友人から仕事の話があると言われて、出かけていった私。
仕事の話だと言うが、ある立派なマンションに連れて行かれた。
オートロック。
まあ、最近はみんなそうだけど、中庭が立派だな。

そしてたどり着いたマンションで待っていたのは、感じの良さそうなご主人さん。
ニコニコしながら、コーヒーを淹れてくれる。
自分の職業についてお話してくれる。

普段の私には縁がなさそうな業界の人だなと思いながら、話を聞いて、私の方の話も聞いてくれる。
愛想のいい人、感じのいい人ではある。
そうして紹介したい仕事について、話が向かった。
この感じの良いご主人の口から出た単語を聞いて、瞬間思い浮かべたのは「マルチ?」という言葉だった。

しかし、これはマルチじゃない。
世間には誤解があるんだと、誤解が生まれた経緯を話し始める。
そしてマルチではない理由、この会社のシステムについて話し始める。

立派なテレビで、会社の会合のDVDを見せてくれる。
さらに、この会社のパーティやらなにやらに来る有名人、中には日本じゃないけど有名な政治家がいる。
そんな人が怪しい会社のために来ますか?と言う。

政治活動のためには来るだろう~。
この人たちは信用できるかもしれないが、この人たちの名前を出す人が信用できるかは別だろう~。
有名人を使って信用を得るって、それはおかしいだろう~。
そんな言葉が次々、胸に浮かぶ。

次にはこの会社の商品の説明。
どれほど体に良いもので作っているか、アレルギーやアトピーの人が大丈夫だったか。
市販のものが、どれほど体に悪いか。
宣伝や、中間に業者を入れることで、原価よりどれだけ高くなっているかを話す。

今度はこの会社の商品はちょっと高いが、その理由を話す。
要するに他の市販のものとは違い、宣伝費や中間業者が入っていない。
なので、高いけどそれは純粋に製品の品質なのだと説明する。

この会社の洗剤と、市販のものを比べるために、蓋のついた水入りのボトルを用意し、洗剤を水の中に入れる。
油をたらし、シャカシャカ振る。
市販のものが油を分解していないこと、この商品は分解してなおかつ水が澄んでいることを見せる。

次に歯磨き粉をアルミフォイルに塗り、市販のものがエナメル質を削っていること。
この会社の商品は削らないことを見せる。
次は化粧品…、とまあ、延々3時間。

お腹すいたよ。
8時過ぎたよ。
私はお腹がすいてきただけで、集中力が落ちる。
大体、この会社が怪しい会社じゃないってことがわかっていただけたのではないでしょうかと言われても。

そしてこの会社が貸してもらったホテルや会場が、とても良いところだと言う。
そんなところが怪しい会社に場所を提供しますか?と言う。
このご夫婦が成績が良くて招待されたという、旅行のDVDを見せてくれる。
ゴーカなフルコース、ゴーカなお部屋、飛行機はビジネスクラス。

さらにこの会社の人たちが利用しているホテルや、旅行について紹介した雑誌を見せる。
有名人の身内という人の名前が次々出てくる。
「この人は○○さんの弟さんのお嫁さん、この人は○○氏の旦那さんの妹さんで会社をやっている人」などなど。

そして少なくとも、この会社にかかわっている人の暮らしとかその人たちに興味を持ったのではと聞かれる。
いや、別に…。
人がどんなセレブな暮らししてても、私には関係ないし。

この会社の商品を買うには、カードを作ってもらうのだと言う。
来ましたね。
そこで安く買ってポイントを貯め、人に紹介した時に私にもポイントが入ると言う。

こうして良いものを人に勧めると、その人も幸せになるし、私にもポイントが入って、みんな幸せになるのだ。
それがこの会社のシステムなのだ、と言う。
ノルマもないし、マルチじゃない。
分配は上の人間だけにじゃない、みんなに来るんだから、下の人間が損をするなんてことはないと言う。

わかったわかった。
6時からもう9時半まで説明を聞いて、お腹もすいたし、時間も遅くなるので帰してくれ。
いや、マンションの一室だから、もしかしてこのカードを作るまで帰してもらえないのかっ?!
不安がふと、胸をよぎる。

だが、残念でした。
今日、私はお財布に笑ってしまうほどのお金しか入ってない。
社会人がそんなお金でどうしようというのだというほどしか、入ってない。
それで友人と会うなんて、一体お前は何を食べるつもりだったのかと責められてもしかたがないほどの金額しか入ってないのだー!

もはや集中力が切れて眠そうな私に、相手は一体私は何に興味があるのか、と聞く。
お料理ですか?
なら、今度の日曜日にはこの会社の、性能の良い、おいしく短時間で料理ができる鍋を使っての料理教室があると言う。

時間がないと言うと、時間というのは作らなければできないと言う。
作る気がないんですが、察してはいただけないんでしょーか。
それとも、そんなことはゆるさないんでしょーか。

私は今、会社に対して「そんなこと、相手があることなんだから無理でしょうに!相手が決めることでしょうが!」と思っていることがある。
だからそういう、相手のためを思っているようでいて、自分のためという、一方的なやり方はいい加減、嫌になっているところなんだよね。
何でアフターファイブにまで、そんなことされなきゃいけないんだ。
こうなるともー、絶対やるもんかという気になってくる。

今、9時半…。
このままうんと言わないと、一体何時間まで説得するんだろう。
10時になっても、11時になっても、12時近くになってもDVDを見せたり、雑誌を見せたりしているのだろうか。
朝までやるんだろうか。

すると、携帯電話が鳴った。
猫が騒いでしかたがないんで、早く帰ってこーい!と怒りの電話だった。
おお、天の助け。
猫よ、ありがとう。

これを機に、私は「帰ります」と言った。
じゃあ、3月の第一日曜にこういうイベントがあるから、ぜひと言われる。
はいはいと言って、玄関に行って、靴を履く。
もう二度とお会いすることはないでしょう。

友人が駅まで送ってくれる。
私に勧めた友人は、本当に良いものを勧めていると信じている。
だから余計、溝が深いと思った。
何だかとっても腹立たしく、哀しく、寂しくなった夜だった。


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2013.02.20 / Top↑
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