こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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なあと問うてもニャアと答えず 「猫侍」第11話

第11話。


外から、あばら家をのぞきこむ佐吉と、佐吉から刺客依頼をされた浪人・蜂谷孫三郎。
すぐにでも刀を抜こうとする蜂谷を抑えて、佐吉が様子を見に走る。
あばら家の中で、むしろを敷き、その上で若菜が眠っている。
傍らの鍋の中には、玉之丞が眠っている。

佐吉が、忍び寄ってくる。
玉之丞は確認できたが、久太郎がいない。
「あれ?いねえええ」と、小声でつぶやく。

蜂谷は、「娘もろとも串刺しだ」と言うが、久太郎も討ちたい佐吉は「いやいや、浪人が戻るまでお待ちください」と頼む。
「先に猫だけ、連れてまいります」。
蜂谷は、刀を抜いて立って待つ。

佐吉は蜂谷を手で制すと、玉之丞を連れに中に入った。
そっと壁伝いに忍んでいく。
だが、玉之丞にたどり着くには、若菜をまたがねばならない。
若菜が、寝返りを打った。

玉之丞のいる鍋に、佐吉が手を伸ばす。
すると、と若菜がまた寝返りを打った。
若菜に触れないよう、佐吉が手を伸ばす。

鍋に手が届くと思った瞬間、若菜が目を見開いた。
いきなり佐吉に噛み付いた。
「ああああ!」と佐吉が悲鳴を上げる。

にゃあお!と、玉之丞が鳴く。
若菜が、玉之丞を抱きかかえる。
「うおおおお!」
蜂谷が刀を抜いて乱暴に戸を開ける。

勢いで、戸が外れる。
「危ない」と佐吉が蜂谷を避ける。
「いつまで待たせるんだ。早く斬らせろ!小銀次が血を吸いたがってるんじゃ!」

蜂谷が佐吉に詰め寄っている間に、若菜は部屋の隅にあったつづらに玉之丞を隠した。
「あっち!」
佐吉があちらが玉之丞だと、蜂谷に言う。
蜂谷が、刀を手に近づいてくる。

若菜が両手を伸ばし、とおせんぼをする。
この先には行かせない。
蜂谷が「この名刀。小銀次の切れ味を堪能させてもらおうか」と言った。
若菜が目を閉じる。

蜂谷が、刀を振り上げる。
「待てえ!」
久太郎の声が響く。
「きたあ~」。

安堵で、若菜の顔がゆがむ。
「貴様…」。
やっと駆けつけた久太郎は、肩で息をしている。
「その顔を覚えているぞ」と蜂谷が言った。

あの時を、思い出す。
蜂谷は、久太郎に刀を落とされたのだ。
「ついに決着をつける時が来たな」。

蜂谷は両手に刀を持ち、構える。
だが久太郎は、「すでに決着済みだ」と言い放つ。
「あの時は、ぞうりが滑っただけだ!」
「猫のクソでな」。

蜂谷の顔色が変わる。
「こんのやろうおお~!」
久太郎に向かって、蜂谷が走って来る。
刀を頭上に振り上げる。

だが、蜂谷が振り上げた名刀・小銀次は、あばら家の軒下に刺さった。
小銀次は刺さり、蜂谷の手から抜けた。
刀を持ったつもりの蜂谷は、久太郎に向かって猛突進してきた。

そして、手の中に刀がないことに気づいた。
何も持たずに、走ってくることに気づいた。
「ないっ!」

蜂谷は、自分の手の中に刀がないことに呆然とした。
振り向き、今度は片方の手にある小刀を向けようとする。
チャリン。
せこい音がした。

蜂谷の小刀が、まるであしらわれるように久太郎の刀の先で、はじかれ、地に落ちた。
ほとんど、何の力もいれず、久太郎の刀は蜂谷の小刀を落とした。
ドドン、と、一巻の終わりの太鼓の音がした。

刀を向けられた蜂谷は、硬直した。
だが、久太郎が斬る気がないのがわかると、一目散に逃げていく。
佐吉が、軒下に刺さった蜂谷の刀を見つめている。

(なんだあいつは…)。
久太郎は、不可解なものを見る目で、蜂谷が逃げていく姿を見ていた。
「約束を破ったな!」という、佐吉の声が響いた。
「玉之丞を、なぜ斬らなかった!腰抜け侍!」

「3両返せ!嫌なら今すぐ、玉之丞を斬ってみろ!」
「斬ってみろ!」
恨み骨髄という目をして、刀を手にした佐吉が立っていた。

佐吉はしゃべりはじめた。
「あいつが来る前は、旦那様と楽しく暮らしていたんだ。…もう二度と帰れない」。
佐吉が遠い目をした。
だが次に佐吉は「くっそう!」と怒鳴ると、あばら家の中に走っていく。

「やめて」と、若菜が佐吉を阻止しようとする。
佐吉は若菜を突き飛ばし、つづらを開ける。
中には、玉之丞がいた。
玉之丞は驚いて、佐吉の方を振り返る。

「うわああああ!」
佐吉が叫び、刀を振り上げる。
「ああああああ!」
絶叫する佐吉。

怯えた玉之丞が、見ている。
再び、絶叫する佐吉。
玉之丞が、ジッと佐吉を見つめる。

「あああああ~っ!」
言葉にできない声をあげ、佐吉が刀を頭上に振り上げる。
だがその刀は、背後から久太郎に押さえられた。
佐吉は、外に放り出された。

「玉之丞のことは忘れろ」。
久太郎に言われた佐吉は「どいつもこいつも、猫ばっかり大事にしやがって」と言った。
佐吉が魂を抜かれたように、立ち上がる。
そして、肩を落として去っていく。

ちりん。
玉之丞の鈴が鳴る。
やがて佐吉は泣き叫びながら、林を抜けていく。

ぺたりと膝を折り、佐吉は泣き始めた。
号泣した。
子供が駄々をこねるようにひっくり返り、泣いた。

若菜が「玉ちゃん、良かったねえ。お侍さんが助けてくれたよ。ほら」と玉之丞に話しかけた。
久太郎は、若菜から玉之丞を手渡された。
玉之丞を腕の中に抱きながら、話しかける。
「お前はうちに、帰ろうな」。

そして若菜に向かって、「こいつは加賀屋に返す」と言った。
「お城勤めは?」
久太郎はそれには答えず、「幸せに暮らせ」と玉之丞に言った。

玉之丞のわきの下を持ち上げ、顔をじっと見る。
そして抱き寄せる。
お七が、立っていた。
「無事だったんだね」。

「もう逃げるのは辞めた。俺はまっすぐに生きたい。いろいろ、世話をかけた」。
久太郎は、玉之丞を抱いて歩く。
懐に玉之丞を抱え、久太郎は町を歩く。

夜になっていた。
久太郎が、番屋の前に立っている。
中から、石渡が出てくる。

「玉之丞だ」。
そう言って、玉之丞を石渡に見せた。
久太郎が、牢屋の廊下を歩く。
牢の戸が開く。

ピチャン、ピチャンと水がたれる音がする。
牢の中に、久太郎が入る。
石渡たちが去っていく。
久太郎は目を閉じ、正座をする。

「私には逃げる場所など、どこにもないのでね」という声がする。
目を開けると、牢の隅に佐吉が足を抱えて、居た。
「お侍さまあ、気がついたことがあるんですよ」。
「私が玉を殺そうとした時にね」。

あの時、玉之丞に向かって、佐吉は叫んでいた。
玉之丞は、じっと見つめていた。
「一瞬、胸が苦しくなりました。旦那様や、お侍様のお心持が…。わかったような気ががしたんです」。
久太郎は、佐吉を見ていた。

夜の中、立花と竹下は堀の前で酒を飲んでいた。
「これから、どうなるんですかねえ?」
「わからん」。

「謝りましょう」。
「ばあか」。
「そうですよね」。

「俺たち、切腹かなあ」。
「やっぱりそうなります?」
「あああ」。

「こうなったらいっそ、侍なんかやめちまうか」。
すると、「あのう、すいません」と気弱そうな声がする。
蜂谷が、立っていた。

「侍辞めるんでしたら、その刀、譲ってもらえません?」
「はあ?」
立花と竹下の、怪訝そうな顔に、蜂谷は「へへっ」と笑った。

玉之丞を抱いた与左衛門が、石渡たちを見送る。
「本当に何と、お礼を申し上げてよいやら」。
与左衛門と玉之丞を見た石渡は、「仲良く暮らせ」と言って去っていく。

加賀屋の前にいる与左衛門に、「与左衛門さん。こんにちは」と声がかかる。
お七だった。
「これはこれは、猫見屋さん」。

「玉之丞のことで、どうしてもお話しておきたいことがありまして」。
「はあ」。
与左衛門が、不思議そうな顔をする。

長屋に、仕事帰りの若菜が屋台を引いてやってくる。
玉之丞の鞠と猫じゃらしを手に、久太郎の部屋の前に立つ。
そっと、戸を明ける

久太郎の後姿を見て、「あ。おかえり」と驚く。
「でもなんで?」
久太郎の話は、こうだった。

牢に、与左衛門がやってきたのだった。
「佐吉」と、佐吉に声をかける。
「旦那様!」

ボロボロになっていた佐吉だが、それでも与左衛門を見ると佐吉は着物の前御取り繕い、立ち上がった。
「佐吉と少し、話がしたいのですが」。
与左衛門は、石渡に許可を取った。

「佐吉よ、お前、何でこんなことしたんだい?」
聞かれた佐吉は、うなだれた。
「すいませんでした。笑われるかもしれませんが、佐吉は…、玉之丞に嫉妬していたのです」。

与左衛門は、黙って聞いていた。
「子供の時から、実の子のように、かわいがってもらいました。…玉之丞が来てからは、旦那様の心は、どんどん、どんどん、私から離れていくので。それが寂しくて。寂しくて…。
「玉之丞は旦那様の心を奪った、化け猫だと考えるようになったんです。それで、お侍様に頼んで斬ってもらおうと…」。

「猫に嫉妬するなんて、ばかげている。頭ではわかっていたんですが、旦那様の心を取り戻すには、この方法しかないと考えるようになってしまって…。本当にすいませんでした」。
佐吉は頭を床に、こすりつけるように下げた。
与左衛門は石渡に言った。

「お聞きのように、悪いのは全部、佐吉です。あのお侍様は逆に、玉之丞の命を救ってくれたんです」。
「しかしだな」。
「猫見屋さんから聞きました」。

「それに…。玉之丞を見れば、わかります。ちゃんと真心を込めて、世話してくださっていたことが。お侍様に罪は、ありません。どうか自由にして差し上げてください」。
石渡は、「ならば佐吉を責めるか」と聞いた。
「いえ!佐吉もまた、ここから出してやってください」。

「旦那様」。
「この出来損ないを!もう一度、私の手元で教育し直します。もう二度と人様に迷惑をかけない、真人間にして見せますので。どうか!今回だけは!許してやってください」。
佐吉が目を閉じる。

話を聞き終えた若菜は、「玉ちゃん、ちゃんと、家族のところに帰れたんでしょ?良かったね!じゃあ、これ返すね」と、鞠と猫じゃらしを置いた。
久太郎は、何も言わなかった。
若菜は努めて、明るい声で「じゃあ、また明日」と言った。
だが、相変わらず久太郎は背を向けたままだった。

若菜がいなくなると、久太郎は「家族、か」と、つぶやいた。
久太郎はまた、思い出していた。
加賀を出る時だった。

「父上!」と、お春が呼んでいた。
「本当に、行ってしまわれるのですね」。
お春はそう言うと、久太郎に「これを」と言って、お守り袋を出す。

守り袋の、鈴の音が鳴る。
玉之丞の首につけた、鈴が鳴っていたことを思い出す。
思い出から帰ってきた久太郎は、自然に「玉之丞」と声をかけた。

声をかけて、振り向いた。
そして、気づく。
鞠があるだけだということに。

行く道を確かめながら振り返る なあと問うても ニャアと答えず



前半が緊迫の展開で、後半は静か~に進行します。
すべての糸が、解けていくように進行します。
結末に向かって、穏やかに。

佐吉の狂気が爆発して、しおれて、泣いて。
魂が抜けて。
与三郎の言葉に、涙して。

佐吉は玉之丞に嫉妬したけど、与左衛門にとって玉之丞は子供みたいなもんだったんじゃないか。
決して、佐吉が用がなくなったわけじゃなくて、佐吉は佐吉で、そばにいてくれるのが当たり前の存在だった。
玉之丞に会いに行って来い!って言えるような、気を許した存在だった。
佐吉と玉之丞は、かわいがってる次元が違うんだけど、佐吉にはそう思えなかった。

子供のように泣き喚く佐吉を見て、この人は与左衛門の愛に飢えた子供だと思いました。
どういう事情かわかりませんが、小さい頃から加賀屋に来て、若かった与左衛門にかわいがってもらったんでしょう。
本当に、与左衛門の子供のような気分だったんでしょう。
でも玉之丞が来てからは、お前は俺の子供じゃない、って言われたような気分だったんじゃないかな。

まるで何かに取り付かれたように、佐吉はどす黒い悪意に支配された。
自分のうまく行かないすべてのことが、玉之丞のせいのような気がして。
玉之丞に、もやもやをぶつけて。
猫に。

バカみたいだけど、自分には玉之丞が化け猫で、全部玉之丞のせいのような気がしていた…。
でも自分もやっぱり、玉之丞を斬れなかった。
玉之丞に夢中になる気持ち、久太郎が斬れなかった気持ちがわかる。

斬れなくて良かった。
だから、佐吉は戻ってこられた。
加賀屋にも、人間としても。
自分の手に運命をゆだねるしかない、小さなものの命を奪うようなことをしたら。

与左衛門さんも許さないだろうし、鬼になってしまってたと思う。
ボロボロになって、抜け殻になって、それでも人としての心を取り戻した。
この心の動きを、俳優さんがちゃんと演じてくれました。
水澤紳吾さん、すばらしい。

すごい、すごい間抜けだったのが、蜂谷。
あまりに期待はずれの、拍子抜けでした。
いや~、この人、人どころか、何にも斬ったことないでしょ。
顔が怖いだけで、全然気の弱い人でしょ。

そういう点では、久太郎と似ているかもしれない。
立花と竹下に見せた、いたずらっ子みたいな笑顔。
蜂谷さん、ご苦労様でした。

一方、ため息が止まらない、立花と竹下。
切腹するぐらいなら、いっそ、ザリガニ侍みたいに浪人になっちゃおうかと話し合う。
あんなにえらそうに久太郎に仕官と言っていた2人が、武士の身分なんて捨てちゃう、捨てること考えるんだ。
2人してザリガニ釣ってたら、笑える。

「仲良く暮らせ」。
久太郎も、石渡も言います。
この言葉で、石渡って正義感強い、悪い人じゃないんだろうなって思いました。

お七が、久太郎のために与左衛門に話をしに行く。
与左衛門は「猫見屋さん」知っていたのか。
さすが。
ずーっと寝込んで、「たまのじょ~」と腑抜けになっていた与左衛門は、人格者で、有能なご主人でした。

お七の話と、何よりも玉之丞の様子を見たら、久太郎と言う人が与左衛門にはわかったんでしょう。
佐吉を責めないところ、暖かい口調がすばらしかった。
子供の頃から面倒を見ていた佐吉を、あそこまで追い込んだ責任感じたのかな。

加賀屋ほどの屋敷を持つような商売をするんだから、只者じゃないはずだけど、すばらしかった。
きっと佐吉はそんな旦那様を尊敬しているし、大好きなんだろうなって思いました。
それも納得。

久太郎もまた、玉之丞をきっかけに、外見とは違う人だって知ってもらえた。
剣の道一筋で、不器用で、人にわかってもらえなかった久太郎。
家族ともうまく心を通じさせられなかった久太郎。
剣の道だけでいい、と、そんな自分に言い訳して、それでよかった久太郎。

玉之丞という失いたくない存在を得て、久太郎は一人じゃやっていけなくなった。
その代わり久太郎に、いろんな人が手を差し伸べた。
お七、若菜、与左衛門。
久太郎に、人とのかかわりができた。

しかし久太郎は、玉之丞を返してしまう。
一緒にいる自分の幸せより、自分と離れた時の相手の幸せを優先できるのが本当の愛情っていうけど、まさにそれ。
それでも当たり前のように話しかけて、いないことに気づくこの寂しさ。
玉之丞のいた痕跡だけが残っている、この喪失感。

そうなんだ。
猫は、自分の猫は、そこからいなくなってはいけない存在なんだ。
そんなことを思いました。

寂寥感たっぷりの、ラスト。
なあと問うても、ニャアと答えず。
涙が出るほど、これはつらい。
つらいですよ~。


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