こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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愛の殺意 「太陽にほえろ」

「愛の殺意」。
「太陽にほえろ」、ジーパン刑事編で、小野寺昭さんが演じる島刑事こと殿下の主役編でした。
殿下が道を歩いていたとき、向こうから来た女性とすれ違いざま、接触してしまった。
女性が紙袋に一杯に持っていた夏みかんが落ち、階段を転がり落ちていった。

殿下は夏みかんを拾い、女性に渡したが紙袋が切れてしまっていた。
自分の責任だと言って、殿下は夏みかんを両手一杯に抱きしめながら女性を送ると言った。
紀子と言う女性は笑いながら殿下に夏みかんを持ってもらい、自分のマンションまでついてきてもらった。
笑顔の魅力的な、明るい女性だった。

殿下が紀子の部屋に着き、夏みかんを下ろそうとすると、夏みかんが両手からこぼれ落ちた。
こぼれ落ちた玄関には、赤いエナメルのハイヒールがあった。
その時、殿下は水の流れる音に気づいた。
紀子は鍵を開けて入ったから、中には誰もいないはずだった。

殿下が「水の音がしますね」と言うと、紀子は「あら?」と言って風呂場に向かった。
風呂場からは確かに、水道から浴槽に水が流れていた。
紀子が水を止めて、浴槽を見下ろす。
浴槽の中には、若い女性が浮かんでいる。

紀子は何にもいなかったかのように、平然とタオルを水に浸して絞り、殿下に「どうぞ」と手渡した。
そして「洗濯して出しっぱなしにしてたみたい」と明るく笑った。
紀子の素敵な笑顔に殿下も笑顔になり、外に出た。

その夜、雨がひどく降った。
雨の中、一台の車が止まり、なかからぬれないようにレインコートを着て、手袋をした紀子が降りてきた。
トランクを開け、浴槽に沈んでいた女性の遺体を出す。

赤い靴をはいている女性の足を引っ張り、紀子は遺体を捨てる。
「赤い靴ー、はいてたー女の子ー。異ー人さんにつーれられてー、いーっちゃったー」
遺体を捨てながら、紀子は歌っていた。

紀子はその足で車を運転し、兄の経営している経理事務所に向かう。
今日、来るはずの兄の婚約者が来なかった。
紀子も会社を早退して待っていたのだが…。

すると紀子が「来ないわよ、もう」と言う。
そしてバスルームに向かうと、傍らの浴槽に先ほど捨てた女性の髪の束を流した。
紀子は鏡を見て、にっこりと笑う。

翌日、遺体が発見される。
遺体は二部に上場もされている社の、社長の娘だった。
社長の娘と交際していたのは、紀子の兄だった。

兄の設計事務所に、山さんとジーパンが向かう。
ジーパンがバスルームで、髪の毛を発見する。
兄は任意同行を求められ、七曲署に向かった。

妹の会社には、殿下とゴリさんが行った。
殿下は被疑者の妹が紀子だと知って驚く。
紀子もまた、殿下が刑事だと知って驚く。
兄が被疑者と知った紀子は、兄が人殺しなどするわけがない、兄がかわいそうだと叫んで泣いた。

髪の毛が被害者のものだとわかり、紀子の兄は取調べを受けることになった。
彼は上昇志向が強く、常日頃から必ず金持ちになる、成功してみせると言っていた。
被害者の財産と地位が目当てで近づいたものの、結婚に至らなかったため、殺したのではないか?

だが兄は、最初こそ彼女の財産目当てだったが、本当に好きになってしまったのだと言った。
彼女にも正直に打ち明けた。
結果、彼女は結婚に反対する家を出て、彼の元に来ることになっていたのだ。
それが昨日だった。

だが兄の供述は、信用されなかった。
彼は事務所から出なかったというが、紀子が電話をしたとき、兄が出なかった、だから事務所に来たのだと証言したからだ。
紀子は兄が釈放されるまで七曲署を離れないと言って、ずっと残っていた。

夜の9時を回っても、紀子は帰らない。
ボスの藤堂が、紀子の家族構成を聞く。
両親は自分たちが小さい頃、なくなったと紀子は言った。
他の兄弟も、同じく小さい頃なくなっていた。

家族の中で、残っているのは紀子と兄だけだった。
その理由を紀子は、一家心中の生き残りだからと語った。
2人の境遇に、愕然とする殿下。

紀子を送っていった殿下は、家が近いので何かあったらと自分の名刺を渡す。
次の日も、紀子はやってきた。
取調べが終わらないうちは、面会はできない。
だが殿下はボスに、何とかして会わせてやってくれと懇願する。

普通の兄妹ではないのだから。
一家心中の中、残った兄妹なのだから。
殿下の頼みは聞き入れられ、ボスや殿下のいる事務所で紀子と兄は面会した。

紀子は兄に、自分の作った差し入れを持ってきた。
兄は紀子の料理を喜んで食べるが、紀子はもしも兄が刑務所に入っても自分はこうしてお昼を持ってくると言った。
「もうお兄ちゃんに会いに来るのは、私しかいないんだから」。
その言葉に、兄がハッとする。

紀子を殿下が送っていっている間、兄が殺人を自供した。
無線を聞いた殿下も紀子も、言葉が出ない。
紀子を送り届けた殿下だが、紀子の後姿にかける言葉もない。

そっと帰ろうとした殿下は、紀子の脱いだ靴に目を留める。
あの日、玄関に赤いハイヒールがあった…。
一方、山さんも供述に不自然なものを感じていた。

帰ってきた殿下が山さんに、被害者の靴を聞くと、赤いハイヒールだと言われる。
殿下が帰るのを見て、紀子の家の前に止まっていた車から、男が降りてくる。
男は紀子の家を訪ねると、自分が見たことを話し出した。

あの夜、男のような格好をしていたが、あれは紀子だった。
紀子は遺体を運んでいた。
男は紀子に一目惚れをした向かいのアパートの住人で、紀子をいつもオペラグラスで見ていたのだ。
紀子の顔色が変わる。

翌日、物思いにふける殿下を、事務の久美がからかう。
久美は紀子を「綺麗な人だったもんね」と言うが、「あの人、ちょっと変よね」とも言う。
その時、紀子から殿下に電話が来る。
殿下は1人でいたくないと言う紀子を連れて、ドライブに行くことになった。

紀子はドライブインに寄ってほしいと言い、ドライブインに入ると殿下を残して席を立つ。
化粧室に向かう途中の席に、あの男がいた。
男は紀子に、約束が違うと言った。
1人で来るはずなのに、男が一緒だと。

紀子は、あの男は刑事だと言う。
だが、かまわない。
どうせ、仕事にかこつけて、自分を口説いているのだから。
男に紀子は、自分を連れ出してくれと言う。

殿下の待つ席に戻った紀子は、嫌な男に会ってしまったと話す。
先ほどの男は自分を待ち伏せしては、いやらしいことを言うのだと。
前からそうだったが、兄が逮捕されてからはひどくなった。
きっと、人殺しの妹など何をしても良いと思っているのだろうと紀子は言った。

殿下と紀子は、ドライブインを出た。
会計をして外に出た殿下は、紀子が男の車にいるのを見た。
走り出した車から身を乗り出して紀子は、「助けて!」と叫んだ。

殿下が追ってくる。
男は車の中、なぜあんなことを言うのかと紀子に言うが、紀子は「おもしろいじゃない!追ってくるわよ!」と楽しそうに言った。
そして火がついたように笑った。

七曲署では、おかしいと思った山さんが捜査をして、兄の婚約者がケーキを買ったことを突き止めていた。
つまり、兄の恋人はちゃんと経理事務所に行ったのだ。
このケーキは、経理事務所のゴミバケツから見つかったのだ。
つまり、兄以外の人間が婚約者と会っている…。

紀子だろう。
だが紀子は車の免許は持っていないはずだった。
しかし、運転ができないわけじゃない。
教習所で知らない男に車を教えてもらうのは嫌だと言った紀子は、兄に運転を教えてもらっていた。

問い詰められた兄は、紀子の犯行に気づいて罪をかぶろうとしたことを白状した。
兄が刑務所に入ってしまえば、もう誰も兄に近づけない。
紀子の兄に対する、異常な独占欲。

おかしいと言うジーパンに兄は、自分たち、残された兄妹の何がわかる!と言った。
兄は家族の遺体が運ばれていくのを妹と見ながら、誓ったのだ。
今にきっと、金持ちになる。
紀子にも贅沢をさせてやる、と。

山道を走ると紀子は男に、横道に入るように指示した。
殿下は、紀子たちの車を見失う。
横道に紀子たちの車は、潜んでいた。

「あんたも大した女だぜ」と男が言うと、紀子はこの先にもっとおもしろいところがあるといって、降りた。
男を歩かせ、紀子は背後を歩いた。
バッグからそっと、スパナを取り出す。
背後からいきなり、紀子は男を殴った。

男が頭を抱えてうずくまったが、紀子は何度も何度もスパナを振り下ろした。
背中も、肩も打った。
打ちながら「きゃああああーっ!」と絶叫する。

車を降りて辺りを見回していた殿下の耳にも、紀子の絶叫は届いた。
殿下が声の方向に走ってくる。
呆然とスパナを持って、立っている紀子を見つけると駆け寄る。

紀子は男が襲ってきたので、車の中にあったスパナで反撃したと言う。
殿下は男が死んでいることを告げた。
「本当ですか?」
殿下の言葉に紀子は、「本当よ」と言った。

ではなぜ、男は背後からばかり打たれているのか。
前に傷は一切、ない。
殿下の言葉に、紀子が動きを止める。

殿下が見つめると、紀子は「動いたわ」と言う。
「死んでないわ、その人」。
「えっ」。

殿下が振り向いた途端、紀子は殿下に向かってスパナを振り下ろした。
背後から打撃を受け、殿下は転がった。
紀子は容赦なく、殿下を打ち付ける。

転がって交わした殿下の、背中と言わず、紀子はスパナで打とうと襲い掛かってくる。
「やめるんだ、紀子さん!」
殿下が拳銃を構える。
だが撃てない。

すると虫取り網を持って、子供が2人やってきた。
目の前の異様な光景に子供は一瞬、立ち止まる。
紀子も手を止める。
子供が逃げた。

紀子が追いかけていく。
1人の子供に追いつき、紀子がスパナを振り上げた。
殿下は朦朧とする意識の中、拳銃を構える。

紀子にむける。
「やめるんだ!」と叫ぶ。
だが紀子はスパナを振り下ろそうとした。

殿下の拳銃が火を吹く。
銃声が響き、紀子がみぞおちを押さえる。
哀しそうな顔をして、紀子は倒れた。

殿下は七曲署に、電話をする。
妹のほうでした…と言うと、殿下は意識を失った。
翌日、頭に包帯を巻いた殿下が七曲署の屋上にいる。

ボスがやってきて、紀子の死を告げた。
死んだほうが幸せだった。
ボスの言葉に殿下は、「そんなことありません!」と言った。


紀子は、酒井和歌子さんです。
かわいい。
とっても感じの良い笑顔で、この人に好感を抱かない人はいないだろうという笑顔。
その笑顔のまま、部屋に上がって、風呂場を見下ろして遺体が浮いていたときの衝撃。

あっ、この人おかしい!と思いました。
さらにその水でタオルを絞って…、殿下に渡す。
いやあああ!
殿下、そのタオルを絞った水は…。

玄関にある赤いハイヒール。
そのハイヒールを履かせた遺体を、紀子が捨てる。
雨が降っていて、引きずられる女優さんも大変だなあと思う。

この時、「赤い靴、はいてた…」と歌う紀子。
ボソッとした歌声。
怖い。

紀子の狂気は、男と車に乗っていた時に爆発。
男に脅迫され、殺すなと思ったらこういう方法を取るわけですね。
単純だけど、なかなか狡猾。

まるで人が変わったかのように、「逃げて!」と言って笑う。
「追ってくるわよ!」と言って、ケタケタ笑い出す。
私ならこの時点で、降りてもらう…。
でもいい気になった男は、まんまとひっかかり、紀子に殺されてしまう。

紀子の犯行は、兄に対する独占欲から来たものだった。
他人にはわからないと兄は言う。
でももしかしたら、家族の遺体を見た時から、紀子の狂気は始まっていたのかもしれない。
この前にも紀子は発覚しないだけで、何かやっていたのではないかと思う。

紀子に打たれても、発砲しようとしない殿下の優しさ。
殿下に指摘された時の、紀子の表情が絶品。
哀しいような、怒ったような、魂が抜けたような。

しかし殿下、拳銃取られたらどうするんですかー!と思ってしまった。
だけど子供にも容赦なくスパナを振り上げるのを見て、さすがの殿下も撃たざるを得ない。
そうでなかったらあのまま、殺されてしまったかもしれない。
携帯がないもんですから、ふもとまで降りてきて公衆電話で七曲署に電話。

生きていても死刑になるかもしれないし、兄とはもう一緒には暮らせない。
殿下を慰めるためにも、ボスは死んだほうが良かったと言う。
でも殿下は、ボスの気持ちがわかってもうなづけない。

一家心中で生き残った紀子は、幸せになるべきだった。
でも死んだほうが良かった、そんなことは言えない。
笑顔が素敵だった、異常ではあったが生きていたほうが良かったに決まっている。

そうではなくては、救われない。
あのときに一緒に死んだほうが良かったなんてことも、絶対にない。
紀子の笑顔を知っている殿下は、そう言うしかない。
怖くて、哀しい話。

しかし、紀子はなんだってあんなにたくさんの夏みかんを買ったんだろう。
紀子を送っていった殿下を見た、管理人のチラッとした好奇心と非難の視線もなかなか芸が細かい。
兄は村井国男さんでした。


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Comment

落差の描写
編集
このエピソードは印象深かったです。

酒井和歌子さんのベストワークではないかと思います。
サイコスリラーが流行るのはもう少し先のことですから、よくぞこの脚本に出演されたと思います。当時の他の女優さんではここまでの効果はなかったでしょう。

中盤で青木英美演じる久美が、「綺麗な人なのにハンドバックの中がグチャグチャ」と何気に殿下に告げるシーン。ここがすごく効いています。
刑事の勘とかじゃなく、普通の女子目線での違和感のセリフが、視聴者の日常感覚に結び付けていました。

妹を持て余しながら拒絶できない兄の苦衷を演じた村井国男さん、彼の演技もこれがベストと言っていいかもです。

いずれにしても「太陽にほえろ」の前期には名脚本が多かったと思います。
このエピソードも鎌田敏夫さんの傑作だったと思います。
2016年07月09日(Sat) 12:22
kaoru1107さん
編集
>kaoru1107さん

こんにちは。

>このエピソードは印象深かったです。

にこやかに応対した後、浴槽に沈んでいる死体を平然と見て、また殿下のところに行く。
この描写が一度見たら忘れられません。

>酒井和歌子さんのベストワークではないかと思います。

実に酒井さんの個性を、うまく生かした一編だと私も思います。

>サイコスリラーが流行るのはもう少し先のことですから、よくぞこの脚本に出演されたと思います。当時の他の女優さんではここまでの効果はなかったでしょう。

今でこそ、ある展開ですが、時代を考えたら衝撃的ですよね。
しかも演じるのが、愛らしくて男性ファンが多かったであろう酒井さんです。
酒井さんとは後にバラエティ番組で非常に男らしい、豪快な人だと知りましたが、だからこの役も引き受けたのかと納得します。

>中盤で青木英美演じる久美が、「綺麗な人なのにハンドバックの中がグチャグチャ」と何気に殿下に告げるシーン。ここがすごく効いています。
>刑事の勘とかじゃなく、普通の女子目線での違和感のセリフが、視聴者の日常感覚に結び付けていました。

kaoru1107さんの目って、本当にすばらしいですね!
男の人にはわからない、女性が同じ女性に感じる違和感。
何か、変…、そう、ここ、うまかったですね。

>妹を持て余しながら拒絶できない兄の苦衷を演じた村井国男さん、彼の演技もこれがベストと言っていいかもです。

ちょっと野心家で、美青年で。
こういう役は村井さん、本当にはまり役でしたね。
妹の犯行だと悟り、愛する女性との間で苦悩しながらも妹をかばう。

>いずれにしても「太陽にほえろ」の前期には名脚本が多かったと思います。
>このエピソードも鎌田敏夫さんの傑作だったと思います。

石橋蓮司さんの出演回といい、見応えある話が多いですね。
長寿番組になる礎を築いていると思います。
しかし、鎌田敏夫さんとか、本当にすごい人が書いてますねえ…。
2016年07月10日(Sun) 01:04












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