えっ…。

蟹江敬三さんが、3月30日、亡くなっていました…。
もう、鬼平であの姿が見られないなんて。
名取裕子さんの上司が、「私、おとりになります!」の頼もしい相棒がいないなんて。

今日、なぜか、「沙粧妙子 最後の事件」の蟹江さんを思い出してたんです。
沙粧妙子の課長だけど、エリートの女性刑事である沙粧妙子とは徹底的に合わない。
叩き上げの現場からあがってきた刑事で、単純で、ちょっと暴力的だから、プロファイリングの妙子からは次の行動や怒鳴るタイミングまで読まれてしまう。

そんな課長刑事・高坂を、妙子は冷笑する。
課長も生意気な妙子を嫌っている。
妙子とコンビを組む新人刑事・松岡の組と、課長とコンビを組むベテラン刑事の組は、連続殺人事件を追う。

短気ですぐ手が出たり、怒鳴る課長刑事は、女性としては一緒に働くとちょっと困るタイプだとは思う。
でも単純なだけに、男の立場をストレートに理解して、人を守るタイプだとも思う。
ベテラン刑事の一人が犠牲になったときは、涙をこらえ、身を震わせて「絶対、許さねえ!」と声を絞り出しました。

事件後、妙子を見張っていた高坂は妙子に言う。
「沙粧、お前は、かわいそうな女だ。あ・た・ま・が、良すぎるんだよ」。
もう、妙子と対等に付き合えるプロファイリングチームの男たちはいない。
「梶浦も池波ももう、いない。お前と付き合える男はいないんだよ」。

なぜか、今日はこの「「沙粧、お前は、かわいそうな女だ。あ・た・ま・が、良すぎるんだよ」を思い出していたんです。
蟹江さん、いい味出してたなって。
ああいう存在がいると、沙粧妙子と良い対比になるんだよね、って。


1970年代の後半のインタビューで、蟹江さんは、ご自分の子供時代のことを語ってらっしゃいました。
「おとなしーい子でねえ。人と喋れなかった。赤面症もあった。今では治ってきたけど、基本的には変わってないですねえ」。
「68年に青俳が分裂して、現代人劇場というのを作って、それが解散して、桜社というのを、蜷川幸雄…、ご存知ですか?今、演出家の大先生になっちゃったけど、この人と青俳からずっと一緒にやってて、桜社というのを作ったんです」。

梶井基次郎の「桜の樹の下には屍体が埋まっている」から取って、蜷川幸雄さんが桜社と名づけた。
他のメンバーは石橋蓮司さんと、本田龍彦さん。
「清水邦夫って作家は、ご存知ですか?あの人の芝居を、ずっとやってたんです」。

蟹江さんは清水さん作、蜷川さんの演出の舞台で、ほとんど主役を演じている。
素っ裸で、舞台をかけまわったこともあるらしい。
そこからは、とても赤面症の少年を想像できない。

「酒飲んでも、ほとんど変わんないです。ちょっと、おしゃべりになるかな」。
「自分の心の中をね…、言葉にする作業が、わりとなめらかになるの。酒飲まないと、ぎこちないのね。ほんとは、酒飲みながらやるといいんですけど…」。
「うまく伝わんないですね。それで誤解されたりすることも、多いけども…」。

「よくある話だけど、女房に食わせてもらってた、いわゆるヒモ時代が長いですから。そのおかげで、芝居を続けられたわけだから」。
「頭が上がんないですか?」
「あんまり苦労かけたとも、思わないすね。だって、向こうもそうすることが、ある生きがいになってたわけだから…。いいんじゃないのかな?」

のろけ?
蟹江さんの出た作品見て、奥様、何か言いますか?
「いや、ほとんどわかんないみたいよ。『天使のはらわた 赤い教室』なんかは、一緒に見に行ったんです。女一人だと危ないから、ついてってあげて。そしたら女が見ても、おもしろかったみたいですよ。こう…、(目から)涙が」。

桃子ちゃんと一平くんの、二児の父親でもある。
「テレビで主役に斬られたりすると、泣くのね。お父さん、死んじゃったーって」。
「ボロボロ泣くんだよ。あれは嘘で死んでるんだよ、って言えば、わかるようになりましたけど」。

「20代ではね、芝居ばっかりやってきたでしょ。30代ではね…、なんて言ったらいいのかな。ま、40代で、花開きたいと思うわけですよ。いい仕事できたらなあ、って。
それまでにね、30代のうちに何でもやろうと思いますね」。
いい奥さんと子供に囲まれていい仕事ができるように!これからも、がんばってください。
「そうです。まだこれからの俳優ですから…(笑)」。

無口なんだな、ってわかるようなインタビューでした。
でも、誠実なんだろうなって思えるようなインタビュー。
今、活躍している蟹江さんの息子さん、一平さんのことも語られていました。
一平さんもいい俳優さんだと思いますが、子供の頃、お父さんの出ている番組を見ていたんですね。

田口計さんの息子さんも傷ついていたというのを聞いたことがありますが、悪役を演じることが多かった俳優さんのお子さんの反応というのが、わかります。
今、悪役もちゃんと演じているのを見ると、ちゃんとお父様の仕事を見ていたんだな。
いい俳優さんを、お父様に持ったんだなあと思います。

でも読み返していたら、すごく心が痛くなりました。
お父さん、死んじゃったーって…。
ほんとに、蟹江さん亡くなってしまった。

役柄で何度死んでも、また時間がたてば蟹江さんが見られたのに。
もう、見られない。
蟹江さん、本当に40代で花開きました。

渋い大人の役を、一杯演じてくれた。
本当にいい俳優さんがまじめに、地道にやっているって、地味でもやがては花開く。
強いんだなあと思いました。
そうであってほしいですしね。

私、「おとり捜査官」の蟹江さん、大好きなんですよ。
偶然だと思うんですが、4月5日に放送なんですよね。
いつもは楽しく見るんですが、しんみりしてしまいそう。

蟹江さん、子供の頃から、ずっとずっと楽しませてくれてありがとうございました。
もう、時代劇から特撮から、刑事ドラマまで、ほんとにたくさんの蟹江さんを見てきました。
…。
…。

なんか、すごく寂しい。
蟹江さんのご冥福を、心からお祈りします。
寂しい…。
こんな言葉を、蟹江さんに書くなんて、思いもしなかった。



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2014.04.05 / Top↑
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