藤堂藩には何も起こらなかった 天知版「雲霧仁左衛門」最終回

天知茂さんつながりですが、天知さん主演の「雲霧仁左衛門」。
忙しかったので、後でももう一度ちゃんと見るつもりです。
白糸のおみつが好きな人と一緒になって、盗賊稼業から足を洗ったりと山崎版とは違うところも出てきました。
だけど一番違うのは、やっぱり最終回でしょう。

執念で雲霧一味のお盗めの現場を押さえた火盗改めの前で、小頭・吉五郎が自害。
この自害も、山崎版の吉五郎はお頭が来る前に危機を知らせに走り、お頭を熊五郎に託して、自分は楯となる。
大立ち回りの末、「火付け盗賊改め方である。神妙にいたせ」の声で、最期を悟った吉五郎。
ニヤリと凄みのある笑いを浮かべて、「木鼠の吉五郎だ。…見ろ」と言って自害。

天知版の吉五郎もが、「盗賊の意地を見せる」「これが本当の盗賊だ」と言って捕り方たちを前に盛大に自害。
「ピアノ売ってチョーダイっ!」の軽快なセリフがおかしい、財津一郎さんの名演技ではあります。
ただ、お頭との別れがあったら、もっと良かったなあと思ってしまうのは、山崎版から入った人間だからですね。

仁左衛門の身代わりに、兄が蔵人が捕まるのは同じ。
しかし蔵人は仁左衛門に、藤堂藩への復讐をやめ、違う人生を歩むように諭す。
この仁左衛門は忍者っぽいんです。
読唇術をやるのですが、市中引き回しにあっている兄が弟に気づき、唇の動きで伝える。

さらにこの引き回しの最中、おかねと富の市が一緒になるきっかけとなった凶賊・鳩栗の大五郎の弟と残党が兄の復讐で式部を狙う。
兄の最後の舞台を汚させないよう、仁左衛門は市中に潜み、式部を狙う大五郎の残党たちを始末。
誰にも知られず、大五郎一味の抹殺は遂行され、結果として式部を守ってやることになる。

蔵人の取調べ中に、式部が辻一家の気持ちに寄り添ってくるのも、山崎版では痛いように伝わってきた。
武士の悲哀。
法で裁けない、巨大な悪に対する苛立ち。
通じない正義感に立場を超えて、気持ちが通じ合っていく2人のお頭。

田村高廣さんは実にキリッと式部を演じていましたが、山崎版の中村敦夫さんのような演出の演技も見たかったな。
自分を宿敵が守ったことも知らず、法の番人としての立ち位置を変えなかった式部もまた、良かったですけど。
高瀬同心と、密偵のお京の最期は、どちらもやっぱり哀しい。
雲霧とは殺しあう運命だとしても、高瀬やお京も自分の信じる道を行ったのだと。

そして藤堂藩への復讐は、天知版では行われなかった。
一味は解散。
熊五郎はお頭はもう、別の人間として、別の道を歩んでいく。
自分たちには、止められないと言って肩を落とす。

お千代もまた、自分の道を行く。
仁左衛門から離れないという、道を。
その後の2人は、どうしたかわからない。

だが仁左衛門の後ろをひたすら歩いていくお千代を見ると、きっとどこかで暮らしたんだろうと思える。
山崎版のお千代は、きっといつまでもお頭を待ち続ける。
そして最後、藤堂藩にはその後、5年間は何も起こらなかったと語られて終わる。

山崎版は仁左衛門の人生を追い、復讐を終えるまでを見事に収めたラストだったんだなあ、と思いました。
これは、雲霧一味のお盗めと解散がメインのアクション時代劇というスタンスでしょうか。
同じ題材でも、ずいぶんテイストが違う作品になる。
これはこれで、楽しかったです。


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