右門捕物帖も、いよいよこの回の後、最終回です。
この回より順番としては先に書かなくてはいけない回があるのですが、そこのところご容赦を。
…ってめちゃくちゃですね、すみません。

金座から運ばれる8千両が、賊によって強奪される。
護衛は全て殺害されたのだが、右門の先輩の同心・緒形だけが気絶させられて発見された。
病で年老いた母親、妻と子供を抱え、お世辞にも裕福とは言えない状況の緒形は共犯ではないかと疑われた。

責任を取り、身の潔白を証明するために緒形は自害しようとするが、右門は止める。
自分に同心のイロハを教えてくれたのは、働き盛りだった緒形だった。
奉行所でも緒形に疑惑の目が向けられるが、右門はそんな声を非難し、一人、緒形の味方についていた。

緒形も独自に動くが、実は緒形は長屋に住む貧しい若い娘の元へ通っていた。
娘は緒形をひたすらに慕い、貧しい暮らしの中で緒形の来訪を心の支えにしていた。
緒形もまた、味気ない生活の中、娘との時間が今や生きがいといえるほどになっていた。

だがその娘への言葉から金座の護衛がもれ、悪党に強奪を許すことになっていたのだ。
悪党に絡め取られそうになりながらも、緒形は無事、自分の汚名を晴らす。
右門は緒形の身の潔白と、犯人の捕縛を導く。

全てが解決したと思った時、緒形が訪ねると娘は自殺を図ろうとしていた。
娘の気持ちを知った緒形は、娘を刺し、自らも刺し、2人であの世に旅立った。
駆けつけた右門は、2人の死体を見る。

緒形の家で、右門は緒形が立派に同心としての責務を果たした上で、身を処したと話す。
まだ子供の緒形の息子に、右門は言う。
「お父上のような同心になりたいと、お思いですか?」
子供は黙って、しかしきっぱりとうなづいた。

これでいい。
これで、いいのだ…。
右門は全てを自分ひとりの胸に秘めてて去る。



第一線を退きつつある、同心。
仕事も家庭も、彼には疲労感を増す場所でしかない。
そんな中で知り合った貧しい娘との、純粋で幸せな時間。

しかしそれが、事件を呼んでしまう。
諦め、逃げの体勢に入ろうとする緒形を叱咤する右門。
一見厳しい言葉に思えるが、右門だけが奉行所内で1人、緒形をかばっているんですね。

全てが元通りになり、緒形は日常に帰っていけば良かった。
だが緒形の情熱や生きがいは、もう、どこにもなかった。
娘が死のうとするなら、自分も一緒に死にたい。

緒形は同心の仕事より、家族より、娘との旅立ちを選んだ。
右門は病気の母親にも、妻にもそんなことは打ち明けない。
家族にはただ、夫の、父のすばらしさのみを伝え、誇りを持って生きていけるようにしてやる。

右門の意図したとおり、息子は父親を尊敬し、父のような同心になる決意をする。
本来の右門の仕事は、真実を明らかにすること。
だが、これは事件ではない。

全てを明らかにすれば、救われる人がいるわけじゃない。
ここでの自分のやるべきことは、人が生きていく希望と道筋をつけてやること。
そして、恩ある先輩の姿を汚さないこと。

何も知らない息子の、凛とした姿。
右門、緒形、娘のそれぞれの立場と心情がひしひしと伝わってくる。
全てを飲み込み、1人切ない思いを抱えて生きていく右門の姿が、心に残る。
こういうことが「大人」だと、当時見たなら思ったに違いない。

右門捕物帖もいよいよこの回の後、最終回。
ですが、この作品のレベルは下がらない。
それどころか、終盤に向かってさらなる人間ドラマを用意しているんですね。


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2013.06.03 / Top↑
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