幾ら問うても もの言わぬ猫 「猫侍」第8話

第8話。


井戸端で汗を拭く久太郎の元に、「おはよー!」と若菜が来た。
どにゃつぼうをひとつ渡し、「これ、玉ちゃんに上げて、ありがとうって伝えておいて」と言った。
「俺のは?」
久太郎のその言葉には答えず、若菜は「さあ、今日も一杯がんばるぞ」と明るく言う。

「がんばれよ」。
すれ違い様、小さな声で久太郎が言う。
「え?」
若菜が、久太郎の言葉に驚き、そしてにっこり笑う。

木刀を手に、久太郎が素振りをする。
玉之丞が見ている。
定位置のざるに入り、丸まっている。
素振りをやめた久太郎が、「これから忙しくなるぞ」と言った。

加賀屋では商いが続いていたが、寝込んでいた主人がまたしても、うなされはじめる。
傍にいた佐吉が怯える。
主人はまるで、玉之丞をだっこしているような振る舞いを始める。

「大丈夫ですか、だんな様!」
「だんなさま、だんな様!」
声をかけた佐吉に主人は、「うるさい!せっかく玉之丞と遊んでいたのに!」と叫ぶ。

「遊んでいたのか」。
「…もう一回、寝る!ずーっと玉之丞と遊んでいたいんだ」。
「しかしだんな様、仕事もたまってきておりますし、もういい加減…」。

「玉之丞」。
主人は、そう言って、手を胸の前で交差させる。
まるで、玉之丞を抱いているように。

「もう、寝てばっかりじゃないですか。私はだんな様に、元気を出してほしいんですよ!」
「玉之丞なしでは、元気になれない」。
佐吉は視線を落とす。

猫見屋に、久太郎は玉之丞を預けに来た。
お七は「薪割りなら、まだあるわよ」と言った。
「お城勤めだ」。

「まだ、あきらめてなかったんだ」。
「そのために江戸に出てきたんだからな」。
お七は玉之丞を抱っこすると、「しゅごい、やるきでしゅね~」と話しかけた。
『それ、むかつく!』

加賀屋に、石渡がやってきた。
「これはこれは石渡様、佐吉、早くお茶を」。
寝込んでいた主人が起き上がり、佐吉に茶を持ってくるように言う。

「…はい」。
佐吉がぎこちなく、下がる。
そして廊下からそっと、中をうかがう。

「どうですか。犯人は見つかりましたか」。
「あわてることは、ねえだろうよ」。
「玉之丞を殺した犯人が今も、のうのうと生きていると思うと、もうおかしくなりそう」。

「怨恨の線で、ホシをしぼっているところだ」と石渡は言う。
「しかし、今まで散々、商売敵を蹴落としてまいりました。恨みを買うのも仕事のうち。敵はそれこそ、星の数」。
「犯人は思ったより、近くにいるかも知れねえ」。

お茶を持ってきた佐吉を、石渡はじっと見詰める。
緊張した佐吉はつい、上の空で出したお茶を飲んでしまう。
「こら、佐吉!」

主人にたしなめられてはっとした佐吉は「失礼しました!」と謝った。
岡引が言う。
「まあ、安心しな。江戸一の鬼同心・石渡様の手にかかれば、どんな悪党だって逃げられやしねえよ」。

2人を佐吉は送って、廊下に出た。
すると石渡は「最近妙な噂を耳にした」と話しかけた。
「何でしょうか」。

「玉之丞にそっくりな猫を見かけた。ひょっとしたら、玉之丞は生きていると考えられねえのかい」。
「わたくしに言われましても…。わたくしはだんな様の看病がありますので、これで」。
佐吉はあわてて、下がっていく。

岡引が聞いた。
「本当に生きているんですか」。
「さあな。後は佐吉がどう動くかだ」。

久太郎は、張り紙を見た。
「奉公人 新規召し抱え候 米沢藩家臣 松金家 奉公人1人」
足を止めた久太郎。

そこにいつか、空腹のあまりザリガニを釣っていた久太郎に「ザリガニ侍」と言った2人が出てきた。
「ザリガニ侍!また会うとはな」。
「ザリガニかついで、仕官しようってのか!」

あの時、あっという間にどなつぼうを斬られ、腰を抜かした2人だった。
「前のようにはいかんぞ」。
「ザリガニ流。お手並み拝見」。

そう言うと、構えた2人だが、久太郎は無視した。
「どうした、刀を抜け」。
「必要ない」。

久太郎は去っていこうとした。
「待てええ!」
内藤が走って、やってきた。

「よせ!」
「内藤様!」
「斑目久太郎だぞ、この男は」。

「斑目?あの斑鬼ですか」。
「こんな貧乏臭いのが」。
『ほっとけ!』

「うちのものが…、失礼した」。
内藤は頭を下げたが、「斑目。先だっても申したとおり、お前の居場所はここにはない。悪いことは言わん。江戸を去れ」と言った。
だが久太郎は「ただ己の剣の道を信じて進むのみ」と言うと、去っていく。

2人の武士が内藤に「斑目とお知り合いですか」と聞いた。
「藩は違えど、同じ道場で汗を流した仲だ」。
内藤の思いでも、よみがえる。

立ち会う久太郎と内藤。
額から血を流していた内藤。
「それは初耳」。
「斑目の噂は聞いたことがあります。過去の御前試合では、連戦連勝。剣の腕では、右に出るものはいないと」。

内藤は「俺との勝負付けは、まだ終わってはおらん!」と声を荒げた。
「それほどの男はなぜ、浪人など」。
「あいつは…、強い。だが…。甘い。斑鬼と言われながら、心は鬼になりきれん男よ」。

『誰が何を言おうと…、俺には剣の道しかないのだ』。
久太郎が、林の中で、刀を抜き、見つめている。
あの2人がやってくる。

立ち上がった久太郎を思わず、2人が手で制する。
久太郎は黙って、去っていく。
「ま、待て。ちょっと待て、待ってくれ!」
「しつこいぞ」。

「おぬしと話がしたいと思ってな」。
「名を名乗れ」。
2人のうちの1人が「拙者は立花京三郎」と名乗った。
もう1人が、「竹下藤五郎」と名乗った。

「ぜひ、わが藩に斑目殿を迎え入れたい」。
『まじ?!』
久太郎の顔が、思わず崩れる。
「我らが推薦すれば、決まったも同然だ。ただ、ひとつ条件がある。近々、わが藩で御前試合がある…」。

久太郎が、猫見屋に戻ってきた。
お七が「あ、お父ちゃんだ。おかえりなちゃい~!」と声をかけた。
「お、お父ちゃん?」
「かわいい娘でしょ。はい」。

そう言うと、お七は久太郎に向かって手を出した。
「お金を取るのか」。
「あれ」と言って、お七は張り紙を振り向いた。

『ええ?子守半日12文?』
久太郎は、12文渡した。
「まいどあり」。

「不満そうね。だって、近所のおばあちゃんが預かるのと、わけが違うのよ。ここなら急な怪我や病気にも対応できるし、ご飯もおいしいし」。
「そうではない」。
「仕事ダメだった?」
久太郎は、玉之丞を魚籠に入れながら、黙る。

長屋の自分の部屋の前で、久太郎が立ち止まって考えている。
そして、部屋に入る。
玉之丞を抱きながら、部屋をぐるぐると回る。
「さあてどうしたもんか」。

久太郎は立花と、竹下との話を思い出していた。
「ただひとつ、条件がある、近々わが藩で、御前試合が行われる。ちょうど内藤様の相手となる剣豪を、探していたところだ」。
「相手にとって、不足はない」と、久太郎は答えた。

「まあ、最後まで聞け」。
「おぬしにはわざと負けてほしいのだ」。
その言葉に、久太郎の顔色が変わる。

「無双一刀流、免許皆伝の猛者に勝ったとなれば、内藤様の出世は間違いない。部下であるわれわれも、引き上げてもらうことができる」。
話の途中で、久太郎は歩いていく。
2人はその後に、追いすがる。
「よく考えてみろ。たった一度の八百長試合で、死ぬまで安泰なんだぞ、安い買い物じゃねえか」。

「なに、おぬしの評判に傷がつくわけじゃない。負けて強し、と言うところを見せるんだよ。そうすれば内藤様の勝利の価値も上がる」。
「組織の中で、うまく立ち回ることも武士の要領だぞ」。
「内藤はこのことを、知っておるのか」。
「いや、知らん。俺たちだけの秘密だ」。

久太郎は、部屋の中で立ち尽くしていた。
玉之丞を抱いて、座り込む。
「以前なら、迷うことなく断っていた。相手が誰であろうと、正々堂々と全力を尽くす。それが武士の道だ。しかし…」。

久太郎は、剣術指南を辞めたときを思い出していた。
「お城で何があったのですか?」と、妻のお静が聞いた。
「江戸へ行こうと、思うておる」。

「私たちは連れて行ってもらえないのですね」。
旅立つ久太郎に向かって、「いってらっしゃいませ」と頭を下げるお春。
影で涙ぐむ妻。
1人去っていく久太郎。

久太郎は、抱いている玉之丞をなでる。
チリンチリンと、鈴の音が鳴る。
「八百長試合、受けるべきか?ん?」

久太郎は、玉之丞に聞いてみた。
玉之丞はただ、久太郎を見ていた。
久太郎は、玉之丞の額にそっと口をつける。

失いし 君へと誘う甘いワナ 幾ら問うても もの言わぬ猫。

その時、佐吉が長屋にやってきた。
辺りを見回し、久太郎の戸を叩く。
「佐吉でございます」。

久太郎が、戸の方を振り向く。
「お話があってまいりました。開けてくださいまし」。
戸が開いて、久太郎が顔を出した。
「お侍様、ちょっと失礼!」と言って、佐吉が中に入る。

佐吉を尾行してきた石渡と岡引が、それを見ていた。
岡引が「あいつだ」と言った。
「見いつけた」と、石渡が言った。



予告には「斑目、猫ュニケーション!」とコミュニケーションを強調。
確かに、猫を中心に久太郎が周囲とつながってきている。
若菜が玉ちゃんに、って言って、どにゃつぼうを渡す。
玉ちゃん、というと、普通の猫みたいに聞こえる。

俺のは?を無視したのは、ちょっと照れてるんだと思う。
でも、ボソッと言った「がんばれよ」に、笑みがこぼれる。
猫ュニケーション取れてる!

ついに、佐吉が尻尾を出してしまったー!
次回予告には「石渡、水責めやるってよ」。
おお、佐吉はきっとすぐにしゃべる。
次は久太郎でしょう。

オープニングの画面が、本編に出てくるところを見ると、久太郎は牢に入るのかな。
「あいつは…、強い。だが…。甘い。斑鬼と言われながら、心は鬼になりきれん男よ」。
つまり、非情に人を蹴落としたり、斬ったりすることはできない。
内藤はそんな久太郎が、本当は気になってしょうがないんだと思う。

久太郎は水責めに耐えちゃうかな。
そして、その中で目覚めて、八百長試合には乗らず、勝ってしまう。
この方が、内藤も納得するんじゃないかな。
内藤だって、そんなの嫌だと思う。

結果的に久太郎は、仕官は逃す。
やっぱり組織の中で、うまく立ち回ることはできない。
だが、久太郎は、大切なものに気づいた。

久太郎は、妻子に手紙を書くようになる。
笑顔で手紙を読むお静と、お春の図。
勝手に想像しました。
私の予想はまったく、当てになりません。

「マジ?!」と言った時の、久太郎の顔が爆笑。
も~、なんて顔するんだ、斑鬼。
猫が「フレーメン」した時のような顔なんです。
斑鬼、猫になっちゃってる。

めちゃくちゃ、崩れてる。
感激で、泣きそうで。
でもああいう感情にあふれた顔が、本当の久太郎の顔だと思う。

「やる気でしゅね~」って、お七の言葉もわかるわかる。
動物を相手にすると、なぜか赤ちゃん言葉になる。
そこに「それ、むかつく」と言う久太郎のが笑える。
お父ちゃん、と言われて、うろたえる久太郎も笑える。

しかし、一度の八百長試合で一生安泰ってことないと思う。
汚いことに使った人間は、絶対に使い捨てると思う。
剣の道にまっすぐだった久太郎に、いろんなことが見えてきただけに悩む…。

次回予告、追い詰められたように本音を言っているであろう久太郎にも笑える。
「猫を飼いたい!」
顔がいちいち、おかしい。
これ、仕官の条件でしょうか。

石渡を演じている俳優さんは、ユキ・リョウイチという俳優さんですが、いい感じ。
佐吉の情けなさそうな表情もいい。
たぶん、佐吉はご主人が好きなんですよね。
最初は陥れようとしているのかと思ったんですが、佐吉は主人があまりに玉之丞に夢中になって、自分を全然省みてくれなくなったのが不満だったんじゃないか。

だから玉之丞がいなくなればいいだけ、と思っていた。
けれど、主人が余りに立ち直らないから、かわいそうになってしまって…。
しかし玉之丞を失ったと思っている、加賀屋の主人の心の痛みは、ものすごいと思いますよ~。

久太郎の仕草の端々に、玉之丞への愛しさがあふれている。
ううん、加賀屋さん、佐吉の気持ちをわかってあげて、玉之丞は久太郎に預けて、佐吉と心通わせてください…。
そうしたら、丸く収まる…、かもしれない。
しかし、このドラマ、薬売りの五郎さんも、石渡も岡引も佐吉も、加賀屋の主人も、ぜ~んぶ芸達者ではまってて、いい!



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Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

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