こたつねこカフェ

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てめえには、がまんならねえ 「長谷川伸シリーズ3」 中山七里

「長谷川伸シリーズ」の3回目は、「中山七里」。
私はこれは、市川雷蔵さんの映画で見ていました。
共演は、中村玉緒さんでした。
こちらで、主人公の政吉を演じるのは竹脇無我さん。

政吉は材木問屋の江差屋の木場で働く人足の若者。
明日、祝言を挙げるおさんは、近くの料亭で働く仲居であった。
昼休みの間、2人は明日の祝言のための支度金を出し合うが、どうしても足りない。
しかし親兄弟、親類もいない2人は頼る相手がいない。

おさんは借金を、料亭の女将に頼んでみると言う。
どうしても、花嫁衣裳が着たい。
それには、あと5両がほしいところだった。

もう普段着でいいじゃないかと言う政吉におさんは泣きべそをかきながら、「あたしだって女よ…」と言う。
政吉はあわてて謝り、店の江差屋の旦那に自分も借金を頼んでみると言った。
木場の仲間も頼んでくれるが、江差屋の主人は政吉がこの前、酒を飲んで茶屋で喧嘩をしたことを持ち出して断る。

断られた政吉が、しょんぼりと帰るのと入れ違いにやってきたのは、亀久橋の文太と呼ばれる十手持ちだった。
文太に旦那は、明日祝言だと言うが承知させられるか?と聞くと、文太は自分は亀久橋の文太だと豪語する。
つまり、借金をさせる代わりに、おさんに一晩付き合えと旦那が言って、文太と料亭の女将が取り囲んだ。

逃げ出そうとするおさんを文太がとらえ、張り倒す。
それでもおさんは、政吉に心底惚れているので、勘弁してくれと懇願する。
すると文太は今度は、この前の政吉の茶屋でのケンカはまだ後始末がついていないと言い出した。
旦那と自分で何とか収めただけで、その気になれば政吉はいつでもお縄にできる。

さらに料亭の女将も、このままだと政吉が木場で勤められなくなると脅す。
おさんは政吉のために、従うしかなかった。
泣き崩れながらおさんは、旦那に奥の座敷に連れられていく。

その頃、政吉の長屋には木場の仲間や長屋の住人がお金を持ち寄ってやってきてくれていた。
みんなの気持ちに頭が下がりっぱなしの政吉だが、その夜、おさんは帰ってこなかった。
翌朝、仕事をしている政吉のところに、文太がわざわざやってきて、変わりはないかと聞いてきた。
妙な気持ちになった政吉は、おさんが帰ってこなかったことが気になる。

仲間が材木を運んでいったとき、旦那がおさんを手篭めにした話を聞いてくる。
政吉は家に走ると、家ではおさんが、食事の仕度をしていた。
おさんは花嫁衣裳を見せ、お金を見せる。
これでもう…と言いかけたおさんの手から金を叩き落とし、政吉はおさんを問いただし始める。

夕べは、何をしていた。
これは、どういう金だ。
「女将さんに話して…」と言ったおさんを、政吉は張り倒す。

政吉はこれは旦那のおもちゃになってもらってきた、「汚い金だ」と言った。
「ちくしょう」と言って、政吉は仕事道具の鳶口を持ち、立ち上がる。
必死に、おさんは止める。

文太を味方につけた旦那には、脅されたり、嫌がらせされたりするのだ。
すがるおさんに向かって、政吉は手篭めにされた手で!と言ってしまう。
おさんは、それじゃあ、お前さんが私だったらどうするのと聞く。
「おまえさんが私だったら、どう、おしだい?」

だが政吉は言った。
「命がけで守る。相手を殺してでも守ってみせる」。
「そう考えるのは男だけ。女じゃそうは考えもつかないし、できもしない」。

おさんの言葉に政吉は言った。
「なら、なぜ死なないんだ」。
旦那の情けを受けておいて、知らん顔をして自分のところに来た了見が憎い。

憎いより哀しい。
なぜ死なない。
すると、政吉に未練があって、政吉が好きで死ねない!と、おさんは泣いた。
泣き伏せた。

その時、心配して仲間がやってきた。
戸を叩く音で、政吉は裏口から飛び出していった。
ふらふらと戻ってきたおさんは、花嫁衣裳を握り締め、そしてカミソリを首筋に当てた。

政吉はそのまま、江差屋へ走ると、商売道具の鳶口で旦那を殺した。
旦那は斬りつけられながら、店の奥に逃げ込み、政吉に金を差し出したが、政吉は斬り殺した。
返り血を浴びて戻った政吉の家では、仲間がおさんを囲んで泣いていた。

おさんは顔に白い布を乗せて、横たわっていた。
愕然とする政吉。
おさんは花嫁衣裳と、政吉の紋付を抱いて死んでいたらしい。

「お前の仇を討ってきてやったんだぞ」と言う政吉に、仲間は「バカ!」と言った。
一体出て行く時、何て言ったんだ。
かわいそうな女を、ほったらかしにして出て行ったんだろう。
せめて、政吉だけはおさんの身になってやらなければならなかった。

政吉はおさんを抱きしめ、号泣した。
そこに文太がやってきた。
仲間は何とか、文太を抑え、政吉を逃がした。

そして3年。
政吉はその身ひとつを元手にした、博徒暮らしで生きてきた。
そして今日、バッタリ、木曽路で文太を見たのだ。

文太は人相書きを手に、人を探していた。
てっきり、自分を探していると思った政吉は、密かに飯屋を出た。
政吉が足を向けた飛騨高山から下呂温泉に向かう道は、中山七里である。

飛騨高山の宿屋でも文太を見かけた政吉は、そこも密かに出ようとする。
宿屋の客には、三味線の流しの夫婦が話題になっていた。
政吉がそっと宿屋を出ようとした時、話題の流しの夫婦が表にやってきた。
夫の徳之助が水を一杯もらおうと宿屋の中に入った時、目を丸くする。

徳之助と、女房のおなかが逃げようとするが、文太にとっつかまってしまう。
実は文太が探していたのは、おなかであった。
おなかは火付けの凶悪犯として、指名手配されていた。

しかしそれは文太がおなかを料亭に呼び出し手篭めにしようとしたときに、行灯を投げつけられて火事になったものだった。
文太にとらえられ、責められるおなかを階段の上から見ていた政吉は驚きに目を見張る。
おなかは、おさんに瓜二つだった。
思わず、おなかが連れられて行った後なのに、「おさん!」と叫んでしまう。

おさんは中山七里を、唐丸籠に入れられて連れて行かれる。
後ろから徳之助がしょんぼりと、追っていく。
獣道からそれを、政吉も追う。
そして政吉は目潰しを投げ、唐丸籠を破り、おなかを連れ出す。

ふらふらしながら、徳之助は追いかけてくる。
「あんた!」と叫ぶおなかをつれ、政吉は途中でおなかの縄を切る。
政吉は今、ここで徳之助にかまえば、つかまってしまうがそれでもいいのかと言うと、おなかはそれでもいいと言う。

おなかに政吉は、自分の女房同然だった女と瓜二つだと教えた。
「似ているどころじゃない。そのままだ」。
山小屋の近くまで来た政吉は、おなかに亭主を捨てて、自分と一緒に逃げてくれと言う。
「お前さんはあっしのおさんなんだ!」

政吉がおなかを助けたのは、文太にはめられた事情でもない。
男気のためでもない。
「おさんに似ていたからに過ぎない。それがあっしのきたねえ本心なんだ」。

だがおなかは言う。
「お気の毒ですが、私はそのおさんさんじゃありません」と。
しかし、政吉はおなかの肩をゆすり叫ぶ。
「おさんなんだ。おさんなんだ!」

そこに、徳之助が走ってくる。
おさんと徳之助は、しっかりと抱き合う。
「早く逃げましょう」と言うおさんだが、徳之助は「助けてくれたお方に」と言って、政吉のほうを振り向く。

政吉が、刀を手に近寄ってくる。
殺気に徳之助は、腰を抜かす。
おさんは政吉に「助けてください。私はどうなってもかまいません」と懇願する。

「その身を汚してもか」。
「お好きなようになさってください」。
「それで男が喜ぶと思うか!」と、政吉は怒った。
「そうなりゃ、ご亭主は一生恨むぜ」。

すると、おなかは言った。
「じゃあ、じゃあ。あなたが私だったら、どうなさいます」。
「それじゃ、お前さんが私だったら、どう、おしだい?」と言った、あの日のおさんの姿が重なる。

政吉は、刀を下に下げた。
「さっき言ったことは、全部忘れてくれ。そしてどこへでも行ってくれ。俺の気が変わらぬうちに、2人、手に手を取って、消えちまってくれ」。
戸惑う2人に政吉は「正気でいるうちに行ってくれ」と言った。

そこに、文太たちが「あそこだ」と叫んで、こちらに向かってきた。
「早く逃げてくれ」。
おなかと徳之助は、逃げていく。

後には政吉が1人、残った。
政吉は、うつむいていた。
文太たちがやってきた。

すると政吉は振り向き、代官所の役人たちに向かって「待ってくれ、お役人!」と叫んだ。
刀を背後に持ち、膝を折って政吉は、役人たちに敵意のないことを示した。
政吉は、文太に向かった。
「やい、文太!この顔を見忘れたか。てめえらのために、かわいい女房のおさんを殺された政吉だよ」。

政吉を見た文太は、「てめえ、こんなところにいやがったのか…」と、うなった。
「そうか、おなかが、おさんそっくりだから…、それでてめえ、助けやがったな!」
「…俺は、おさんに会いたい」。
政吉の顔は、悲しそうだった。

「なにい?!」
「本当のおさんに。俺を正気にしてくれた」。
「どう正気にしてくれた?観念してお縄にかかれとか?神妙にしろ!」
「ふざけるな!」

政吉の顔が、怒りに紅潮する。
「てめえには、がまんならねえ」。
政吉は役人に向かって、再び刀を背中に隠し、膝を追って、頭を下げた。

「こいつはお前さんがたとは関係ねえ。よけいなことをしてケガをしてくれるな」。
役人が後ずさりする。
政吉に向かって十手を振り上げた文太は、役人に抑えられた。
「何だよ!」

文太が、役人たちに食って掛かる。
だが代官所の役人は、文太に加勢しようとした部下を抑えて、後ずさりする。
自分の味方をしない役人たちに、文太の目が怒りに燃える。

次の瞬間、文太は「このやろう!」と言って、お辞儀をしている政吉に十手を振り下ろした。
文太の十手は、政吉の笠を切った。
破れた笠の間から、政吉の恨みに燃えた顔がのぞく。

政吉が、ゆっくりと顔を上げる。
刀を抜く。
文太を蹴り飛ばす。
そして斬る。

文太がはいずって、逃げようとするところを、政吉は蹴る。
逃げ出す文太の、背中を斬る。
逃げる文太を、政吉は刺し貫く。

立ち上がった文太の背中に向かって、政吉は刀を振り下ろした。
全てが止まる。
「政吉自身はすでに死んでいた。おさんが、自ら命を絶ったあの悪夢の日に…」。



若いわけ脇無我さんが、清廉な印象を残す「中山七里」。
おなかとおさんの二役は、梓英子さん。
あれ、このお2人は、「次郎長三国志」の次郎長とお蝶さんじゃないですか?
今度は幸せに添い遂げられて、良かったですねえ。

江差屋の旦那は、戸浦六宏さん。
祝言の前の日に、って、すんごい嫌だ。
文太は、菅貫太郎さん!
いやー、いいですよ。

おさんを脅し、政吉をお縄にしようと立ち上がった文太の裾におさんがすがった時、「何だよ」「離せよ」と言う言い方が実にいやらしい。
役人たちに食って掛かる時の口調も、いかにも「性格が悪い人」らしい。
木曽路で、人相書きを手に、じろじろ人を見る鋭い目もいいです。
こういう表現力が、菅さんは本当にすばらしいです。

さてもともと、渡世人の素質があったのか。
政吉は身ひとつで、裏街道で3年を過ごして生きていた。
旦那を殺して逃げたんだから、表通りを歩いて正業につけるわけがござんせん。

文太が自分を追っているのかと思い、密かに店を出る政吉が川で顔を洗っていると、隣にいるのは何と文太。
ここも顔を見られないように去っていく。
しかし、文太は政吉のことなんか、忘れていた。
あんなにひどいことをしたのに。

文太が追っていたのは、おさんとそっくりの「おなか」。
こいつ~、旦那がいたから手出ししなかったけど、おさんも狙っていたに違いない。
江差屋がおさんを追い詰めたのと同じ手を使って、おなかを追い詰めようとしたが、おなかは火事の中逃げたらしい。
それで追っているというわけ。

自分の思い通りにならなかった女を凶悪犯に仕立て、御上の代理として誰はばかることなく、思う存分痛めつけようというわけですね。
やりそうだ。
政吉にやってやろうとしたことだ。

おなかが唐丸籠、ニワトリでも運ぶみたいな、罪人を乗せる籠ですね。
あれに乗せられて、運ばれていく。
後ろをしょんぼり、時折、こづかれながらついていくのは、夫の徳之助こと、島田順司さんです。
このしょぼくれ加減が、おなかにかばわれる一方という感じでいい。

政吉はおなかを救い出すが、それは正直に言って「自分の汚い気持ち」のため。
「俺と一緒になってくれ」と言うが、おなかはおさんじゃない。
文太にはつかまるわ、助けてくれたと思った男はわけのわからないことを言うわ。
おなかさんは、散々です。

いい人なんだか、悪い人なんだか。
よくわからないが、この人の女房に自分がそっくりだということはわかった。
わかったけど、自分には徳之助がいる。

逃がしてくれたことは感謝するが、政吉に「はい」とは言えない。
何も知らない徳之助は、お礼言わなきゃみたいに振り返る。
すると、政吉は殺気満々。
恩人が突然、犯罪者になっちゃって、徳之助もわけわからなくて、もうビックリ。

抱き合うおなかと徳之助。
それでも諦めきれない政吉。
絶体絶命状態に追い詰められたおなかは、身を汚されても徳之助を守るつもりでいた。

身を汚すことを承知するおなかに、おさんを見た政吉は怒る。
だが、それなら、あなたならどうすると言うのだ。
おさんと同じことを言われ、政吉は正気に返る。

これでは自分は、文太や江差屋のようになってしまう。
そして政吉は、これはおさんじゃない。
自分を愛しているおさんじゃない、と思い知らされる。

おさんは、たった一人。
身を汚しても自分を愛してくれた女は、おなかだけだったのだ。
そのおなかを、自分はいたわらずに死なせてしまった。

あの時、政吉は哀しくて、悔しくて、どうしようもなかった。
政吉のどうしていいかわからない気持ちがしたことは、江差屋を殺すことだった。
それは、おさんの仇をとったわけじゃない。
ただ、自分の鬱憤を晴らしただけだった。

おさんにしなければならなかったことは、そんなことじゃなかった。
本当におさんのことを一番思いやらなければならなかったのは、自分だった。
自分の心の狭量さ、子供っぽさが、おさんを殺してしまったのだ。
あの時の悔恨の思いが、政吉を正気に戻した。

おさんに、会いたい。
自分が会いたいのは、「おさん」の顔をした「おなか」じゃない。
おさんに、会いたい。

だがもう、会えない。
おさんに会える方法が、ひとつある。
自分も死ぬことだ。

そして政吉はおさん、おなかの幸せを壊した文太に怒りを燃やす。
自分が最後にすることは、この男を殺すことだ。
殺して、おなかたちを追わせない。
今度こそ、おさんの仇をとる。

そうして自分も仕置になって、おさんの元へ行く…。
もう、政吉は死んでいたと語りが言う。
あの時、もう死んでいたのだと。
この後、政吉はとらえられ、仕置になるのかもしれない。

もともとの文太の胡散臭さと、政吉の挨拶に何かを感じたのか、役人たちは文太を助けない。
だから、政吉も捕らえられないかもしれない。
でももう、そんなこと、きっと政吉にはどうでもいいんだ。
政吉が文太に向かって、刀を振り下ろして、シーンは止まる。

おなかたちと別れて、音楽が止まる。
そして再び、文太と対峙した時、じわじわと音楽が盛り上がっていく。
最後に文太を斬り伏せるまで、どんどん盛り上がっていく。

「沓掛時次郎」も「雪の渡り鳥」も、主人公は愛する女性のため、殺されるかもしれない死地に赴く。
彼らの行動は、無償。
渡世人と言われるヤクザを、長谷川伸シリーズはこんな風に描いているんですね。


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