第10話、「無頼子連れ旅必殺剣 府中の巻」。
9話が、録画が見当たらなくて、飛ばしてすみません。
見たんですけどね。
山田五十鈴さんがゲスト。

火事ではぐれた母親と、盗賊に拾われ、再会した時は役人をあやめてしまい、死罪を待つ息子。
盗賊と離れて、一人で生きて行けとの忠告も届かず、盗賊たちを斬ってやるしかなかった狂四郎。
三味線の別れの音が悲しい、親子の別れの回でした。



海が近い茶店で、休みを取っていた狂四郎。
そこに老人に連れられた幼い少女が、やってきた。
「もうじき、母ちゃんとも合えるからな。うれしいか?」
少女は狂四郎にも、笑いかけた。

狂四郎の顔にも、うっすら微笑みかける。
そこに六部姿の数人の刺客が、襲い掛かる。
「眠狂四郎、覚悟!」

あわてて少女をかばって伏せた老人の背にも、刺客の刃が浴びせられた。
驚きと怒りで、狂四郎が振り向く。
「己ら、罪もない行きずりりの人を!」

「おじいちゃん、おじいちゃん!」
少女が、すがりつく。
全員を斬り捨てた狂四郎が、老人に駆け寄る

「しっかりしろ!思わぬ巻き添えにしてしまって、許してくれ!」
「お、おねげえで、ご、ごぜえます」。
「聞こう!」

「府中の彌勒町、万亀楼という女郎屋で、この子の母親が…。名はおすみ」。
「万亀楼のおすみだな」。
「こ、この子と、この金を」と言って、老人が懐から胴巻きを出す。

「み、身請けの金でごぜえます!」
「この金と、この子を届けてくれと言うのか」。
「おじいちゃん!」

「ちよ。お、おねげえでごぜえます」。
「おじいちゃん!」
「引き受けた。安心するがいい!」

「おじいちゃん!」
ちよが叫ぶ中、老人は息絶えてしまった。
「おじいちゃん、おじいちゃん」とすがりつき、ちよは泣いた。

「オヤジ」と、狂四郎は茶店のオヤジに声をかけた。
「はい」。
「この年寄りを葬ってやりたい。手を貸してくれ」。
「へ、へい」。

号泣するちよ。
海辺の近くに、石を墓標にした墓ができた。
線香の前で、ちよは手を合わせる。
狂四郎は茶店のオヤジに金を渡し、「六部たちの死骸は、いずれ仲間たちが引き取りに来るだろう。聞かれたら見たままを話すがいい」と言った。

そして、ちよに「確か、ちよといったな。そなたの母に会いに行こう」と声をかけた。
だがちよは狂四郎を見て、後ずさりしていく。
「母に会いたくはないのか」。
ちよは答えなかった。

しかし狂四郎が歩くと、ちよは離れて後をついていく。
狂四郎がいなくなると、茶店のオヤジの顔つきが変わった。
草むらに分け入ると、手足を縛られた本物の茶店のオヤジがうめいていた。

男は籠を手に取ると、手紙を小さなこよりにしたため、駕籠の中の鳩の足に結び付けて飛ばした。
街道を狂四郎と、その後ろを小さなちよがついていく。
狂四郎が足を止めて振り返ると、ちよが空を見ている。
ちよが指差した先には、鳩が飛んでいた。

鳩は薩摩の藩士・島本、森田、松浦の下へ飛んだ。
手紙を読んだ藩士は、眠狂四郎が府中に入ってくることを知った。
幼い女の子を伴い、彌勒町の万亀楼という女郎屋に来る。

何とか手を打とうと言った時、旅の坊主姿の男が現れた。
島本、森田、松浦のたちは「聞いていたな!」と言って、男に斬りかかった。
坊主は持っていた錫杖から、仕込み杖を抜いた。

それを見て「待て!」と一人が言った。
「貴殿か。居合いにかけては関八州に向かうものなしと言われた、暗闇の重兵衛とは」。
坊主姿の男は、新たな刺客だったのだ。

府中宿についた狂四郎はちよを連れて、万亀楼に向かった。
女郎たちが誘い、子供は預かるからと言う。
その一人に、この店におすみという女はいるかと狂四郎は尋ねた。
すると声をかけた女郎が、「おすみ?墨染めさんのことかい?墨染めさんならもういないよ」と言った。

「どうした?」
「身請けされちまったのさ。代わりに、あたいじゃどうだい?」
狂四郎は、ちよを見た。
万亀楼の中に入る。

楼主は、父親が百姓をしているのは知っていたが、墨染めに子供がいたとは知らなかったと言った。
「一足違いでございました。こんなこととわかっていたら、断りようもあったのでございますが」。
狂四郎は、身請けした客の身元を教えてくれと言った。

老人の遺髪を届け、それからちよの身の振り方もつけてやらなければならぬと狂四郎は言った。
おすみを身請けしたのは、鞠子の宿で麦とろの店を開いている、和助という男だった。
以前から、墨染めのところにあがっていたと言う。

山道を、おすみを乗せた駕籠が行く。
傍らには和助が付き添っていた。
潜んでいた藩士が「おい、麦とろ屋の和助が来たぞ」と言う。
そして「バカなやつだ。我らの手立てに利用されておるとも知らずに」と笑った。

駕籠がおすみを乗せて近づいてくる。
だが駕籠の中のおすみは、笑っていなかった。
和助が「駕籠屋さん止めておくれ」と言って、和助は重兵衛さまですか?と重兵衛たちに近づいてきた。

おすみを、預かった金で身請けしてきたと言った。
「これから、どうすればよろしいので?」
「何もせんでいい」。
「え?」

「お前の役目は、これで終わったと言うことだ」。
そう言うと、重兵衛は和助を殺してしまう。
重兵衛は、逃げ出した駕篭かきも斬った。
おすみはおびえ切って、駕籠に引きこもった。

そのおすみに、重兵衛が話しかけた。
「言うとおりにすれば、命はとらん。娘に会いたければ」。
「どうして、子供のことを?!」と、おすみは驚いた。
「娘の名前はちよ。年は?」と、重兵衛が聞いた。

「いつつでございます」。
「お前に会いに、府中の城下まで来ている。会いたいか?」
おすみの顔色が変わった。

「それはもう!3年前に別れたきりでございます。もう1日だって、ちよのことを忘れたことはございません。どうぞ、ひと目なりとも会わせてくださいませ!お願いいたします」。
「指図どおりにすると言うのだな」。
「はい、いたします。ちよに会わせてくれるのなら、たとえどんなことでもいたします」。
「よし、そのまま駕籠に乗っておれ」。

重兵衛は、女を鞠子の宿まで連れて行けと言った。
万亀楼を出た狂四郎は、ちよに「そなたの母は鞠子の宿にいるそうだ。これから夜道をかけて鞠子まで行くか」と聞いた。
ちよは、こっくりとうなづいた。

狂四郎の後を、ちよがついていく様子を薩摩の藩士が見ていた。
歩き始めた狂四郎だが、ちよがうずくまる。
「どうした?疲れたのか?」と言って、狂四郎がちよの額に手をやる。
「熱がある」。

狂四郎はちよを抱きかかえると、一軒の旅籠に入った。
「世話になる」。
それを見た藩士は自分は旅籠を見張る、といって一人を伝令に行かせた。
狂四郎は医者を呼んでほしいと、仲居に頼んだ。

やってきた医者はただの風邪だと言ってて、熱さえ下がれば案ずることはないと言う。
薬を渡し、暖かくして、ゆっくり休ませるように言うと帰っていく。
その頃、伝令は狂四郎が旅籠に止まったことを知らせる。

藩士は「襲うか?」と言ったが、狂四郎はいずれ鞠子に向かう。
その時襲えばよいと言って、引き上げた。
狂四郎は、ちよの頭の手ぬぐいを絞り、冷やし続けた。

その時、隣の部屋から「もし」と女の声がかかった。
声をかけた女はおしまといい、仲居から隣の部屋の子供の具合が悪いと聞いたので、様子を伺いに来たと言った。
「かわいい顔をして。だんなのお子さんですか?」

ちよを見たおしまは、そう聞いた。
「いいや」。
「だんな、何か私にお手伝いできることがありましたら、遠慮なくおっしゃってくださいまし」。

「そうか。では悪いがこの水を取り替えてきてくれ」。
「はいはい」。
狂四郎がおしまを、じっと見送る。

おしまが井戸で水を汲んでいると藩士が来て、「女、隣の浪人の様子はどうだ?」と聞いた。
連れの子供が熱を出しているから、その看病をしている。
熱が下がるまでは出発はできないだろうとおしまが言うと、藩士は礼を言い、自分のことは黙っているように言うと引き上げていった。
「あ、あの?」と、おしまが戸惑う。

おしまが桶に水を汲んで戻ってくる。
狂四郎は「すまん」と言った。
おしまは自分が子供は見ているから、狂四郎は休んでくれと言った。

「たいそう気が利くな」。
「察しがいいでしょ。あたしもお酒は好きなほうで」。
おしまは手ぬぐいを水に浸し、絞る。

ちよの顔を見ると「よく眠って。何の夢見てるんだろう」と言った。
狂四郎は酒を飲み、「地酒にしてはなかなかいい味だ」と言う。
「一杯付き合わんか」。
「いただきます」。

狂四郎に酒を注がれて、おしまは飲んだ。
おしまもまた、狂四郎に酒を注いだ。
狂四郎は、ちよの親のことを聞うたたおしまに、和助の話をした。
すると、おしまはその麦とろの店「ひさご屋」を知っていた。

この辺りは良く商いで行き来しているからと言うおしまに狂四郎は「何の商いだ?」と聞いた。
「まあ、いろいろと」。
しかし相手がひさごやの主人なら、ちよにとっても幸せだとおしまは言う。
ひさご屋の主人に妻はないしく、子供もないので、きっとちよを引き取ってくれる。

「そうなれば、何よりだが」。
「そうなるに決まってますよ。いえ、母親がそうせずにはおきませんよ。だって自分のお腹を痛めた子供じゃありませんか!わが子の顔を見たら、手放せるもんじゃありません!母親ってそういうものです!」
おしまの激しい口調に、狂四郎はおしまの顔を見る。

はっとしたおしまは、ごまかすように笑った。
そしてまた、ちよの手ぬぐいを替えた。
ちよの額に手をやると「だんな!この子、この子、熱が下がってます」と言う。
狂四郎もちよの額に手をやり、うなづいた。

その夜、ちよの傍らで目を閉じる狂四郎に「だんな?」「だんな」と、おしまが声をかける。
「だんな」。
返事がないので、おしまはそっと部屋に入ってくる。

そして狂四郎の持っていた、ちよの母親の身請けの金が入っている胴巻きに手を伸ばした。
重みを確かめるように持ち上げた時、ちよが「おかあちゃーん」と寝言を言った。
おしまは、はっとする。

自分の手を押さえると、おしまは胴巻きを元に戻した。
おしまが戻っていく。
すると、狂四郎が口を開いた。
「おしま」。

「お前には、子があるのではないか。私を酒に酔わせ、眠らせあの胴巻きを盗もうとした。だがこの子が夢うつつに母を慕うさまを見て、お前は盗むことができなくなった、違うか」。
「だんな…、おっしゃるとおりですよ。私には生きていたらちょうど、そのこと同じ年ぐらいの女の子がありました。でも…あたしは、その子をたった一人のわが子を自分で殺してしまったんです」。
おしまは語り始めた。

子供が3つになった年だった。
おしまは乳を飲ませ、添い寝をしていた。
昼間の疲れから、おしまがうつらうつらしてハッと目を覚ましたとき、子供は冷たくなっていた。

おしまが、窒息させてしまったのだ。
「だんなに子殺しの罪にさいなまれて生きていく母親の気持ち、おわかりになりますか?」と、おしまは涙声で訴えた。
「行き着く果ては、ごらんのとおり。女だてらの道中師。私、今でも時々、死んだ子の夢を見るんですよ。夢の中の子供、だんだん大きくなって」。

「ちょうど、この、ちよちゃんぐらいになって」。
おしまは泣き崩れた。
狂四郎は黙っていた。

翌朝早く、狂四郎とちよは旅籠を出た。
仲居が見送る中、ちよがにっこり笑って、狂四郎に手を伸ばした。
狂四郎もかすかに笑い、ちよと手をつないだ。

その様子を、薩摩の藩士が見ていた。
知らせを受け、藩士は麦とろ屋に行くものと、道中待ち受けるものの二手に分かれた。
待ち受ける男が言った。

昨日、仲間が5人でかかって、一人残らず斬られた。
尋常の手段では討てまい。
鉄砲で狙い打とう、砲術にはいささかの心得があると一人が言い、一人がうなづいた。

目を覚ましたおしまは「だんな」と言って、狂四郎たちがいた部屋のふすまを明けたが、誰もいなかった。
「黙って行っちゃうなんて、薄情な人」と、おしまはためいきをついた。
狂四郎はちよの手を握り、2人は街道を歩く。

物陰から、「来たぞ」と言って藩士が狙いをつける。
狂四郎が気配を察した。
「あ、お花だ!」と、ちよが道端に走った時だった。
「危ない!」

狂四郎が駆け寄る。
駆け寄った狂四郎は、肩を撃たれた。
狂四郎が倒れた。

「おじちゃん!」
ちよが叫ぶ。
刀を抜いて、2人が近づいてくる。

突然、起き上がった狂四郎は、2人を斬り捨てた。
「おじちゃーん!」
ちよが叫ぶ。
正宗を持つ狂四郎の手元に、血が流れてくる。

街道を行くおしまは駕籠屋に、鉄砲の音がしたといって急がせた。
「止めて!」と叫ぶ。
その先の道端に、2人の藩士の死体が転がっていた。
「だんなはどこへ…」。

水車小屋で、狂四郎は火を起こし、小刀を焼いていた。
ちよに「向こうを向いていなさい」と言うと、狂四郎は熱くなった刀で肩をえぐり、弾丸を取り出した。
狂四郎の顔がゆがむ。

ちよが振り向き、じっと見つめる。
弾丸は取り出した。
狂四郎が、肩を押さえる。
ちよが近づき、狂四郎の印籠を取って渡す。

狂四郎がうなづく。
印籠から狂四郎が薬を出すと、ちよが塗った。
「痛い?」
「いや、大丈夫だ」。

ちよが薬を包んでいた油紙を当て、狂四郎が手ぬぐいで傷口を縛ろうとした。
すると、ちよが手伝って縛る。
狂四郎が、うなづく。
「ありがとう」。

狂四郎が肩を押さえ、背後の柱に寄りかかる。
ちよが額に手をやり、近くの川の流れで手ぬぐいをぬらして絞った。
通りがかったおしまが、ちよを見つける。
ちよは狂四郎に夕べ、自分がしてもらったように額に手ぬぐいを乗せる。

その時、目を閉じていた狂四郎が「誰だ」と刀を手に起き上がる。
「だんな」。
おしまが現れる。

「お前か。よくわかったなここが」。
「探してたんですよ」。
おしまは水車小屋に入ってきた。

「そしたらおちよちゃ、、見かけたもんですから。怪我してるんですか?」
「ああ、鉄砲でやられた」。
おしまは息を呑んだ。

狂四郎はおしまに「おしま、この子を少しでも早く、母親に会わせてやりたいのだが、私はしばらく動くことができん。私の代わりに連れて行ってくれ」と頼んだ。
「いいですとも。でもだんな一人で大丈夫ですか」。
「手当ては済んだ。この子が手伝ってくれてな」。
「まあ、そうですか。賢かったのね」と、おしまはちよの頭をなでた。

狂四郎は、ちよの祖父から託された胴巻きと、遺髪の束を出した。
「これはおすみの父親が身請けするつもりで作った金と、遺髪だ。頼む」。
おしまが、声を詰まらせる。

「だんな。だんなは…。私が道中師だと、泥棒だと知ってて、こんな大金預けるんですか」。
おしまがうつむく。
「つまらんことを言うな。早く行け」。
おしまは顔をあげた。

「はい!おちよちゃんと一緒にきっとお届けします!」
おしまはちよを連れて出て行く。
ちよが、狂四郎を振り返る。

狂四郎が、わずかにうなづく。
2人は出て行った。
狂四郎は、目を閉じる。

おしまは、ちよを連れてひさご屋に着いた。
麦とろを作っている男を、おすみがそっと盗み見る。
奥のとが開き、藩士が男に「おい、まだか」と声をかけた。
男は首を横に振った。

「うん。ひょっとしたら安東たちが仕留めたか?」
客が食べ終わって、帰っていく。
そこに、おしまが入ってきた。

「おいでなさいまし」。
「あの、ここひさご屋さんだね?」
「へい、さようでございますが」と男が答える。

「ならいんですが、ご主人の顔が見えないもんだから」。
一瞬顔色を変えた男が「あいにくちょっと、仕入れに出ております」と答えた。
「あの、ここに、おすみさんて女の人、来てません?」

おすみが出てきた。
ちよをみて、驚きのあまり固まる。
「おちよ、おまえ…おちよじゃないかい?!」
「かあちゃん」。

「おちよ!お前、大きくなって」。
「かあちゃん!」
ちよがおすみに、抱きついて泣いた。
おすみが、ちよを抱きしめる。

「よく来てくれたね。良く来てくれた」。
見ていたおしまも涙ぐむ。
おしまは涙をぬぐうため、背を向けて座った。
すると、男が泣いているおすみを突付き、おしまのほうをあごで示した。

おすみは「どなたか存じませんが、ご親切にありがとうございました」と頭を下げた。
「いいえ、私はあるだんなに頼まれて、お使いにきただけなんですよ」。
おすみは、上がってくれと言った。

座敷に上がったおしまは胴巻きと遺髪を渡し、これを頼んだ浪人は鉄砲で撃たれて怪我をしたので、自分が代わりに来たと話した。
「そうでございましたか」。
おしまはおすみの父親に対して悔やみの言葉を言い、ちよに母親に「会えてうらやましい」と言った。

「おちよちゃん、良かったわね」。
「うん!」
「どうぞお幸せに、私これで失礼します」。

その時、錫杖の音が響いた。
男たちが入ってくる。
「女、眠狂四郎は怪我をしていると言ったな。やつは今、どこにいる」。
「あんたたち、誰なんだい!」

「さるお方の命を受けて、眠狂四郎を探しているものだ。狂四郎はどこだ」。
おしまが、そっぽを向く。
「言え!」
「お前が言わんと、この親子が死ぬことになる」。

重兵衛が錫杖から仕込み杖を抜き、親子の前にかざす。
「かあちゃーん!」
おすみとちよの、2人が抱き合う。

「どうする、女」。
おびえるちよを見ておしまは、「まさかねえ。やっと幸せをつかんだこの2人を、見殺しにはできませんよ」と吐き捨てた。
「狂四郎のいるところに、あないすると言うんだな」。
おしまは、うなづいた。

5人の藩士に囲まれ、最後尾に重兵衛がついて、おしまは水車小屋に向かった。
水車小屋では、目を閉じていた狂四郎が気配を察し、正宗を手にしていた。
小屋を前にしたおしまは、止まった。

重兵衛を振り返り、「あそこの水車小屋ですよ」と指差した。
途端におしまは走り出し「だんなーっ!」と叫んだ。
藩士が、おしまを背後から斬る。
おしまが倒れた。

藩士と麦とろの主人に化けた男が様子を伺い、水車小屋に入ろうとするが、すぐに出てくる。
中から狂四郎が現れた。
たちまち2人が斬られる。

狂四郎は倒れたおしまを見て、「おしま!」と叫んだ。
続く3人もあっという間に斬り伏せ、狂四郎はおしまに駆け寄る。
「おしま、しっかりしろ!」

おしまが目を開けた。
手を上げながら、「だんな、堪忍してくださいな。だんなの居場所を教えないと、おちよちゃんとおっかさんを殺すと言われたんで」と声を絞り出した。
狂四郎はうなづいた。
「わかっている」。

「だんな…、あたし、だんなのことを…」。
おしまが狂四郎を見つめて、目を閉じる。
「おしま!」
狂四郎が呼びかけても、おしまは動かなかった。

重兵衛を見た狂四郎が「この女を殺さねばならぬ、いわれはあるまい!」と言う。
「ふふふ」と、重兵衛が笑う。
「その傷ついた体で、わしと勝負しようと言うのか」。

片手で狂四郎は、正宗をの切っ先を下に向けた。
ゆっくりと刃が弧を描いていく。
それを目で追っていた重兵衛が、幻惑されたような表情になる。
重兵衛が、かけていた数珠を投げる。

狂四郎が払う。
数珠は、小川に落ちた。
狂四郎は片手で、重兵衛が斬りかかってきた刃を受けると、正宗を振り払う。

重兵衛が、錫杖に仕込み杖を納める。
納めて、振り返る。
そして倒れる。

街道の地蔵の前。
母親に手を引かれたちよが、狂四郎を見送る。
「ありがとうtございます。みんな、あなたさまのおかげです。本当になんとお礼を申し上げてよいか」と、おすみが頭を下げた。
狂四郎が、「たっしゃでな」とちよに言う。

ちよが前に進み出て、狂四郎を見つめる。
狂四郎がかすかに笑い、去っていく。
おじちゃーん!とちよが叫ぶ。

「おじちゃあああん!」
ちよの声がこだまする。
だが、狂四郎は振り向かない。
印籠がゆれている。

「おじちゃあーん!」
狂四郎の姿は遠ざかっていった。
すすきの穂が揺れていた。




無頼の主人公と、子供の組み合わせは名作になります。
重兵衛は、御木本伸介さん。
関八州では並ぶものがない居合いの達人の割りに、あっさりばっさり。
いや、狂四郎が強すぎるのでしょう。

これは第1話と、ちょっと似たシチュエーションです。
狂四郎を狙った刺客により、罪もない人が巻き添えで命を落とす。
その人には、子供の連れがいた。

子供の親を探してやらなければならない。
最初は子供は狂四郎に心を閉ざすが、その暖かさを理解するとなつくようになる。
1話では無残に子供まで殺されてしまいましたが、これは親子ともども助かって良かった。

わずかだけど、微笑を交わしたちよの祖父を巻き添えにした心の痛み。
犠牲になった老人へのすまなさが、狂四郎の全身から出ます。
老人を少しでも安心させてやろうという狂四郎の気持ちが、「聞こう!」「引き受けた。安心するがいい!」という言葉に出てます。

最初はおびえ、反感を持っていたちよだけど、看病をする狂四郎に心を開く。
さらに泥棒のおしまも、ちよに自分の死んだ子供を重ねて更正する。
狂四郎を狙えば避けられると見たのか、ちよを狙う刺客。
ちよを狙えば、必ず狂四郎はちよをかばうから。

この卑怯なやり方に、狂四郎も死んだ振りで応戦。
一人で治療する狂四郎は、ちよに血を見せまいと「向こうを向いてなさい」と言う。
でももう、ずいぶん血を見ちゃってる。

そこでちよが、狂四郎の手当てを手伝うところがけなげ。
狂四郎も、素直に手伝ってもらう。
愛しさがにじみ出てくる。

そこに追ってきたおしまに、狂四郎はお金を託す。
自分が泥棒と知っていて、大金を託されたおしまとのやり取りが泣かせます。
後悔にさいなまれる、おしま。

自分が盗もうとしたのを、知っているのに…。
自分なんか信用していいのかと思う、おしま。
それに対して「つまらんことを言うな」と言う、狂四郎が良かった。
こういうのが、時代劇の良さだなあと思います。

しかたなく、薩摩の刺客を案内してきたおしまが狂四郎に危機を知らせ、斬られる。
その時、詫びるおしまにうなづき、「わかっている」と言ってやる狂四郎がまた、いい。
「だんな…、あたし、だんなのことを…」と、思慕の念を伝えるおしま。
それは好きになってしまうでしょう。

狂四郎の「この女を殺さねばならぬ、いわれはあるまい!」に、怒りが感じられる。
またしても、罪もない人を手にかけた刺客に怒りの円月殺法。
片手でも強い。

決して朗らかに笑わず、わずかに微笑むだけの狂四郎。
だからこそ、その笑顔が人をとろけさせる。
これ、ちよは忘れないですね。
大きくなっても、狂四郎のことを語るでしょうね。

自由になったおすみ。
薩摩は結局、おすみを自由にしてやって、祖父のお金は残っちゃったね。
去っていく狂四郎に、「おじちゃーん」と叫ぶちよの様子がジーンと来る。
でももう、狂四郎は二度と振り返らない。

2人は自分とはもう、関わってはいけない、平和に暮らすべき人たちだから。
ちよとの別れに振り返らない狂四郎。
おしまは哀しかったけれど、最後に救われたのだと信じたい。

そして、おすみとちよの親子は、麦とろ屋で幸せに暮らすのだと思う。
切なさと、暖かさのラスト。
好きなエピソードの回です。


スポンサーサイト
2014.03.19 / Top↑
Secret

TrackBackURL
→http://kotatuneco.blog59.fc2.com/tb.php/2750-4245b371