どっちが早いか、勝負 「大都会 闘いの日々」

第4話、「協力者」。


「こっちはダメだ」。
滝川ことバクさんが、九条の写真を振り分け、またマージャンに戻る。
東洋新聞でマル暴担当の刑事を取り上げるので、九条が撮って来た社員を振り分けたのだが、翌日の新聞には没にした写真が載っていた。

大内刑事と平井刑事の顔が、載ってしまっている。
下に載っている写真は黒岩刑事だが、帽子と逆光で顔はわからない。
だが黒岩と並んでいる「協力者」は、見る人が見ればわかってしまう。

さっそく、一色課長代理からバクさんに苦情が入った。
表立っての抗議はしないが、新聞社の良識に任しているのだから。
協力者の夏宮は、弟が小坪一家の構成員であることから、弟から仕入れた情報を黒岩に流していた。

最近の情報は、小坪一家に関西の潮会が接近していると言う情報だった。
黒岩にも夏宮から、苦情が入る。
「弟にばれたらどうするんですか」と夏宮は言った。
あの写真には、夏宮が経営する喫茶店の看板も出てしまっていた。

高速道路で火事があり、加賀見警部が息子の就職相談に乗っていた日だった。
神宮前の駐車場で、殺しがあった。
あの夏宮が、刺殺体で見つかったのだった。
ライバルの毎朝新聞は、東洋新聞の取材方法を非難する。

九条が夏宮の葬儀に向かうが、家族はヒステリックに九条を怒鳴り、追い返した。
協力者の弟・夏宮次郎が、棺を運んでいた。
関西なまりの男から夏宮が呼び出されたのを、喫茶店の店員が証言している。

現状付近では、トレンチコートの男が目撃されていた。
この男が容疑者として、浮上した。
最近、小坪一家と接近している潮会の情報が漏れたことに対して、小坪一家か潮会が落とし前つけたのだろう。

その時、次郎が城西署の前に来た。
丸山刑事が呼び出したのだと言う。
目撃されたトレンチコートの男に覚えがないか、犯人逮捕のため、次郎に協力を求めたのだ。

だが次郎は「兄貴を脅して、サツの犬にした刑事、それを記事にした記者、両方が兄を殺した」と言った。
次郎は黒いサングラスに黒い皮のロングコート、黒のセーターと、黒ずくめだった。
「嫌がる兄貴に無理強いしたおかげでよ、このざまだ。呼んで来い、この刑事」。

次郎は新聞を机に放り出し、黒岩を呼べと言う。
加賀見が「今はいない」と言うが「嘘ツケ、来たねえな組織のやり口ってのは。すぐそういう風に、かばいあうんだよな」と言った。
「まあ、いいだろう。じゃあよ、そいつに言っといてくれ。この落とし前は、てめえ一人でつけるからって。その時によ、もしもう一人死ぬ奴が出たら、それはこいつの責任だ。こいつはもう一人、人を殺すんだ。そのことを必ず言っておいてくれ」。

すると、黒岩が「聞いたよ」と口を開いた。
「自分でその写真は俺だ」。
「てめえが」。

次郎が、途端になぐりかかってくる。
だが黒岩は次郎の拳をかわし、後ろ手に締め上げた。
そして、もし次郎が報復でその犯人を殺したとしたら、自分は次郎を逮捕すると警告した。
次郎は咳き込みながら、「てめえがパクるのが早いか、俺が落とし前つけるのが早いか、勝負しよう」と言った。

次郎が去って行く後姿を見て、黒岩は不安を感じる。
黒岩が家に戻ると恵子が、バクさんから「謝っておいてくれ」と言われたことを伝えた。
それから、電話をくれとコトヅケがあったことも伝えた。

バクさんからのコトヅケは、「バームンク、直子」からだった。
恵子はからかい気味に、「どういう人?」と聞く。
それを軽くかわした黒岩だが、喪服姿の直子の姿を思い出す。

雪が降ってきた夜。
次郎はアパートの小窓から、外を見張る黒岩を確認し、情婦と外出した。
車に待機している黒岩を見つけて、車に乗る前、次郎は黒岩を見てペッと唾を吐き捨てる。

見張っている黒岩に、通りかかった車が泥水をかけて走り去る。
黒岩のズボンが濡れ、雪が積もってくる。
風の音がする。
寒い。

黒岩はふと、恵子の渡したメモを見る。
バー「ムンク」のドアを開けると、直子が見た。
黒岩の横に座った直子は、「東京へはいつ?」と聞いた。

驚いたように直子を見た黒岩に直子は、ふっと笑うと「この店ではまだ、そうなってるわ」と言う。
滝川がムンクに来たときも、スポーツ屋には会うか?と、黒岩のことを刑事とは言わずに聞いたらしい。
直子は黒岩に、黒岩は「北海道から時々来ることにしてほしい」と言う。

「なぜですか?」
「その方が私、会いやすいから」。
そして、直子は「こういう噂を耳にしたわ」と話し出す。
「小坪さんが潮さんと縁組する話」。

直子の顔を見た黒岩に直子は「潮さんよ、関西の。関東の小坪さん。秘密に、話が進んでいるみたい」と言った。
「どっから聞いたんです?誰に聞いたんです?」
その時、バーテンが直子を客が呼んでいると伝えた。
立ち上がった直子に黒岩は「直子さん!」と声をかける。

「何かわかったら、また教えるわ」。
「横浜ナンバー。立花マーク。黒のリンカーン」。
直子は、そう言って去る。

雪の舞う中、次郎も外で立っていた。
止まってる車に向かって、火を貸してくれと言う。
警戒する車の中の男に次郎は「心配するな、小坪のもんだ。柳の兄貴待ってるんだ」と言った。
すると車の中の男が、次郎のタバコに火をつけてくれた。

次郎は「今夜は一人かい?こないだはトレンチコートの男がいただろう?」と聞いてみる。
「平尾ならいない」と言った男に、次郎は「平尾を知っている男がいてな」と話す。
車の中の男は次郎に、平尾なら2、3日うちにまた出てくると教えた。
料亭から、小坪一家と潮会の男たちが出てきた。

その夜、次郎は酔っ払って立てないほど酔っ払った。
「兄貴、大丈夫ですか?しっかりしてくださいよ」と言って、舎弟がアパートまで送ってきた。
アパートの座敷の床に倒れた次郎は、兄が平尾に刺される場面を思い浮かべた。
すると、咳が出てきた。

咳はやまないどころか、ひどくなってくる。
次郎は苦しそうに胸を押さえ、台所まで行き、水を飲もうとしてギョッとする。
コップの水が赤い。

その途端、激しく咳き込んだ次郎は目の前が赤い血で染まっているのを見る。
吐血だ。
次郎は一瞬、凍りつくが、すぐに水を流す。

ブロック塀の並ぶ家の前で、エプロンをした年配の女性から黒岩が何か聞いて戻ってくる。
エプロン姿の女性は、次郎の母親だった。
次郎は兄を殺した男について何かつかんだようだが、母親は詳しいことは知らなかった。

それと、次郎が体を悪くしていることも母親は心配していた。
医者からは酒もタバコも禁止されているらしい。
その頃、黒岩を次郎が訪ねてきていた。
加賀見が代わりに応対に出たが、次郎は何も言わずに帰ったらしい。

黒岩は次郎が来たことを聞いて、嫌な予感がした。
次郎の母親を黒岩が訪ねると、母親は黙って次郎が置いていった封筒を見せた。
母親に寄り添う、夏宮の妻と娘も、うつむいていた。
封筒には次郎の字で、「迷惑をかけてすみませんでした。使ってください」と書いて、貯金通帳があった。

次郎は、死ぬつもりなのだ。
黒岩は次郎を探す。
次郎はその頃、駐車場で平尾が乗ってきた車を探していた。
橘のマークのある車が止まっているのを確認し、平尾を待つ。

やがて平尾が出てきて、車に乗り込むと、次郎はタクシーに乗りかけた客を引きずりおろして自分が乗り込み、後をつける。
次郎は平尾が数人とクラブに入ったことを確認すると、客を装ってクラブに入る。
電話を取り、「関西の平尾さんをお願いします」と言って、ショーを見ていた平尾を呼び出した。

すぐそばの電話で、次郎がかけているとは知らず、平尾がやってきた。
電話に出た平尾に次郎は後ろから声をかけ、振り向いた平尾を刺す。
何度も、何度も刺す。
ガラス張りの会計係の女性が、平尾が倒れるのと、長ドスを持った次郎を見る。

一万円札を撒き散らして、女性が悲鳴を上げる。
かけつけてきたバーテンも、悲鳴を上げた。
次郎が、ドスの血をジッと見て、笑い声を上げ始める。
そしてまた、咳き込む。

黒岩が駆けつけると、次郎が逮捕されて出てきた。
次郎はふっと黒岩を見て、唇に笑みを浮かべる。
黒岩が横を見て、橘のマークの黒いリンカーンを見る。
直子の情報の通りだった。

「全部げろしました」と、加賀見が若い男を前にして言った。
若い男が、頭を抱えていた。
「けちなケンカですよ、肩が触れたとか…」と刑事たちが話す。

黒岩が、次郎のいる取調室に入る。
次郎は手錠がかかった手をまじまじと見ながら、満足そうだった。
高木刑事がタバコを出し、次郎が受け取る。
丸山が火をつけてやる。

高木刑事が「ご機嫌のところ申し訳ないがね、神宮前駐車場のホンボシが上がったよ」と次郎に伝え、新聞を出す。
次郎の手から、タバコが落ちる。
「無駄足だったな、お前の仇討ち」。

新聞には、犯人が通りすがりの大学生だったことが出ていた。
次郎が、咳をし始める。
抑えていたものがあふれるように、次郎が咳き込み出す。

苦しさに耐え切れず、次郎がサングラスを外す。
口元を押さえ、次郎が顔を上げた。
その左目は、完全に肌と同じ色で覆われている。

次郎は片目だった。
片目でしか、見えていなかったのだ。
次郎の視界が白くなっていく。
目を細める。

次郎の目が細められ、うつろになったように見えた時、次郎は再びサングラスをかけた。
黒岩が無言で出て行く。
バクさんが、外で待っていた。

直子から黒岩に電話だった。
「この前の情報、小坪さんと潮さんの縁組は破談になった」と直子は言った。
「もしもし!ありがとう。しかし、どっから聞くのか知りませんが、そういうことはもう、おやめなさい。危ないですからね」。

黒岩が言う。
「何をあなたが考えているのか、わからないけど、危険です」。
しかし「また」と直子の微笑んだ声がして、電話は切れた。
「もしもし!」

電話を切った黒岩は、ジッポでタバコに火をつけた。
平岩刑事たちが寒さに震えながら、帰ってくる。
うどんを注文した平岩刑事たちが黒岩も誘うが、黒岩は手を上げて出て行く。
外は何も変わらない、新宿の風景だった。



松田優作氏、ゲスト出演の回。
ヒーローの優作氏しか知らない子供には、ちょっとした衝撃だった回。
今見ると、優作氏、若い!
しかし、すでに大人だ。

若いけど、この危なさ。
触れると危険な凶暴さ。
なんか一杯、抱えてそうな雰囲気。
そういうのが、できている。

平尾を殺そうとしている前、町で肩が触れて文句を言われた次郎が、引き返して相手をぶっ飛ばす。
ああいう怖さ、これは今、憧れて真似しても、そうそうはできないなあ。
出せないよね、この雰囲気は。
そう思いました。

変な話、悪口でもなんでもなく、ほんとに不良だったんだもん。
この頃のショーケンとか、優作氏とか、火野正平さんとか、こういう人いましたよね。
不良っていう言い方は違うかもしれないけど、管理されない、管理しきれない人たちだったというべきか。

ほんとにいろんなことやって、傷ついて傷つけて、それを演技にぶつけている。
そうやって自分も回りも巻き込んで、迷惑かけて迷惑かけられながら生きていた。
俳優じゃなかったら、どうなってたんだろうという人たち。
芸能界にも、いられなかったかもしれない人たち。

そこを乗り越えて演技者として存在していたんだから、その実力や才能は相当なもの。
だから彼とか、ショーケンとか語る時に、必ずしも良い話だけが出てくるわけじゃない。
それが良いとか悪いとかじゃないし、俳優さんがそういう生き方するのことも、今はなかなかできなくなってきてる。

彼と同じようなことは、今の時代には無理に決まってる。
それだから雰囲気が出なくて当たり前だし、それでいい。
わかっているけど、今見ると、やっぱすごいなと思ってしまう。

相変わらずチョコレートをタバコの箱の上に乗せて、黒岩から夏宮の話を聞きだしている深町課長。
お昼にレストランで深町課長と玉川課長代理は、優雅にお食事。
ナイフとフォークを使い、パンを手でちぎって食べてます。

さっさと食べなきゃいけないような食事でもないですね。
寒さに震えて帰ってきて、鍋焼きうどんの出前を取る刑事さんたちとは、明らかに違う。
これがエリートさんというものなんだな、と思います。

高木巡査部長役の、草薙幸二郎さんが渋くて良い。
次郎の情婦役は、岡本麗さん。
若くて、ケバイ役が似合ってます。
惜しげもなくヌードを披露、女優根性。

あの頃の10ドル=2980円と言うレートが、クラブの会計の窓に書かれてる。
そうか、1ドル300円の時代か~。
次郎のアパートにも、時代を感じる。
ああいうアパートももう、ほとんどないんじゃないか。

小道具で揃えるまでもない、時代を感じるというか、そのままの風景。
今だったら、ワンルームマンションってとこでしょうか?
あんなとこにいるんだから、次郎だってまだまだ下っ端なんですよね。

俺の勝ちだと、満足そうな次郎。
しかしすぐにその満足は、打ち砕かれる。
何の意味もなかった復讐。
相手が単なる若造であることが、余計むなしさを増幅させる。

最初から、気になる咳だなと思っていたけど。
次郎は、あのまま服役中になくなってしまうのではないか。
ショックのあまり、急激に次郎は弱ったように見える。

もう、隠すこともせず、サングラスを外して口を押さえる次郎。
いや、隠す意識も飛んでしまっているのではないか。
次郎の目が、完全にふさがれている。

あれは、生まれつきか。
やけどか、何かか。
ケンカの傷とかでは、なかった。
だったら、次郎にとっては勲章だったと思う。

あれだけ、情婦と一緒の時さえサングラスをとらなかった理由。
つまり、あれは次郎にとっては隠しておきたいものだったんだろう。
次郎がヤクザにまでなったのは、ああいうことが原因だったのではないか…などと思ってしまう。
兄のことを恨むでもなく、警察が悪いと言うことから、この兄弟は仲も良かったんだろう。

松田優作氏の奥さんだった美智子さんの著書「越境者」に、この役のことが書いてありました。
あるスタッフが優作氏のことを「人を見ているようで、見ていないのよね」と言ったことと重ねて、美智子さんはこの役を優作氏になぞらえていました。
次郎は片方からしか、半分しか、物を見ていない。
見ているようで見ていない。

奥さんであった美智子さんしかわからない、優作氏であったと思います。
優作氏を貶める意味でもなければ、憎い意味でもない。
病気を医学ではなく、祈ることで克服しようとして、なかなか病院に向かわなかったこと。
そういうことをはじめとして、人生の大切な時に信じるものを、任せるものを自分だけの判断で選び、結果が彼を弱らせることになった。

人間だから、誰しもそういうことはある。
でも優作氏には、やり直しができない。
道半ばで、そういうことをしている途中で、優作氏は帰らぬ人になってしまった。
美智子さんはそれに対して心を痛めている…、といった印象でした。

第4話「協力者」は、そんな、まだまだこれからの優作氏の素直な演技が見られる話でした。
この後、「大都会Part2」の徳吉刑事で、優作氏は番組を牽引するキャラクターになります。
しかし「大都会」に出ている俳優さんの多くが鬼籍に入られていることを思うと、寂しいです。
丸山刑事の駐車場殺人の目撃者の証言を報告するセリフに、「8時5分、テレビ番組の『太陽にほえろ』が始まった時間です」というのがあって、ちょっと楽しかったです。



スポンサーサイト

コメントの投稿

Secret

プロフィール

ちゃーすけ

Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブロとも一覧

本も映画も文具も、いいものはいい!

LEVEL1 FX-BLOG
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード