第10話。


加賀屋。
石渡が連行してきた佐吉。
与左衛門が、佐吉が玉之丞殺しの真犯人と聞いて、「佐吉、本当なのかい?」と尋ねた。

「猫壷はどこだ」。
「ほら、さっさと案内しろ」。
石渡に言われた佐吉が、「こちらです」と庭に下りる。

佐吉は「すいません縄を。これじゃ、壷を取れれませんので」と縄を解いてくれるように願い出る。
「は?」
岡引の八五郎が、佐吉の縄を解く。

「では、取ってまいります」。
のろのろと歩き出した佐吉は、しゃがみこむと縁の下へ入った。
展開についていけない与左衛門が「こ、これは一体、何がどうなってるのでございましょう?」とうろたえる。

「黙ってみてろ」と、石渡が言う。
佐吉は「もののけ封印」「成仏」と書かれた札が貼られた壷を、目の前に置いた。
「これは…何が入っているんですか」。
「玉之丞の骸だ」。

「ひええ」。
与左衛門が悲鳴をあげて、倒れた。
石渡が壷に触れようとした途端、佐吉は「ひゃああああ」と叫んだ。
佐吉の声に八五郎が、「うおう!」とびっくりする。

「何だ」。
冷静な石渡は、動じない。
「化けて出ませんかね」。
「ばかばかしい」。

再び、石渡が壷に手を伸ばすと、佐吉がまた「ひゃあああああ」と悲鳴を上げた。
「うるさいっ!」
石渡は一喝すると、壷を開けた。

目をそらす佐吉。
蓋を開けた、その先には…、梅干が並んでいた。
八五郎が、きょとんとする。
佐吉も、目が点になる。

八五郎が「猫って死んだら、梅干になるんですか…」と言う。
「んなわけねえだろ!」
石渡が言う。

「ちくしょおお」。
佐吉が、悔しそうに声をあげた。
「な、あの浪人、斬ったと嘘をついてたんだよ。お前、まんまといっぱい食わされたな」。

八五郎が嘲った。
その時、佐吉は脱兎のごとく逃げ出した。
「あっ、待てえ!」
八五郎が追う。

事の成り行きに呆然とした与左衛門が「玉之丞は?」と聞く。
石渡は「まだ生きている」と答えた。
「へっ?」

がしゃんがしゃん、音をさせて、佐吉が逃げていく。
横道にそれる。
その速さに、八五郎は佐吉を見失った。
「どこだああ!」

その頃、久太郎はあばら家に玉之丞といた。
『今日まで剣之道をただひたすらに歩んできた。まさか天下の斑鬼が』。
「まいりました!」

久太郎が、土下座をする。
その土下座の前の鍋の中で寝ている玉之丞。
『猫に土下座…』。

にゃあおん。
玉之丞が鳴く。
「そんな風に言うな。これは練習だ。んん?ほら、これも武士の要領なんだと」。

久太郎は玉之丞を抱き上げて「やりたくてやってるわけではない」と言い聞かせた。
にゃあん。
玉之丞の鳴き方に久太郎は、「もしや軽蔑?いや、同情?!」と動揺した。

久太郎は玉之丞を、抱き寄せる。
「最初で最後だ。完璧な土下座を決めてやる」。
「でも、負けるのはやだなあああ」。

そう言って、玉之丞をなでなでする。
佐吉は、そっと久太郎の長屋にやってきた。
頬かむりをしている。

抜き足、差し足、忍び足。
どん、と久太郎の部屋の戸を叩いて飛びのく。
久太郎の返事がないので、中を見てみる。

誰もいない。
佐吉は、戸を開けて中に入る。
誰もいない座敷に上がりこみ、障子を閉める。

たたみに、手を触れる。
縁側から、裏庭に回ってみる。
そして、押入れを開ける。

押入れの上段には、猫の毛がたくさんついた座布団があった。
それから、鞠、猫じゃらし。
佐吉は鞠を握り締めた。

手がブルブルと震える。
「騙しやがって…、許さねえ。絶対、許さねえ」。
その時、「おじゃましまーす」という声がして、若菜が入ってくる。

若菜は押入れを開け「玉ちゃんのま~り~」と言うと、玉之丞の鞠と猫じゃらしを手にして走っていく。
下の段にいる佐吉には気づかない。
佐吉が、若菜の後をつけていく。

すると、「おさむら~いさ~ん」と呼びながら若菜があばら家に向かって走っていく。
「たまちゃ~ん」。
佐吉が追う視線の先には、久太郎に抱かれた玉之丞がいる。
それを見た佐吉は、不気味な笑みを浮かべると去っていく。

「今日一日、玉之丞を頼む」。
久太郎は若菜に、玉之丞を手渡す。
「朝ごはんも持ってきたんだよ。どにゃつぼう!」
「こいつの大好物だ」。

「玉ちゃんのこと、何でも知ってるね。やっぱり家族だね」。
久太郎は若菜の言葉に照れて、「うるさい。では屋敷へ行ってまいる」と言った。
若菜がカチッ、カチッと音をさせて久太郎を送ろうとするが、久太郎は「やめろ。もう、むしろ不吉だ」と断る。
「いってらっしゃい」。

佐吉が久太郎が行くのを、見送る。
そして顔を隠しながら、町で一人の浪人を見る。
町を行く、浪人の後をつけていく。

そして飯屋から出てきた浪人に、ぶつかる。
浪人は、楊枝をくわえていた。
いつか、猫を斬ろうとして、久太郎に撃退されたあの、浪人だった。

その浪人は、転んだ佐吉の首根っこをつかむと無理やり立たせ、「気をつけろ」とすごんだ。
「すみません…」。
その凶暴そうな目の色を見た佐吉は走っていき、「お侍様!」と後姿に向かって声をかける。
「お侍様に折り入って、お話があります。お侍様を、剣の達人とお見受けしてお願いしたいことが」。

辺りを見回してして「ここではなんですので」と言うが、浪人は「ここで話せ」とすごんだ。
「実は内々に斬っていただきたいものが」。
「物騒だな」。
「お礼はたっぷりと」。

浪人は、楊枝を捨てる。
チャキッと音を立て、刀を手に取る。。
「この名刀・小銀次に斬れぬものはない」。
佐吉が、黒い笑いを浮かべる。

御前試合の行われる屋敷の門の前で、久太郎は心の中で歌っていた。
天下の妖刀 一太刀で 広くその名をとどろかせ 百戦錬磨の剣さばき 斬るべし!斬るべし!斬るべし!無敵の斑鬼♪
「頼もぉ↑!」

だがその声は、裏返っていた。
(まずい、結構緊張している)。
もう一度、今度は太い声で言った。
「頼もう」。

「斑目久太郎だ」。
戸が開く。
「待っておったぞ」。

ひえじいと呼ばれていた、久太郎とも交流したあの猫好きの老人が絵を描いている。
そこに佐吉と、あの浪人がやってきた。
「実は猫を連れた、めっぽう強い浪人がおりまして。猫と一緒に、まとめて始末していただきたいのです」。

「猫もか」。
「はい」。
「3両お支払いします」。
「6両だ」。

「猫と浪人。合わせて6両」。
佐吉は一瞬、黙ったが「わかりました。両方とも確実に斬ってくださいね」と言った。
「ああ」。

その時、浪人が老人に気づく。
「誰だ」。
その声で、老人が飛び上がる。

「何だ、ひえじいか。驚かすなよ」と佐吉が言った。
「お前さんこそ、こんなところで油売ってると与左衛門さんに叱られるぞ」、
老人を見た浪人が、「お前、見た顔だな」と言う。

あの時の浪人。
わかった老人は、絵の道具を放り出して逃げ出した。
佐吉はそれを見たが、話を続ける。

「話の続きなんですがね」。
だが浪人は言った。
「ひとつ教えてやる。俺はな。人を斬るのが大好きなんだよ…」。
その目の色に、思わず佐吉も言葉を飲み込む。

「お七さーん!」
猫見屋の前を掃き掃除している、お七に老人が走ってきて叫ぶ。
「何をあわててるんだい」と、お七が聞く。

「聞いておくれよ、佐吉が。佐吉が」。
「加賀屋の佐吉かい?」
「ああ、そうなんだよ。佐吉が悪い侍と一緒になって、猫を斬るとか斬らないとか、よからぬ相談を!」
お七は、すぐに何のことか、理解した。

「玉之丞!」
「誰かが止めんと、大変なことになるぞ」。
「お店お願い!」
お七は、老人にほうきを渡すと走っていく。

屋敷では、久太郎が「今日の段取りだ」と立花と竹下に話をされていた。
途中までは、試合は一進一退。
だが途中から久太郎の旗色が悪くなり、負けるという段取りになっていた。

「決して殿にも、内藤様にも気づかれるなよ」。
「承知した」。
目を閉じる久太郎。

佐吉は、あばら家に浪人を連れてきた。
「あそこです。あの中に浪人と白猫がいます」。
浪人は、すぐに刀を抜こうとする。
だが佐吉は「ちょっとお待ちを。先に様子を見てまいります」と言った。

あばら家の中。
鍋の中で、寝ている玉之丞。
その横のむしろで寝転がる若菜。

お七は走る。
l久太郎の試合が行われる屋敷の、戸を叩く。
「お願いいたします!どなたか!お願いいたします!」と叫ぶ。
門が開いて、門番が顔を出す。

座敷で目を閉じ、正座をしている久太郎。
「斑目様」と声がかかる。
久太郎は、障子を開けて外を見た。

門番が「お七と名乗る女からです」と言って、結び文を差し出した。
一礼して去っていく。
久太郎が、手紙を開く。
その時、迎えが来た。

手紙には「佐吉にばれた玉があぶない」と書かれていた。
「斑目殿、時間だ」。
久太郎は、試合の行われる場所とは反対に歩いていく。

「どうした!」
「おい、待て!そちらでは!」
「斑目!今さら裏切るわけではあるまいな!」

うろたえた立花と竹下を無視して、久太郎は急ぐ。
「何事か」。
内藤がやってきた。
「斑目が!」

「待て、斑目!どこへ行く!俺との決着をつけろ!」
久太郎が足を止めた。
「急な用向きができた」。
「勝負より大事とは、如何に!」

「行かねば!」
久太郎は門を出た。
お七が待っていた。
「急いで」と言う。

久太郎は、走る。
ひた走る。
内藤は、唇を噛み締めた。

『世の中には、銭より大事なものがある』。
『父上の言葉の意味、今ようやくわかった!』
『玉之丞!』
さあ走れ もどかしく足もつれあう 無事でいてくれ 心だけ先行く



次回予告で、オールスター大運動会と称された今回。
佐吉、走る。
八五郎、走る。
そして久太郎、走る!

猫壷を開けようとした時、佐吉が怯えて絶叫するのがおかしい。
つられて、八五郎がびびるのもおかしい。
さらにおかしかったのは、猫壷を開けたら梅干がならんでいたところ。
うん、確かに梅干には良い環境を作っていたかもしれない。

さらにさらに、八五郎の一言。
「「猫って死んだら、梅干になるんですか」。
爆笑。
「んなわけねえだろ!」がまた、おかしい。

『今日まで剣之道をただひたすらに歩んできた。まさか天下の斑鬼が』。
「まいりました!」
『猫に土下座…』。
このタイミングが、笑いを誘う。

もうすっかり、鳴く玉之丞に話しかける口調が、デレデレしている。
「そんな風に言うなぁ~。これは練習だぁ。んん~?」って感じです。
北村さんって猫好きなんじゃないかな?と思わせる口調。

もう一度鳴かれて、軽蔑されているのではないかと、動揺している。
同情?!とも思っている。
前回、覚悟を決めた久太郎だけど、今回やっぱり、「負けるのはやだなあああ」。

こういった内心の動揺を玉之丞、ナデナデで抑える。
すっかり、玉之丞は久太郎の話し相手。
精神安定剤になっている。

佐吉の怨念爆発。
頬かむりしてそろそろ動く佐吉。
この俳優さん、仕草がうまい~。

押入れの下段に潜む佐吉に、若菜が気づかないのが笑える。
急いでいると、案外、目的以外には目が向かないのかも。
だけど、この時、気づいていれば…!



斑鬼のテーマソングを歌って気持ちを落ち着かせて、「頼もう!」と言うが、この声がもろに上ずっていて笑える。
北村さんの高い声。
あの門番が、取次ぎといい、久太郎に対して礼儀正しくなっている。

そして2話で登場した、浪人さん登場。
あの時はとんだヘタレで、あっさり刀を叩き落されて、一瞬、情けな~い顔したんですが。
密談をあの老人に聞かれる因縁つき。

結局、八百長ができない久太郎が勝ってしまうのではないかという予想ではなく、試合自体を放棄する展開となりました。
『世の中には、銭より大事なものがある』。
この言葉が、今まさに実感として迫ってきている。

『玉之丞!』の呼びかけに、切迫感が漂う。
もどかしく足もつれあう 無事でいてくれ 心だけ先行く
この気持ち、わかる。

無事でいて~!
「終わりの始まり」とか、嫌~。
玉之丞と久太郎は、離れ離れになってほしくない。


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2014.01.05 / Top↑
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