沖雅也の哀しい目「悪魔が来たりて笛を吹く」
2008.11.30 (Sun)
映画にもなりましたが、これは古谷一行のTV版「横溝正史シリーズ」のものが好きです。
金田一耕助(古谷一行)に、椿子爵の娘の椿美禰子(みねこ)(檀ふみ)から依頼が来る。
世間では宝石店の従業員が偽りの薬で毒殺され、宝石が盗まれた天銀堂事件という大事件が起きた。
父・椿英輔(江原真二郎)はその容疑者にされたのだが行方不明となり、死体で発見された。
しかし椿邸ではたびたび、英輔らしき人物が目撃され、母親のあき子(草笛光子)は怯え切ってしまっているのだという。
椿邸にはあき子、あき子に幼少時から仕える忠実な乳母の信乃(原泉)、あき子の兄の新宮利彦(長門裕之)とその妻・華子(岩崎加根子)、息子(星 正人)の一彦、あき子と利彦の叔父である玉虫伯爵(加藤 嘉)とその愛人・菊江(中山麻里)がいた。
さらにあき子の主治医で、あき子の愛人らしき目賀重亮(観世栄夫)、椿英輔の旧友の息子で今や食料の調達から庭師まで椿家を支える三島東太郎(沖雅也)、使用人のお種(白石幸子)が同居していた。
その夜、降霊術のごとき砂占いが行われている最中、停電になる。
電気が普及した時、砂の上には英輔が「悪魔の紋章」と言い残した紋章の形がくっきり残っていた。
そして英輔が作曲したフルートの曲、「悪魔が来たりて笛を吹く」のレコードが流れる。
夫は本当に死んだのだろうか、と怯えるあき子。
翌日、玉虫伯爵が部屋で絞殺死体となって発見される。
部屋は完全に密室状態だった。
金田一耕助は天銀堂事件の容疑者となった際、英輔がアリバイとして主張した須磨へ赴く。
そこには椿家の別荘跡があり、その石灯籠には英輔の字で「悪魔ここに誕生す」と書かれていた。
東京で新宮利彦が殺害された。
新宮利彦を調べていた金田一は、椿家に出入りしていた植木職人・河村辰五郎が新宮利彦に娘を妊娠させられた話を聞く。
金田一は利彦の子供を生んだ辰五郎の娘・駒子に話を聞きに島へ渡る。
しかし一足違いで、辰五郎の娘・駒子は殺されていた。
更に椿邸では目賀博士が殺される事件が起きる。
東京で殺された、天銀堂事件の犯人とおぼしき人物。
天銀堂事件、椿邸宅の事件が重なり合った時、犯人と共に椿家のおぞましい秘密が暴かれる…。
古い華族のお屋敷で繰り広げられる惨劇なんですが、このTVシリーズは英輔が悪魔とは誰か告発していた曲「悪魔が来たりて笛を吹く」が良いです。
フルートの音から、悪魔がのろわれた華族をあざ笑っているような、覗き見しているような光景が浮かぶようです。
草笛光子さんは、私には凛とした女性の役が印象的な女優さんなので、こういう流されるタイプの女性役は珍しかった。
加藤嘉さんは姪っ子を溺愛している伯爵役。
「前略おふくろ様」での、渡辺組の娘を心配する役とは全然違う、生臭さのある役です。
愛人役の中山麻里さんは、「傷天」の3話のマリ役のような妖しい魅力があります。
江戸〜明治にはこういう怖いおばあちゃんがいただろうな、と思わせるのは乳母役・原泉さん。
この方の迫力といったら、菅井きんさんはまだ愛嬌があります。
品があって、威厳があって、この方に
「お嬢様はもうお休みになられました。お下がりなさい!」と一喝されたら、刑事さんじゃなくても引っ込みます。
70年代に作られた「犬神家の一族」では、松子の母親役で出てます。

そして、やっぱり特筆すべきは沖雅也さん。
戦争中のりりしい出征兵士姿。
現実的な生活の処理が何一つできない華族に代わって実務をこなす、頼りになる男を演じています。
三島の背後にあった重い、あまりにも重い過去。
最後に唯一残った妹に手を伸ばすも、その理由を知らない妹には三島は避けるべき存在としか映らない。
愛情を込めたであろう手を、すっと身を交わされた沖さんが浮かべる微妙な表情。
自己を否定するしかない、世の中を、自分の親を呪うしか生きる術がなかった絶望的な三島という男。
それでもなお、心のどこかで求めていた親に自分を認めさせる方法が、これしかなかった悲劇。
愛する女性を失った悲しみ、知らないうちに自分が背負っていた因縁。
沖さんの目は、そんなものを全て感じさせる哀しい、美しい目です。
いろんな感情が入り交ざった、言葉にできない言葉が語られている目でした。
最後に面白いので、雑誌「ダヴィンチ」特別編集の「金田一耕助」本から、日本の爵位の説明を載せたいと思います。
日本における爵位は横溝正史はもちろん、ドラマでもたまに出てきますね。
明治維新後、公卿と大名は華族となり、明治17年(1884)発布の華族令で5段階に分けられた。
・公爵:旧摂家、徳川宗家など
・侯爵:旧精華家、徳川旧三家、15万石以上の大名
・伯爵:旧堂上家、徳川旧卿、5万石以上の大名
・子爵:5万石未満の大名
・男爵:明治維新後、華族に列せられた者
とあります。
金田一耕助(古谷一行)に、椿子爵の娘の椿美禰子(みねこ)(檀ふみ)から依頼が来る。
世間では宝石店の従業員が偽りの薬で毒殺され、宝石が盗まれた天銀堂事件という大事件が起きた。
父・椿英輔(江原真二郎)はその容疑者にされたのだが行方不明となり、死体で発見された。
しかし椿邸ではたびたび、英輔らしき人物が目撃され、母親のあき子(草笛光子)は怯え切ってしまっているのだという。
椿邸にはあき子、あき子に幼少時から仕える忠実な乳母の信乃(原泉)、あき子の兄の新宮利彦(長門裕之)とその妻・華子(岩崎加根子)、息子(星 正人)の一彦、あき子と利彦の叔父である玉虫伯爵(加藤 嘉)とその愛人・菊江(中山麻里)がいた。
さらにあき子の主治医で、あき子の愛人らしき目賀重亮(観世栄夫)、椿英輔の旧友の息子で今や食料の調達から庭師まで椿家を支える三島東太郎(沖雅也)、使用人のお種(白石幸子)が同居していた。
その夜、降霊術のごとき砂占いが行われている最中、停電になる。
電気が普及した時、砂の上には英輔が「悪魔の紋章」と言い残した紋章の形がくっきり残っていた。
そして英輔が作曲したフルートの曲、「悪魔が来たりて笛を吹く」のレコードが流れる。
夫は本当に死んだのだろうか、と怯えるあき子。
翌日、玉虫伯爵が部屋で絞殺死体となって発見される。
部屋は完全に密室状態だった。
金田一耕助は天銀堂事件の容疑者となった際、英輔がアリバイとして主張した須磨へ赴く。
そこには椿家の別荘跡があり、その石灯籠には英輔の字で「悪魔ここに誕生す」と書かれていた。
東京で新宮利彦が殺害された。
新宮利彦を調べていた金田一は、椿家に出入りしていた植木職人・河村辰五郎が新宮利彦に娘を妊娠させられた話を聞く。
金田一は利彦の子供を生んだ辰五郎の娘・駒子に話を聞きに島へ渡る。
しかし一足違いで、辰五郎の娘・駒子は殺されていた。
更に椿邸では目賀博士が殺される事件が起きる。
東京で殺された、天銀堂事件の犯人とおぼしき人物。
天銀堂事件、椿邸宅の事件が重なり合った時、犯人と共に椿家のおぞましい秘密が暴かれる…。
古い華族のお屋敷で繰り広げられる惨劇なんですが、このTVシリーズは英輔が悪魔とは誰か告発していた曲「悪魔が来たりて笛を吹く」が良いです。
フルートの音から、悪魔がのろわれた華族をあざ笑っているような、覗き見しているような光景が浮かぶようです。
草笛光子さんは、私には凛とした女性の役が印象的な女優さんなので、こういう流されるタイプの女性役は珍しかった。
加藤嘉さんは姪っ子を溺愛している伯爵役。
「前略おふくろ様」での、渡辺組の娘を心配する役とは全然違う、生臭さのある役です。
愛人役の中山麻里さんは、「傷天」の3話のマリ役のような妖しい魅力があります。
江戸〜明治にはこういう怖いおばあちゃんがいただろうな、と思わせるのは乳母役・原泉さん。
この方の迫力といったら、菅井きんさんはまだ愛嬌があります。
品があって、威厳があって、この方に
「お嬢様はもうお休みになられました。お下がりなさい!」と一喝されたら、刑事さんじゃなくても引っ込みます。
70年代に作られた「犬神家の一族」では、松子の母親役で出てます。

そして、やっぱり特筆すべきは沖雅也さん。
戦争中のりりしい出征兵士姿。
現実的な生活の処理が何一つできない華族に代わって実務をこなす、頼りになる男を演じています。
三島の背後にあった重い、あまりにも重い過去。
最後に唯一残った妹に手を伸ばすも、その理由を知らない妹には三島は避けるべき存在としか映らない。
愛情を込めたであろう手を、すっと身を交わされた沖さんが浮かべる微妙な表情。
自己を否定するしかない、世の中を、自分の親を呪うしか生きる術がなかった絶望的な三島という男。
それでもなお、心のどこかで求めていた親に自分を認めさせる方法が、これしかなかった悲劇。
愛する女性を失った悲しみ、知らないうちに自分が背負っていた因縁。
沖さんの目は、そんなものを全て感じさせる哀しい、美しい目です。
いろんな感情が入り交ざった、言葉にできない言葉が語られている目でした。
最後に面白いので、雑誌「ダヴィンチ」特別編集の「金田一耕助」本から、日本の爵位の説明を載せたいと思います。
日本における爵位は横溝正史はもちろん、ドラマでもたまに出てきますね。
明治維新後、公卿と大名は華族となり、明治17年(1884)発布の華族令で5段階に分けられた。
・公爵:旧摂家、徳川宗家など
・侯爵:旧精華家、徳川旧三家、15万石以上の大名
・伯爵:旧堂上家、徳川旧卿、5万石以上の大名
・子爵:5万石未満の大名
・男爵:明治維新後、華族に列せられた者
とあります。
ごろ寝の人 |
2008.12.01(月) 12:29 | URL |
【編集】
>ごろ寝さん
横溝正史シリーズ、「犬神家の一族」もすごいんですよ。
犬神家の廊下のガラスに全部「犬神」の紋章が入ってるんです!
菊人形の首は…なんですけど、TVシリーズでも美術にも凝った作りになってます。
俳優さんもスタッフさんも、いい仕事してます。
>世界の貴族でも「公候」だけが本当の王家ですね。
「公候」には越えられないものがあるんですねえ…。
男爵は功労者へ送られる爵位と考えていいんでしょうね。
こういうの知って映画やドラマを見ると、またちょっと違っておもしろかったりしますよね。
横溝正史シリーズ、「犬神家の一族」もすごいんですよ。
犬神家の廊下のガラスに全部「犬神」の紋章が入ってるんです!
菊人形の首は…なんですけど、TVシリーズでも美術にも凝った作りになってます。
俳優さんもスタッフさんも、いい仕事してます。
>世界の貴族でも「公候」だけが本当の王家ですね。
「公候」には越えられないものがあるんですねえ…。
男爵は功労者へ送られる爵位と考えていいんでしょうね。
こういうの知って映画やドラマを見ると、またちょっと違っておもしろかったりしますよね。
私も金田一耕助は古屋さんの方が好き。
なんかね、こっちの方が親しみがあるように思います。茶木みやこさんの歌も良かったですね。
「金田一耕助の冒険」というイメージアルバムがあるんです。「本陣殺人事件」とか「獄門島」「悪魔が来たり手笛を吹く」など、代表的な金田一作品をイメージしたアルバムで、ここに収録されている楽曲が秀逸なんです。
CD化もされていて、映画の主題歌や茶木みやこさんの歌も「まぼろしの人」「あなたは何を」「あざみの如く棘あれば」なんかも収録されています。
今でも売ってるのかな?
見かけたら是非!お勧めですよ♪
なんかね、こっちの方が親しみがあるように思います。茶木みやこさんの歌も良かったですね。
「金田一耕助の冒険」というイメージアルバムがあるんです。「本陣殺人事件」とか「獄門島」「悪魔が来たり手笛を吹く」など、代表的な金田一作品をイメージしたアルバムで、ここに収録されている楽曲が秀逸なんです。
CD化もされていて、映画の主題歌や茶木みやこさんの歌も「まぼろしの人」「あなたは何を」「あざみの如く棘あれば」なんかも収録されています。
今でも売ってるのかな?
見かけたら是非!お勧めですよ♪
オギャン |
2008.12.01(月) 20:06 | URL |
【編集】
>オギャンさん
>茶木みやこさんの歌も良かったですね
好きなんですけど、20年以上、全然聞いてませんでした。
DVD発売で「ああ、そうそう、この曲、この声だった」と感激しました。
>「金田一耕助の冒険」
もしや、あのフルートの曲も入ってるんですか?!
「まぼろしの人」も好きだったけど「あざみの如く棘あれば」も好きでしたよ〜。
これは探さねば…。
>茶木みやこさんの歌も良かったですね
好きなんですけど、20年以上、全然聞いてませんでした。
DVD発売で「ああ、そうそう、この曲、この声だった」と感激しました。
>「金田一耕助の冒険」
もしや、あのフルートの曲も入ってるんですか?!
「まぼろしの人」も好きだったけど「あざみの如く棘あれば」も好きでしたよ〜。
これは探さねば…。
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それにしても、役者もそろってるし、できばえも良かったでしょう。
見たいですねえ。
爵位、「公候伯子男」なんて言って、覚えたもんです。世界の貴族でも「公候」だけが本当の王家ですね。男爵は、血族関係なし。これを見ると、やはり、日本でもそうだったようですね。