いまにバチ当たるぞ 「丑三つの村」(1/5)

この映画の題材になったのは怖ろしく、血なまぐさい事件。
日本犯罪史上、いや、世界の犯罪史上に残るような事件。
しかし、この事件について人は興味をひかれてしまうらしい。

それは野次馬根性とは別に、理解していたい。
理解できなければ、怖すぎる。
そんな気持ちもあると思う…。


「犬丸継男くん、ばんざーい!ばんざーい!ばんざーい!」
かつてのビートたけしがギャグで、両手を棒のように挙げて万歳を連呼する。
映画を見た人には、あっ!と思うシーン。
万歳の声に送り出されていくのは、ビートたけしとコンビを組んでいたビートきよしだから。


ばんざーい!
歓呼の声に送られて…、出生していく村の若者。
それをじっと見守るのは、犬丸継男という青年。
継男の目は群集の中、涙ぐむ母親を見る。

晴れがましい見送りの中、母親は涙ぐんでいた。
ばんざーいの声で、継男は列車を追いかけていく。
途中、継男は転ぶ。
その目は、遠ざかっていく汽車を見る。

村に帰る継男。
いつもの橋を渡り、山道に差し掛かると、数人の男の声がする。
ニワトリの悲鳴が聞こえる。

3人の男がニワトリを棒でこづき回し、殺した。
「なんだ、もういてもうたわ」。
さらに3人は、ニワトリを紐で結び、振り回しながら川に下りて水につける。

「煮て食うか焼いて食うか」。
「おばはん、盗まれた言うて大騒ぎしようぞ!」
「夜這いかけたらいちころや!」

どうも、3人のうちの1人は、ニワトリの持ち主から畑を取り上げられたらしい。
「こいつのどたま、どこぞにほうりこんだろかい!」
そう言う3人の前に、継男が現れる。

「よう、天才少年!たまには遊んでくれや」。
「一緒にトリのすき焼き食えへんか?」
「あかんあかん、こりゃあわしらと出来が違う」。

そして1人の忠明と言う男が継男に「帰ったらおばやんに言うとけ!今晩、表開けて寝て待っとれって。久しぶりに男の味思い出させたる言うって」と言った。
「腐って使いものにならんぜ。村の女、軒並みやから、たまにはおばんでもええかもしれんぞ」。
そこまで聞いた継男が「お前ら!おばやん、バカにしたら俺が黙ってへんぞ!」と怒鳴る。

石を投げ、「村から出て行け!このごくつぶしもんが」と怒る。
だが継男は、咳き込んでしまう。
継男は「こんにちは」「こんにちは」と挨拶しながら家に戻る。

小川にかかる小さな、柵も手すりも低いものがついている、だがただ板を通しただけのような石造りの橋を継男は渡る。
その先には、小さな同じような家が立ち並ぶ。
かやぶきの屋根。
ひさしはさびたような色のトタン。

傾いているように見える家もある。
継男は一軒の家に「ただいま」と入っていく。
入り口では、ニワトリが飼われている。

すすけた茶色い、ところどころ破けている障子が上半分に張られている戸を開けて継男は中に入る。
どこもかしこも茶色い、わらの色の風景。
夕方。
おばやんは裸電球をひねり、明かりをつける。

囲炉裏で継男は、祖母と飯を食べる。
木製の蓋の、鉄製の鍋。
鉄瓶が囲炉裏に、かかっている。
食べているのは、雑穀米だ。

祖母は妊娠したある母親から、言われたことを継男に話す。
「どうやったら継男ちゃんみたいな頭のええ子、どないしたら授かるもんかいの?なんちゅうて聞くもんやさかい、継男みたいな天才、百年にいっぺんしか生まれへんわ言うたら、残念そうな顔して納得して帰りよったわ」。
「おばやん、俺が兵隊行くとき泣けへんか?」

「お国のためや。立派に戦こうて来い言うて、笑うて見送ってやるわ」。
「そんならええ、安心した。勉強してくるわ」。
だが1人になった祖母は、「大声上げて泣くかもしれん。継男」とつぶやく。

隣の家の、赤木ミオコがやってくる。
ミオコは「二度と迷惑かけへんさかい」と、祖母に頭を下げた。
「親戚同士やないの」。
「あほ!親戚親戚って、村のもん、みんなどっかでちがつながっとんのと違うか?」

ミオコは、継男は教員になるために町の学校に通うのかと聞く。
祖母が継男が自分を置いて、町の学校に通うものかと言った。
「継男ちゃん、頭ええからきっと検定試験だって大丈夫よ」と言うミオコの声が、部屋にいる継男にも聞こえる。
「お世辞は良いから、金を返せ」と祖母が言う。

それを聞きながら、継男は咳き込み、額に手を当てる。
入ってきた祖母が、寝転んでいる継男にどうしたのか聞く。
風邪だと思うと、継男が言う。

藪医者に金を払うのが惜しいと言う継男だが、祖母は医者には絶対に行け、自分がついていってもいいと言った。
継男は本条医者に「軽い肺門しんじゅうにかかっとるなあ」と言われた。
無理をしなければ、三月ぐらいで治るだろうと医者は言う。

帰り道、継男は「浮かん顔しとるやないか、秀才!」と声をかけられる。
幼馴染の年上の哲夫だった。
哲夫は継男に、女性のヌード写真を見せる。

「ほしかったら、やるで」。
継男は一瞬、目を奪われるが、「ええわ」と言って視線をそらす。
だが哲夫は写真を継男の胸ポケットに入れて、借金の申込をする。
「恩に着る、このとおりや」。

しかたなく継男が出した財布を哲夫は取り上げて、中身を見る。
「わしらはな、ちゃんとお金を払ろうて、赤の他人と一晩枕を共にする。おまえら狭い土地にひしめきおうて、親戚みたいに血つながった連中とようやるな」。
「何の話や」。
継男の問いに哲夫は、「夜中に村の中歩いたらわかる。しまいにゃ、ばち当たるで!」と言う。

山の中で、継男はヌード写真を見ていた。
すると突然、幼馴染のやすよが顔を出す。
あわてて継男は写真を隠すが、やすよは無邪気に、何?見せて見せてと追いかける。
やすよは、継男とは従兄弟ぐらいに関係が近い幼馴染だった。

継男とやすよは、まるで、子供のようにじゃれあうが、倒れた時に継男がやすよを見つめる。
見詰め合った2人。
するとやすよが「継やん、嫌いや!」と、どぎまぎして起き上がる。
やすよは継男が教師の検定を受けることを知っていたが、継男は「なんぼ頭良くても、男はいざっちゅう時は鉄砲持って戦えなあかん」と言った。

次の日、継男は子供4人を連れて、山の中に行った。
山の中に座り込み、今日は何の話がいいか聞くと、一人の子供が肉弾三勇士と言う。
兵隊の話ばっかりと1人の子が言うと継男は、「男は兵隊になってお国のために戦うのが一番や」と言う。

その夜、継男は時計の鳴る音で目覚めた。
1時半だ。
窓を開けて外を見ると、奥深い山が見える。
珍しい、もやの立ち込める夜だ。

継男は咳き込む。
もやが流れてくる。
継男は、夜の散歩に出る。

戸口にまさかりが置いてある家を見ると、その家の妻のえり子が村の実力者、勇三と絡み合っていた。
「勇三さんか。夫婦もんでもあれへんのに」と継男がつぶやく。
継男が歩いていると、突然、懐中電灯で照らされる。

「誰や」と言う声がするが「なあんじゃ、継男か」と言う声が続く。
村の男たちだった。
忠明たち、あの3人が悪さをしないよう、見回っているのだった。
悪さの中には、夜這いも入る。

これは勇三の提案だと言う。
「勇三さんが夜這いの取り締まりか」と、継男は笑う。
男たちは、橋を渡っていく。
「ご苦労様です」。

翌日、継男は中山哲夫に会う。
すっきりしないと言うと哲夫は、女でも抱いたらすっきりするぞと言う。
その夜、継男は表に出た。

えり子の家の戸を開けて、中に入る。
「えり子さん、起きてはりますか。犬丸です継男です」。
えり子は足もあらわに横になっていた。

継男の気配に気づいてえり子は「誰!」と言った。
だが継男だとわかると甘い声で「継男ちゃん」と言う。
継男はえり子に、この前の夜のことを言った。
「こないだ見たんや。満州で兵隊さんが体張って戦っているときに…」。

するとえり子は、「うちのお父ちゃんも兵隊に行ってる」と言った。
「軍人の妻やったらなおのこと」。
そこまで聞いたえり子は「軍人!」と笑った。

「補充兵で馬の世話ばかりさせらてても、やっぱり軍人さんか」。
「名誉なことやないか」。
えり子は継男を見つめると、もらい風呂をして暑いと言って脱ぎだす。
胸があらわになる。

視線をそらした継男は、「夜這いは禁止らしいですわ」と言う。
「忠明みたいなよそもんだけや」。
そう言うと、継男にしなだれかかってくる。

硬直して立ち尽くす継男は逃げようとするが、えり子に「おばやんに今晩のこと言おうか?」と言われた。
動きが止まった継男は、えり子に押し倒される。
継男は、えり子に軽く翻弄されてしまう。

その翌日、ミオコが金の無心に来る。
応対に出た継男にミオコは流し目を送り「うちのおとうちゃん、しばらく家空けてるから夜、暇やったら遊びにおいで。…女1人の夜って長すぎるんよ」と言った。
その通りに継男はミオコの家に行き、関係を結んでしまう。

次の朝、山の中でやすよと待ち合わせしてあった継男は「顔色が悪い」と言われる。
「咳がひどいんよ」。
だが継男は、もうすぐ兵隊の検査で、甲種合格で名誉挽回と言った。

見下ろす村の風景に、忠明ら3人が奇声を上げながら入ってくる。
家の前に積んであるわらを川に叩き込み、忠明たちが奇声を上げて歩くのを継男とやすよの2人はじっと見つめる。
やすよが「あの人、殺されるかもわからん」と思いつめた表情で言う。
「忠明か?」

「勇三さんがうちに来て、そんな話、父ちゃんとしてた。今まで日暮谷が平和にやって来れたんは、よその人間を入りこませへんかったからやって」。
「村に必要のない人間は、この山に埋めたんかもしれん」。
やすよが村を凝視する。
継男も見る。

見下ろす村が、夕焼けで真っ赤に染まっていく。
子供が、小川のほとりの村の道を走っていく。
山の背景が真っ赤だった。

家の前では、焚き火が燃えている。
2人は黙ってその風景を、ずっと見ている。
どんどん、血の色に似てくる。

継男が口を開く。
「狭い村の中だけで、男も女も誰彼なく混じりおうて、子供作って、川に流して…。気味悪いなあ」。
それを聞いたやすよは言う。

「女は違う!」
きっぱりした口調に、継男がやすよを見る。
「違うと思う。ここの女は寂しがり屋や。寂しがり屋やったんや」。

やすよは、継男に組み紐を渡す。
何種類もの色が組み合わさった、綺麗な組み紐だった。
「綺麗やなあ。自分で作ったんか」。
「あげる。継やんに」。

やすよは継男に背を向ける。
「女のほうから打ち明けるやなんて、昔の人もひどいこと考えはったもんやね」。
継男は紐を握り締め、「大切にする」と言った。

「昔は兄弟とか親子でも結婚したそうやけど…、気持ちだけ受け取って」。
継男とやすおは、血縁が近いため、一緒にはなれないらしい。
「やすよ、ありがとう!」

翌日、兵隊の検査だった。
継男はグラウンドを走らされ、その後に軍医による検査が行われた。
だが軍医の前で、継男はいつまでも息を切らせていた。

軍医は継男に「この申告書は自分で書いたのか」と聞き、継男の診断に「肺結核」と書き込んだ。
衝撃を受けた継男は「もう一度お願いします」と言うが、「帝国陸軍の軍医を信用しないのか」と一喝される。
「そんな体で、帝国陸軍の兵隊が勤まると思うのか!しっかり養生せい!」

「肺ですか?」
「結核じゃ!次!」
継男は立ち尽くす。

会場の入り口で、継男は座り込み、子供のように泣きじゃくった。
泥が涙にこびりつき、目の周りを黒く彩った。
その顔のまま、継男は戻ってきた。

いつものように「こんにちは」と挨拶したが、村人は継男を避けていく。
こちらに出てこようとした男が継男を見て、引っ込む。
「おばちゃん」と声をかけるが、その女性も継男を見てあわてて家に引っ込む。
祖母を心配した継男は外に出ると、女性が2人、影から見ている。

「おばやん、知りませんか」。
「知らん!」
「守、帰ってきましたか?」
女性は答えず、すっと家の中に入ってしまう。

その夜、継男は咳き込んだ。
祖母は卵を持ってきた。
しかし、継男は「こんなもんで治るならとっくに治ってる」と言うと、卵を弾き飛ばす。
卵が2つ割れ、「何するんや!おばやんの気持ちわからんのか!」と祖母が言う。

我に返った継男は、「おばやん、ごめん」と言う。
机の上に卵が5つ並べられる。
ひとつを割って、丸呑みする。

「もうひとつ、どうや」
手渡されて、継男は卵をもうひとつ、飲む。
そして、父親の死因を聞く。

「おかあちゃんは?」
「2人とも病気や。けど、胸の病やない」と祖母は答える。
「ほんまか。肺病は遺伝する言うて。この体の血、全部入れ替えんと病気治らんわな」。
「うまいもの食って、ゆっくりしとったらじき治る」。

「最初、本条さんもそういっとった。嘘はいかん。本条さんもおばやんも」。
そう言って、継男は次々卵を飲んだ。
顔をしかめながら、次々飲む。
祖母は顔をくしゃくしゃにして、それを見ていた。

翌日、継男は、山でやすよと会った。
会う場所は、いつもここだった。
やすよは継男の手を取り、歩いた。

座ると、やすよは顔を伏せ、「ごめん、おとうちゃんらがうるさいんよ」と言う。
「俺は兵隊になりたかった。先生なんかより、ずっとなりたかったんや。鉄砲持って男らしい、お国のために戦いたかった。もうええ、かえったかてかまわへん。誰も相手にしてくれへん。聞いてくれる人、ほしかっただけやから」。
「ううん。聞いてあげられへんかもわからん。前にあげた紐、捨てといて」。

「来月結婚するんや」。
やすよはそう言うと悲しそうに「継やん、うちは病気がどうやからいうて、よその人のところ、いくのと違う。それだけ今日は、言いに来たんや」と言った。
「どないしたらええん。戦争にもいけん。お前とも別れんならん」。
「いつまでもしょぼくれとらんと、男らしゅう元気出して!前の継やん、うち…、大好きやったよ!」

やすよは走って行ってしまう。
残された継男は、情けない顔をして残る。
継男は山にいる犬に向かって、四つんばいになって吠え掛かる。
犬は継男に吠え掛かる。

そんなことをしていた継男が咳き込んでいると、見かけた和子が飛んでくる。
手ぬぐいを差し出すので、継男は「汚い血で汚れてしまうぞ」と言う。
だが和子は「洗ろうたらしまいや!」と言った。

咳き込む継男の「背中さすったげようか?」と言い、「かまへん。遠慮せんかてええのに」と言ってさする。
親切にされた継男は、手ぬぐいに和子の良い匂いが残っていると言う。
「いややわあ、継やん」。

和子はそう言って、逃げていく。
その後姿に、継男はあたたかいものを感じた。
傍らの犬に継男は「地獄に仏や。なあ?」と話しかけた。
スポンサーサイト

コメントの投稿

Secret

プロフィール

ちゃーすけ

Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブロとも一覧

本も映画も文具も、いいものはいい!

LEVEL1 FX-BLOG
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード