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こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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ととさん、お冬は幸せですよ 「眠狂四郎 円月殺法」第14話

第14話、「津軽恨み節孤愁剣 天竜川の巻」。
この前、田村正和さんが「眠狂四郎ファイナル」をやっていました。
片岡さんの狂四郎を思い出して、見たくなりました。


貧しい身なりの三味線引きの少女・お冬が、挨拶もなしに街道で稼いだと2人のやくざ者に絡まれていた。
少女は突き飛ばされ、弟分が三味線を叩き壊そうとしていた。
兄貴分が少女の年齢を聞き、金さえ出せば勘弁してやると言って財布を取り上げたが財布には小銭しか入っていなかった。

「これじゃ噺にならねえぜ、兄貴」。
「しかたねえな」。
それではお冬の体で払ってもらおうと、2人が少女を押さえつけた時だった。

1人の袖に向かって、編み笠が投げられた。
笠が当たって男が振り向くと、藪の向こうから黒い着流しの狂四郎が現れた。
「てめえ!」

2人は襲い掛かってきたが、狂四郎は弟分の腕を取ると、グキリと音を立てて折った。
「ああっ、折れたあああ!」
悲鳴を聞いて兄貴分は狂四郎の背後から斬ろうとしたが、狂四郎は振り向きもせず、背後に向かって村正を振った。
兄貴分の帯が着られ、着物がはだけ、お冬から取った財布も落ちた。

悲鳴を上げる弟分を連れて、兄貴分は逃げていく。
あとには、座り込んだお冬が残っていた。
狂四郎はお冬に向かって財布を投げ、笠を拾うと立ち去ろうとした。

だがお冬は周りをキョロキョロと見渡し、「三味線は?」と言った。
「かかさんの三味線」。
お冬は必死に地面をはいずり、三味線を探す。

その様子に、狂四郎が動きを止める。
お冬が目をこらす。
白くぼやけたお冬の視界に黒い着流しの狂四郎が映った。
狂四郎は三味線を拾うと、お冬の方に歩いてきた。

お冬の手に、狂四郎はしっかり、三味線を握らせる。
「ありがとうございます。ありがとうございます!」
お冬は、三味線を抱きしめた。

「目が不自由なようだが」。
「はい」。
「気をつけて行くがいい」。

去っていく狂四郎にお冬は待って、お待ちください!お武家さんはどこからおいでになったんですか?!」と叫んだ。
「江戸だ」。
「江戸から。もしやどこぞで、青木俊介という名をお聞きになったことは?」
「知らん」。

「そうですか…。失礼なこと聞いて、すみません」。
「その男を探しているのか」。
「はい。…あたしの、ととさんなんです」。
狂四郎は哀しそうな少女をちらりと、見下ろした。

浜松は狂四郎所縁の、水野の越前の城下だ。
茶店で、薩摩の3人の武士が、浜松に着く前に狂四郎を始末する手立てを相談していた。
それを偶然、居合わせた金八が聞き耳を立てたが、金八の団子を目当てに寄ってきた子犬に気を取られた。
だが団子をやっても、子犬は金八から離れない。

金八が子犬を抱き上げた時、3人の姿はなかった。
「お前のおかげで肝心なとこ聞き漏らしちゃったじゃねえか」と金八は言ったが、子犬は金八の腕の中で眠っていた。
「あら、もう寝てやんの。後つけなきゃしょうがねえ」。
金八は3人の後を追い始めた。

降り続くひどい雨。
雨宿りしている屋根の下、お冬が三味線を弾き、歌っていた。
居合わせた4人のうち、夫婦者の妻が「いい歌だがなんだか悲しい」と言った。
「聞きなれない歌だが、どこの歌だろうね?」

夫がそう言うと、旅の僧侶が「津軽かもしれんな」と言った。
「津軽?あの奥州の津軽ですか?」と行商人が聞く。
僧侶は「自分は若い頃、修行で盛岡まで行ったが、盛岡でさえ江戸から百三十里。津軽はまだもっと、北の果てだ」と言う。

歌い終わったお冬に、雨宿りの一人が「お前さん、津軽から出てきたのかい?」とたずねた。
「はい」。
「女の身で、一人でかい?」

「ああ、やみそうにもないな」と僧侶がつぶやいた。
「困りましたね、お前さん、どうしましょう」と妻が言う。
すると行商人が、この先を少しきたに行った天竜川のほとりに、昔の池田塾の後がある」と教えた。

もっとも今は寂れてしまって、めったに旅人は寄り付かない。
しかしつぶれかけたような旅籠が、一軒だけある。
他には、天竜の上流から来る山男相手の飲み屋が一軒。
この雨がやまないと、舟渡しがどうにもならないので、夫婦者はそこに行くことにした。

天竜川代官所の前には、金八もいた。
薩摩の3人は、代官所に入ったのだ。
天竜川の代官に、薩摩の3人が川止めを頼んでいた。

「この程度の雨で本来なら、川止めは必要ないのだが」と代官は言った。
揉め事は困ると言う代官に薩摩の3人は、代官が天竜川上流の御用材を密かに横流ししていることを知っていると話した。
それが狂四郎の耳に入れば、狂四郎は水野側の人間だ。

ここの勘定奉行は、反・水野だ。
とすれば、水野によって代官も無事ではすまないだろう。
川止めすれば、狂四郎は旧池田宿に来る。
そこにしばらく足止めしていれば、討手もやってくるだろう。

旧池田宿の旅籠、立花屋は天竜川の山男たちであふれていた。
一人の男がお冬の三味線を「やめろ!辛気臭い!」と怒鳴った。
でも自分はこんなものしか弾けないと言うお冬に、男はこっち来いと言うと乱暴にお冬を引き寄せた。

怖がるお冬に、自分の女になればかわいがってやると男は組み伏せようとした。
その男の顔に水がかかった。
「ああっ、すんません!」と金八の声がする。

それは水ではなく、金八が抱いた子犬の小用だった。
怒り狂った男は金八に斬りかかってきたが、金八はうまく避ける。
座敷でしりもちをついた男の前に、刀が突き出される。

振り向いた奥の座敷で、女に酌をされている男は、死神主膳と呼ばれる武士だった。
主膳とわかると男は、小さくなった。
「こ、これはだんな」。

主膳はお冬に、何か弾けと命じた。
何が良いかお冬が聞くと、主膳はあいや節はできるかと言った。
お冬は主膳があいや節を知っているとわかると、主膳の生国と名前を尋ねた。
だが主膳は、生国や名前は忘れたと言う。

お冬はしょんぼりとして、あいや節を弾き始めた。
あいや節を弾き、歌い始めたお冬を、金八がじっと見つめる。
金八に酒、子犬に飯が来たところで、山男の一人が近づいてくる。

「後ろを見な」。
金八が振り向くと、さっきの山男がドスを構え、「さっきの礼がしてえ。表に出ろ!」と言った。
山男たちは金八を、表に連れ出した。

表に出ると金八は、山男を突き飛ばして逃げようとした。
追い詰められ金八がドスを突きつけられた時、向こうから黒い着流しの狂四郎が歩いてきた。
「だんな!」

金八が走り寄ると、男たちは狂四郎に「あの野郎の仲間か!」と襲い掛かってきた。
幸四郎にたちまち弾き飛ばされ、男たちがかっとなった。
「どうしたんだね?」
その時、立花屋の主人・市兵衛がやってきて、「酒が飲みたかったら飲ませてやるから、帰れ」と言った。

翌朝、金八は子犬と遊んでいたが、足止めされている夫婦者は退屈していた。
「ねえ、だんな。あれっぽっちの雨で舟止めなんておかしいよね?」
「別に急ぐ旅でもない」。

表からは、お冬の弾く三味線の音が聞こえてきた。
お冬は一点を見つめ、ひたすら弾いていた。
主膳に酌をしていた女が、主膳に向かって「たいそう気を引かれていたようだけど、あんた津軽の出なの?」と聞いた。
「昔のことは聞くな」。

その時、市兵衛が「先生。おいでですか?」と言って戸を開けた。
表では夫婦者が、材木を前にひらりと身軽に駆け寄っていた。
材木は、密かに切り出したご用材だった。

これを目付けに報告しようと夫婦者が出て行こうとした時、夕べの山男たちが現れた。
はじめからこの夫婦者は隠密だと、にらんでいたのだ。
だが男と女は、あっという間に4人を斬り捨てた。

逃げようとした時、市兵衛が主膳を連れて現れる。
「行くぞ!」
男の隠密がそう言うと、女の隠密が宙を飛んだ。
だが2人は、主膳に斬り捨てられてしまった。

2人を斬り捨てて戻ってきた主膳の前に、お冬が現れた。
「お願いでございます。生国とお名前をお聞かせください」。
「なぜだ。なぜそう、しつこく聞く」。
「ととさんを探しているんです」。

「父親の名前は、なんという」。
「元、津軽藩士で青木俊介と言います」。
主膳の顔色が変わった。

「あの!もしやご存知なのでは!」
「知らん!」
去ろうとした主膳にお冬がすがりつき、「腕を見せてください!」と叫んだ。
「何をする」。

お冬は突き飛ばされ、倒れた。
起き上がろうとしたが、起き上がれない。
背後で狂四郎が、三味線を拾ってきた。

お冬は狂四郎の持っていた薬を飲んで、座敷に寝かされていた。
金八が介抱し、お冬は起き上がった。
「おとっちゃん探して、津軽から来たんだって?」
金八の問いにお冬は「はい」と答えた。

「俺もね、ガキの時分から、親に縁がねえんだ。おとっつあんいなくなったの、いくつの時?」
「いつつです」。
「いつつか。じゃあ、顔も覚えてねえな」。
「ええ。青木俊介という名前だけが頼りなんです」。

「青木俊介。ねえ、何でこの辺にいるってわかったの?」
お冬は、最初は江戸にいると聞いて、江戸に出たと話した。
だが見つからなかった。
そのうち、この辺で見かけたと言う話を聞いたので、ここに来たのだ。

「それで何とか、目の見えるうちにと思って」。
「え?」
「私の目、今はまだぼんやり見えてますけど、そのうちに何にも見えなくなるんです。かかさんも同じだったんです」。

さすがに金八も、これには黙ってしまった。
そして「よし、わかった。俺おとっつぁん探すの手伝ってやる」と言った。
「おじさんが?」

名前以外に、手がかりはないのか。
金八が聞くと、お冬は腕のひざのあたりにやけどの跡があると言った。
どうも主膳が怪しいと思った金八は、お冬にここにいるように言うと探りに出た。
しかし狂四郎はお冬に「お前は父親が恋しい。ただそれだけで探しているのか?」と聞いた。

「…」。
「私にはそうは思えん。先ほど表であの浪人者を問い詰めていたお前の体には、殺気があった…」。
「なぜなんだ」。
お冬は、うつむいた。

「あたしのかかさんは…、ととさんに殺されたんです」。
お冬は話し始めた。
「私のかかさんは、津軽のご城下に住む、貧しい三味線引きです」。

「お願いです。日陰の身でいい。日陰の身でいいですから!あたしたち親子を捨てていくのだけは!」
あの日、お冬の母親はそう叫んでいた。
叫び、お冬の父親の足元にすがっていた。

父親が母親を振り切った時、はずみでお湯が入った鉄瓶がひっくり返った。
熱い湯が、父親の腕にかかった。
その途端、俊介はお冬の母親に向かって、刀を振り下ろした。
母親が倒れ、父親が出て行った。

お冬が倒れている母親に、走りよった。
「ととさんのこと…、決して忘れるんじゃないよ」。
そう言うと、母親はぱったり動かなくなった。
幼いお冬は「かかさん、かかさん」と叫んでいた。

話し終わったお冬は、三味線にそっと触れた。
三味線を抱きしめ、お冬は「かかさん」と泣き始めた。
狂四郎が目を閉じる。

金八は夕べの店で、女たちに主膳のことを聞いていた。
「ああ、人斬りのだんなかい?」
「あの人さ、名前なんて言うの?青木俊介って言わない?」
「そんな名前、聞いたことないね」。

主膳はさっき、立花屋の市兵衛と一緒に、代官のところに行ったらしい。
それを聞いて金八は、代官所に忍び込んだ。
代官たちは、隠密の2人を始末したことを話していた。

座敷をのぞく金八の目に、酒を飲む主膳の袖が見えた。
やけどの跡は、なかった。
ふと、主膳が天井を見た。
代官が槍を手に取る。

槍を取った代官の袖が下がり、代官の腕が見えが。
その腕には、やけどの跡があった。
「代官が、とっつぁんだったんだ…」。

代官は天井に槍を突き立てると、黒装束の忍が落ちてくる。
落ちたところを、今度は主膳が斬る。
「もう一人いたのか!」

代官は、津軽から来た娘のことを主膳から聞いた。
青木俊介と聞いた時、主膳は内心、驚いた。
それは旗本の娘に見初められ、婿入りする前の代官の名前だった。

今、その娘は黒紋付を着た、背の高い武士と一緒だと市兵衛が教える。
「眠狂四郎だ」。
代官は薩摩の3人に、狂四郎がいることを知らせた。

旅籠に戻った金八は、お冬に代官がお冬の父親だと知らせた。
狂四郎と相談するから、お冬には動くなと言って金八は狂四郎を探しに言った。
金八は、狂四郎にことの一部始終を話した。

「その話を、あの子にしたのか」。
「うん…」と言った後、金八はハッとして、「いけなかったかな」と言った。
狂四郎は立ち上がった。

部屋に戻ると、お冬はいなかった。
「代官所に行ったか!」
狂四郎が出ようと戸を開けた途端、廊下にいた虚無僧姿の男たちが数人、斬りかかってきた。
たちまち、狂四郎は斬り捨てる。

代官所では主膳が、もし、薩摩の討手が狂四郎を斬りもらしても自分が斬ると言っていた。
お冬が、庭に忍び込んでいた。
障子に酒を飲んでいる、3人の姿が映る。
お冬はじっと、その影を見つめていた。

代官らしき男の影が、端に映っている。
父親が母親を斬った時の、母親の叫び声が耳に蘇る。
かかさん、かかさんと叫んでいた自分の声も蘇った。

お冬は目に涙をため、匕首を握り締めた。
しかしお冬は石につまづき、倒れた。
「あっ」。

その声で、代官たちが表に出てきた。
主膳が「あの娘だ」と言った。
「あなたは青木俊介ですね?よくも、かかさんを。よくも…。殺してやる!」
匕首を握り締めたお冬に向かって主膳が歩み出ようとした時、代官が制した。

代官屋敷に向かおうとする狂四郎の前には、薩摩の討手たちが次々現れ、行く手を遮っていた。
「邪魔をするな!」
狂四郎は叫び、次々、討手たちを斬って前に進む。

「お冬!」
その頃、代官屋敷の庭では代官の声に、お冬が止まっていた。
「そうか。お前がお冬か。大きくなったなあ。あの津軽から、はるばる出てきたのか。あの遠い津軽から」。
お冬の目にぼんやりと、代官の姿が映る。

「さぞ、苦労したのだろう」。
お冬が匕首を落とす。
「お冬!」

名前を呼ばれたお冬が崩れ落ち、泣き始める。
「会いたかった。ひと目だけでも、ひと目だけでも会いたい。声を聞きたいと、それだけを思って生きてきた…」。
「憎い人だ。かかさんの仇だと思っても、どうしても恋しくて恋しくて。何度、ととさんの夢を見たか、しんない」。
「けど、夢の中のととさんに、いつも顔がなかった」。

「せめて、この目の見えるうちに。そう神様に祈り続けたかいが、ありました。ととさん。お冬はととさんにあえてうれしい」。
「お冬、さあ、ここにおいで」。
代官が手を広げた。

「ととさん!」
お冬が、代官に抱きつく。
代官の顔を、手でなぞる。

「これが、ととさんの顔なんですね。お冬は、ととさんの顔が見られてよかった。お冬は幸せですよ」。
その時、抱きついていたお冬の背後を、代官の刀が貫く。
お冬の絶望した目が、代官を見つめる。

「なぜ、なぜ私を…」。
「ととさん」。
お冬が庭に横たわる。

代官が立ち上がり、刀を納めた時、狂四郎が走ってくる。
狂四郎が倒れているお冬を見て、驚愕の表情を浮かべる。
「出会え!」の声で、用人たちが走ってくる。

狂四郎はお冬を助け起こした。
「しっかりしろ!お冬!」
だがお冬は「ととさん」とだけつぶやいた。

お冬の首が、がくりと後ろにたれた。
「お冬!」
狂四郎の目が怒りに燃えて、代官を見る。
「北の果てから、父親恋しさに二百何十里の旅をしてきたわが子を…おのれは」。

「わしの過去を知るものは、生かしては置けん。貴様もだ、狂四郎!斬れ!」
代官の声で、用人たちが狂四郎に斬って出る。
だが狂四郎は、あっという間に用人たちを斬り、刀を弾き飛ばした。
弾き飛ばされた刀は、市兵衛に刺さった。

「見事だな、狂四郎。俺が相手しよう」。
主膳がそう言うと、狂四郎は村正を一直線に頭上に振り上げ、一直線におろした。
キラリと、村正が光る。

狂四郎のつま先で、村正の切っ先が買える。
村正がゆっくりと弧を描いて、上に上がっていく。
主膳の目が、代官の目がそれをじっと見る。

じっと見つめる主膳の目が、うろたえてくる。
狂四郎の村正が動きを止めた。
主膳が、斬ってきた。
同時に斬りかかってきた代官を、はじく。

狂四郎はまず、主膳を斬った。
その返す刀で、代官を斬る。
あごを斬られて、代官は手であごを押さえた。
そして、再び狂四郎に向かって刀を振り上げる。

狂四郎は、村正を代官に突き刺した。
それを抜くと、今度は頭上から一文字に斬りおろす。
白目をむいて、代官は転がった。
額が割れている。

金八が走ってくる。
倒れているお冬を見た。
金八が目をそむけ、うつむく。
狂四郎が、お冬をじっと見つめる。

大きな、松の木の下。
お冬の墓がある。
墓標となった、三味線の柄が見える。
お冬が弾いていた三味線。

金八が村の娘に、子犬を預ける。
「この子の名前は?」と娘が聞く。
「この子はね、金八!」
「金八。まあ、かわいい名前」。

「そうだろう。ほっといても女の子が寄って来るんだ。ねえだんな!」
しかし狂四郎はもう、歩き出していた。
追おうとする金八の耳に娘の「ああ、おしっこした~!だめじゃないの、金八!」と言う声が聞こえてきた。
その少女の声を聞いて、金八は「狂四郎にすればよかった」と言って後を追う。



目が見えない三味線引きの娘が、三味線引きだった母親を殺した仇を追って長いつらい旅路に着く。
「必殺からくり人」の2話、「津軽じょんがらに涙をどうぞ」を思い出す話。
これもだけど、眠狂四郎のほうも相当、かわいそうな話です。

「眠狂四郎」での仇は、父親。
冒頭からお冬は、災難にあってます。
こんな調子でさぞかし、苦労をして旅をしてきたんだろうなと思います。
いや、よく今まで無事だったなと思ってしまう。

ああいうピンチに、さりげなく助けて去っていくのが狂四郎。
しかし、お冬が三味線を見つけられないのに気づき、握らせてやる。
その仕草が優しい。

目が不自由と知っても、一緒にいてやることができない。
むしろ、自分といたら危ないから。
再び再会した時も、三味線を拾ってやってます。

父親の名前を尋ねる時の、お冬から発する殺気に気づくところが狂四郎のすごさ。
おそらく、お冬の父親は貧乏武士で、三味線弾きの母親に食べさせてもらっていた。
ところが旗本の娘に見初められて、婿養子の話が出た。
そこで出世に目がくらんだ父親は、すがる母親を斬り捨てて行った。

藩士だったというから、脱藩したのかもしれない。
すると、昔の名前も、過去も知る人間がいてもらってはまずい。
私が予想できることだから、狂四郎には、たやすくわかったことでしょう。

父親が母親を斬って出て行ったという、身の上。
もうすぐ見えなくなる目。
あの頃、津軽から江戸はどれだけ遠かっただろう。
旅の僧侶でさえ、盛岡までしか行っていないと言う。

感情移入しやすく、感情がたやすく表に出る金八はたちまちお冬に協力してしまう。
何も言わなくても狂四郎も、哀れと思っている。
「哀れな…」というつぶやきが聞こえてきそうな表情で、目を閉じる狂四郎の表情でそれがわかる。
目の前のお冬には、わからないだろうけど。

うかつに金八は、代官が父親だったとしゃべっってしまう。
でも、金八にしたら一刻も早く知らせてやりたいんだろう。
「俺も親には縁がなくてね」の言葉で、金八も孤児だったことを匂わせる。
だったらなおさら、会わせてやりたいと思うだろう。

しかし、お冬は狂四郎を待たずに代官屋敷へ。
憎い父親を前に、思わず匕首を握り締める。
だけど、憎いだけじゃない。

愛情と憎しみは表裏一体。
お冬は父親に愛情があるから、憎かった。
それに憎いと思わなかったら、旅は乗り越えられなかった。

匕首を手に母親の仇を討とうとしたお冬だったが、その気持ちを見透かしていた代官はお冬の名を呼ぶ。
ここからが、鬼畜の所業。
ひどい父親だとわかっていながら、名前を呼ばれ、優しい言葉をかけられ、お冬の会いたい気持ちがあふれ出した。

夢の中の父親に、いつも顔がなかったと言う。
お冬は夢に父親を見ていたんだ。
顔が見られるうちに、会いたかった。

父親に抱きしめられ、幸せそうなお冬。
「お冬は幸せですよう」。
しかし、娘だという気持ちなどかけらもなく、ただ、過去を知る邪魔者としか思わなかった代官は抱きついてきたお冬を刺す。

こんな娘一人、どうだというんだ。
いたって、どんな影響があるんだ。
そして旗本の娘はいったい、この男の何が気に入ったというんだ。

お冬の絶望の表情が、とても哀しい。
この子の気持ちは、救いはどこに…。
代官所に向かおうとする狂四郎の前に、薩摩の刺客。
刺客は必死だが、今の狂四郎の眼中にはない。

お冬を助けようとする狂四郎は苛立ち、「邪魔をするな!」と怒鳴る。
そう、邪魔。
薩摩の刺客のせいで、間に合わなかった。
こういうところも、狂四郎がどんどん、薩摩を嫌いになる原因だ。

狂四郎の代官への怒りは、3度斬ったことでもわかる。
お冬を見つめる狂四郎の表情。
そうだ。
彼もまた、親を求めても許されぬ身の上だった。

死神主膳は、黒部進さん。
私たちのウルトラマンだ。
旅籠の主人は、山本昌平さんかな。

金八が道連れにする子犬が、すっごくかわいい。
腕の中で寝ちゃうなんて、たまらない。
悲しい話で、子犬が最後まで和みでした。
「狂四郎にすれば良かったかな」で、笑えて、それでも哀しくて終わりです。


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Comment

可哀想だけど
編集
ちゃーすけさん、お久しぶりです。

久しぶりに狂四郎のレビュー楽しく読ませて頂きました。
思えばこのブログにたどり着いたのも、狂四郎のレビューでした。

この回もですが、ヒロインが可哀想でしたね。
ほんと斬り方に狂四郎の怒りが燃えてました。
そういえば、山田五十鈴さんが生き別れた息子と再会するが、
その時は、死刑場に死罪人として息子が引かれていくところで、
お母さんの五十鈴さんが津軽三味線を弾いて送るってお話もあったような。

狂四郎と言えば作者自らが田村さんって言っていたけれど、
元祖雷蔵より、田村さんより片岡さんの狂四郎が好きです。
ストイックで、品があって、色っぽいですよね。
桜の写真や他の記事も楽しく読ませて頂いてます。
また来ます。
温度変化の激しい時ですので、お体お気をつけて。


2018年04月16日(Mon) 17:17
梨雪さん
編集
>梨雪さん

こんばんは。
コメントありがとうございます。

>久しぶりに狂四郎のレビュー楽しく読ませて頂きました。
>思えばこのブログにたどり着いたのも、狂四郎のレビューでした。

ありがとうございます。
たまにすごく見たくなる狂四郎。
この主人公の設定、考えれば考えるほど、すごい。
何という運命を背負って生まれた主人公なんでしょうか。

>この回もですが、ヒロインが可哀想でしたね。

悲しいヒロインが多い狂四郎ですが、お冬はダントツにかわいそうです。
最期まで「ととさん」って。

>ほんと斬り方に狂四郎の怒りが燃えてました。

ものすごい斬り方しましたもんね。

>そういえば、山田五十鈴さんが生き別れた息子と再会するが、
>その時は、死刑場に死罪人として息子が引かれていくところで、
>お母さんの五十鈴さんが津軽三味線を弾いて送るってお話もあったような。

ありますよ~!
山田さんの三味線が哀しい、親子の別れ。
あれもすごく忘れられない話です。

>狂四郎と言えば作者自らが田村さんって言っていたけれど、
>元祖雷蔵より、田村さんより片岡さんの狂四郎が好きです。
>ストイックで、品があって、色っぽいですよね。

そうなんです!
美しいのはみなさん、美しいですが、片岡さんは美しい上に品があるんです。
色気もあって知性的。
あの品の良さは、片岡さんならでは。

>桜の写真や他の記事も楽しく読ませて頂いてます。

ありがとうございます!
良ければまた、いらしてくださいね。

コメントありがとうございました。
2018年04月21日(Sat) 00:58












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