殺されるかもしれん 「丑三つの村」(2/5)

犬が橋に、つながれている。
継男は犬を置いて、ミオコの所にいた。
だが情事の際、ミオコは継男の唇を徹底して拒む。

その不自然さに「何でや!」と継男が叫ぶ。
「来週なったら、おとうちゃん帰って来るんよ」。
「関係ないやろ!」

するとミオコは継男をにらみ、「…もともと、嫌いなんよ」と言った。
嫌いだが、借金のために継男と関係を持ったと言いたいのだった。
継男は「もう二度と来ん!」と言って、立ち上がった。
犬を連れて帰っていく。

いつか、やすよと会った草原で犬がほえる。
その先では、男女が嬌声をあげている。
腹が立った継男は「何やってるんじゃ!昼間っから!」と言って向かっていく。
その男女は、哲夫と和子だった。

継男に気づいた和子は視線を落とすと、走っていく。
だが継男は和子を捕まえると、「痛いなあ!放してえな!」という和子を引っ張っていく。
「手ぬぐい返しに行ったら、何でいつも居留守ばっかり使うんや!」
すると和子は「返してほしゅうないわ、あんな手ぬぐい!」と言い返した。

「ちゃんと自分で綺麗に洗濯したぞ」
和子は、クスッと笑った。
「何がおかしい?」
「言うてもええんか?」

「おう、聞かせてもらおうやないか」。
和子が息をこめて継男に言葉を吐き出そうとした瞬間、哲夫が和子の手をぐいと引き、間に入った。
「やめとけ!」

和子が口を引き結ぶと、哲夫は和子のあごに手をやって「帰れ?」と言う。
動かない和子に向かって、「帰れっていうんだよ!」と村のほうを指差す。
和子は走っていってしまう。

「なんな、あんな女ぁ!」と言う継男を、哲夫は引き止める。
「哲夫さん、横取りする気か?」
「わからんガキやなあ。あんな女、やめとき言うとるやん!」

継男は草むらに転がった。
「あいつ、俺に惚れ取るんや。血ぃ吐いて苦しんでる時、手ぬぐいを」。
「聞いた。けど、惚れてなんかおらへん。お前の病気のこと、知らんかっただけや。あの女、お前のこと、どないいうたか、もっと言うたろうか?」
だが継男は「自分で確かめる!おばやんと、あいつだけなんや。俺、相手にしてくれるの」
と言って、起き上がる。

夜、継男は咳き込んで目を覚ます。
汗をかいている。
継男は外に出て、「えり子!えり子!」と、えり子の家の戸を叩く。

えり子が顔を出し、「うちの帰ってんのよ」とこっそりと言う。
「出直すわ」。
しかし、えり子は「もう来んといて!」と冷たく言った。

その口調に継男が「なんちゅう言い草や!」と怒る。
「静かにしてよ!」
言い争いに気づいたえり子の夫が、「何や継男か。そんなとこで話しとらんと、あがったらええ」と言う。
途端に継男は愛想良く笑い、「帰りますわ。悪いから」と引き上げる。

歩いていた継男は、懐に入れていた手ぬぐいを出し、和子の家に忍び込む。
和子が寝ていた布団をはぐと、太ももがあらわになっている。
継男が手を伸ばす。

隣に忍び込み、「和子、ほんまは好きなんやろ?」と言った。
「誰?」
「俺」。
「俺ではわからん!」

明かりがつく。
「おばちゃん!」と継男が叫ぶ。
和子だと思った相手は、和子の母親の常代だった。

「継男やないか!」
気まずそうに継男は「夜這いに来たんや」と言うしかなかった。
「夜這い?!何をねぼけたこと言うてんのや」。

「俺、前からおばちゃんのこと」。
もう、そう言うしかなかった。
だが継男が肩にに伸ばした手を振り払うと、常代は「あほらしい!あんたなんかな、石垣の穴にでもつっこんでしとったらええのや」と言った。
「何い?!」

「毎日ぶらぶらしてて、何が夜這いや!夜這いしたかったらな、ちゃあんと働いて一人前の男のやることしてから、出直しておいで!兵隊にも行けん半端もののくせして!」
常代の言葉に継男は怒る。
「何抜かしやがる!」

この騒動に、和子が目をこすりながら起き出してきて、戸を開けた。
だが和子は継男を見て、目を伏せる。
継男もまた、和子から顔を背ける。
しかし今度はすがるような目をして「和子。何とか言うてくれや」と言う。

だが、和子は口と鼻を手で覆った。
まるで、ばい菌に感染しまいとするようだった。
ハッとした継男は立ち上がる。

戸を閉めようとした和子を捕まえると、和子は悲鳴を上げる。
押し倒された和子は枕もとの着物を取ると、必死に口と鼻を覆う。
それを見た継男はますます逆上し、和子を押さえつけようとする。

常代が止めに入るが、継男に突き飛ばされた。
すると常代は「殺されるー!誰か来てー!」と、大声を出した。
継男は着物を母親に叩きつけて、逃げた。

外に歩いて行った継男は、男たち6人が手に手に棒を持って集まっているのを見る。
物陰に潜み、見ていると男たちは集まり、1人が一箇所を指差した。
その先を、みんなが見ている。
6人の男たちは合図で散る。

山の中では、忠明が村人たちに棒で叩きのめされ、こづかれていた。
忠明は血まみれになり、転がりながら這い回った。
輪の中心に、勇三がいた。
勇三を、忠明がにらむ。

そして忠明は、息絶えた。
勇三は酒を渡されると、飲んだ。
次々と男たちが、酒を回し飲みする。
ゆがんだ笑いで、忠明を見下ろす。

翌朝、山の中で忠明は吊られた死体で発見された。
勇三たちも、死体を見上げている。
駐在が来ていた。
忠明は自殺と報告されていた。

駐在に向かって、継男が走ってくる。
そして「駐在さん、あれ、自殺やない。俺、見たんや」と言った。
「見たって何を?」
継男を、勇三が凝視している。

その視線に気づいた継男が、黙り込む。
「どないした継男?」と駐在に聞かれるが、もう答えられない。
継男に代わって、勇三が「ははは、赤松さん、継男の奴、勉強のし過ぎでこの頃、わけのわからんことを口走るゆうて、村でも有名なんや」と答えた。
そして、「後はわしらのほうで、詳しゅう聞いておくから。わかり次第、報告にあがりますわ」と言った。

駐在は「そうか。ははは、継男、あまりびっくりさすなよ」と笑った。
勇三は「ははは」と笑い、「天才とキチガイは紙一重言うて、わしら凡人には、よ~うわかりまへんわ」と妙に伸ばした言葉でそう言うと、笑った。
「ははは」と、村の男たちも笑った。

へへへへ。
うわははは。
あははーは。

だがその目は凶暴な光を放って、継男を見ていた。
誰も目が、笑っていない。
継男は、悲鳴を上げて逃げていく。

その後姿に駐在が「継男、たまには気晴らしせんとあかんぞ」と声をかけた。
みんなが笑っていた。
だが、勇三だけはもう笑っていなかった。

継男の耳を耳掻きしながら、祖母が言う。
「みんなが右言うたら右、左言うたら左。それでなんもかも、うまいこといく」。
「俺も殺されるかもしれん」。
「そんなあほな」。

「忠明の次は俺や。用ない人間は山に埋められる」。
「そんなしょうもないこと、考えとらんと」。
「おばやん、土ん中って冷たいやろな」。
祖母は黙っていた。

継男は翌日、町の鉄砲店に行く。
銃を構えてみる。
継男は、銃を買った。

山の中で、犬が鳴いている。
継男は山で「竹中常代」と書いた等身大のわら人形に、銃を発砲した。
外れて弾丸は、木をかすめる。

撃鉄を起こし、継男はもう一発撃った。
やはり当たらず、木に弾丸はめり込んだ。
もう一発。
当たらない。

チッと舌打ちをして、継男は人形に近づく。
もう一発、竹中常代の人形に向かって発砲する。
今度は命中した。
人形の胴体が吹き飛ぶ。

継男が笑った。
これで、距離感がつかめた。
もう一発、撃ってみる。
人形は吹き飛んで、わらしか残らなかった。
スポンサーサイト

コメントの投稿

Secret

プロフィール

ちゃーすけ

Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブロとも一覧

本も映画も文具も、いいものはいい!

LEVEL1 FX-BLOG
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード