鬼平犯科帳の新作、「見張りの糸」を見ました。
以前にもこれ、放送してますよね?
でも今回、おもしろかったなあ。

元・盗賊の頭の堂ヶ原の忠兵衛に、中村嘉葎雄さん。
お頭の公私というか、表裏に渡って片腕のような存在の太助に、本田博太郎さん。
このコンビが、すごくいい味出してました。
ほんとに楽しかった。

2人でこそこそ、引退した忠兵衛が営む仏具屋の店の2階に滞在している火付盗賊改めの動向を話す。
火盗は、忠兵衛の店の向かいにある大黒屋が盗賊と関わっていると見て、見張っているのだった。
引退したとはいえ、元・盗賊の頭の店に、火盗が滞在するとは。

おかげで、貯め込んだ隠し金を取り出すこともできない。
さっさと出て行ってほしい。
しかし表向きはニコニコと、2人はとても感じ良く協力的に振舞う。

忠兵衛がなぜか、火盗の目的が、「むじなの豊蔵」なる外道であることを知っている。
太助が理由を聞くと、屋根に上って窓の隙間から火盗たちの話を聞いていたと言う。
それを聞いた太助が「転げ落ちでもしたら何とするのです!」と、無茶をたしなめる。

すると忠兵衛が「てやんでえ!まだ弱っちゃいねえよ!」と反論。
太助がちょい、と、忠兵衛をこづく。
忠兵衛、思わずぐらつく。
「おおっ、危ねえじゃねえか」。

太助が忠兵衛を支えると、今度は忠兵衛が太助の不意をつく。
ぐらついた太助に忠兵衛が「おおっ、弱ってんな?!大丈夫か?」と言って笑う。
太助も笑う。
なんて、ほほえましい主従の関係。

本田博太郎さんの太助は、鬼平の密偵・粂八が凶賊に捕らえられたのを見て大活躍。
粂八が痛めつけられた上、刺され、転がっているのを見て、「ひでえことしやがる」とつぶやく。
おお、「仕舞人」の直次郎を思い出す。

太助は、刺された傷を止血し、応急手当をする。
これが粂八の命を、取り留めることになる。
なんて、有能。
この辺りは、「雲霧仁左衛門」の熊五郎並みかもしれない。

太助が医者を呼び、粂八は五郎蔵のところに運び込まれる。
粂八の無事を密偵はもちろん、鬼平も喜ぶ。
この鬼平と密偵たちの絆も、毎回じんと来ますね。

心ならずも凶賊・むじなの豊蔵のの一味となってしまい、人まで殺めてしまった粂八の昔馴染みの稲荷の金太郎。
自分が殺めた男の妻子を、もちろん、事情を話さずに助けている。
感謝している妻は夫の着物を作り直して金太郎に着せ、子供は金太郎が来るのを楽しみにしているほど懐いている。
だが金太郎には、それが苦しくて苦しくてたまらない。

捕らえられた粂八を豊蔵に殺せと言われた金太郎は、一応、急所を外して刺してはいた。
「刺せ。そうでなければお前が殺される」と粂八は言い、本所の軍鶏鍋の店の五郎蔵を訪ねろと言っていた。
五郎蔵なら、必ず、助けてくれると。
意を決して五郎蔵の「五鉄」に向かった金太郎だが、裏切りを察知した豊蔵に刺されてしまう。

瀕死の金太郎に駆け寄ったのは、太助。
金太郎は豊蔵たちの押し込み先を言い残して、事切れた。
さて、この事態に忠兵衛と太助は、どうしよう。

一方、金太郎が店に向かう途中に間に合わず、殺されたことを予測した密偵たちは哀しむ。
自分たちだって、紙一重で同じことになっていたはずなのだ。
平蔵に会わなかったら。

忠兵衛は金太郎の名前で、火盗に押し込み先を教える手紙を書く。
店の名前と日にちを知り、大黒屋の動きを見た火盗は動いた。
忠兵衛の店から火盗が去り、太助と2人、「目の上のこぶがやっとなくなりましたな」と喜ぶ。

「押し込み先を、ご丁寧に教えてやったからな」。
「はい」。
「鬼の平蔵に恩を売ったとなると清々するわ」。

主従、顔を見回せて「へっへっへ」。
ちょっと、楽しすぎる!
悪友同士で、遊んでるみたい。

しかし忠兵衛と太助が知らない、もうひとつの押し込みが計画され、進行していた。
忠兵衛が昔、使ったことがある戸田銀次郎と4人の浪人が、忠兵衛の隠し金を取ろうとしていたのである。
決して盗みに入った先の者を傷つけないのが忠兵衛のやり方だったが、銀次郎は女中をてごめにし、殺害した。
そのため、忠兵衛が銀次郎を罰しようとしたが、銀次郎はいち早く逃げ去った後だったのだ。

豊蔵の捕縛に、鬼平は風邪を理由に行かなかった。
その夜、豊蔵たちはことごとく火盗に捕縛され、豊蔵は斬り捨てられた。
忠兵衛の店には、銀次郎たちが押し込んだ。
金のありかを言わない忠兵衛に、銀次郎は孫娘夫婦を痛めつければ言うだろうと告げる。

2階の孫娘夫婦がまさに引きずり出されようとする時、覆面の武士が銀次郎の仲間を斬った。
平蔵だった。
銀次郎たちのたくらみを知った平蔵は、彼らが集まっている店に行き、彼らが打ち合わせをしているのを聞いていた。
どじょう鍋のお店で、そんな大事なことをしゃべってるなんて、銀次郎たちはうかつすぎる。

1階の銀次郎たちも斬った鬼平は、風邪で捕物を休んだぐらいなので、今夜のことはなかったことにすると言って笑った。
この辺りの展開も、実に見事で気持ちがいい。
平蔵が捕物に行かない時点で予想はついても、こういうお約束が時代劇には必要。

さてもう安心して、畳をはがし、床下から隠し金を出そうとしていた忠兵衛と太助。
誰か来た!と感づくと、途端に2人、畳の上にポンと座る。
息がぴったり。

軽やかに、まるで最初からそこに座っていたように。
でも妙に、かしこまって。
とぼけた2人が、すごくおかしい、楽しい。

平蔵は忠兵衛に、粂八を助けた男は、名乗らずにいつの間にか姿を消していたと教える。
だが医者はその男を覚えていた。
男の特長を、平蔵は話す。

年齢、身の丈、ほくろ。
ここにいる番頭さんに、ぴったりだ!
平蔵にこの番頭さんがぴったりと言われて、ギックリする太助を笑い飛ばした平蔵。
こりゃ、気づいてるな。

案の定、火盗の屋敷に呼ばれた忠兵衛は、金太郎の名前で出した手紙を見せられる。
そして金太郎は、読み書きが一切、できなかったと言われて、顔色を変える。
正体、ばれてたー。

忠兵衛は平蔵に「盗賊の身で、なぜわれらを助けるような真似をした?」と聞かれる。
「むじなの豊蔵が仁義を知らなかったからでございますよ」と、忠兵衛は言う。
「盗賊にも仁義があるのか?」との問いに忠兵衛は、「盗賊も悪人を憎む気持ちは、火盗改めと少しも変わりゃしませんよ」と答える。

この後の、「さあ!お縄を頂戴いたします!」と自ら手を後ろに組む嘉葎雄さんの啖呵は、やっぱり気持ちいい。
しかし、平蔵にそんな気はなかった。
大体、粂八の命は助けてくれたし、豊蔵の押し込み先まで教えたのだから、むしろ礼を言わなくてはならない。
だからこそ、夕べは平蔵1人で賊を退治したのだ。

忠兵衛のことは、平蔵1人の胸に納める。
かわいい孫娘を泣かせるのも、目覚めが悪い。
「さすがは長谷川平蔵様だ!」と、忠兵衛が言う。
怖いばかりじゃない、粋なお裁きだと言って、去ろうとする。

その間際、平蔵は「ただし、隠し金は残らず差し出すように」とうる。
「何のことでございましょう?」
とぼける忠兵衛に、「お前んところの床下に埋めてある金のことだよ」と平蔵。
全てお見通し。

忠兵衛の店では、太助がじたばたしている。
これがまた、小さい場面だけど、笑える。
もう、しっかり笑わせてくれる。
隠した金は、床下から火盗によって取り出されてしまった。

後日、粂八は褒賞として平蔵から小判をいただいたが、それは金太郎が面倒を見ていた親子に渡したいと言う。
それが、金太郎の供養になる。
粂八の好きに使うがいいと言う平蔵。

密偵たちも、自分たちの褒賞から小判を取り出し、親子に渡すお金の上に置いていく。
もう1人の自分たちであった、金太郎への密偵たちの思いが泣ける。
粂八は親子の長屋に行き、お金を渡す。
粗末な、本当に貧しい、長屋の一室。

金太郎は旅に出た、遠く、当分戻らない。
子供がそれを聞いて、泣く。
母親は、何かを察する。
金太郎は、親切な恩人のまま、彼らの心に残る…。

そして、忠兵衛の仏具屋に向かった火盗の小林は、忠兵衛の孫娘から忠兵衛が江戸を発ったことを聞かされる。
番頭の太助も一緒だった。
孫娘は無邪気に、忠兵衛に江戸の水が合わなかったと笑う。

川のほとり、旅姿の忠兵衛と太助が座っている。
2人、塩むすびをほおばりながら話をする。
「太助どん、これからどうしたもんだろうの~」。
「何にいたしましても、一文無しではどうにもなりません」。

ありゃー。
全部、平蔵に取られちゃったのか。
でもそのお金、何のためにとって、どうするのかな。
持ち主を調べて、返す?

「この年になって、まさか、すってんてんになろうとはの~」。
忠兵衛の口調が、おかしい。
思わず笑う。

「上方へ戻って、またいちから、お盗め(おつとめ)をいたしましては?」と太助。
こちらの口調も、深刻ではなく、妙にのんびりしておかしい。
忠兵衛が「やめとこう」と言う。
「盗賊改めに命を助けてもらうようじゃ、もう~、いけねえ」。

「俺もどうやら、焼きが回ったようだ」。
太助が「ふふふ」と笑う。
忠兵衛も笑う。
この2人は、きっと大丈夫。


鬼平も、奥さんの久栄さんも、密偵のおまさは、確かに歳は取った。
粂八と五郎蔵は、ますます渋みを増した感じがしますけど。
しかし、やっぱりこの俳優さんたちの演技、息の合い方はすばらしい。
そしてうさぎこと忠吾は、殺伐とした事件の中のホッとするパートであることは変わらない。

苦悩する盗賊・金太郎を演じた、渡辺いっけいさんも、すごく良かった。
この方はリメイクした「木枯らし紋次郎」での悪役も良かった。
若村麻由美さんの名主の娘に対する偏執狂さはなぜなのか、説明がなくても、彼を見ているとなぜかがわかってきた。
この悪女と何があったのか、彼女をどう思っているのか、彼の目の色が語ったすごみある演技だった。

さらに今回、すごく動きを見せたのは、本田博太郎さんの太助。
それと太助を動かしてこちらに存在感を見せたのは、嘉葎雄さんの忠兵衛。
いいコンビになるには、嘉葎雄さんの演技をしっかり受け止めなくてはいけない。
嘉葎雄さんはすごい俳優さんだけど、その嘉葎雄さんの演技をがっしり受け止める本田さんは、やっぱりすばらしい俳優さんなのだ。

この2人のコンビこそ、時代劇専門チャンネルのオリジナルドラマで「鬼平外伝」としてやってほしい。
やったら絶対、見たい。
すごくいいコンビ。

時代劇専門チャンネルさん、作ってくださいよ。
この2人で、この2人の俳優さんで見たい。
あっ、でも絶対、このコンビに哀しい展開は嫌です。

さて、鬼平の新作は、出演者全員が、力のある俳優さんだということを再認識しました。
いつも2時間サスペンスで見る俳優さんがいつもとは別の、いや、本来持っている面を見せてくれたと思います。
良い俳優さんの使い方を知っているというか、存分に使っているというべきか。
ああ、良い俳優さんたちで作る時代劇って、やっぱりすごくいいなと思いました。


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2013.06.01 / Top↑
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