こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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誰のおかげでお前は今日 「大都会 闘いの日々」

8話、「俺の愛したちあきなおみ」。


その朝、黒岩は妹の恵子に、今日の昼、何とか時間を空けて、あるホテルのロビーに来てほしいと言った。
誰と会うのか、恵子は言わなかった。
黒岩は承知した。

月曜。午前7時10分。
パトカーが街を走っていく。
アパートの前で待っていた男性が、警官を連れて階段を駆け上がっていく。
部屋の中には、首の部分に血のついた包丁が落ちている男性の遺体があった。

午前8時35分。
原宿駅前を、警察車両が通っていく。
殺されたのは、平山義彦40歳。
元、暴力団・笠原組。

今は抜けているが、関係は続いている。
部屋の主は、バーテンの村田栄二、23歳。
現在、行方はわからない。

平山は誰かと話していて、いきなり背後から首を刺されたらしい。
昨日、村田栄二は珍しく仕事を休んだ。
栄二は北海道の美唄の出だった。
マスターが言うには、いきなり電話してきて、具合が悪いと言って休みになった。

栄二の交友関係を、丸さんたちは洗う。
親しくしていた女性は、新宿のスナック、カモンのカウンターの女性。
そして故郷が同じの歌手の卵、木下マヤ。
マヤは今夜、テレビに出演するという。

午前10時5分。
平山殺しは、村田栄二が犯人と思われた。
マヤの部屋に、黒岩と丸山刑事が事情を聞きに言った。
部屋には、マネージャーの田辺がいた。

栄二のことを聞かれると、マヤは最後に会ったのは1週間ぐらい前だと言った。
「栄ちゃん、どうかしたんですか?」
「村田栄二さんとは、同郷ですか?」
「ええ」。

聞き込みを続けた結果、11時20分ぐらいにアパートの裏から飛び出してきた栄二が、目撃されていた。
黒岩は「事件が起きたから、今日の昼にホテルのロビーには行けなくなった」と恵子に連絡していた。
恵子は困惑し、大阪から来た客に会ってほしいのに、と言っていた。

「誰?」
「木原さんよ。木原みどりさん。日帰りなのよ」。
木原みどりと聞いた黒岩は「どうして何も言わなかったんだよ。女学生みたいな変な真似するなよ!」と怒った。

日高記者が、同期の芸能記者から平山について、妙な情報を持ってきた。
ちょっと前に失踪した、移籍問題でもめた歌手のことだった。
これには作曲家の和崎幸二が絡んでいるという話だが、和崎という作曲者は業界の実力者であった。
加賀見係長も知っている曲で、いつも歌っている曲の作曲も和崎がしている。

和崎ににらまれると、業界ではどうしようもないと言われていたのだ。
さらに和崎のバックには暴力団がいて、そこで平山の名前がちらりと出たらしい。
平山のマンションには平山企画と名前が掲げられており、無名のタレントばかりだが平山はタレント事務所をやっていたらしい。

和崎は聞き込みに対して、平山とは顔見知りで7時過ぎまで会っていたが、次の約束があったので別れたきりだと言う。
平山は技木に、歌手の卵の売り込みに来たらしい。
ディレクターに言われてやってきたのだろう。

その頃、ホテルのロビーで兄の黒岩を待っている恵子に、呼び出しの電話が入った。
黒岩からだった。
やっぱり行けそうもない、木原によろしく言ってくれと黒岩は言った。
恵子は木原に代わるから、と急いで木原を呼んだが、黒岩は受話器を置いてしまった。

4課にいる事務員の英子が、和崎が女性歌手の失踪に関わった週刊誌の記事を覚えていた。
加賀見は英子に、記者クラブからその雑誌を持ってくるように言った。
英子が雑誌を持っていくに気づいたバクは「どれ持っていった?これか。これなら良いや」と言って、さりげなく、英子が持っていくのはどの雑誌かチェックした。
和崎が、暴力団と付き合いがあるという記事が書かれている雑誌だった。

午後2時10分。
村田栄二が見つかった。
自分は金を取りに11時に自宅へ戻ったと、栄二は言った。

そこで、自分の部屋に倒れている平山の遺体は見た。
だが、怖いので逃げ出した。
自分がやったと思われるのがいやで、通報はしなかったと言う。
そんな時、再び恵子が署に電話をしてきた。

黒岩に、今、向かいの喫茶店にいるので、みどりに会ってほしいと言う。
みどりは結婚するので、その前にどうしても黒岩に会ってほしいのだと恵子は言った。
「あんなこと」がなければ、黒岩とみどりは結婚していたに違いない。
そう恵子は言った。

なぜなら、黒岩は今でも、3人で撮った写真を持っている。
だが黒岩は「幸せになってくれ」とだけ言って、電話を切った。
通りを見つめる黒岩は、みどりと会っていた時のことを思い出していた。

その時、木下マヤから電話が来た。
今朝はマネージャーがいたので言えなかったが、マヤは一晩中、栄二といたと言った。
だから栄二は、絶対に犯人ではない。

午後4時15分。
日高の同期の記者は、今評判の生放送番組のディレクター・和田にバクと日高を会わせる。
和田の担当する番組は、生放送で成り行きスタイルの番組だった。

本日は、木下マヤという新人歌手の人生。
マヤの話す彼女の人生を、30分撮ってくれれば良いと和田は指示する。
黙りたくなったら、黙るだろう。
歌いたくなったら、歌うだろう。

たった一つ決まっているのは、テーマ曲にちあきなおみの「喝采」を使うこと。
これは、マヤの希望だった。
それ以外はすべて、成り行きに任せる番組だった。

炭鉱の町から出てきた彼女の人生と、喝采の曲をダブらせたいのだ。
リハーサルが行われた。
「私が生まれたのは、昭和28年6月18日。北海道美唄市常盤台というところです」と、マヤが話し出した。

取調室で黒岩は栄二に、マヤのことを聞きたいと言った。
午後5時5分。
バクと日高に、和田が語る。

今、和崎の口利きなら、素人でもテレビに出られるのだ。
その辺りを平山は利用していた。
「見返りは金ですかね」。
「金の時もあるし、女の子の時もあるんじゃないですか?」

「噂ですよ。あくまで、そういう噂」と和田は言った。
「タマゴですよ。歌手の。近頃はテレビに出るために、平気で体を売る若い子がいます」。
「そういう噂を良く聞くけどね、本当にそういうことってあるの」。
「その辺のこと聞きたいんだったら、直接そういう子に聞いてみたらどうだ」。

「誰かいる?」
「さっきいただろう、木下マヤって」。
「ああ」。
「あの子だったら、いろいろ知ってるんじゃないかな。話すかどうか知らないけど」。

取調室で、黒岩に栄二が語る。
木下マヤを平山に1ヶ月前ぐらい、紹介したのは栄二だった。
栄二はマヤのことを時ちゃん、と呼んだ。

木下時子というのが、マヤの本名だ。
「時ちゃんが、チャンスがほしいって言ったもんだから」。
「チャンス?何の?」

「テレビに出るためのチャンスです」。
「で?チャンスを作ってもらえたのかね?」
「はい」。

同じ頃。
楽屋で、バクを相手にマヤが語っている。
「体をあれした人はいるみたい。私はそんなことしなかったけど…。私はやりません」。

「しかし、そういう子もいるわけだ」。
「…」。
マヤは、うつむいた。
城西署の取調室で、村田栄二もうつむいていた。

楽屋で、バクはマヤに言った。
「大変だね、きみたちも。そうまでして、テレビに出たいもんかね。ああ、美唄には去年行ってきたよ。炭鉱のあとが廃墟になってて、ありゃ不思議な景色だね」。
バクはそこまで言うと、タバコの煙を吐き出した。

「あたし、あそこで育ちました」。
「すいません、木下さん」とスタッフがマヤを呼びに来た。
スタジオに入ってくれと言うので、マヤは出て行った。

城西署の取調室で、栄二が「刑事さん、タバコもらえますか」と言う。
スタジオでは、和服を着て、座っているマヤにスポットライトが当たる。
炭鉱の廃墟になった故郷が、マヤの脳裏をかすめる。

古い瓦屋根の民家。
窓と言う窓には、木の雨戸が固くしまっている。
破れている窓もある。
破れている木の雨戸もある。

からからと回る煙突。
枯れた植木。
雨戸の木がめくれ上がり、風に吹かれている。

マヤはハッとしたように、顔を上げる。
「先生」と言って、バクのところに走ってきた。
「お話があります。すぐ済みますから、待っててください」とマヤはバクに帰らないようにお願いした。

栄二と会っていたという、木下マヤの言っていることはでたらめだった。
午後6時20分。
取調室で、「栄二が話します」と言って、うなだれた。

「俺がいけないんです。甘かったんです」。
テレビの出演が決まって、マヤは喜んで故郷に知らせていた。
それなのにおととい、マヤ青い顔をして、栄二のところに来た。

楽屋で、バクを相手にマヤも告白する。
明日、つまり、昨日、平山に呼ばれてマヤはこう言われた。
「今夜、赤坂ホテルの803号室に行け。そこに作曲家の和崎先生がいるから、って」。
言われたとおり、マヤは7時に803号室に言った。

「ノックしたら、和崎がベッドから起きてきていきなり私を…。私、ビックリして抵抗したら、先生、急に怒り出して。平山さんに電話して。あたし、泣きながらそんなこと知らないって。そしたら、平山さん、…ものすごい声出して」。
「和崎先生に逆らって良いのか。この世界でお前はやっていけなくなるんだぞ、って。誰のおかげで明日、テレビに出られるんだ。明日のテレビにお前は出るんだぞ、って」。
「あたし、栄ちゃんにもまだあげてなかったし。今までそんなこと…全然一度も」。

高木刑事と大内刑事が、和崎を訪ねていった。
和崎はマヤと会ったのは、レッスンのためだと言った。
「ピアノも何もなくてレッスンですか」。

「心得を言い聞かせていたんですよ、歌手になるための心得をね」。
8時ごろか、8時半過ぎか。
マヤは8時50分過ぎに、和崎のいたホテルの部屋から出たと言う。

楽屋で、「先生」とマヤはバクに言う。
「私は別に先生じゃないよ」。
「ごめんなさい、大人はみんな、先生に見えるの」。

「先生、あたし今日、初めてなの。テレビに出るの初めてなのよ。故郷にも知らせたわ。だからどうしても、出たいの。出してね。あともう、1時間だから」。
「どういう意味?」
「…人を殺したの」。

バクが、目を細める。
「あたし、夕べ平山を殺したの。捕まることはわかってるの。でも言ってやりたいのテレビで、みんな」。
「あたしが…どうして北海道から出てきて、人を殺すことになったのか、それを。全部言いたいの。生放送でしょ。だから。一切」。

午後7時25分。
取調室で、黒岩に栄二も語る。
東京に出る時、村田栄二は一緒に行きたいと言った。

「あいつが歌手になりたいって言った時、東京に行けと勧めたのは、俺だ。鉱山が次々閉鎖しちゃって、美唄にいたってしょうがないし。ちょうどテレビののど自慢が江別であるって聞いたから俺、強引に申し込ませました。『喝采』を歌いました。ちあきなおみの」。
「それで…出演していた歌手のマネージャーに、東京に来ないかって誘われて」。
「あいつが一人で東京に行く時、俺、どういうか急に不安になって、駅でやだなって思いました。そうしたらあいつ、わかったらしく、帰れって言うなら、いつでも帰るって」。

その頃、東京駅ではみどりが新幹線に乗って帰っていくところだった。
恵子が見送る。
みどりの顔がゆがみ、泣き出す。

加賀見係長と大内刑事が、マヤの部屋を家捜ししている。
部屋から、血染めのレインコートが見つかった。
マヤが犯人だ。

その時、楽屋にいたマヤは呼ばれ、スタジオに向かう。
「さて、本番だ」。
和田が言った。

楽屋に残ったバクは、マヤが持っていた栄二の写真を見る。
黒岩と栄二、丸山刑事が局に入る。
午後7時55分。
ちょっと、と言って、丸山が外れる。

曲が流れスポットライトの当たっている中央に、マヤが座っている。
午後8時ちょうど。
2、1、キュー!と和田が本番開始の合図する。

マヤが語りだす。
「あたしの生まれたのは、昭和28年6月18日。北海道美唄市常盤台の炭鉱住宅です」。
パトカーがサイレンを鳴らして、通りを通っていく。
撮影中の局の前で、パトカーは止まる。

刑事たちが入って来る。
「本番中、後にしてください」と、受付からの電話にスタッフが答えている。
マヤは語っている。
「テレビに出たのは、初めてです。2年かかりました」。

「歌を歌いに、出てきたんじゃありません。自分のことをしゃべるために、ここにいます。自分のことを」。
その真剣な表情に和田が、「2カメ!」とマヤをアップで映すよう、指示を出す。
「あたしに忘れることのできない、思い出があります。江別に素人のど自慢があった時、あたしは思い切って出場しました。ほんと言うとあたし自身で申し込んだんじゃありません。友達が申し込んでくれました」。

「…」。
見守る黒岩と栄二に丸山が、「ホシだよ。部屋から血のついたコートが出た」と告げた。
栄二が思わず、息を呑む。

マヤは話している。
「その人は、同じ村のボーイフレンドで村田栄二と言う名前です。…」。
バクがステージの脇で、マヤを見ている。

「彼は…、良く手紙をくれました。いつも下手な字で、長い長い…、本当は今日ここで、彼がその頃あたしにくれた手紙を読もうと思っていました。でも…」。
「…持ってきています」。
刑事とスタジオがもめていた。
「静かにしてください」と、スタッフが言う。

「読んでみます」と、マヤが言った。
「10日経ちました。あれから一通も便りがないので、心配しています。昨日の冷え込みで朝起きてみたら、山に初雪が降りていました。東京はここに比べたらずいぶん、しのぎやすいでしょうね、君が東京にたった日のことを、駅のことを今でも忘れません」。
「自分で勧めておきながら、僕はものすごく止めたかった。行くのをやめてくれないか、と思った」。

「駅で君の髪に、ごみがついていてそれをとった時、髪の毛が1本、僕の手の中に残りました。定期入れにはさんで、今でも持っています」。
その光景が、蘇る。
「…」。
「…」。

マヤが、顔を上げる。
時計がある。
8時20分。

「あたしがここまで来れたのも、彼の支えが会ったからです。村田君の私への優しさが…」。
上にある、スタジオのガラスに張り付いて、マヤを見ている栄二。
ステージの横で見ているバクの隣に、黒岩がいる。
丸山刑事も降りてくる。

マヤが上を見る。
スタジオの中、ディレクターたちと刑事がもめているのが見える。
マヤは黙っている。
ため息をつく。

「夕べ村田君のアパートで、一人の男が死にました。本当は」。
高木刑事から聞いて飛んできた局の重役が、「切りなさい!」と音声を切る命令をした。
「俺が責任を取る。切れ!」

マヤが言う。
「…私が殺しました」。
スタジオでは「切れって言ってるんです」と、重役が怒鳴った。

和田ディレクターは「切ってどうするんです!」と怒鳴った。
「バカ、何を言ってるんだ!」
「切るべきじゃあない!」
和田が逆らう。

「音楽流して!」
「レコード流して、レコード!」
「あたしがどうして、殺人を犯したか。それをしゃべりたい」。

その途端、バン!と音がして音声が途切れた。
代わりに音楽が流れる。
ちあきなおみの「喝采」だった。
画面に映るマヤは、ただ、口をパクパクと開けていた。

だが、ステージでマヤは告白し続けた。
「平山はその時、私に言いました。和崎先生の言うことを聞け!みんなそうする」。
『いつものように 幕が開き…』。

ちあきなおみの歌声が、流れている。
テレビから聞こえるのは、ちあきなおみの歌だけだった。
だが、マヤは告白し続ける。

「それができないんだったら…、それができないんだったらお前は今日、テレビに出られないんだぞ!」
「誰のおかげでお前は今日、テレビに出るんだって」。
「みんな、そうしてる。おまえだけ、どうしてできないんだ」。

ちあきなおみの声が、大きくなる。
『黒い縁取りがありました あれは3年前 止めるあなた 駅に残して 動き始めた汽車に一人飛び乗った…』。
ちあきなおみの「喝采」だけが、聞こえる。
マヤの必死の告白は、テレビの向こうには届かない。

バクが目を伏せて、去る。
マヤが、栄二に気づく。
栄二が哀しそうにマヤを見る。

和田も見ている。
栄二が何か叫ぶ。
聞こえない。

放送が終わった。
黒岩が、ステージに上がる。
マヤがうつむいている。
そして、黒岩を見る。

涙をこらえていたマヤが、泣く。
『つたが絡まる白い壁 細い影長く落として 一人の私は こぼす涙さえ 忘れてた』
ちあきなおみが、歌い続ける。
局を出たバクが、歩いていく。

『暗い待合室 話す 人もない 私の耳に 私の歌が通り過ぎていく』
ちあきなおみが、耳から離れない。
車が一台止まり、スターらしき女性が降りてきた。
きゃあきゃあと、ファンに囲まれる。

バクがパイプに火をつけ、深く煙を吐く。
ちあきなおみが、流れ続ける。
『それでも…』。



時間を丁寧に追って見せる、朝から約12時間の出来事。
呼んでいると、話があっちこっちに飛んでわかりづらいですが、すべてが、すべての人の人生が同時進行している。
そんな、演出。

木下マヤは、高橋洋子さん。
まだ幼く、おかっぱ頭がかわいらしい。
おかっぱ、ボブという洗練された感じではない髪の毛、雰囲気。
必死さがにじみ出る、切ない最後のステージ。

大人はみんな、「先生」と言ってしまうマヤという少女。
性格。
彼女の知っている世界。

生まれた町。
寂しくなる町。
廃れていく町。
こわいぐらい、それが伝わってくる風景。

そこにいた彼女の閉塞感。
行き詰まり。
そんな町から、のど自慢をきっかけに東京に出る希望。
楽しそうなマヤと栄二。

それを押しつぶした芸能界。
大人。
大都会。
ここに生きているバクは、たまらなくなる。

その少女と栄二の事件と、黒岩の楽しかった昔の恋人との光景が重なる。
もう、戻らない。
今さら会って、どうしようと言うのだ…。
あのこと、とは恵子に起きた事件か。

わかっていながらも、目が通りに向いてしまう黒岩。
やがて、別れが来る。
黒岩にも、マヤと栄二にも。

マヤの必死の、一世一代の、最後のステージ。
それが、マヤの人生と、栄二との淡い恋を象徴するちあきなおみの歌声に消されていく。
最後まで、マヤは大人に、都会に勝てなかった…。

蜷川幸雄さんの演じたディレクターは、視聴率ではないところで、中止させないようにしてた気がします。
真摯なマヤの告白を全うさせたいように見えた。
業界側の人間だけど、彼は和崎に対して、そうさせる業界、そうまでする娘に思ってることがあったのかも。
そんな風に見えたのは、ちょっとした救い。

「俺が愛したちあきなおみ」の「俺」は誰だろう。
過去形なのは、なぜだろう。
栄二も、マヤももう、ちあきなおみの曲を自分たちに重ね合わせて聴くことはできないからだろうか。
そこにはもう、夢はないから。

バクがたまらず、歩いて去っていく。
そこに到着する車。
都会で成功した者が華やかに人に囲まれている。

タイトルになり、題材になるにふさわしい名曲「喝采」と、見事に歌い上げる「歌手」「ちあきなおみ」が、この物語をクライマックスに導く。
ちあきなおみが途切れ、画面も止まる。
バクの、タバコの煙と一緒でなければ、吐き出せないため息…。


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Comment

ドラマの旬
編集
本当に、ずっと、視たいと思ってました。このエピソード。
放映の度に視そこね、録りそこね、レンタルもうまくいかず。

ようやく、今月になって辿り着きました。
「俺の愛したちあきなおみ」、評判通りの素晴らしさ。
しかし、残念でした。
このドラマを視るべき時機に視ていないこと。
旬の料理を味わえなかったこと。

やっぱり、いちいち脳内変換しているんです、視ながら。
閉山の町からの上京、憧れと汚れの芸能界、TV生放送のインパクト、そして「喝采」の前奏とボーカル…。
これらがリアルな世間的実感だった70年代に、TVの前の自分をいったん戻してから消化するプロセスが必要になってしまいました。
やはり、このエピソードは1976年にこそ“旬”な表現です。
オンタイムで視たかった。

マヤが大人の男性を誰でも「先生」と呼ぶ、というところ。
さすが倉本シナリオですね。上手い表現です。
上昇志向と勤勉実直を併せ持った少女の、謙虚さと甘さ。
そこにつけこまれる余地がある。

家族とか、保護者とか、本当の先生などの庇護者がいたら守られる。
でも、大都会の中で、孤独で未熟な甘い若者は…。
マヤは可哀想ですが、それでも彼女は犯罪を犯してはならなかった。
そのやるせなさと厳しさを、きちんと描いていたと思います。
2017年07月16日(Sun) 23:14
kaoru1107さん
編集
>kaoru1107さん

こんばんは。
コメントありがとうございます!
そしてまた訪ねてきてくれて、ありがとうございます!

>本当に、ずっと、視たいと思ってました。このエピソード。
>放映の度に視そこね、録りそこね、レンタルもうまくいかず。

不思議なことに、こういうエピソードってあります。
なぜか、見逃すんです。

>ようやく、今月になって辿り着きました。

良かったですー!

>「俺の愛したちあきなおみ」、評判通りの素晴らしさ。

タイトルにもなる「ちあきなおみ」。
ドラマを作れる歌手ですね。

>しかし、残念でした。
>このドラマを視るべき時機に視ていないこと。
>旬の料理を味わえなかったこと。

これ、わかります。
いつ見ても素晴らしいことは素晴らしいんですが、あの当時に見たら…と思えるものがある。
それは後からその時代を考証するのとは違う、リアルな時代の空気の中にいることの違い。
本放送で見た人をうらやましいと思うことってあります。

>やっぱり、いちいち脳内変換しているんです、視ながら。
>閉山の町からの上京、憧れと汚れの芸能界、TV生放送のインパクト、そして「喝采」の前奏とボーカル…。
>これらがリアルな世間的実感だった70年代に、TVの前の自分をいったん戻してから消化するプロセスが必要になってしまいました。

ああ~、わかります、こういうのってあります。
知識として知っていることと、自分の実体験やその時代に生きていることは違う。
言わずとも、知らずとも、リアルで感じられる。
だから胸に迫るというものがあるだろうな、と。
「この時代には戦争から帰還した人がいる」と知識で知っていることと、そういう人が現役でいる中で生きていることが違うように。

>やはり、このエピソードは1976年にこそ“旬”な表現です。
>オンタイムで視たかった。

録画でいつでも見られるなんて思わなかった時代、まさにその時を感じてほしくて作っている時代ですから、よけいです。

>マヤが大人の男性を誰でも「先生」と呼ぶ、というところ。
>さすが倉本シナリオですね。上手い表現です。
>上昇志向と勤勉実直を併せ持った少女の、謙虚さと甘さ。
>そこにつけこまれる余地がある。

本当に、こういうところ実にうまいです。

>家族とか、保護者とか、本当の先生などの庇護者がいたら守られる。
>でも、大都会の中で、孤独で未熟な甘い若者は…。

こうして食い物になっていった若い子たちがいたんだなあ、と思いました。
都会は怖いという言葉が今よりも心に響く。
同時に遠い都会、憧れの地であったことも。
そこでしか手に入らないものが確かにあったんだろうと。

>マヤは可哀想ですが、それでも彼女は犯罪を犯してはならなかった。
>そのやるせなさと厳しさを、きちんと描いていたと思います。

ちあきなおみを流すことで、マヤの悲劇が一層浮かび上がりますね。
「みんな、そうしてる。おまえだけ、どうしてできないんだ」。
この言葉と、悲鳴のような高橋洋子さんの声が忘れられなくなりました。

コメントありがとうございました!
2017年07月17日(Mon) 21:37
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このコメントは管理者の承認待ちです
2017年07月17日(Mon) 23:10
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このコメントは管理者の承認待ちです
2017年07月30日(Sun) 21:40












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