こたつねこカフェ

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30年

沖雅也氏がなくなって、30年にもなるんですね。
金曜日、沖雅也氏に関する番組を放送しているのを見ました。
時代劇専門チャンネルでは「仕置屋稼業」を放送しています。

DVD-BOX持っているのに、何で見てるんだろう、自分は。
しかし見てやっぱり思うのは、市松・沖雅也氏のすごさ。
市松という人物の作りこみに、スタッフの愛情、情熱を感じる。

当時、すばらしい映像を作ると評判だった必殺のスタッフ。
大女優をして、彼らに撮ってもらいたくて出演すると言わしめるスタッフ。
必殺は美しく撮ってくれると、女優たちが出演を喜んだというスタッフたち。
沖雅也とは、そういうスタッフが市松というキャラクターを与えて作りあげたくなるような素材だった。


殺し屋を父に持ち、その父は仲間の裏切りによって死に、自分はそうとは知らず、その仇に生粋の殺し屋として育てられた市松。
彼は冷徹な殺し屋として、感情を表すことなく生きていた。
市松はある夜、殺しを実行した。

誰も気づいているはずのない殺しだったが、ただ一人。
こともあろうか、同心が市松の殺しに気づいていた。
市松の扇子の格子越しに交わされる、市松と主水の視線。

殺し屋・市松としてはもちろん、自分の殺しを見た相手は生かしてはおけない。
相手はたいした腕もないであろう、同心。
簡単な口封じのはずだった。

だが市松は生まれて初めて、この同心相手に冷や汗をかくことになる。
飼い犬だと思った相手が、虎だったような気持ちだっただろう。
この侮れない相手の誘いにより、市松は仕置屋の仲間になる。

しかし市松の行動は、印玄と捨三には受け入れがたい。
印玄と捨三は、市松の言動に顔をしかめずにはいられない。
彼の言動は2人を、特に捨三をいらだたせる。

市松は依頼した相手に理がなく、罪もない者を手にかけているのではないか。
「あっしらは仕置屋、あいつは殺し屋ですよ。仕置屋と殺し屋ってのは全然、違うんですから」。
市松とは捨三にそんなことを、言わせてしまうような男だった。

だが、市松には暖かい心がないのではなかった。
殺し屋の中で生きていかなくてはならない生い立ちから、心を閉ざしていただけだった。
市松は仕置屋の仕事に参加することで、人の情に触れていく。

困難な仕事や、彼らの過去に関わり、仕置屋の仲間となっていく。
市松の心が、溶けていく。
人間らしくなっていく。

そして最後に市松は、仕置屋の仲間から「生かされる」。
印玄も捨三も、そして主水も、市松のために命をかける。
このようにして命をもらった市松が仲間を失った痛みの後、笑顔で旅立ち、仕置屋稼業は終わる。

自分の奉行所との立場と引き換えに市松の命を守った主水の困窮の予感とは裏腹の、ひそやかな笑顔。
哀しい、むなしい、さびしい。
それでも笑顔の市松と主水で、仕置屋は終わる。


仕置屋の仕事と市松の変化が描かれるこの物語を支えているのは、市松を演じる沖雅也氏。
24歳にしてこの妖艶さ、完成度。
まるで獲物を狙う、美しく危険な猫科の動物のように忍び寄る市松。
獲物を前にしてその目が輝く、瞳孔が開く。

金曜日の番組では、沖氏の作品が何本か流れた。
事情があるんだろうけど、沖雅也氏の「必殺」にも触れてほしかったなと思う。
「仕置屋稼業」を見て、同時に今、放送されている「俺たちは天使だ」を見る。
あとはたとえば「横溝正史シリーズ」の「悪魔が来たりて笛を吹く」や「大追跡」を見る。

すると、わかる。
沖雅也氏は時代劇から現代劇、シリアスも喜劇も演じられる。
役を選ばない演技力を持っている。
稀有な俳優だった。

その仕事と存在がまるでタブーに触れるかのように、うずもれているのが哀しかった。
なくなってから、30年後。
わからないけど私は沖氏の自殺の原因はひとつじゃなくて、いろんなことがたくさん重なってのことだと考えていた。
今もそう思っている。

沖氏は、演技の本格的な勉強はしたことがなかったらしい。
晩年、これが自分に自信を持てなくなる原因のひとつだったと聞いた。
それが本当なら、それでここまで演じられるのはすごいと思う。
天性の俳優だったんだと思う。

私としては沖雅也氏での「人形佐七捕物帳」、今、片岡孝夫(現:仁左衛門)さんが演じていてすばらしい「眠狂四郎」が見てみたかった。
沖氏が今いたら、どんな存在になっているかはわからない。
でも沖雅也という俳優に興味を持ってくれる人が増えて、作品を見てもらえるようになるといいと、それだけは思う。
すばらしい俳優だから。


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