その夜、寝静まった村。
継男は「犬丸継男の戦場」と書いた地図を広げる。
竹中常代、和子と書いた家の上に黒い火薬を落とす。

同じように火薬を落としたのは本多四郎、えり子と書かれた家。
次に葉村史明。
嫁に行ったやすよを、追い出した家だ。
小堀八一(やいち)。

赤木中次、ミオコ
その隣の外村ことみ、栄子。
下に下りて、小堀の家の隣の司嘉子、太一。
また下に下りて、赤木勇三。

マッチで火をつけ、次々、落とした火薬に近づける。
ボッと音を立てて、火薬は燃え、家を表した四角の真ん中に黒く穴が開く。
継男はそれを、じっと見つめる。

小堀と書かれた家が燃える。
赤木。
「継男、はよ寝えよ」と、祖母の声がする。
継男は懐中電灯で寝ている祖母を照らし、「おばやん、おばやん、1人残さんからな」と言った。

翌日、和子の縁談がまとまったと、嘉子が継男の祖母に話していた。
和子の出した条件が厳しかったらしいが、まとまったのだ。
厳しかったが、「だがやすよのように、あんなに簡単に別れられたら困る」と嘉子は言った。

祖母が、やすよが別れたのを聞いて驚いた。
なぜ、と祖母が聞く。
「実はなあ…」と、嘉子が声を潜める。

次の瞬間、おばやんがすごい剣幕で「次男と話しすんのが、いかんちゅうのか!」と叫んだ。
「いや、私が言うたんのと違うて」。
あわてて嘉子が出て行くと、おばやんは塩をぶちまけた。
泣きながら、塩をぶちまけた。

継男が笑いながら、嘉子の家のヤギの乳を絞り、地面に吸わせているた。
嘉子が飛んできて、何をするんだと怒る。
「聞きたいことがあんのや」。
背の高い継男に立ちはだかれ、嘉子が後ずさりする。

「和子、結婚するってほんまか」。
「する、する。おめでたいこっちゃやがな」。
「ほんに、めでたいな」
「そうか、あんた和子ちゃんのこと、好きやったんか。あかんあかん。ようよう、まとまったんや。ぶちこわしにせんといてや」。

「誰がそんなことする!」
「あんたみたいに、そないに暇持て余しとったら、いらんこと考え出すもんやさかいな!」
「ほんなら俺かて言わせてもらうえけどな、あんたのやってることなんや!」

嘉子が村の若い者を見つけてきては、くっつけることを継男は責めた。
「ええかげんにしとけよ。今にどんどん血ぃ濃うなって、しまいにバチ当たるわ!」
それは以前も、言った言葉であった。

「今のご時世、考えたことあんのか!」と継男が言う。
すると嘉子が言う。
「生めよ育てよ、や!自分が戦地行って戦えんもんやさかい、このくそ田舎で鉄砲振り回して、憂さ晴らししてるだけやないか!どっちが国のためや、よう考えてみい!」
その言葉に、継男は嘉子に飛び掛った。

家から息子の太一がが出てきて、止めた。
「うちのおかあちゃんに何すんのや」。
継男は「おぼえとれよ!」と怒鳴って、走っていく。
後姿に「ごくつぶしぃ!」と嘉子は怒鳴る。

ミオコが、家の前で栗を並べている。
ふと視線を感じて顔を上げると、継男が立っている。
ミオコの顔が不安に曇り、家の前で遊んでいる子供を追い立てて家の中に入れる。
継男は背中に担いだ鉄砲を下ろし、ミオコの家を見つめる。

その後、継男はミオコの家に入ると、「勝手知ったる他人の我が家か」と言う声がして中次が立っていた。
「中次さん」。
「わしが聞いたる」。
そう言われた継男が「また来ます」と言って出て行こうとしたが、中次は継男を捕まえ、「ミオコーッ!出て来い!」と叫ぶ。

「これ、誰やか知ってるか!」
聞かれたミオコは、視線を落としながら「犬丸の継男さん」と答えた。
「こいつに何されたか、言うてみい!」と言って中次は継男の髪をつかみ、ミオコの方に継男の顔を向かせる。
ミオコが顔を背ける。

継男が「ミオコ、お前!」と叫ぶ。
「お前は呼び捨てにせんでええわい!」
中次が髪を引っ張り、継男を引きずりまわす。

継男が中次の手を振り払うと、「俺のほうが誘われたんや!」と叫ぶ。
「おばやんの貸した金の利子や、言うて!」
だが中次は「誰が信用するかい!病気持ちのくせからして、もう2度と来るな!病気が移るわ!」と叫んだ。

「何やと、病気が移るやと。もう一遍言うてみい!」
「ああ、何べんでも言うてやる。人の嫁はんに夜這いかけるしか脳がない奴や、言うとるんじゃ!」
「昼間も来たことある!」
「何やってえ、このがきゃあ!」

継男が銃を構えると、中次が怯む。
「ぶち殺してほしいんか!」
「ぐあー!」と中次が叫び、「できそこないに何ができるんじゃ!」と言うと、銃身をつかんだ。
ミオコが止めに入るが、突き飛ばされ、表に走り出る。

銃を奪われ、馬乗りにされ、継男は中次に殴られた。
首を絞められたところ、ミオコが祖母をつれてくる。
「やめてくれ」と祖母が泣き、中次が離れる。
「継男」と言って泣く祖母の顔を、継男が見る。

その日、継男は「おばやん、昼飯、俺が作ったろうか?」と寝ている祖母に言った。
「俺の病気、移ったんやないやろか?」
「あほ!おばやん、もうお迎えが来てもおかしない年や、体もそこらじゅガタが来とる」と祖母は言った。

そしてまじめな顔をして、「継男。おばやんが死んだら、好きなことしてもええ。けど生きているうちは、悲しませんでくれよな」と言った。
「ああ、わかっとる」。
継男は家を出ると、納屋で農薬のビンを取り出す。

祖母を揺り起こし、継男は「薬を飲め」と言う。
「何や、けったいな色やな」。
紙の上の、ピンク色の粉を見て、祖母が言った。
「はよう飲み」と、継男は湯飲みを差し出す。

「はよ飲め。おばやん」。
だが祖母は「「何飲ます気や」と言って、逃げた。
「おばやん、わかってくれや」。
継男は泣き顔になる。

暗くなっても、祖母は戻ってこなかった。
部屋で継男は膝を抱えているが、暗くなった表に祖母んを探しに行く。
歩いていくと、風呂に入っている人影が見える。
やすよだった。

風呂で、やすよが湯をかけている。
継男はとっさに、後ろからはがいじめにする。
驚くやすよの、口をふさぐ。
「行くところがないんや。ここにおらせてくれ、な、やすよ!」

「継やん」。
「うち、知っとる。史明と別れたんやろ。おれが貰うたる。俺の子供生め。村一番の子供や!」
「天才と別嬪さんのガキや!」
「俺の血や!立派な…肺病病みの子や!」

そう言った途端に、継男は喀血する。
継男は呆然とした。
そして風呂に入った血をすくい、自分で自分にかけた。
すると、やすよが同じように湯をすくい、自分にかけた。

継男が、湯を自分にかける。
するとまた、やすよがかける。
やすよを見つめた、継男が自分に湯をかける。
また、やすよも自分にその湯をかける。

そして、継男に向かって微笑んだ。
「悪かった」。
継男はそう言うと、走って出て行く。

びしょぬれの継男は、「殺せるもんなら、殺してみゃがれ」と叫ぶ。
犬が鳴く。
翌朝、駐在さんが2人の刑事をつれてやってくる。
駐在が、「おばやん、赤松や!」と名乗る。

祖母は継男が毒を飲ませようとしたと言って、中次の所に駆け込んだのだ。
そのことを、駐在と刑事が聞きに来たのだ。
だが祖母は「中次がどない訴えおったか知らんが、継男がわしに毒飲ませなんざ、ありゃせん、間違いないやな」と、とぼける。

しかし、継男は、山で鉄砲売ってることもとがめられた。
中次のところで鉄砲を振り回したことを言われ、家捜しをされた。
そして刑事に、押入れの屋根裏に隠しておいた鉄砲を没収された。

継男は、山で鳥を撃つのが、健康にも良いと言った。
祖母が継男を見る。
だが刑事は「ここらの山で鳥相手にするには、えろうぎょうさん集めてくれたもんやのう」と疑いの目を向けた。

継男は「事変で値上がりすると聞いたから」と答えた。
匕首も来年になったら、山の仕事に出ようと思っているからと言う。
狩猟許可書を見せるよう言われ、全て取り上げられた。

翌日、和子が嫁入りしていく。
行列には、常代が付き添っている。
継男は離れたところから、花嫁行列をじっと見ている。
哲夫が声をかける。

「まだ未練たっぷりと言う顔をしている」と言われた。
「玉の輿らしい、俺のような前途有望な青年を捨てるんだから」と哲夫は笑う。
継男は哲夫と、電車に乗って町へ行った。

ところで哲夫は何の商売をしているのかと聞くと、人に言えるような商売じゃないと言う。
だが、それも年貢の納め時だと言う。
どこに行くのかと聞くと、間もなく入隊するのだと答えた。

「兵隊か。うらやましい」。
継男の言葉に哲夫は、「行きとおても、行けん奴。行きとのうても行かんならん奴。…うまいこと言うな」と自嘲する。
「行けるところがある人は、ええわ」と継男が言う。
哲夫は、継男の顔をじっと見る。

継男は大きな銃砲店へ入る。
「五連発以上の奴はないの?」と聞く。
次に継男は、日本刀を買った。

家で日本刀を抜き、刀身を見る。
匕首2本。
仕入れた武器を、次々並べる。

継男は、哲夫にヌード写真を渡されて見ていた草原にいた。
「座ってもええ?すぐ帰るから」と声がして、やすよが継男の横に座る。
「見かけたから」。

「村のみんな、継やんがそのうち何かしでかすぅ、言うてるの知ってる?…嘘やろ?」
「嘘や」と、継男は答える。
「聞いておきたかったんや。最後にそれだけ」。
継男が咳き込む。

「またお嫁入り」。
「おめでとう」。
継男の言葉に、やすよが寂しそうにうなづく。

「うち、寂しがり屋やからあかん」。
継男は、やすよを押し倒す。
「女だけ違う。寂しいんやで、男かて」。
そう言うと、継男はやすよを抱きしめる。

「好きなようにして」と、やすよが継男を見つめて言う。
「かめへんよ。こんなもん、減りゃせんもん」。
継男は、やすよを抱きしめる。


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2014.02.09 / Top↑
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