こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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惚れてはならぬ 「眠狂四郎 円月殺法」第1話

片岡孝夫さん(現:仁左衛門)の演じる眠狂四郎の「眠狂四郎 円月殺法」。
第1話「女地獄やわ肌炎上剣 江戸の巻」。

岸和田藩3千石の屋敷の前。
お蘭という女性が胸をはだけ、切腹をすると言って、騒ぎが持ち上がっていた。
父親の無念を晴らすため、殿自ら詫びてくれとお蘭は言った。
騒ぎを聞いていた殿が腹を立て、刀を持って出ようとする。

しかし家老は門前で切腹されては噂になると言って、止める。
殿が事の次第を聞こうと門前に出た時、曲者だと言う声が藩邸内から響く。
屋敷内は荒らされていて、藩士たちが「連判状が盗られた!」と言う。

門前の騒ぎは、このためではないか。
お蘭を詮議しようと藩士たちが連行しようとするが、お蘭は小太刀で抵抗する。
だが多勢に無勢。
危うくなった時、一人の着流しの男がお蘭に加勢した。

「貴様、何やつだ!」
「眠狂四郎と覚えていただこう」。
時の老中・水野忠邦に不満を持つ薩摩藩が、西国十三藩に呼びかけ、水野失脚を図った。
連判状はそれであった。

眠狂四郎はが、1年ぶりに江戸に戻ってきた。
それを聞いた薩摩藩の国家老・調所(ずしょ)笑左衛門は放置できないと、薩摩の隠密・隼人党の頭の海老原蔵人を呼び、狂四郎抹殺を命じる。
夜になり、狂四郎の前に蔵人が現れ、勝負を挑んでくる。

蔵人の剣を受け止め、交わす狂四郎。
無想正宗を構え、向き合う。
狂四郎の刃の先が、つま先に向く。
きらりと刃が返り、弧を描いてあがっていく。

見ている調所が「円月殺法」という。
蔵人の目が、狂四郎を見失っていく。
斬られる。
そう思った時、調所が「蔵人!引けい!」と叫んだ。

調所の声で我に返った蔵人は引く。
代わりに唐人一味が現れ、狂四郎に向かって跳躍し、襲い掛かる。
狂四郎は次々、斬る。

唐人の首領・宗錫烈が狂四郎に向かって、手裏剣を投げた。
しかしその手裏剣は通りがかりの親子の、母親に刺さった。
母親は子供をつれて、江戸に出稼ぎに来て、行方が知れなくなった父親を探しに来たのだった。
狂四郎は親子を友人・徳兵衛とお光親子が営む船宿に担ぎ込む。

だが母親は、探している夫の名を伝えると息を引き取った。
「あんなところで斬りあいなんかしなきゃ!」
子供の庄太が叫ぶ。
狂四郎は表に出て行く。

自分が襲われた理由を探ろうと、狂四郎は武部仙十郎を訪ねた。
そこに佐知という娘が、茶を持ってくる。
三月ほど前から、行儀見習いとして武部の屋敷にいる娘だ。

武部は狂四郎に、連判状を見せた。
「こんなものを奪うために妙な芝居を打ったのか。下手をすればお蘭殿の命は奪われたかも知れぬ。それを承知でか」。
武部の屋敷には、岸和田藩の門前で切腹をすると騒動を起こしたお蘭がいた。

これは、武部の賭けか。
賭けのためなら、お蘭も見捨てるのか。
武部が賭けをするのはいいが、そのために関係もない者が巻き添えをくうのは許せない。

しかし武部は薩摩が中心になって、西国十三藩や奥州にまで手を伸ばして水野を罷免して、薩摩中心の政権を作る陰謀があることを伝えた。
この謀議を暴くため、狂四郎に薩摩に行ってもらいたいと武部は言うが、狂四郎は断る。
誰が幕府の首班になろうと、自分には無縁。

そこまで言うと狂四郎は、無想正宗を手に立ち上がる。
庭で佐知が話を盗み聞きしていたが、狂四郎が来ると身を隠した。
狂四郎は佐知の気配を知っていながら、黙って戻る。

佐知が部屋で手紙を書いている。
狂四郎が部屋に入って来ると、佐知はあわてて手紙を隠した。
すると狂四郎は佐知の帯を持ち、引っ張る。
佐知は「きゃっ」と言いながら、くるくると回って帯を取られる。

帯の下からは、佐知が武部の話を聞いて書いた手紙が出てきた。
狂四郎はその手紙を燃やす。
そして黙って去る。
「眠殿…」。

町で狂四郎は、金八という男に声をかける。
金八はスリであり、獲物を物色しているところだった。
狂四郎は庄太の父親を探すよう、金八に頼んでいた。
聞かない振りをしていた金八だが、事の次第を聞いてしぶしぶ引き受ける。

どうして結局は、狂四郎の言うことを聞いてしまうのか。
「やっぱりだんなに惚れてんのかねえ」と、金八は言う。
そして町で評判の南蛮手品を見に行こうと誘う。

金八に連れられて唐人の手品を見ている狂四郎を、唐人たちは首領に報告する。
舞台裏から唐人たちが、狂四郎を殺気がこもった目で見ている。
クライマックスの前に出てしまった狂四郎を追った金八は残念がるが、狂四郎はまっすぐに行けと指示する。

狂四郎の後を唐人たちがついてくる。
その時、影から佐知が呼ぶ。
佐知に呼ばれて狂四郎が隠れる。

物陰で佐知はひそかに懐剣を出し、狂四郎を討とうとした。
狂四郎は唐人たちから見つからないよう、身を潜めると同時に佐知の懐剣を持とうとした手を押さえる。
佐知がハッとする。
唐人たちが行ってしまうと、狂四郎は何もなかったように佐知を置いて出て行った。

船宿に戻った狂四郎に、庄太が向かってくる。
徳兵衛が止めるが、狂四郎は「あの子にとっては私に当たるより他に、すべはない」と言う。
金八は狂四郎に頼まれたとおり、庄太の父親を探していた。
だが庄太の父親も両国の工事で、足を滑らせて川に落下して死亡していた。

母親がいなくなった庄太に、父親も死んでたとお光は言えない。
「私が話そう」と狂四郎が言う。
徳兵衛と釣りをして庄太を、狂四郎は外に連れ出した。

狂四郎から話を聞いた庄太は、「嘘だい!」と叫んだ。
泣き叫ぶ庄太と、付き添っている狂四郎を、佐知が見つけた。
佐知は懐剣を握り締める。

寺の階段に座り込んだ庄太に、狂四郎が言う。
「庄太。私も小さい時に両親を失ってな」。
庄太が狂四郎を見上げる。

「のう、庄太。幼い時に父や母を失って、その悲しみやつらさの中で生きているのは、何も庄太ばかりではない。このおじちゃんも、一人で生きてきたのだ」。
「おじちゃんも?」
「後ろを振り向いてはならぬ。前を向いて、胸を張って生きていくことだ。さあ、元気を出して、一緒に帰ろう」。

狂四郎の言葉は、庄太に響いた。
「うん!」
2人は階段を下りて返っていく。

佐知はそれをじっと見ていた。
その時、蔵人が来る。
「佐知殿。惚れてはならぬ。良いか、佐知殿。いまさら言うまでもなく、狂四郎はそなたの父親の仇だ」。

武部の屋敷に戻った佐知の中で、蔵人の言葉がこだましていた。
「惚れてはならぬ」。
「惚れてはならぬ」。

その時、薩摩の抜け荷の証拠をつかもうとしていた隠密が気づかれ、傷をおって逃げた。
川に飛び込んだ隠密を、偶然行き会った金八が駕籠で武部の屋敷まで運んだ。
応対に出たのは佐知だった。
武部を呼んでほしいと言う隠密を、佐知は懐剣で刺し殺した。

その後、佐知は武部を呼んだ。
隠密は息絶えていたが、その髻の中に手紙が入っていた。
武部はそれにより、抜け荷の琉球黒砂糖がここに持ち込まれたことを知った。
それを餌にして、自分の陰謀に加わらせようと言うのだろう。

お蘭が薩摩の屋敷に潜入しようとする。
気づかれたお蘭が逃げてくると、徳兵衛が駕籠に乗せる。
追ってきた藩士は、駕籠に乗ったお蘭を見逃した。

佐知から武部が抜け荷に気づいたと報告を受けた調所は、佐知に狂四郎こそは佐知の父の仇だと言った。
勘定方として薩摩に忠実に生きてきた佐知の父親は、狂四郎に討たれたのだ。
武部の屋敷に佐知を商人を通して潜入させたが、佐知が正体に疑問をもたれたのではもう屋敷には戻らないほうが良い。

佐知には薩摩藩をあげて、助勢する。
調所は佐知に、そう話す。
だが佐知は上の空だった。

竹林を歩く狂四郎の背後に、佐知が忍び寄る。
「父の仇!」
懐剣を持って襲った佐知だが、あっさりと押さえられた。

「父の仇?もとより、地獄の道を生きてきた私だ。この背中には、私の手にかかった数知れぬ多くの霊が恨みをもって、へばりついている。だが相手が斬ってこねば、我から進んで斬ることはない。よって、仇呼ばわりされる覚えはない」。
佐知は自分は七年前、狂四郎に無残に殺された勘定方の娘だと名乗った。
そして斬りかかる。
しかし狂四郎には、まったく歯が立たない。

地面に手をついた佐知は、「お斬りくださいませ!」と叫んだ。
「このままわたくしを見逃がせば、再び狙わねばなりませぬ!」
狂四郎はそれには答えずに、去っていく。
その様子を都田水心という賞金稼ぎが見ていた。

帰ってきた狂四郎に庄太は、船頭になると言う。
狂四郎に言われたことを、庄太は考えたのだと言った。
そして徳兵衛のところで、船頭になることにしたのだ。

お蘭が、狂四郎を訪ねてきた。
佐知の正体を知らせに来たのだ。
そして、抜け荷のことを知らせる。
薩摩が琉球の黒砂糖を元手にご禁制の品を手に入れたのは、幕閣に賄賂として送るためだ。

だが狂四郎は、興味を示さない。
お蘭はこのままでは第二の関が原になってしまうと訴えるが、狂四郎はお蘭は薩摩をうらんでいるのだろうと言った。
確かにお蘭の父も兄も、薩摩の陰謀を探っていた時に殺された。

しかし、母親は何の関係もなかった。
ただ、父や兄の帰りを待っているだけの母親も薩摩は闇討ちにした。
そのため、お蘭は薩摩を深く恨んでいるのだった。

賞金稼ぎの水心は調所と、狂四郎を生け捕りにして薩摩に引き渡せば、千両もらう約束をする。
狂四郎と金八が夜道を歩いていると、身投げしようと入水する娘がいる。
金八があわてて止めると、女は金八に刃をつきつけた。

次々、唐人たちが現れ、金八を死なせたくなければ刀を離せと言う。
だが狂四郎は小刀を金八を捕らえている唐人に投げて刺し、金八を逃がす。
空中を跳躍し、刀を回転させながら襲ってくる唐人たちを狂四郎は斬っていく。

狂四郎は、水の中に入る。
追ってきた唐人たちは水に足をとられて、跳躍ができない。
しかたなく狂四郎を円陣の真ん中に囲むが、唐人たちは狂四郎に斬られていく。

金八が人殺しと叫び、人を呼んできた。
唐人たちはしかたなく引き上げるが、金八をおびき寄せた娘は捕らえられた。
顔を見ると、それは昼間、見世物小屋で唐人手品にいた娘だった。

首領の宗錫烈が、狂四郎は尋常では討てないと思った時、屋敷の表に駕籠が届いた。
駕籠の中には、唐人の娘が着物をはがれて両手を縛られ、乗せられていた。
裸の背中に「眠 狂四郎」と書かれていた。
蔵人も宗錫烈も、息を呑む。

その夜、薩摩屋敷に金八が忍び込んだ。
水中にもぐって金八は追っ手を逃れたが、賄賂の金品は薩摩屋敷にはなかった。
となると、あとは唐人の見世物小屋の楽屋だろう。

今度はお蘭が唐人の小屋に潜入し、琉球黒砂糖と書いた壷の中を探る。
抜け荷が見つかった時、お蘭はつかまってしまう。
お蘭は宙吊りにされて、叩きの拷問にあう。

宗錫烈は先ほどの仕返しに、お蘭を裸にして背中に「眠狂四郎に進呈」と書いて送り返すと言った。
その時、忍び込んできた狂四郎と徳兵衛が、ボヤ騒ぎを起こした。
狂四郎がお蘭を助け出し、唐人たちを斬り捨てる。

宗錫烈と唐人は、狂四郎とお蘭を追わなければならないが、抜け荷の入った黒糖樽を燃やすわけには行かない。
黒砂糖樽が炎に包まれる中、狂四郎は脱出した。
狂四郎はお蘭を武部の屋敷に送ると、武部は狂四郎に西国に旅立たないかと言う。

だが狂四郎は断る。
狂四郎を旅立たせ、敵が襲ってくる。
襲ってきた宿場にこそ、薩摩の隠れ宿があるのだろう。

そんなおとりになるほどの酔狂さはない、と狂四郎は言う。
武部はそれは考えすぎだと言うが、狂四郎は布団に寝かされたお蘭に向かって「お蘭殿。見たか。そなたであろうとこの狂四郎であろうと、所詮は履き捨てのぞうりの類にすぎん」と言った。
「ご老人、そうであろう」。

「何をつまらんことを申しておる。そなたとは昨日今日のつきあいではあるまい」。
「そのとおり、ひねくれ者は毒と知りたがれば飲みたがる。だが、それとこれとは話が別だ。お蘭殿。気をつけるがいい」。
武部は何事か考えていた。

その頃、調所の前で佐知が思いつめた顔をしていた。
やがて佐知は「できません」と言った。
「何、できぬと」。
「私ごときの誘いに乗る狂四郎ではございません」。

調所は佐知に、狂四郎をおびき出せと命じたのだった。
佐知が断ると、調所は佐知の父親の帯刀の話をした。
帯刀は息を引き取る寸前まで、佐知の名を呼び、狂四郎の首を墓前に供えてくれるように言って死んだ。
調所の手を握って、佐知にそれを頼むと言ったのだ。

「それでもできぬと申すか」。
佐知は頭を下げた。
調所は憤然とし「佐知どの。親不孝にもほどがある。さぞかし、地下のお父上も嘆かれているに違いまいて」と言って出て行く。
佐知は一人、残された。

その夜、狂四郎が徳兵衛の船宿に戻ると、庄太がすっかり明るくなっていた。
狂四郎は庄太に、こまのみやげを買ってきた。
徳兵衛が、狂四郎に手紙が届いていると言う。

手紙を読んだ狂四郎は、屋形船に乗った。
舟には佐知が待っていた。
後ろを向いていた佐知が振り向き、灯りを吹き消し、帯を解いていく。

佐知は襦袢一枚になり、「眠さま。お願いでございます。このわたくしに、お情けを」と言った。
「死ぬ覚悟で参ったか」。
「眠さま」。
「なぜ、命を無駄にする」。

「無情の定め。自ら断ち切るにはこうするほかはないのです」。
「もしこの世に定めと言うものがあるなら、眠さまとめぐり合ったのも、私の定めかもしれません」。
「父の仇の眠さまを、お慕い申してしまったわたくしでございます。地獄に落ちてもいい。そう決心して、その地獄の中にひと時でも、私の生きられる場所があれば、それで本望でございます。でもなぜ眠さまが、わたくしの父の仇などに…」。

「侍の家に生まれたことが、なぜ人として生きることを阻むのか。くやしゅうございます」。
佐知は「わたくしは女。女でございます」と言った。
狂四郎は、黙って聞いていた。

夜更け、狂四郎が船宿に戻る。
異様な気配を察して戸と開けると、血まみれの徳兵衛が倒れていた。
狂四郎に助け起こされた徳兵衛は「薩摩のやつ」とだけ言うと、息絶えた。

奥では、庄太が倒れていた。
「庄太!庄太!」
「お光!」

お光の体の下には、眠狂四郎宛ての呼び出し状があった。
庄太のこまが転がっている。
「薩摩のやつ…!」
狂四郎は怒りに燃えて、屋敷に向かう。

西洋風の部屋で、椅子に座った狂四郎の前に、調所が宗錫烈とともに現れた。
「ようこそ、見えられた。あなたとはぜひ、一度会いたかった」。
「なぜ罪もない者を、無残に手にかけた」。
「あなたをここへに呼ぶためにな」。

「そのためには、あんな小さな命を奪ってもそれでも恥じぬと申すのか」。
「私は目的のためには、ことの是非は論外なのだ。せっかく見えられたのだ。楽になさるが良い」。
宗錫烈が鈴を鳴らす。
唐人の女性たちが来て、狂四郎に酒を振舞う。

「あなたはもはや、死を待つ身じゃ」。
「ご懸念無用、窮地と知って、自ら飛び込むのは私の好むところだ」。
「はははは、あなたらしいのう。今宵はあなたの最後の宴。大いに飲みたいものだ」。
「その言葉はそのまま、あなたに返上しよう」。

狂四郎は立ち上がり、酒を水槽に入れる。
水槽の金魚が、浮いてくる。
「ほう、さすがだ眠どの。無駄だ。当屋敷から逃れるすべはない」。

「もとより覚悟の上だ。だがその時は、調所殿にも冥土までご同道願おう」。
「私はお断りしよう」。
「その時は、いかなる手立てを講じても必ずこの屋敷から出てみせる」。
「ほう、できるかな」。

その途端、床が開いて狂四郎が落下する。
着地した地下には、佐知がいた。
「佐知、そのほうの恋しい狂四郎を届けてやったぞ。死に際の一時、存分に楽しむが良い」。
頭上の戸が閉まった。

眠狂四郎は捕まえたので、水心はお払い箱になった。
信じない水心に、見せてやれと調所が言う。
地下では狂四郎と、佐知の両側から壁が迫ってきた。

水心はそれを見て、簡単につかまっては困ると言う。
自分の千両が、フイになる。
水心は佐知には「かわいそうにのう、仇でもない狂四郎を仇と思い、挙句の果てには奈落の底」と言って笑った。

佐知父の仇は、狂四郎ではなかった。
水心は、佐知の父上を斬ったのは調所だ。
自分がこの目で見たと、笑う。
近くにいた藩士が、水心のしゃべりすぎをたしなめるが、水心はどうせ佐知は用済みで、狂四郎とともに殺されるのだと言う。

佐知は「眠さま、申し訳ございません。知らないこととは申せ、わたくしは何と言うことを…」と謝る。
調所は、眠狂四郎さえいなければ安心だ。
枕を高くして寝られると笑った。

だが蔵人だけは、笑っていなかった。
「蔵人殿、酒がまずいのか」と言われ、蔵人は杯を口に運ぶ。
「敵にしても惜しい男よ」。

そして、「刻限からしてもはや狂四郎の命はあるまい。誰か見てまいれ」と命じた。
一人の藩士が戸を空けた。
「いない。狂四郎がいない!」

「狂四郎が逃げた」の声で、藩士が集まってくる。
狂四郎は、迫り来る壁の上に佐知を乗せ、身を潜めてやりすごしたのだ。
藩士が戸を開けたので、そこから脱出する。

「この屋敷から必ず出ると、言ったはずだ」。
狂四郎が、廊下に佐知を連れて立っている。
調所が「佐知、狂四郎はそなたの仇だぞ」と叫ぶ。

「違います!」
調所が水心に「愚か者が、余計なことを!」と叫び、「生かして屋敷から戻さぬ!」と叫ぶ。
次々やってくる藩士を斬りながら、狂四郎は庭へ逃れる。

「危ない!」
佐知が叫び、狂四郎の背中めがけて、宗錫烈が投げた手裏剣の前に飛び出す。
「眠さま、早く逃げて…」。
狂四郎は佐知を連れて、屋敷を出る。

「逃がすな!眠狂四郎を斬れ!斬れ!」
調所が叫ぶ。
道で佐知は倒れ、首を左右に振った。

狂四郎は、川のほとりの小屋に佐知を連れて行った。
「わたくしがいては、足手まといになります。わたくしはもう」。
「あきらめてはならん。自分を捨てぬことだ」。

「眠さま。お赦しくださいませ。わたくしは父の仇と…」。
狂四郎が佐知に「話すでない」と言う。
だが佐知は「一言。一言許す、と」と言い続ける。
狂四郎が佐知を抱きしめる。

「佐知殿」。
「ご家老が仇と早くわかっていれば…、眠りさまに…。でも遅うございました」。
「佐知殿!」
「眠さま…」。

佐知が手を伸ばし、狂四郎がその手を握る。
「佐知は恋しいお方の…、お情けをいただくことができまして、佐知は、佐知は、し、あわ、せ…」。
そう言うと、佐知はもう何も言わなくなった。

佐知の頬に一筋、涙がこぼれた。
「佐知…」。
狂四郎が、そっと佐知を抱きしめる。
佐知の遺体の両手を胸の前で結ばせ、狂四郎は佐知を舟に乗せる。

外は、小雪が舞っていた。
狂四郎が行く手に、唐人たちの刺客が現れる。
空手と棒術で襲って来る唐人を、狂四郎はすべて斬った。

最後に一人残った宗錫烈が、襲ってくる。
狂四郎は無想正宗を構えると、宗錫烈に向き直った。
調所と蔵人が見ている。

宗錫烈が刀を右に左に揺らして、隙をうかがう。
狂四郎の刃が下を向き、狂四郎のつま先でピタリと止まった。
刀のきっ先が、くるりと逆を向く。

狂四郎は手を上げていく。
刃は上に向かい、狂四郎を中心に弧を描いていく。
宗錫烈が、突進していく。

狂四郎は、宗錫烈を一刀で斬り捨てた。
雪の中、宗錫烈が血を流して倒れる。
調所と蔵人が黙って、去っていく狂四郎を見送る。

傷の癒えたお蘭が鏡に向かっていると、武部がやってくる。
「狂四郎のやつ、江戸を出たらしいぞ。どうだ、だいぶ顔色が良いが、京見物にでも行ってみるか」。
「眠さまも、京へ?」
武部が、ははははと笑う。

狂四郎は一人、西国へ向かった。
蔵人が率いる薩摩隼人党、虚無僧姿の隠密も西国へ向かっていた。
そして金八も、狂四郎を追って旅立つ。



眠狂四郎は、すごくエロティックな場面がある時代劇という記憶がありました。
確かに、女性が肌を見せるシーンは多いです。
第1話の冒頭から、お蘭が薩摩藩の屋敷の前で胸をはだけて切腹しようとするシーンがあります。

自分を襲ってきた女性の唐人の刺客を、駕籠に入れて送り返すこともしました。
駕籠を開くと、そこには着物を着ていない女性の後姿。
背中にはなんと、「眠 狂四郎」と筆で名前が書かれている。

さらに先の話になるんですが、狂四郎は襲い掛かってくる女性の忍・くの一を撃退する時は、着物だけを斬って、パラリと落としたりします。
するとくの一は、体を隠して逃げる。
くの一や女性は、この狂四郎の攻撃で逃げる。
逃げれば、狂四郎は斬らないですむ。

もっと先の話まで見るとわかるんですが、これは狂四郎がむやみに女性を斬らないためでもある。
でもこういうシーンが、妖艶な色っぽさをかもし出すんですね。
背徳の香りがするエロティックなシーンが多いけれど、不思議と清潔感がある。
これは片岡さんの美形ぶりと、優雅な仕草、姿勢の良さのせいではないか。

しかし、この頃の時代劇って容赦ない展開。
まず、狂四郎と薩摩の戦いの巻き添えで殺される母親と、その子供。
子供は最初、狂四郎を恨む。
相手が目の前にいないのなら、目の前にいる狂四郎に恨み言を言うしかない。

さらにこの子供の父親もすでに亡くなっていた、ということはこの子は孤児。
自分のため、孤児になって号泣する子に狂四郎は、自分も小さい頃、父母をなくしていると言う。
だからお前も強くなれと言う。
最初は狂四郎のせいだと恨んでいた子供の心が、狂四郎の優しさを感じ取って、開いている。

だがこの子供にも、むごい運命が待っていた。
どんな陰謀にも、それを打ち砕く側にも加担しない。
何ものをも省みない。

そう言っていた狂四郎が、この所業には怒りを爆発させる。
狂四郎は損得や陰謀ではなく、自分の怒りで動いた。
結果、薩摩は狂四郎を敵に回すことになり、後々後悔することになる。

佐知は、竹下景子さん。
かわいそうですが、知らないこととはいえ、この人も傷ついて運ばれてきた隠密を手にかけてますからねえ…。
お蘭は、松尾嘉代さんです。
2人とも、綺麗ですよ~。

蔵人は、伊吹吾郎さん。
戸惑っている佐知の、狂四郎への恋心を燃え上がらせたのは、この人の「惚れてはならぬ」だと思います。
水心は、岸辺シローさん。
なかなかの卑怯者だけど、口が軽い…。

救いのない物語に明るく、憩いを提供する存在は火野正平さんが演じる金八。
狂四郎を慕って、周囲をチョロチョロし、協力し、旅に出た狂四郎の後を追いかけていく。
「新・仕置人」の正八か、「うらごろし」の正十に近いです。

映画のような美しいシーンが、多いです。
竹林の緑の中、黒い着流しの狂四郎。
コントラストが、鮮やか。

見世物小屋の炎の中、浮かび上がる狂四郎。
佐知と背中合わせになる、屋形船での狂四郎。
暗い中、2人が浮かび上がり、障子には水の影。

雪の舞う中、歩く狂四郎。
円月殺法のストロボ撮影と、狂四郎の貌の美しいこと。
最初の円月殺法では、蔵人があのままなら斬られていたと思う。

煮ても焼いても食えないといった感じの武部は、小松方正さん。
調所は、安部徹さん。
貫禄あります。
映画並みの美しい映像と情緒あふれる音楽で始まった、眠狂四郎の西国への旅。

個人的にはいつも犠牲になるものの中に、毒で浮いてしまう金魚も入れたい。
金魚、ほんとに死なせちゃってるのかなあ…。
かわいそう。
浮いたのを見て、金魚、いつも死んじゃうよ、金魚と思ってました。


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