この年末、日本映画専門チャンネルで、「人間の証明」を放送してくれると知りました。
原作・森村誠一氏の1977年の角川映画です。
担任の若い女性の先生が、原作を持ってきて、生徒たちに話のあらすじを説明してくれました。

当時、原作を読んでも理解できるような年齢じゃなかった。
この女性の先生が時にはヒステリックで、たぶん、生徒になめられないようにしていたんだと思いますが、すごく気が強くて、えこひいきもあった。
だから決して好きな先生じゃなかったし、今も思い出すと大人としての目で「ああいうところ、やっぱり良くなかったな…」と思うところがあります。
しかしこの先生の説明で、この小説の話の展開とか、言いたいことは何となくでも理解できました。

映画は改めてキャスト見ると、今から思うとすごい。
松田優作さんが、棟末刑事。
当時、仲が良かった友人が大ファンで、それで一緒に見に行ったんだな。
同僚の刑事にハナ肇さん。

そして覚えがないんですが、鶴田浩二さんも出ている。
さらに、三船敏郎さん。
これは覚えてます。
八杉代議士役ですね。

妻であり、ヒロインに岡田茉莉子さん。
綺麗で華やかで、そして熱演でした。
その息子役に、岩城滉一さん。
当時は権力者を親に持つ、ろくでなし息子が良く似合った。

さらに被害者に、先ごろお亡くなりになったジョー山中さん。
テーマ曲も歌っていますが、このテーマ曲は心にしみた。
麦わら帽子がクルクルと落ちていく緑の渓谷にかかるクライマックスが、これのおかげですばらしいものになった泣けた!

アメリカ側の出演者に、ジョージ・ケネディーさん。
他には夏八木勲さんや地井武男さんもいる!
いや、脇役に至るまですごい。
角川映画って、こういうことができたんですね。

今よりもひどかったと思われるアメリカの差別、今では信じられないほどの敗戦した直後の日本への差別と、その日本における差別。
ひどいな…と思った記憶があります。
そして、戦後の日本の発展などが、ここに表現されている。
この辺りを感じることができれば、今も見ることができるんじゃないかと思います。

ジョー山中氏の「ママァー、ドゥユーリメンバー」の歌声に松田優作氏の声で西条八十氏の詩の「母さん、僕のあの帽子、どうしたんでしょうね」という一節が流れる。
これがCMとして、大量に流れた。
もう、流行語にもなったほど。

「ええ、夏、碓氷から霧積へゆく道で、谷底に落としたあの麦わら帽子ですよ」。
この詩を読まれたら、被害者が冒頭、弾みながら「キスミー、キスミー、ママ、ハレルヤ!」と言った姿を思えば、犯人じゃなくても涙が出る。
要するに…、あ、ネタバレになります。
読んでいない方、見ていない方は注意。

このフレーズが原作では最後、鉄壁と思われた犯人の心を崩した。
つまり、決定的な証拠がなく、犯人の親としての心に訴えるしかなかった。
犯人にはわかっていたはずの被害者の生い立ち、背景、心情、それを冷血に切り捨てなければならなかった犯人の人生、今の立場。
しかし被害者の心そのもののこの西条八十氏の詩を読まれた犯人は「もうやめて…」と、涙とともに声を絞り出す。

犯人は人間として、自分のしたことを認め、悔いて、そして被害者に詫びるしかなかった。
そう、犯人は心がある人間の証明をすることと引き換えに、罪を認め、築いてきたすべてを失うことになった。
たったひとつ、冷血でない証拠。
人間の証明だけは手にして、そして破滅した。

しかし映画はそういった心情を描くというより、当時の人気俳優たちが豪華出演し、アクションも入った派手な映画になっていると言われていた気がします。
当時は、大量生産の軽薄な映画とか、金に飽かして作った映画だとか酷評の嵐でした。
そこまで行かなかったかもしれないけど、原作とはギャップを感じた人が多かったらしい。
しかし、大ヒットした。

でもこの「人間の証明」とか「復活の日」なんかは当時の私たちだと、結構、泣いてました。
そういうの、きっと映画ファンにはバカにされちゃったんだろうな。
まだまだ人間の奥深さや、人生の重みもつらさも悲しさも真には知らない層は、そういう層にしか通用しない作りだと言われても、楽しんで見てたんですよ。

「人間の証明」は森村誠一シリーズとして、テレビでも放送されました。
こちらの主演は、林隆三さん。
ヒロインは、高峰三枝子さん。
娘役に、岸本加代子さん。

こちらも娘の存在がクローズアップされるなど、原作とは違ったアレンジがされていました。
しかし、こちらはまた、2時間しかない映画では描けなかった、いろんな展開をじっくり描いてはいたと思います。
テーマ曲が流れている間に出てくる映像に戦中、敗戦直後、そして当時の日本が流れていました。
終戦が、まだまだ生々しく感じられる時代だったんですね。

そうそう、わからないなりにも森村誠一シリーズも見て、いくつか原作も読みましたっけ。
「腐食の構造」とかね。
原作も「こ、これで終わってしまうの?!」とその無情なラストにびっくりでした。
ドラマの方も期待どおり「こんな終わり方してくれて、この気持ちの持って行き場がない!どうしたらいいの!」だった気がします。

今思うと、「あああ、70年代だ~!」と思います。
「腐食の構造」のラストに畳み掛けるように流れるテーマ曲は、小椋桂さんの「心のひだ」。
く、暗い。
暗いの。

そう思ったんですよ!
だから最近、藤あや子さんがこの曲を歌っているけど、聴くとどうしてもあの時の暗さを思い出してしまう。
最初の刷り込みって、怖いですね。

この「腐食の構造」には、大町(町田)役で松田優作さんが出てました。
島田陽子さんを助けに現れた初登場シーンでは、「おおっ!」と思うようなカッコ良さ。
そしてラストのあっけなさ。

記憶によると、大町が猛吹雪の中、島田陽子演じるヒロインの名を叫び、立ち上がる。
そして…。
「ぎょーえー」「嘘っ!」「これで終わり?!」と思いましたよ。
なんか、こういうところも70年代っぽいというか、松田優作氏が好んだ役柄な気がします。

隣にいる梶芽衣子さんは、吹雪で目も開けられなかったはず。
いや、70年代に一回見ただけなんで、違っているかもしれない。
そこのところ、違ってたら許してください。

でも島田陽子さん、梶芽衣子さんの2人とも、とっても綺麗でした。
岸田森さんも出ていたんだな。
こっちも、もう一度見たい。
なんにせよ、角川映画「人間の証明」の放送が楽しみな年末です。


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2012.12.31 / Top↑
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