「0をつなぐ」の「奇妙な線が」。
主人公は引越しのため、家の中の物を整理していて、週刊誌より少し大きいぐらいの茶色の封筒を見つけた。
なんだろうと思って中を見ると、一枚の色紙だった。
色紙には小指ほどの太さで、長さ20センチほどの線がまっすぐ、横に引かれているだけだった。

青年は記憶をたどる。
もう5~6年も前、古物市で一人の男がこの色紙を出していた。
色紙に目を留めると、男は金は要らないから持っていっていいと言ったのだ。

これは、手放さなければいけないものだから。
理由を聞くと、男にもわからない。
だが、長く持っていてはいけない。
厄介なことになる。

だから青年も手に入れて少ししたら、誰かに譲ったほうがいい。
青年はこの話に興味をひかれ、色紙をもらった。
それからしばらくの間、飾っておいたこともある。
だが、ただ、横に線が引かれただけでは飽きてしまい、しまいこんで忘れていたのだ。

明日、捨ててしまおう。
そうすれば、譲るなんて面倒なこともしなくていい。
青年は一晩、色紙を放っておいた。

次の日、色紙を見て、あれ?と思った。
線は、一直線ではなかった。
「く」の字のように曲がっていた。

夕べ、「く」の字を方向違いから見て、直線だと思ったのではないか?
考えてみたが、一直線とはやはり違いすぎている。
不思議に思って、青年はまた一晩、色紙を置いておいた。

すると今度は線は、「の」の字になっていた。
青年はしばらく、様子を見ることにした。
翌日、線は螺旋を描いていた。
4日目、線は再び直線に戻った。

まるで蛇が移動するように思えた。
早く、手放せ。
男はそう言ったが、この先どうなるというのだろう。


ここから先は、月刊誌のラストです。


5日目、青年の友人が訪ねてくる。
青年がドアを開けると、友人が「何してるんだ?」とあきれる。
何のことかわからない。
青年の顔の真ん中には、小指ほどの太さの、20センチの長さの線が居座っていた…。


文庫本のラストは、こんな風にほっこり笑えるものではありませんでした。


こちらは色紙を譲った男が、色紙の由来を青年に話しています。
色紙を譲った男によると、この色紙は呪いたい相手の枕元に置くものだったらしい。
だから、あまり長いこと持っていてはいけない。
人目につくところに置いて、興味を示した人間に譲れと男は言った。

線が動いて5日目の夜、焦げ臭い匂いがして青年は色紙を見た。
色紙から、線が抜け出そうとしている。
今まで、自分が見ている時に動いたことはなかったのに。

抜け出そうとしている線は、色紙を焦がしている。
線には目があって、まるで青年を見ているように思えた。
青年は仰天して、色紙を壁からはがし、新聞紙にくるんで捨てに行く。

捨てたはずだが、青年の背後で音がする。
青年は悲鳴を上げ、部屋に戻る。
何かが部屋の中で動く。
ギョッとした青年が見ると、部屋の隅からカーペットを引き裂きながら、線が向かってくる。

線が通った後のカーペットが、まるでジッパーを開けたかのように引き裂かれていく。
あっという間に線は青年に到達し、足元から上がってきた。
布の焦げる匂いと、皮膚が引き裂かれる鋭い痛みが走る。

身をよじって、線を振り払おうとしたが無駄だった。
熱い痛みが走り、線は青年の首もとに到達する。
いまや線は一文字に、青年の傷と化した…。



う~ん、月刊誌掲載時より、どの短編も加筆されて少し長くはなっているんです。
月刊誌だと、ページ2枚分でしたから、やっぱりもう少し、長くしないといけないんでしょう。
しかしこれは、ラストが奇妙な笑える話から、ホラーに変わっていました。
テイストもラストも違う。

掲載誌は女性向けのファッション誌だったので、あまり残酷な話にはできなかったのかな。
ふわっとしたラストは、雑誌の雰囲気には合っていました。
だけど単行本や文庫本にするには、もっとはっきりした結末にした方が良いと思ったんでしょうか。
確かにこちらのほうが印象に残るラストですが、私は最初のちょっと笑える困った話が好きでした。



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2013.09.20 / Top↑
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