こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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妖怪たちの宴 「必殺仕掛人」「消す顔消される顔」

三國連太郎さんの出演作で記憶に残っているものは、と言われると、たくさんあります。
「復讐するは我にあり」だったら三國さんも緒形拳さんも、気のいいおじいさんになってからの2人しか知らないとビックリするかもしれませんね。
三國さんと緒形さんの共演だったら、「必殺仕掛人」の6話、「消す顔消される顔」もすごいですね。
これには何と、西沢利明さんも三國さんの番頭格の音次郎役でご出演!

緒形さんは針医者にして、闇の仕掛人・梅安。
三國さんは梅安が関わった、盲目の夫を支える美しく気立ての良い娘の父親・文珠屋多左衛門。
最初はお妙のけなげさと美しさに目を留めた梅安だが、夫の直吉の目が気になる。
直吉の目が見えなくなったのは、病のせいではなく、刺し傷の影響によるものだった。

お妙の父親の文珠屋多左衛門は、豪商だが仏のようだと評判の材木問屋だった。
そして、この男の「仕掛け」が梅安に来る。
梅安には納得がいかない。
だが、元締めはこの男がいる限り、今、江戸でたびたび発生している火災は終わらないと言う。

はたして、文珠屋多左衛門には、裏の顔があった。
江戸の火事は、多左衛門の放火によるものだった。
火事を起こして町が燃えれば燃えるたび、多左衛門は材木によって利益を得ていたのだ。

さらに多左衛門は娘のお妙に対して、病的な執着を見せた。
そして、娘の夫・直吉に対しては憎悪を燃やす。
直吉は、たびたび命の危険にさらされた。

それらは全て、多左衛門の差し金だった。
ある夜、直吉が襲われるが、梅安たちが捕らえたその女の殺し屋は青い目をしていた。
殺し屋は自害して果てる。

仕掛けに備えて、梅安は針を研ぐ。
そこに千蔵がやってくる。
梅安の全身から漂う、異様な気配。

針を手に、梅安が千蔵に言う。
「こいつで今、お前さんの息の根を止めようとしたら、息を吐いた時の方がいいと思うかい?吸った時の方がいいと思うかい?」
千蔵の声が震える。
「冗談はよしてくださいよ」。

梅安の目に、尋常ならざる光が宿っている。
声が、低く響く。
「直吉を襲った殺し屋は、叫び声を立てないように手ぬぐいを使った」。
あの殺し屋は、手ぬぐいを直吉の口に押し込めたのだ。

「だが相手が息を吐ききった、その瞬間を狙えば、声は出ねえ。手ぬぐいを使うなんざ、仕掛人としては下の下だ」。
「舌を噛み切って死ななきゃならなかったのも、腕相応の報いってもんだよ」。
その凄みに、千蔵は縮み上がる。

「千蔵!たらいの水替えてくれ」と梅安の声が飛ぶ。
すっかり怯えきった千蔵の声が、「へ、へい」とうわずる。
手にしたたらいの水が、こぼれる。
千蔵の手は震え、腰は抜けそうだった…。

火事の起こった夜、梅安は多左衛門の背後に忍び寄る。
差配を見せながら、目が異様に輝いている多左衛門。
標的を定める梅安の目もまた、獲物を狙う獣のようだった。

しかし、多左衛門は首に鎖帷子を巻いていた。
普通の針では仕掛けるのは、無理であった。
梅安はあきらめるが、目は燃え上がった。
その夜から、梅安は針を鍛え上げる。

風の強い夜だった。
梅安は、文珠屋へ忍び込む。
多左衛門が「音次郎」と、鳶の音次郎を呼ぶ。

「へい」と言って、音次郎がやってくる。
ごうごうと、風がうなる
「強くなってきたようだな、風が」。
「乾ききっておりますし、今夜辺りチャーンと鳴ったら、江戸の半分は灰になりましょう」と音次郎が言う。

「やりますか」。
多左衛門が言う。
「今夜は何もかもみんな、片付けてしまおう」。

さらに多左衛門が言う。
「安いものは買うものじゃないね。10両では安いと思って話をつけた女殺し屋が、しくじった」。
「直吉さえ殺せば、お妙は帰ってくると思った」。

「じゃあ、あれは旦那が…」。
女殺し屋が自害してくれたからいいようなものの、白状したらどうなったか。
音次郎が言う。
「そういう危ないことは。他人に任せるのではありません」。

音次郎を見る多左衛門。
多左衛門と、音次郎は同じ類の人間だ。
「音次郎、お前はやっぱり、私の跡目…」。

音次郎が直吉を殺しに、そして多左衛門が火をつけに向かう。
梅安が屋根の上から、ついていく。
誰もいない路地で、火をつけにかかる多左衛門。

はあ…あああ…という呼吸音が響く。
火がともされる。
はああ…、はあ…。

梅安は、計っている。
息を吐ききった瞬間に仕掛ければ、声も上げられない。
はああ…、と響いていた呼吸が、止んだ。

闇の中から、梅安が下りてくる。
一瞬で、多左衛門を梅安の針が仕留める。
火が燃える。
もし、多左衛門が放火しているのがわかったら、娘のお妙まで火あぶりにされると言って、梅安は火を消す。

梅安たちの目の前の暗躍も、多左衛門の正体も知らない直吉。
多左衛門は卒中でなくなったということで、葬式に梅安がやってくる。
本当に惜しい人をなくした、だんなの善行でこれからは江戸の火事は少なくなるだろうと皮肉で、笑える言葉を述べる梅安。

あれから鳶の音次郎もいなくなったが、一体どうしたんだろうと言う。
左内が仕掛けてくれたのは承知の上だが、金ももらわないのに仕事をする仕掛人なんかいるわけがないと笑う。
そして、鍋を食べたら、吉原に行こうといって笑い、誘いに決して乗らない左内をからかう。


三國さんが演じる父親が、娘に対して異常な執着を見せる。
そして、娘の夫には尋常ならざる憎悪を抱く。
これだけで、他は何の描写もない。
でも三國さんは、この父親…、娘かわいさにしてはちょっとおかしくないか?とこちらをゾッとさせる演技を見せる。

そして放火を申し出る、西沢さん演じる音次郎。
三國さんが言う。
「音次郎、お前はやっぱり、私の跡目…」。

この2人は同じ、妖怪。
人の姿はしているが、中身は妖怪。
心が、人としての心がない。

その凄みのある顔。
2人ともすごい。
「妖怪たちの宴」状態。

そしてその妖怪を仕留める執念を見せる梅安の、緒形さんの目力もすごい。
三國さんたちが妖怪なら、それを仕留める梅安もまた、尋常な人間じゃない。
だが梅安は妖怪ではない。
2人と梅安は危うい、紙一重のところにいながら、決して交わらない。

怯えてみせる秋野大作さんこと、津坂まさあきさんの演技もすばらしい。
みんな、すごいんですよ。
目の見えない演技を見せる、石山律さんもすごい。
俳優というのは、演技のプロなんだと感嘆しますよ。

結局、梅安は妖怪を仕留める。
梅安が言った殺しの極意。
そのおそろしいが名セリフが、ここに効いてくる。
呼吸音を響かせる演出も、緊張感を高める。

燃え上がる炎を消す梅安。
そして、直吉の目が治ると知らされたお妙が梅安に感謝する。
本当はお妙みたいな女性と、一緒になったらいいなあと言っていた梅安。
そんな平凡な生活は望んでもいないし、手に入るわけがないのは知っているのに。

鍋をつつき、吉原に行こうと話がまとまる梅安と千蔵。
自分はお妙がいいな、と言っていたのにアッサリと。
妖気を漂わせることはあっても、梅安には明るい顔がある。

実に人間くさい。
梅安はやっぱり、人間なのだった。
俳優、ストーリー、演出。
この記事を読んでくださった方で未見の方、全てがすばらしいので、機会があったらぜひ、ご覧ください。


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