こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
2017年07月 ≪  12345678910111213141516171819202122232425262728293031 ≫ 2017年09月
TOP必殺以外の時代劇 ≫ おもしろい生涯でござりました 「徳川家康・本能寺の変」

おもしろい生涯でござりました 「徳川家康・本能寺の変」

夜中、ふと信長は目を覚ます。
宴で酔った家臣が騒動を興しているのかと思った。
だがすぐに、それは違うと悟った。

ひづめの音。
馬だ。
ケンカではない。

小姓たちが外をうかがい、水色に桔梗の紋が見える。
光秀だ。
謀反。
謀反でござるぞ!

さすが、信長が選りすぐって連れてきた小姓たち。
このような事態を誰も予想していなかったにも関わらず、一瞬にして最良の防御の体制を取った。
「かくなる上はぜひもなし。目に物見せて、腹切ろうぞ!」
そう言うと、弓矢を構える信長。

ふと傍らの濃姫に気づく。
「お濃か!」
「はい!」
「そなたは女どもを引き連れて、今のうちに早く落ちよ!」

だが、お濃は動かない。
「お濃!」
「そのお役目、他のものにお申しつけください」。

今、本能寺には足軽、小物まで含めてせいぜい3百。
明智軍、1万を3対に分け、本能寺を取り囲んでいる。
弓矢を構えながら、信長の顔に笑みが浮かぶ。

「信長も、おかしな奴よ。尾張一の大うつけ。他人が右と言えば、左と言い、白いと言えばあくまでも黒いと言い張ったつむじ曲がり」。
「叡山、高野と僧俗を問わず、徹底的に殺戮した」。
「七層聖天の安土城も、奇観瞠目の南蛮寺も建立した」。
「大砲を積んだ軍艦も建造して、目の青い南蛮人の度肝を抜いてやった」。

「その信長が今、最期の時もまた、日本中をあっと言わせる羽目になったわ」。
はははは、と信長が笑う。
濃姫が見つめている。

「光秀め、うまうまとやりくさったのお!」
信長が、矢を構え、放つ。
お濃が次々、矢を渡す。

乱入してきた鉄砲隊が、火を噴く。
小姓たちが倒れていく。
信長の矢が、明智の兵に次々当たり、信長は家臣の一人を呼ぶ。
「今だ!女どもを連れて落ちよ!光秀は女子供は斬らぬ奴だ」。

「でもお濃の方さまは!」
濃姫は動かない。
「急げ!」

信長の声で男は、女を引き連れ、落ちのびていく。
女たちが、悲鳴を上げて逃げていく
信長が矢を射ろうとした時、弓のつるが切れる。

「槍を持て!」と、信長が叫ぶ。
濃姫が「はいっ!」と答える。
信長は、乱丸たちの戦いを目に焼き付ける。

「お濃、うぬも落ちよ」。
「落ちませぬ」。
「信長は最期に、女子(おなご)の力は借りぬ!」
「濃は女子ではございませぬ!それより御自らの戦いはおやめなされませ!」

「たわけ!うぬの指図を受ける信長か!」
信長は槍を持ち、自ら戦う。
乱丸が駆けてくる。

「上様!御自らの働き、恐れ多し。いざ、ご生害を!」
濃姫が、笑みを浮かべながら言う。
「上様。おもしろい生涯でござりました。この濃には」。

「うぬは、この俺とともに死ぬ気か」。
「殿はさぞかし、ご無念でございましょうな。光秀づれにこのような」。
濃姫は、愉快そうに見えた。

「たわけめ!はははは」。
信長も笑った。
「生死は一明!無駄ごと言わず控えておれ!」
もはや小姓たちは、信長の自害の時を稼ぐことしか考えていなかった。

濃姫は白装束に身を固め、長刀を持っている。
「殿、そろそろご用意なされませ」。
明智の兵が、「御しるし、頂戴に参上!」とやってくる。

乱丸が応戦する。
そして、斬られていく。
信長がそれを、じっと見つめる。

「殿。わらわもそろそろ、この腕に血塗ります」。
濃姫が、長刀を手に立ち上がる。
「こしゃくな女め!」
信長が、笑う。

明智の兵が、名乗って出る。
濃姫が長刀を構える。
「こしゃくな!」と兵が叫ぶ。
「どけ!女子供に用はない!」

この間に、信長は十分に奥へ入れる。
そうしてくれることを、濃姫は願った。
濃姫を、兵士の槍が貫く。

だが倒れながら、濃姫は振り上げた長刀で相手を切った。
相手が倒れる。
濃姫が倒れる。
信長が見つめる。

一瞬、敵の姿はなくなった。
濃姫が、目を閉じる。
それを見た信長が、奥へ入る。
かすかに、濃姫が笑った。

火が放たれる。
炎の中で信長が自刃する。
大将を探せと、兵がなだれ込んでくる。

戸を明けると、奥は火の海だった。
生きたい。
信長が、つぶやく。

もうしばらく生きたかったぞ、お濃!
もう2年だけ。
そうしたら必ず、日本を平定して見せてやる。

いや、2年が無理ならば1年でも良い。
1年が無理なら、一月で良い。
一月あれば。
一月あれば、俺は中国を平定できる男なんだ。

一月が無理なら、あと10日。
5日。
3日!
倒れた信長を、炎が包んでいく。

その時、家康が目を覚ました。
「誰かある!」と声をかける。
その時、家康の六感は確かに信長の声を聞き取っていたのだ。

すると、茶屋四郎次郎の手の者が明智の謀反、信長が討ち死にしたことを知らせに来る。
都の内外は、明智勢で一杯だ。
その頃、信長、自刃の報を聞いた秀吉は号泣していた。
秀吉はすぎさま毛利と講和をし、姫路に引き上げ、一気に都に駆け上る。

「これが成功すれば、信長公は喜んで…!」
秀吉は、言葉を飲み込んだ。
(喜んで天下をわしに下さる!)

信長が自刃したと聞いて、百姓農民までが暴徒化する。
三河へ引き返し、光秀討伐をする。
当初、信長に殉じ、切腹すると告げていた家康の、これが本心だった。

家康は山越えをする際に、家臣に黄金を、みなに2枚ずつ分配せよと申し渡した。
「身を守るは、刀だけと思うな。黄金2枚で1つずつ。2度はそれで命を拾うて行こうと思う」。
「堪忍じゃ!」

「これからは堪忍だけが通行切手と硬く心に刻み込み、必ず生きて三河の地をふまねばならぬぞ」。
伊賀を越えて奇襲を受ける危険のない荒い山道を踏み越え、伊勢から三河に入り込む。
「今宵はここで野営と思うたが、これが生死の分かれ道となるやもしれん」。
その決断が良かったのだ。

茶屋四郎次郎から使わされた金蔵は、命に代えても三河まで家康を案内していく。
当然、明智にもその案を察知したものがあった。
事実、この決断が遅かったら家康たちは夜道にその屍をさらしていたのだ。
明智の追撃が始まっていた。



この本能寺は、記憶にありました。
史実は違うみたいですけど、信長と濃姫の最期が泣けました。
決して逃げない濃姫。

最初からピタリと、信長についている。
信長がそれを見る。
濃姫は、逃げない。

信長と一緒に、自分は死ぬ。
こんな時が来ても、来なくても、そう決めていた。
それに対し、最期におなごの力は借りぬわ!と怒鳴る信長。

信長が、自分の生涯を振り返っている。
自分の道は、自分のしてきたことはわかっている。
おもしろい一生であったわ…。
最期もまた、日本中をあっと言わせる。

無念さを振り払うように、信長が笑う。
いや、本気でおもしろがっているのかもしれない。
やはりこの男、只者ではない。
相当に怖ろしく、相当に魅力的な男なのだ。

魔王のように。
まさに覇王の名にふさわしい男。
最期にこんな風に思うなんて。
こんな時に笑う男なのだ、信長は。

黙って、このつむじ曲がりについてきた濃姫もこれには驚く。
そういう男なのだ、わかっていても、改めてこんな時に信長という男を濃姫はすごい男だと確認する。
こんな男と添えて、私もおもしろい生涯だった。
泣いているような、笑っているような、愛しさと無念さが入り混じった表情。

濃姫は、尾張一の大たわけを誰よりも理解した。
今度は濃姫が殿はくやしいだろうと、信長の心中を代弁し、笑い飛ばしてやる。
濃姫が口に出して言うことで、信長が笑うことができる。
言葉には決して出さなくても、そんな濃姫を愛しく思っている信長。

なんという、似合いの夫婦。
もう信長も逃げろとは言わない。
この男に、自分はついていく。
だから、この男と死んでいく。

濃姫の凛とした表情。
この2人の間には、常人には入り込めない絆がある。
信長は、自分のために命を捨てていく小姓たちの姿を、目に焼き付けるかのように見ている。
まるで、小姓たちを助けるかのように、矢を放ち、槍を投げる。

その弓が、ぷつりと切れる。
信長の命運が尽きた、と言わんばかりに。
ここまで。
ここで終わりなのだと、言わんばかりに。

濃姫が、今度は自分が、と長刀を手に立ち上がる。
信長は、濃姫の願いとは違って、濃姫を見つめる。
濃姫の姿もまた、目に焼き付ける。

無念でないはずがない。
もうしばらく生きたかったぞ、お濃!と心の中で、信長は呼びかける。
濃姫だけが、信長の本心を知っている。

もう2年だけ。
2年が無理ならば1年でも良い。
1年が無理なら、一月で良い。

一月あれば。
一月が無理なら、あと10日。
5日。
3日!

振り絞るような、願い。
悲しそうな濃姫が、少し笑みを浮かべて事切れる。
信長との楽しい思い出が、濃姫の最期の時、脳裏に浮かんだのかもしれない。

この濃姫、藤真利子さんの凛として美しいこと。
狂気と理性と知性と漢な、役所さんの信長とまさに絵になる一対。
私のベスト濃姫です。

信長、自刃。
光秀、謀反。
その報告を聞いて、号泣しながら秀吉は考えている。

「これが成功すれば、信長公は喜んで…!」
秀吉は、言葉を飲み込んだ、というのがすごい。
(喜んで天下をわしに下さる!)

そんなわけないと思っても、これが秀吉という男なのだ。
何としても、光秀を討たねばならない。
弔いだ。

それだけじゃない。
これが成功すれば、天下は自分のものだ。
そしてやってくる、秀吉の時代…。

家康は、三河まで逃げなければならない。
決断が遅ければ、危なかったのだ。
家康という男、とことん運が強い。
この先の道は、家康にとって、まるで雪斎の教えを実践で知るために歩く道のようになる。

それは天下を取る人間が、知っておくべき世界を家康に教えてくれる。
後の歴史を知っている者が見ると、すべては家康が天下を取る取るために通るべき道だということになる。
しかしそれは、後の世の私たちが思うこと。
今は秀吉、家康、すべての人間が必死に生きているだけ。
スポンサーサイト

Comment













非公開コメントにする
Trackback

Trackback URL