心ならずも人を不幸にするさだめ 「眠狂四郎 円月殺法」第5話

第5話、「仕込み傘女郎花殺生剣 大磯の巻」。

「誰か助けて!とめて!」と街道に響く声。
狂四郎が振り向けば、走る馬の背にしがみつく少女がいる。
馬の後から、祖父らしき老人が追いかけてくるが、一向に追いつけない。
このままでは、いつか振り落とされ、大怪我をするだろう。

狂四郎は走ってくる馬の前に立ちはだかると、馬はおとなしく止まった。
「ありがとうございます!」
少女も祖父も、狂四郎に頭を下げた。

狂四郎は祖父が営む茶店で、一休みをした。
雨が降りそうだと祖父は言い、少女が傘を持ってきて、狂四郎に渡す。
少女の名は、お花。
年を問うと、13と答えた。

浜辺で、狂四郎は雨が降ってきたので傘をさそうと広げた。
すると傘からは白い粉が立ち込め、狂四郎はふらつく。
これは、琉球のハブから取った毒薬だったのだ。

ハブの神経毒により、狂四郎の体の自由が奪われた。
倒れそうになったとき、虚無僧姿の薩摩の刺客たちが襲ってくる。
気を失いかけながらも、狂四郎は応戦し、刺客をすべて斬った。
侍が倒れていると寄ってきた漁師に頼んで、狂四郎は駕籠に乗せてもらった。

狂四郎が出て行くと、お花に祖父が金を渡した。
約束の25両。
この老人はお花の祖父ではなく、正体は薩摩の調所の琉球の忍び・十兵衛であった。
「ありがとう」。

そう言ってお花が金を仕舞っている時、十兵衛が鋭い銛を手にする。
銛を構えた瞬間、蔵人が十兵衛の肩をたたく。
振り向いた十兵衛に、蔵人は首を横に振った。

お辞儀をするお花に、蔵人は今日のことは誰にも言わないように釘を刺した。
言うと、お花の命がない。
お花はうなづき、頭を下げて出て行く。
蔵人は、小娘を金で釣った上、斬ったとなれば薩摩の名折れ、と言った。

茶店に、金八がやってきた。
今、嫌なものを見たと言う。
蔵人と十兵衛が何かと聞くと、この先で虚無僧が2人殺されていたと金八は言う。
「もしや狂四郎が…」。

蔵人と十兵衛が、かけていく。
勝手に酒を飲んでいた金八だが、狂四郎という名前に思わず手が止まる。
ではあの虚無僧を斬ったのは狂四郎か。
だとすれば、だんなに近い位置にいると金八は喜ぶ。

大磯の宿で、女郎屋の前を通りかかった金八に女郎のおりきが声をかける。
だが金八は、人を探していると断る。
それを聞いたおりきはどうせ、逃げた女を捜しているんだろうと言うが、金八は「背が高く、ゾッとするようないい男」を捜していると言った。
お前にはそんな客はつかないだろうと言う金八におりきは、そんな客がついたらお前に声などかけないと怒る。

女郎屋の裏で、野良猫にえさをやっている女郎がいた。
「無事に生きておいきよ」。
女郎は、おしんと言った。

その時、女郎は苦しそうな狂四郎を見て、声をかける。
狂四郎は毒に当たったので、おしんの部屋で休ませてくれと言って、倒れそうになる。
おしんは驚いて、狂四郎を支えながら店に戻る。
店に戻ったおしんと狂四郎を見たおりきは「いい客がついたねえ、酔っ払ってるのかい?」とからかうが、ふと、おしんが支えている男が金八が言った特長にぴったりなことに気づく。

金八がとった宿の隣の部屋に、調所と蔵人、そして十兵衛がいた。
狂四郎という名前に金八は反応し、聞き耳を立てる。
傘が開いていたところから、毒を吸ったのは間違いない。

その状態で、手錬の二人を斬るのだから、狂四郎は尋常な相手ではない…。
蔵人が気配に気づき、いきなり戸を明けるが、金八は酒を飲みながら蔵人たとが茶店で会った男だと指摘する。
能天気な金八の様子に蔵人は普通に挨拶を返し、戸を閉めた。

具合の悪そうな狂四郎に驚きながら、おしんは一晩、看病してくれた。
そのかいあって、狂四郎の右手はだいぶ、利くようになっていた。
狂四郎はおしんが野良猫にえさをやっていたことについて聞く。
「お前も親がないのか」。

母親は妹を生むとすぐ死んでしまい、父親は平塚の宿はずれで荒物屋をやりながら育ててくれた。
「疲れちまったんでしょうね。だんだん、酒びたりになって、ある日突然、死んじまったんです…」。
「身の上話を聞いて、すまぬことをした」。
「いいんです」。

「お武家さんも、お幸せではないみたいですね」。
「幸せか。幸せとはいったい、どんなことか」。
「親子と兄弟が仲良く暮らせて、借金もなく、その日のおまんまがいただければ…」。
「とっても幸せだと思います」と、おしんは笑った。

狂四郎は黙って、前を向いていた。
その時、おりきがおしんを呼んだ。
おしんの妹が来たのだ。

何だろう?と思いながら、おしんは狂四郎に断って店の裏に行く。
「好きにするがいい」と狂四郎が答えたのでおしんが抜ける際、代わりにおりきが狂四郎の部屋に入る。
おりきはおしんは宿場女郎なのに、ちっともすれていないと言った。

狂四郎が身の上話を聞いたことを言うと、おりきはおしんの父親が20両の借金で首をくくったので売られてきたのだと言う。
おしんは稼ぎをみんな、妹に送っている。
「親のない姉妹ってあんなに仲がいいもんかねえ」と、おりきは言う。

店の裏では、お花が待っていた。
おしんとお花は、姉妹だったのだ。
「姉ちゃん!ここに25両あるよ。これだけありゃ、姉ちゃん、足抜けできるんだろう」。
「お花、お前…」。

「さ、早くこれをお店に返して、一緒に平塚へ帰ろうよ」。
お花ももう、働けるし、2人で働けば食べていくだけは何とかできるだろう。
そう声をはずませるお花に、おしんは「こんな大金、どこでどうしてきたんだい!」と問い詰める。
お花は答えない。

「おまえだけは!おまえだけはまともに生きて幸せになってほしい!姉ちゃんそれだけが生きがい…」。
そう言うと、おしんは泣き崩れた。
「姉ちゃん」。

「さ、大事にならないうちに早く、このお金を元に戻しておいで」。
「このお金、盗んだんでも拾ったんでもないんだよ。あることをして、侍にもらったまっとうなお金なんだよ。誰にも言うなって言われてるんだけど、姉ちゃんが心配するから姉ちゃんにだけは言うよ」。
「あのね、実はあるお武家さんたちに頼まれて、眠狂四郎とかっていう悪い浪人をだまし…」。

だがお花が言えたのは、そこまでだった。
お花の背中に、十兵衛が投げた銛が刺さっていた。
いきなり黙ったお花を不審に思ったおしんだが、お花が倒れたのを支えた手に血がついたのを見て、絶叫した。
絶叫は、狂四郎の耳にも届いた。

急いで駆けつけると、おしんが抱きしめて泣き叫んでいる少女は、狂四郎に傘を渡した少女だった。
「この子は!これはお前の妹か!」
得物が抜き取られている。

楼主は役人に届けないといけないかと聞いたが、狂四郎は届けても無駄だろうと言う。
それよりもこの子を座敷に上げ、体を清め、弔ってやろう。
金は狂四郎が出すと言った。
楼主は喜んだ。

座敷に横たわったお花を見て、おしんはいつかきっと、一緒に暮らせるようになる。
お花とはいつも、会うたびにそう話していた。
その夢をかなえたいと思って、どこでどうしたのか、この25両を自分に届けた。

「きっと、無理なことをしたんだと思います…。そのバチが当たった」。
「バチではない。その子が死んだのは私のせいだ」。
狂四郎はここに来るまでの経緯を、おしんに語った。

「じゃあ、お武家さんの体がしびれたのはお花が」。
「25両はその代償としてもらったのだ。お花にそれをさせたものが、お花の口を封じようとして殺したに違いない」。
「誰がですか。誰がお花にそんなことさせたんですか」。

「聞いてどうする」。
「このまんまじゃ、お花があんまりかわいそうです」。
「お前に歯の立つ相手ではない」。

おしんはじっと、涙にぬれた目で狂四郎を見つめる。
「私と言う人間は、心ならずも人を不幸にするさだめを背負って生きている。宿命なのだろう。赦してくれ…」。
おしんはお花を抱きしめ、泣き出した。

女郎屋の前を通った金八を、おりきが呼び止める。
金八が探している男が、ここにいる。
おりきは金八を店にあげ、狂四郎を連れてきた。

金八は、自分が聞いた調所と蔵人の会話から、だんなを狙っている人が来ていると話す。
狂四郎の体がしびれていたことを知っていたので、狂四郎は詳細を聞く。
白髪の老人、侍、茶店の老人。
狂四郎はその老人がお花を手にかけたと、確信した。

調所は十兵衛に、毒の効く時間を尋ねた。
人にもよるが、一昼夜は体の自由が利かない。
とすれば、この宿場からはまだ出ていないだろう。

金八は、調所がいる宿屋に戻り、部屋を訪ねた。
そして調所が探している男を知っている、と狂四郎がいることを密告した。
明け方、宿場のはずれの寺に行くことも教えた。

金八は、狂四郎がまだ左半分が麻痺していると教えた。
調所は金八を蔑んだ笑いをして、小判を投げた。
金八は小判を拾って出て行く。

お花の墓の前で、おしんは泣いた。
母親の顔も知らず、生まれてからずっとひもじい思いをしていた妹。
「姉ちゃん、いっそ、一緒にお前のところに行ってやりたいよ」。

泣くおしんに狂四郎は「バカなことを言うな。お花はお前を苦界から抜け出させ、一緒に幸せになろうとして死んだ。せめてお前はお花の夢をかなえさせてやるがいい」と言った。
「どうすればいいのでしょう」。
「あの金で足を洗え。そのうち堅気な男を見つけて夫婦となり、子供を生むがいい。お前たちが夢見ていた幸せとは、そんなものだったはずだ」。

「おっしゃるとおりです…。でも、それであたしが幸せになれたとしても…、お花の…、恨みはどうなるのでしょう。理不尽に殺されたお花の恨みはどうなるのです」。
「お花の恨みは私が晴らす」。
「お武家様が…。なぜ、どうしてですか」。

「お花の死は私から出たことだと言ったはずだ」。
その時、寺の鐘が鳴った。
「明け六つだ。しばらくここから動いてはならぬ。良いな」。
おしんはうなづく。

今が、狂四郎を殺す絶好の機会だ。
そう考えた調所により、狂四郎は薩摩隼人党五人衆に襲われる。
狂四郎は、片腕で立ち向かう。
片腕だけで、5人は斬り殺した。

十兵衛が現れる。
「片腕の効かぬ体で、よく5人を倒された。怖ろしいお人だ」。
「おのれは貧しい小娘の、幸せを願う心を利用し、手先に使った挙句、虫けらのように刺し殺した」。
「お手前に知られておったなら、無益な殺生でござった」。

十兵衛が投げた銛を、狂四郎は弾き飛ばし、木に刺さったところで紐を斬った。
狂四郎は片手で、円月殺法を構える。
円月殺法が繰り出された。
その刃を、十兵衛が受け止める。

十兵衛が飛び、狂四郎を組み伏せ、のどを締め上げた。
その時、狂四郎の左手の剣が十兵衛を刺した。
「貴様、左腕がぁ…」。
琉球忍の頭・十兵衛は敗れ去った。

「おしん。お花の恨みは忘れるがいい。おのれの幸せを夢見て生きていくことだ」。
おしんは泣きたいような、うれしいような顔をした。
「はい」。

狂四郎がすでに回復していたことを隠して戦ったことを、蔵人から聞かされて調所は知った。
「敵ながら、見事としか言いようがありません」。
「西国十三藩を抱き込んだ今回の企てだが、あるいは…、眠狂四郎一人によって砕け去るかも知れぬ」。
調所は改めて狂四郎の怖ろしさを知り、なんとしてもこの男を葬らなければ計画は成功しないと言う。

狂四郎は大磯を去る。
街道の途中で、金八が待っている。
とことん、つきまとってやろと言って、後を追っていく。



狂四郎が正宗を手に、円月殺法を繰り出したら最後、無敵。
円月殺法を目の前で見たものは、誰も生きてはいない。
だから対処法としては、狂四郎に円月殺法を使わせないこと。

そのために刀を奪ったり、拘束したり、動きが取れないようにいろいろと罠にはめるわけです。
意外にも狂四郎は弱者に対して優しく、特に女や子供に思いやりが深い。
だからそこを敵は利用する。

しかし本人の機転だったり、体力だったり、狂四郎に心酔したり、恩を受けたものが必ずいる。
なのでいつもその作戦は、失敗に終わる。
そして剣を取ってしまえば、誰もかなわない。

ピンチの時も涼しい顔を崩さないで、切り抜けてしまう。
ただ、狂四郎に心を奪われたり、関わった女性は命を落とすことが多い。
まあ、クールで罪な魔性の剣士です。

でも本人の内心はそのたびに自分の罪深さを思い知り、すまないと思っている。
だからせめて、残された者がその後にうまくやってけるように考えて行動する。
この話はそんな狂四郎らしいといえば、らしい話です。

ハブの毒の粉という毒が登場します。
私、沖縄に行った時、疲労に効くとかでハブの粉入り飴をもらったことがあります。
おしんは、永島暎子さん。
野良猫に餌をやる、優しい女郎。

人のよさそうな、薄幸そうな、はかない風情。
彼女が語る幸せの定義が、切ない。
当たり前じゃないか…と、今日では思うようなことが幸せだというせつなさ。
幸せじゃないおしんには、狂四郎が幸せではないことがわかる。

お花に金を渡す気もなく、殺そうとする十兵衛を止めるのは蔵人。
さすがに蔵人は、こんな少女を手にかけることはないと思っているらしい。
そこのところが武士と、忍びの十兵衛の違いかもしれないです。

だが、13歳の娘が25両なんてお金が作れるわけがない。
悪いことをしたと思った姉が、妹を叱る。
しかたなく、妹は姉を納得させるために理由を語ろうとする。
その途端、妹は殺される。

いや、十兵衛は最初から殺すつもりではいたと思いますが。
狂四郎をはめた少女だが、その25両を見た狂四郎は目的を瞬時に悟る。
怒りの言葉も口にせず、黙って弔いの費用を申し出る優しさ。
楼主が良い人そうなのが、良かった。

禁断の子と言われ、親子の情愛を味わうことがなかった狂四郎には、このたった2人の姉妹の絆がわかる。
そしてそれを意図せずとも引き裂いた自分が、呪わしい。
「私のせいだ」と言う。
そして、お花を利用した相手が赦せない。

下手をすると、妹の仇を討とうとしておしんまで命を落としかねない。
お花の墓の前で泣くおしんに、幸せになれと言う。
望んでいた平凡な幸せを手に入れろと言う。
そして、恨みは自分が晴らしてやると言う。

狂四郎の怒りは、十兵衛へ。
朦朧としながらも刺客を撃退し、片腕だけで薩摩隼人選りすぐりの5人を斬って捨てる腕の怖ろしさ。
いまだに毒が効いていると見せかけて、今ならと思ってかかってきた相手を、思い切り左手で刺す倍返し。

この男を陰謀に巻き込んだのは、間違いだった。
調所が焦り始める。
この男、尋常ではない。

西国十三藩が関わる巨大な陰謀だが、この陰謀はたった一人のこの男によって崩れ去るかもしれない。
そんな後悔と危機感を、調所が持つのも当たり前。
とにかく、まともなら刺客が狂四郎の敵じゃない。

狂四郎を訪ね歩く金八が、狂四郎の特徴を、見たらすぐにわかる。
すらっと背が高く、ゾッとするようないい男と言うのを、おしんの同僚の女郎のおりきが笑うが、狂四郎を見たらぴんと来てしまう。
この同僚の女郎おりきが、三島ゆり子さん。

客引きの時から金八と、丁々発止のやり取りでおかしい。
この2人で一度、「必殺」シリーズが見てみたかった!
いいコンビになったと思う。

十兵衛を斬った後、おしんが狂四郎を見る目に感謝がこもっている。
うれしそうな、でもやっぱり哀しくてさびしそうな目。
こんな優しい人は、幸せになってほしい。
きっとなると信じて、今回は終わり。


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ちゃーすけ

Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

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