかく、あの親からあの子供を解放してやる!と思ったのか。

人質を取って、「刀を捨てろ!」は、時代劇では良く起きるパターン。
刀を捨てて、一緒に捕えられて、隙を見て逆転というパターンもある。
ですが、相手が助ける気がなくて、人質もろとも殺されることが多いんですよね。

豆庄の場合も、そうだったと思う。
一刀の場合なんかは、もちろんそうだと思う。
だけど、豆庄はちえの母親を自分が十手を捨てなかったせいで死なせたと思って、すまない気持ちで一杯だった。
豆庄を見ていれば、どれだけ悪人捕縛・一筋に頑張ってきたか、想像できる。

それで、豆庄の心は、ちえにしっかり伝わっていた。
しかし、かつての自分と同じところに子供を追い込んで、しかも平然としている親が、ちえには許せない。
ちえの怒りが向いた一刀を捕縛してやれば、ちえの気持ちは少しは収まるだろう。
すまないと思っている自分の気持ちを、わかってくれるだろう。

それに、かつての自分と同じことを平然とする一刀が豆庄にも、許せない。
だから今度は豆庄が、一刀から離れない。
も~う、意地になってしまっている豆庄は、乱闘の中で、それどころじゃないっていうのに、いや、今だからか、御用!とやってくる。

私は豆庄か、ちえがいつ、巻き添えになって殺されるか、ヒヤヒヤした。
豆庄が御用で来た時、背後にはまだ刺客が一杯。
危ないって、やめなさい、豆庄さんが危ないって、ちえさんも危ないって。
豆庄の相手をしながら、護衛も斬る一刀は結構大変。

それで、豆庄は結構、頑張る。
かなり腕の良い、岡っ引きだったと思う。
豆庄はちえとの会話で、この五月雨捕縄が自分を守ってきたと言う。

そして、この捕縄は切れないと言う。
でもちえは、いつかは切れると言う。
その通り、40年、豆庄を守ってきてくれた捕縄はついに、一刀によって切られた。

豆庄、呆然。
つまり、豆庄も引退する時だということ。
穏やかに暮らす時が来たということ。
諦めない豆庄だが、もう一度破った技は、一刀には2度と通じない。

一刀も豆庄とちえに、何か思うところがあったんでしょう。
「それほど憎いか」と聞く。
聞きながら、なぜ憎いかもわかっているように見える。

豆庄とちえを善良な親子連れと見抜いていた一刀は、頼母にも、あれは大丈夫だと言う。
動けなくなった豆庄に、「動くな!」と言って、薬も持って来てやる。
一刀は、豆庄親子にどこか、暖かい。
豆庄も豆庄で、頼母に「子供は関係ない」と懇願する。

次の瞬間、頼母に向かって、私が初めて見た時はへたりそうになった、一刀の大五郎投げが炸裂。
これだもん、剣を上に飛ばそうとする鞘香に対して、大五郎を肩車するのなんか、アッサリやるはず。
しかし人間、子供を投げられたら、本能で受け止めてしまうらしい。

受け止めないのは、前に書いた「男と女の名誉」に出てくる護衛だけ。
つまり、そうじゃない者もいるだろうけど、一刀はそういう者には投げないと思う。
「雲竜風虎」の時は思いっきり泣いた←当たり前、の大五郎も今度は泣かない。

この2人には、通い合うものがある。
大五郎を抱きしめた一刀の顔と、指先に大五郎への愛しさが溢れているのがわかる。
言葉にしなくても、わかる。
だからそれを見たちえは、微笑む。

「あんなかわいい子、盾に。許せねえ。ゆ、許せねえ」と豆庄が言うのは、しかたがない。
でも、もうちえは心配しない。
ちえに浮かんだ暖かい微笑が、理解を表現している。

一刀もちえも、言葉では表現しない。
だから難しいけど、心が伝わってくる。
あの人は、ひどい親なんかじゃない。
おとっつぁんと私と、同じ。

この親子はちょっとやることは普通じゃないけど、普通以上に愛情を持っているんだ。
何よりも、あの子が父親の愛情をわかっている。
あの父親なら、あの子はきっと大丈夫。
確信したちえは明るく、「坊や!」と大五郎に声をかける。

一刀親子は去っていく。
「雲竜風虎」は、武士の哀しさを描いた。
こちらは似たような状況に陥った2組の親子を描き、一刀親子の絆の深さを描いた一編。

しかし、どちらも最後、一刀親子は後ろを振り向かず、去っていく。
冥府魔道の親子の旅がまだ続くラスト。
これがラストを切なくさせているんだなあ、と思います。


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