こたつねこカフェ

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地獄は佐渡に限るめえ 「峠シリーズ1 中山峠に地獄を見た」

「木枯し紋次郎」主演の中村敦夫がシリーズ放送中に負ったケガのため、復帰までの間に急遽作られた全4作からなるオムニバス形式の股旅時代劇。
その第1回は、「中山峠に地獄を見た」。
これは原作を読んでいないので、手元にないんです。
なので登場人物の漢字など、詳細がわからないのですが、ドラマを見ただけで書いてみました。



渡世人の長次郎は、ある日、数人のヤクザに命を狙われる。
彼らが賭場の売り上げ3千両を運ぶ時、騙されて痺れ薬を飲まされ、その間に盗まれたのだと言う。
痺れ薬を飲んだ仲間の中には、死んでしまった者もいた。
盗賊の名は、天狗の勘八を頭領にした一味だと言う。

仲間の仇と、盗まれた金を返せと言われる長次郎だが、彼に覚えはない。
やむなく刀を交えたが、長次郎は全員を峰打ちにして去る。
それを見ていた宿屋の主人・源兵衛が、ぜひ家に泊まってほしいと願い出た。
長次郎は、ある女性に巡り会いたいと思って、旅をしているらしい。

左腕に、長次郎は布を巻いている。
それは何かと源兵衛が聞くと、古傷が痛むのだと長次郎は言った。
長次郎は宿屋に向かうが、そこではヤクザ者が、泊り客の女性を手篭めにしようとしていた。

源兵衛が止めに入るが、男は辞めようとしない。
からくも逃れた女性の顔を見て、長次郎の顔色が変わった。
だが女性は長次郎に気づくこともなく、横をすり抜けていく。

そこで源兵衛が自分は今でこそ、宿屋「十文字屋」を営んではいるが、10年前までは源兵衛というヤクザでちょっとは名前が知られていたとすごんだ。
するとヤクザ者は腕まくりをして、右腕の刺青を見せた。
そこには「さ」と、書かれた刺青があった。

俺は佐渡帰りだと、男はすごむ。
男の子分も、得意げだった。
生きては帰れぬという、佐渡。
そこから戻ってきた男の佐渡帰りの刺青は、渡世人や無宿者の間では最高の勲章だった。

源兵衛も、番頭の新造も思わず、平伏するしかない。
だが部屋に入った長次郎は、じっとヤクザ者たちを見据える。
「やけに落ち着いてるじゃねえか、こじき野郎」と言われた長次郎は、「ドサ帰りに会うのは初めてだ」と近づいた。
腕の刺青を見て、座敷に座り込む。

そこに先ほどの女性が入ってきて、佐渡の話を聞かせてくれと言った。
自分は武州熊谷の織物問屋、増井屋のお美代と女性は名乗った。
主人が佐渡送りになるので、話を聞きたいと言った。

当時、佐渡の金掘り、水汲み人足はいつでも不足していた。
その為、時折、幕府は無宿人狩りを行い、現代で言えば戸籍のない無宿人を捕らえて、大した罪もないのに佐渡送りにすることがあった。
だが増井屋の主人が無宿人とは、解せない。
佐渡送りになるのは、無宿人なのに。

するとお美代は語り始めた。
先代の主人の妾が後添いに昇格し、義理の母親になったが、義理の母は自分の生んだ子供を跡継ぎにしたくて、邪魔な本妻の子供である主人を陥れた。
結果、主人は勘当にあい、無宿者となった。
そこで勘当を解くまでの間、一時的に江戸に避難していたところを、無宿人狩りにあってしまい、佐渡送りとなってしまったのだった。

後添えの狙い通り、店は後添いの息子が継ぐ。
お店乗っ取りは成功だ。
意外なことにその話に、ヤクザ者2人は道理が通らないと言ってひどく憤った。

佐渡送りの唐丸籠に乗せられてしまえば、もう帰ってくるのは無理だ。
籠を破り、奪還するしかない。
長次郎とヤクザ者2人、そして十文字屋の主人の源兵衛と番頭の新造はお美代に協力して、唐丸籠破りを企てる。


以下、ネタバレです。
どんでん返しがあるので、未見の方、原作をまだ読んでいない方は注意してくださいね。


長次郎たちは無事、唐丸籠を破り、主人を奪還することに成功した。
だが様子がおかしい。
主人とお美代が揃って現れ、長次郎に向かって高らかに笑った。
集合したヤクザ者2人、源兵衛、新造も不敵に笑った。

彼らこそ、お美代の主人を頭領にした盗賊一味だった。
たった今、長次郎にも死んでもらう。
そう言うと一味は、次々本当の名を名乗った。

「さ」の字の刺青が入った男は、鬼坊主のヤサ五郎。
子分は、州走りの亀吉。
十文字屋の主人は、盗人宿・十文字屋を預かる源兵衛。

番頭は、弁天の新造。
頭領は、お美代の主人で、その正体は賭場の売り上げの3千両を盗んだ天狗の勘八。
だが勘八は盗賊としてではなく、無宿人狩りにひっかかった。

お美代はこの勘八の、情婦だった。
「そこにいる女は、天狗の勘八の情婦(いろ)というわけか…」と長次郎は言った。
「私の芝居が一番じゃなかったかい?」と、お美代は笑った。

盗賊たちはヤクザたちを峰打ちにした長次郎の腕が、お頭奪還には必要と考えて、芝居をうった。
だが長次郎は、芝居だと言うことには最初から気づいていたと言う。
「まんまと騙されたくせに、負け惜しみを言うんじゃないよ」とお美代が笑う。

ヤサ五郎に近づく長次郎は、まず、ヤサ五郎の刺青が嘘だと気づいていたと言う。
佐渡の刺青は長さ三寸、幅二寸。
「さ」の字も違う。
「しかも(刺青される腕は)右腕じゃねえ!」

そう言うと長次郎は、ずっと隠していた左腕の布を取り、「サ」という刺青を見せる。
これこそが、佐渡送りになった証だった。
「12年間、佐渡の暮らしは長かったぜ」。

盗賊たちは恐れながらも、次々、長次郎に斬りかかってくる。
ヤサ五郎は逃げるが、長次郎に刀を奪われ、2本の刀で斬られた。
「やろう!」と叫んだ源兵衛だが、長次郎は2本の刀を手に近づく。

逃げる源兵衛に刀を投げると、刀は扉越しに源兵衛に刺さった。
亀吉は「助けてくれ」と叫びながら逃げようとするが、アッサリと斬られる。
新造は恐怖で、四方八方に向かって刀を振り回した。
その背後に勘八がいる。

竹林で、新造は長次郎に刺される。
「佐渡行きの籠は破っても、おめえの地獄行きはまぬがれねえぜ」。
長次郎はそう言って、勘八と向かい合う。

途端に勘八は「勘弁してくれ!この通りだ!」と刀を放り投げ、ひれ伏した。
「金なら、ほしいだけ出す!」
お美代も長次郎に「見逃しておくれ!お願い」と、土下座した。
すると長次郎が言う。

「もうひとつ下手な芝居と見抜いたのは、武州熊谷に増井屋なんて織物問屋はない。そうだろう?酒巻の石屋のお美代さん。おめえさんとは15年ぶりだな」。
驚いたお美代は「おめえさんは一体誰なんだい」と聞く。
「十文字屋の離れにいるおめえさんを一目見て、俺にはすぐ、あのお美代さんだとわかったぜ」。
「…あたしには、わからない」。

「薄情だと責めやしねえ。佐渡に送られて10年もすりゃ、別人のように人相が変わっちまうからな」。
「長次郎と言う名前を聞いても、わからねえかい?長次郎の『郎』が余計なだけさ」。
お美代が、何かを思い出そうとする。

「長次郎…。長次…。!お前さんがあの、酒巻の長次さんかい?!」
18の時だった。
長次郎は、お美代とは夫婦になろうと、誓詞を書いたりもした。
もう、遠い思い出だった。

長次郎が故郷を出たのは、お美代の父親が利根川で溺れ死んで、まもなくだった。
この翌年、江戸の無宿人狩りで長次郎は佐渡送りになったのだ。
それから12年。
長次郎は、地獄のような佐渡で過ごした。

「巡り会いたいと探していた女は、あたしのことだったのかい。とんだ茶番だね」。
「そうかもしれねえ」。
何もかも最初からお見通しだったら、長次郎はなぜ、唐丸籠破りに手を貸したのか。
すると長次郎は、盗人とは知らなかったから、お美代の亭主を佐渡送りから救ってやりたかったと言った。

「昔の女のために、ってわけ?12年も地獄で暮らしてきたのに、男って甘いね」。
お美代の声に、嘲笑が混ざった。
だが次にお美代の声は「とにかく助けてくれるつもりなら、助けてくれるね」とすがりつくような調子に変わった。

その途端、勘八は長次郎に斬りかかってきた。
長次郎は、一刀の元に斬り捨てた。
「ああっ」と言って、お美代がうずくまる。
ふらふらと立ち上がるお美代に長次郎は、お美代の父親は利根川に自分で落ちて溺れ死んだんじゃないと言う。

「俺が突き落としたんだ」。
お美代の父親は長次郎に、「お美代を傷物にするつもりか、お前なんぞにお美代をくれてやるもんか。一切近づくな」と言われた。
酔っていた長次郎は、カッとなった。
そして気がついた時は、お美代の父親を激流の中に突き落としていた。

だがそれを聞いても「もういいじゃないか。お互いに昔のことは忘れようよ」と、平然とお美代は言った。
「おめえ、それで気が済むのかい?!」と、長次郎が驚く。
「済むも済まないもないじゃないか。今さら死んだおとっつぁんが生き返ってくるわけじゃなし。それに今のお前さんとあたしは、赤の他人なのさ。これからも、何の関わりもない他人同士。それでいいだろう?何もなかったふりして、別れればいいじゃないか」。

そう言うとお美代は「あばよ」と言って、去ろうとした。
「待ちな、お美代!」
長次郎が呼び止める。
「俺が佐渡の12年を、死に物狂いで生き続けたのは、『喜作さんを殺したのは俺だ』と、たった一言、おめえに言いたかったからだ」。

長次郎がそう言った時、背後からお美代が長次郎を刺した。
振り向きながら、長次郎は「おとっつぁんの…、仇をとったのか?」と聞いた。
「とんでもない!」

「じゃあ、勘八の恨みを晴らしたのか?」
「何言ってんだい!」
お美代が笑う。
「3千両手に入れるのに、お前さんが生きてちゃ、都合が悪いじゃないか!」

お美代が長次郎から、離れて去っていく。
長次郎が、持っていた長ドスを投げた。
悲鳴がひびく。
長次郎が投げた長ドスは、お美代の背中に刺さっていた。

お美代が、倒れている。
長次郎が近づき、長ドスを抜く。
うつぶせになって動かないお美代を、長次郎はじっと見つめる。
「お美代。まるっきり別の人間みてえに変わっちまったのは、俺よりもおめえの方だったな」。

『天狗の勘八とその一味は、仲間割れがもとで、殺し合いを演じ、残らず死亡したと、嘉永4年夏、7月の記録にある』。
ふらふらしながら、街道を行く長次郎。
『武州無宿・長次。『サ』の刺青。佐渡乗り逃げお手配中と、佐渡文書にある人物の、その後の消息については誰も知らない…』。



最初に長次郎の左腕に布があって隠されていた時に、この人は佐渡帰りなんだろうなと思いましたが、それ以上のどんでん返し。
「サ」の刺青は、「必殺仕置人」の「生木をさかれ、生地獄」で、仕置人が佐渡送りにしてやった悪党の腕に鉄がこの刺青入れてました。
これを見た人なら「さ」のひらがなは違うんじゃないか?と思うんじゃないでしょうか。

佐渡の話は「からくり人」の「佐渡からお中元をどうぞ」でも、語られていました。
ここでも人足が足りないとなると、幕府は無宿人狩りを行うと依頼人が言っていました。
または大した罪でもないのにとらえて、佐渡送りにしてしまうことがあったと語っていました。
酔っ払っただけで送られてしまった、非常に不運な、納得できないような人までいたとか。

「からくり人」の依頼主もこれで、佐渡送りになってしまった。
依頼人が言うには、500人いた中で、生還したのは17人。
その17人もまともな生活が送れないほど、健康や精神を害した人ばかりだと語られていました。
「仕置人」の「罪を憎んで人憎む」でも鉄と錠が無宿人狩りにあって、佐渡送りのピンチにあう話がありました。

こんな地獄から帰ってきたら、それだけで格が違ってしまう。
だとすると、怪物的だったから佐渡から健康なまま帰れたのか、怪物みたいになったのかわからないですが、とにかく鉄ちゃんはすごいんですね。
源兵衛がすごんだのに、ヤサ五郎の刺青を見て、お芝居とはいえ平伏してましたから。

得意げなヤサ五郎と亀吉の様子を見ると、かなりあちこちで威張ってきたのではないか。
しかしそれにしちゃあ、女性を手篭めにしようとするとか、やることが小物っぽいなあと思いました。
こんなところから生還してきたら悟りのようなもの、少なくとも只者じゃない雰囲気が漂うのにやってることが小悪党。
逆に雰囲気があるのは長次郎ですから、この時点でもこの人は本当の佐渡帰りだなと予測がつく。

さらにお美代の話を聞いて、小悪党そのものだった2人が憤るのも妙。
この人たちは怒る側じゃなくて、やる方に手を貸す側じゃないか?って。
そして最後に、みーんな、十文字屋の主人も番頭もグルだったとわかる衝撃。

だけど長次郎は、わかっていたと言う。
本物の佐渡帰りだったら、わかりますね。
さらにビックリは、お美代と長次郎が昔、恋人同士だったということ。

お美代は全然気づいていないんですが、仮にも夫婦の約束をした男性がわからないものでしょうか。
そんな面影も残っていないほど、人相が変わっちゃったんでしょうか。
これほど、佐渡は地獄ということだと長次郎は納得していた。

だけど本当は、お美代が変わっていたんですね。
長次郎どころか、いずれはヤサ五郎も亀吉も殺しそうだった。
さらには新造も源兵衛にも、油断ならなそうだった。

あっちもお美代たちを殺しそうな雰囲気ありますけど、お美代はひょっとしたら、勘八だって殺したかもしれない…。
勘八もお美代を殺したかもしれない。
そんな殺伐とした世界で、平気で生きている女になってしまっていたお美代。

最後に長次郎は、お美代が父親の仇だと言ったなら、黙って殺されたでしょう。
または勘八の恨みを晴らしたと言ったなら、そのまま見逃したでしょう。
しかし、お美代は誰も愛してなかった。
誰も信じていなかった。

誰も愛さない、信じない世界。
お美代は、そんな世界に生きる女になってしまった。
せめて詫びようという一心で、地獄から生き延びて戻ってきた長次郎。
だが、詫びるべきお美代はもう、どこにも存在していなかった。

お美代にとって、父親も勘八もお金以上の価値は持っていなかった。
ならばお美代に詫びるために生きてきた長次郎の思いは、人生はどうなってしまうのか。
何のために自分は地獄から生き延びてまで、今まで生きようとしてきたのか。

しかしあれほどの悪女になるなんて、お美代に何があったんだ。
な~んで、あんなになっちゃったんだ?
もともとの素質なのか?。
あのまま野放しにしたら、どこかでもっと人を不幸にしたような女。

長次郎は、高橋悦史さん。
お美代は、弓恵子さん。
さすがの悪女っぷり。
弓さんなんだから最後に「おおっ」と言わせる悪女ぶりを見せてくれなきゃつまらないと思っていたんですが、期待通り。

新造は村井国夫さんで、礼儀正しさと根性の悪さが表裏一体のうまさです。
盗賊たちはそれぞれ吉田輝雄さん、大森義夫さん、草薙幸二郎さん、木村元さん。
みなさん、すばらしい悪党ぶり。

この「峠シリーズ」は「木枯らし紋次郎」が、中村敦夫さんのケガで放送できない時に作られた作品なんですね。
中村さんはこの時のケガのことを自著で語っていますが、人気のドラマだっただけに中断するのも、ケガが完治しないうちに復帰するのもなかなか大変だったようです。
でもこの「峠シリーズ」は、予定外に作られたなんて考えられないほど、うまくできた作品です。

地獄の佐渡を越えて、戻ってきた長次郎。
しかし中山峠で彼が見たのは、やはりこの世の地獄だった。
だけど「仕業人」の中村主水が「牢屋なんか地獄だよ!」と言われて、「地獄は牢屋にゃ限るめえ」と言ったことがあります。

これも、カッコいいラストシーンだった。
中山峠で長次郎が見た地獄。
さしずめ「地獄は佐渡に限るめえ」というところでしょう。


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