こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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おかえり。みゆきちゃん 「深夜食堂」第2話

「深夜食堂」第2話、「ねこまんま」。


明け方、6時半ごろ。
そろそろ店を閉めようかと思っていた時、彼女は飛び込んできた。
「かつおぶし、あります?」

マスターは「あるけど、なんだい?」と聞いた。
「あったかいご飯にかけて」。
「ねこまんま、かい?」

彼女の名前は、千鳥みゆき。
売れない演歌歌手だった。
それをきっかけにみゆきは、深夜食堂に来るようになった。

深夜食堂でそれぞれが好みのお茶漬けを食べる、お茶漬けシスターズとマスターが密かに呼ぶ3人組のOL。
同じく常連客の忠さん。
彼らはこの店に珍しく、歌手のポスターが貼ってあるのを見つける。

すると、マスターは「あるよ」とみゆきのCDを出した。
さては、惚れたな~と言われるが、マスターは淡々としている。
お茶漬けシスターズは、みゆきのポスターを見て、こういうのが一番惨めっぽいと言う。
いつか売れるんじゃないかという、その裏切られるであろう淡い期待が、彼女たちには惨めに映るらしい。

常連客には作詞家がいるが、マスターの店にはラジオしかない。
だからみゆきの歌を、聞かせることはできない。
すると忠さんが、ここで聞かせれば良いと提案する。

さっそく、深夜食堂で昼間の3時に、みゆきがカウンターで歌うイベントが開かれる。
惨めだと言っていたお茶漬けシスターズも、目の前で歌うみゆきの歌唱力と迫力に目を奪われる。
作詞家がみゆきに「プレゼント」と言って、封筒を渡す。
封筒を開けると中には「迷い猫」という作詞が入っていた。

「君を見ていて、浮かんだ」。
「歌いたいと言う気持ちを、いつも忘れず、大事にね」。
感激したみゆきは、詩を抱きしめる。
マスターの店の前に、猫がいるのが見える。

その曲はレコーディングされ、みゆきには取材が申し込まれる。
たちまち曲はヒットし、みゆきは売れっ子歌手となってテレビやコンサートで歌い始める。
マネージャーがつき、みゆきは一人の楽屋で仕度するようになっていく。
美しく着飾り、衣装を調え、忙しく車で移動していくみゆきの顔が、ふっと曇った。

スポーツ新聞の芸能欄にみゆきの写真がカラーで載り、紅白出場も確実視されていた。
だが、ある日。
出番が終わったみゆきは、疲れきったように見えた。
次の瞬間、みゆきは咳き込み、口を押さえて倒れる。

起き上がったみゆきは、自分の口元と手に血が付いているの見る。
その時から、みゆきは入院した。
夕日が差した病室で、みゆきは黙っていた。
マスターがみゆきに最後に会ったのは、みゆきが亡くなるひと月前だったと心の中でつぶやいていた。

この日も、マスターは店にいた。
ラジオからみゆきの曲が流れてきた。
ガラガラ、と音がして、引き戸が開いた。

青い顔をしたみゆきが入って来た。
「みゆきちゃん…」。
マスターが驚く。

みゆきは弱々しく、にっこり笑うと「かつぶし、ある?」と言った。
最初に店に来た時の言葉、笑顔だった。
マスターがいつもしていたように、鰹節を削る。
そしてあったかいご飯に鰹節をかけ、しょうゆをかける。

みゆきがいつも頼んでいたねこまんまができ、マスターがみゆきの前に置く。
箸を手にして、みゆきがねこまんまを一口、口に運ぶ。
「マスター、ありがとうね」。
「私、この店に来なかったら、こんなに幸せになれなかった」。

マスターはコップに入ったビールを、何かに耐えるように喉に流し込んだ。
みゆきが「今日は私も飲んじゃおうかな」と笑った。
「良いのかい?」
「うん」。

マスターが店の奥に入り、冷蔵庫を開ける。
「あんまり冷えてないけど、良いかい?」
「うん」。

みゆきは笑うと、店を見た。
マスターも、じっと見た。
見つめた。

「忠さんって居たろう?」
マスターは常連の忠さんからサインを頼まれたと言って、色紙を手に戻って来た。
みゆきの姿はなかった。

できあがったねこまんまは、そのままだった。
マスターが置いた箸も、そのままだった。
確かに、みゆきは食べていたのに。

その夜。
深夜食堂に、喪服の常連客が集まって、しめやかにみゆきの冥福を祈って飲んでいた。
作詞家は、口を一文字に引き締めていた。

「そういえばマスター、今朝、不思議なことがあったんだって?」
忠さんが聞いた。
スポーツ新聞には、みゆきの壮絶な闘病死という記事が載っていた。

朝に、なった。
マスターがのれんをしまおうと、外に出た。
みゆきの好きだったねこまんまが、外に置かれていた。
ねこまんまを、白と黒のぶちの猫が食べていた。

マスターは、猫に向かって座り込んだ。
そして、話しかける。
「おかえり」。

猫が食べるのをやめた。
マスターに向かって、座った。
「おかえり。みゆきちゃん」。
猫がかすかに、しかし確実に「にゃあ」と返事をした。



わああああ。
泣いてしまった。
最後の「おかえり。みゆきちゃん」で涙腺決壊。

みゆきは、田畑智子さん。
若い時から味のある、うまい女優さんだなあと思ってました。
市原悦子さんみたいに生き残っていってくれると良いな、と思わせる女優さん。

作詞家は、田口トモロヲさん。
売れない演歌歌手とか惨めと言っていたけど、みゆきの本物っぽさには圧倒される。
そうなんですよ、うまい歌手って生で聞くとすごい迫力。

みゆきを見て、インスピレーションを刺激された作詞家は、曲をプレゼント。
ハマるとぐんぐん売れて、それで行けてしまうのが演歌歌手というイメージなんですが、みゆきはまさにそんな感じ。
売れっ子になって、それでも顔色が曇ったのを見てちょっと不安になる。

マネージャーがつき、楽屋が花であふれ、ここから何かのきっかけでみゆきが転落するのか。
そしてまた、深夜食堂に戻ってくるのか。
こんな展開を予想したんですが、物語はもっと残酷で切なかった。
まさか、まさか。

病室のみゆきは髪の毛を隠すように覆っていることから、これは深刻だな…とは思いましたが。
亡くなるひと月前、と聞いて、嘘ー!って。
売れた頃にはもう、病状は悪化していたのでしょうか。

輝いて、まるでそれが生きた最後の輝きのようになってしまうなんて悲しすぎる。
人が懐かしい場所、安らげる場所に帰るように、みゆきは深夜食堂にやってきた。
戸をガラガラと開けて。

みゆきを見て、病院から出られたのか?
抜け出してきたのか?と、私も奇異に思った。
マスターが奥にちょっと入って、すぐに戻ってきた時、みゆきはもういなかった。
ねこまんまは、そのままだった。

そこで、ふと気づいた。
来る時、音を立てて開けた戸が、音を立てていなかった。
みゆきは、出て行っていない…?

常連客が肩を落として、みゆきを悼む。
自分が発掘したダイヤモンドを失った、作詞家も声もない。
みゆきは、伝説の歌手になったと思うけど。

店を見渡すみゆきの視線。
悲しそうな、うれしそうな、感謝と愛しさと未練が混ざったような表情。
田畑さんのうまさ。
言葉が出ないマスターの小林薫さん。

翌朝、店の外でねこまんまを食べていた猫。
マスターの「おかえり。みゆきちゃん」が本当に思える。
みゆきちゃんに見える。

あれ、みゆきちゃんだよ。
猫の体を借りて、みゆきちゃんが来たんだよ。
マスターのみゆきを見ていた、身続けるであろう暖かい視線を感じる。
みゆきちゃんはマスターの中で、生きていくのだと思う。


劇中でも語られているけど、本当は猫に鰹節ご飯は塩分多すぎていけないんですよね。
しかしあの猫、野良には思えないほど綺麗で艶が良かった。
でも、マスターの店の常連になるな。

派手さはないけど、忘れられない味。
このドラマは、しみじみとしたすばらしいドラマ。
泣いた。


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